ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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初めまして。
ONE(ワン) PIECE(ピース) FILM(フィルム) GOLD(ゴールド)」のテゾーロに転生した青年の物語をお楽しみください。


転生~大海賊時代以前
プロローグ


「――ここは……?」

 見慣れぬ世界がそこにあった。

 周囲は真っ白で、「無の世界」と例えるにふさわしいぐらいに何も無かった。

 青年はなぜこうなったのかを思い出そうとしたが……思い出せなかった。

「記憶が飛んでる……」

 記憶喪失か、あるいは一時的な記憶障害か。果たしてどちらなのかはともかく、とりあえず思い出せない。

 ただ、多少の過去は憶えていた。

 自分はアーティストを目指していた。歌とダンスが好きで、子供の頃からアイドルグループの活動に興味があり、「いつか彼らと同じステージに立ちたい」と心から願っていた。

 その願いは不可能ではなかった。自身は努力家であり、同時に演劇部やダンス部を掛け持ちしていたからだ。それが功を奏し、周囲からは学校でも有数の人気者となった。

 しかし、実際は幸せではなかった。むしろ不幸だった。

 彼が周囲から評価される度に、一部の同級生が嫌がらせをしてきたりリンチをしてきたからだ。理由は、「自分より優れてるから」だった。この事に対し、何度も担任に相談したが、聞く耳を持たなかった。いや、もはや相談する気にもならなかった。一度だけ、いじめられてるところを見逃されたから。

 両親は最低だった。ギャンブルと酒に溺れた父親と、金に目が無い母親……毎日「金を稼いでこい」と罵詈雑言を浴びせられ、暴力も振るわれた。

 そこまでは覚えていたが、その先……この真っ白な世界へ来たのかは一切覚えていない。

「死んだのだから、憶えてないのは当然の事」

「うわっ!?」

 青年は驚いて後ろを振り向く。

 視線の先には、白く長い立派なあごひげを生やした好々爺のような人物がいた。

 まるでRPGとかに出て来そうな神様だ。

「わしは神じゃ、よろしくな青年」

「――え?」

 何と、本物の神様だった。

 青年は目を丸くして放心。

「まず、お主がこの空間へ来た経緯(いきさつ)を教えねばならんな……」

 

 

 神は全てを語った。

 不幸な人生を歩んでいるも、めげずに生きる青年に悲劇が襲った。ある日の下校中、横断歩道で信号を待っていると後ろから誰かに押され、トラックに撥ねられたというのだ。

 勿論、青年は即死。彼は明らかに殺された筈なのに、運悪く目撃者がいなかったせいか事故死で片付かれてしまった。

 その後の葬式は、肝心の両親は来ておらず、まともに行われなかったという。

「お主を殺したのはいじめっ子。まァ、お主自身も察しているじゃろうがな」

「……おれは死んだんだな……でも、おれはなぜここに? あの世なんだろう?」

「そこじゃよ。肝心なのは」

 神は再び語る。

 この〝無の世界〟は、天上界――天国みたいなもの――の特別な空間で、不幸なまま命を散らした憐れな者達を転生させるための場だという。

選択肢があり、本来は(・・・)「蘇生」か「二次元への転生」…どちらか好きな方を選ぶそうだが…。

「この空間に訪れた者全員が二次元への転生を希望したから、しばらく前の第394回八百万(やおよろず)会議で〝二次元への転生の場〟にしたのだ」

「神様って会議するんだな……394回も……」

「この空間を担当するわしは、転生者の様々な条件を受け入れる義務がある。好きな世界、好きな設定を述べるがよい」

 ざっくりまとめると、「行きたい世界で独自設定で生涯を閉じろ」ということだろう。

「ならさ……おれは「ONE PIECE(ワンピース)」のギルド・テゾーロに転生したいな」

「――ほう?」

 ギルド・テゾーロ。

 それは、〝黄金帝〟と〝新世界の怪物〟の異名を持つカジノ王。「ONE(ワン) PIECE(ピース) FILM(フィルム) GOLD(ゴールド)」でその圧倒的存在感と凄まじい能力を見せつけたのは記憶に新しい。

