ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第36話〝嫌なモノは早めに潰そう〟

 テゾーロの事業のおかげで〝偉大なる航路(グランドライン)〟前半の海は大きく発展し、様々な物資・金・人が各地から集まるようになった。

 ウォーターセブンやジャヤに大海賊時代到来により爆増した海賊がこの次々と襲撃する事件も遭ったが、覇気とゴルゴルの能力、さらにコネを利用した海軍との連携の前にあっさり殲滅されて終わり、テゾーロ財団が手中に収める……ではなく活動拠点としている海域はと平穏な社会になりつつあった。

 そんな中、ウォーターセブンへ久しぶりに戻っていつも通り事業を進めたテゾーロは、久しぶりに海賊に絡まれた。

「へへへ、ギルド・テゾーロ!! 命が惜しければ金を出せ!! ありったけのな!!」

「おれ達を怒らせると怖いぜェ?」

「ケガしねェ内に出すんだな!!」

 ゲスイ笑みを浮かべて恫喝する海賊達。

 しかしテゾーロは頬杖をつきながら、湯吞み茶碗に注いだ緑茶を飲んで冷静に対処する。

「……あのォ、お引き取り願えますかねェ~? 私が相手取るのは基本的に商人や資産家、政府及び海軍の関係者のみ……こちとら海賊は専門外なんですよォ。賞金稼ぎの仕事ァ、もうやるつもりねェんで。何なら呼びましょうかァ? 海軍っていう名の海賊専門家を」

 完全に海賊達(あいて)をナメきった態度で応じるテゾーロ。

 その一部始終を見ていた社員は爆笑寸前である。

「て、てめェ……命が惜しくねェのか?」

「許さねェ、ぶっ殺してやる!!」

「海賊をバカにしたことを後悔させてやる!!」

「あっそ」

 剣や銃を向けられても脅されても、頬杖をついて相変わらず舐めきった態度のテゾーロ。

 テゾーロに舐められた海賊達は我慢の限界に早くも達した。

「ぶっ殺しちまえェ!!」

 激昂した海賊達は、テゾーロに襲いかかる。

 そんな海賊達をテゾーロは見据えると、キッと睨んだ。

 

 ドクンッ!

 

 見えない衝撃が、海賊達を貫いた。

 その直後、海賊達は膝を突いて白目を剥き、泡を吹きながら一斉に倒れた。テゾーロが海賊達を〝覇王色〟の覇気で威圧したのだ。

 海賊稼業を引退してなお伝説として語られる〝冥王〟レイリーの修行によって、ある程度覇気をコントロールできるようになったテゾーロは、覇王色の方も修行させてもらってこうして扱うことができるようになったのだ。

「ったく、これだから……」

 最近の海賊達の間には、どうも船を襲って金品を狙うよりテゾーロ財団を狙った方が大金を得られるという風潮が広まっているようだ。

 ぶっちゃけた話、海賊によるテゾーロ財団襲撃――未遂含む――は今回で7度目である。その度にテゾーロの覇気とゴルゴルの能力で海賊達はボロボロのギッタンギッタンにされてるのだが…全く懲りてないようだ。げに執念とは恐ろしきモノである。

その時だった。

「あの……理事長、少しいいでしょうか?」

 白いラインが入った黒のジャージ姿の社員が、テゾーロと話をしに来た。

 ちなみに彼の着ているジャージはテゾーロ財団専用の作業着の一種である。

「? どうした、何かトラブルか?」

「いえ……すぐに解決する必要はありませんが……そろそろ事業拡大をするので人員を補充すべきかと……」

「人員ねェ……」

 確かに、彼の言い分は正しい。

 テゾーロ財団は今、様々な事業を行っている。その事業を支えるには人員が必要だ。

 人件費に関しては問題ない。テゾーロが生みだした黄金が賃金として成り立つからだ。しかし、問題なのはその人員が確保しづらいところだ。海賊を雇うのはテゾーロにとって嫌だし、そもそも海賊はどこまでも海賊…絶対変な事をやらかすに決まっている。

「……! そうだ、イイこと考えた」

「理事長……?」

 

 

           *

 

 

「〝人間屋(ヒューマンショップ)〟を潰すことにした」

 テゾーロは欠伸をしながらそう言った。

 それを聞いていた社員達はどよめいた。世界各地にある人類売買の店――〝人間屋(ヒューマンショップ)〟は人間や珍しい種族のオークションが盛んに行われている。当然ながら人身売買は世界的に禁止であり、政府や海軍はこの人間屋の存在を認知しているが、「職業安定所」と称して事実上黙認している。

 この裏には、世界最高峰の権力者である世界貴族〝天竜人〟が関係していると言われている。現に天竜人は多くの奴隷を所有しており、酷使や虐待を平然と行っている。その中には人間屋に出向いて莫大な材を用いて奴隷を大量購入する者もいる。