 ちなみに彼が「ONE(ワン) PIECE(ピース)」の世界への転生を望んだのは、一番好きなマンガかつ最も知識が豊富なマンガだからである。

「テゾーロってさ、おれに似た境遇なんだよ」

「お主と、か?」

 テゾーロは貧しい家庭に生まれ、幼い頃には会場の外から眺めたエンターテインメントショーに強い憧れを抱いていた。

 しかしギャンブルに金をつぎ込む父親が「手術代が払えれば治った病気」で亡くなってしまい、それを機に家庭環境が崩壊した事や歌を嫌う母親の暴言に激怒したことで遂に家出をし、12歳の若さにして裏社会の世界に入り込んだ。

 その後も次第に荒れていき、ステラという少女と運命的な出会いをしても救われず、彼女共々奴隷にされた上に最終的には「ステラが死んだ」と言う事実を聞いてしまい、激しい怒りと後悔から徐々に金への執着心を高めていく。

 そして「FILM(フィルム) GOLD(ゴールド)」では、心から救われず主人公(ルフィ)に〝ただの怪物〟と呼ばれ敗北した。自由と支配……勝つのは当然――物語の展開を考えると――自由だが、テゾーロはあまりにも救われない人生だった。

 彼は、いわゆる「哀しき悪役」だ。単なる自己満足にすぎないのは事実ではあるが、救ってやりたい――そう青年は思ったのだ。

(まァ、そもそも天竜人や世界政府が気に入らないし…一応革命でも起こそうかとは思ったりするけどね)

「あいわかった。要望はあるかね?」

「じゃあ……」

 青年が提示した条件は、以下の二つだった。

 一つ目……黄金を生み出し、一度触れた黄金を自在に操ることができる〝ゴルゴルの実〟を転生直後に渡すようにすること。

 二つ目……数百万人に1人しか持たない「王の資質」である〝()(おう)(しょく)の覇気〟を有している状態にすること。

「こんな感じかな」

「後は自力でどうにかするんじゃな?」

「そうだね」

 すると、青年の体が白く輝き始めた。

 どうやら準備は整ったらしい。

「――では、お主の幸運を祈る」

 そして、青年は白く輝き消えた。

 

 

           *

 

 

 目が覚めると、そこはボロそうな小屋の中。

 質の悪そうなベッドで横になっており、起きるとそばに置いてあった鏡を見る。

「……マジかよ」

 櫻井(ピー)宏ボイスで呟いた。多少ボロイ服装であったが、中々のイケメンである。

「ホントにテゾーロだ……」

 その時、床に突如宝箱が現れた。

 恐る恐る開けて見ると、手紙と唐草模様がついている果実とビンが入っていた。

「これが〝ゴルゴルの実〟か……!」

 唐草模様の果実を手に取る。

 黄金を生み出し、自由自在に操ることができる〝ゴルゴルの実〟。劇中においては、黄金を腕に(まと)って攻撃したり、黄金を触手のように操って相手を拘束して攻撃するのが主な戦闘方法だった。大爆発を起こしたりレーザーが出たり黄金の噴水を出したり空にそびえそうなくろがねの城もどきみたいになったりと、覚醒すると多彩な攻撃もできる。

(でも、悪魔の実(これ)って死ぬ程マズイんだよな……)

 そう、悪魔の実は悪魔の実。味は非常にマズイのだ。

 だが、食わねば何も始まらない。勇気を振り絞って口にするが……。

「な、何じゃこりゃあァ……!? み、水ゥ……!!」

 悶絶。あまりのマズさに涙すら出る。

 それを見越してか、神はどうやらお口直しの飲料水を添付してくれたらしく、栓を素手で抜いて一気飲み。

「プハーッ!! あ~、生き返る……。あ、そうだ手紙……」

 入っていた手紙を開くと、「これから先のお主を見守ろう、〝ギルド・テゾーロ〟」と書かれていた。

「――おいおい、もうちょっと長く書いてもいいだろうに…」

 正直期待してたが、まさかこの一言のみ。

 目を白くするも、手紙を閉じて笑みを浮かべる。

「そうか……おれはギルド・テゾーロなんだ。じゃあ、好きに生きさせてもらうぜ神様よ」

 こうして青年は、「ギルド・テゾーロ」として生まれ変わった。

 まず行うべきことは――

 

 グギュルルルル……

 

「腹減った……」

 空腹を満たすことだった。




この小説の主人公は、ギルド・テゾーロに転生した青年です。
原作の方のテゾーロとは、かなり違う性格をしていますよ。

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