「テゾーロ、あなたまさか……!」

「察しがいいな、ステラ。その通り……人間屋で売られている人達を全員買い取って社員にするんだ。欲を言えば店そのものを買い取って(・・・・・・・・・・・)丸ごとテゾーロ財団(ウチら)の私有地にすることなんだがな」

 テゾーロが人間屋に目を付けた理由は、人員補充だけではない。土地も欲しかったのだ。

 実はテゾーロは、金融業にも興味を持ち始めたのだ。彼曰く、あるアイデアを閃き上手くいけば世界中の国々とパイプが繋がる程の一大事業らしい。その為には拠点とする土地が必要だったのだ。

 テゾーロが人間屋を土地ごと買収すれば、非道な人身売買が行われる忌まわしき場所が消え、土地も得られる上に人員も補充できる。一石二鳥どころか、一石三鳥だ。

「り、理事長……それはさすがにマズイのでは……!?」

「天竜人の機嫌を損ねかねないですよ……!」

 社員が不安になるのも当然だった。

 人道もへったくれもない行為をしでかしている人間のクズとはいえ、世界政府最高権力である五老星すら上回る絶大な権力を持っている天竜人は、何者かによって傷付けられた場合には海軍大将が軍を率いて派遣され、そのブ〇リー並みの戦闘力で血祭りに上げられる。しかも世間ではあまり知られてないが、肉体的苦痛だけでなく精神的苦痛(・・・・・)によって訴えられ派遣されたというケースがあったという。海軍も大変である。

 勿論察している方も多いだろうが……傷つけられるだけでなく、ただ腹を立てただけで海軍大将を呼ぶこともあるのだ。しかも現時点で大将はセンゴクのみなので、天竜人通報の対応は全部センゴクがやっているのだ。大海賊時代以前よりかなりストレスが溜まっているらしい。

 さすが智将〝仏のセンゴク〟というべきか……よく胃に穴が開かずに済んだものである。いや、実際は表に出てないだけで穴が開いたことがあるかもしれないが。

「大丈夫だって、絶対金に目が無いって」

 テゾーロは、軽いが確信を持ったかのような返事をする。

 確かに、金には目が無いのかもしれないだろう。天竜人の欲望は海底1万mにある魚人島よりも深い。現に各地から莫大な献金「天上金」を得ておいてまだ貪欲なのだから。その上天竜人の価値観は滅茶苦茶(クレイジー)だ、ある意味一番残虐でもある。

 だがテゾーロの考えだと、どうやら天竜人の腐りきった性格を利用しようと目論んでいるようだ。

「テゾーロ、大丈夫なの……?」

「ああ、問題ない。このテゾーロ、人生最大級の博打に出てやんよ」

 ステラの心配を吹き飛ばすかのような、満面の笑みを浮かべるテゾーロ。

 この事業が、後にテゾーロの予想通り世界に絶大な影響を与えるのは言うまでもない。

 

 

           *

 

 

 シャボンディ諸島。

 この諸島に置かれたテゾーロ財団の事務所に、ある青年が訪れていた。その青年は黒と紫のチェック模様のシャツを着用し、青いネクタイを結んで黒のコートに袖を通した彼は背中にスナイパーライフルを背負っている。

 青年の名は、メロヌス――銃の扱いに長けた賞金稼ぎだ。

「ここが「テゾーロ財団」か……」

 テゾーロ財団を起ち上げて世界屈指の実業家として名を上げたギルド・テゾーロは、世界経済新聞社をはじめとした多くの会社・企業とコネを持ち、様々な事業で儲けたその資産は国家予算にも匹敵するという。今なお成長中であり、その圧倒的な財力を狙う者達は日に日に増えているという。

 それならば、賞金稼ぎとして活躍した自分を雇ってくれるだろう。数多くの犯罪者達を討ち取ったスナイパーだ、自分の腕を買ってくれるはずだ。

「アレ? 先客ですか?」

「!」

 その時、童顔で中性的な少年がメロヌスに声を掛けてきた。

 深緑のパーカーと白Tシャツ、ジーパンを着用した薄い茶色の髪の毛の少年。彼もまた、テゾーロ財団に用があるようだ。

「僕はシードです。あなたは?」

「おれはメロヌス……賞金稼ぎをやっていたよ(・・・・・・)

「やっていた?」

「これからテゾーロ財団に就こうかなと思ってな……」

 メロヌスはテゾーロ財団への就職を望んでいるようだ。

 それは恐らく、シードも同様だろう。

「僕もです、少し前まで海軍にいました」

「海軍に?」

 シードはどうやら海軍を抜けてきたらしい。

 絶対的正義を掲げる海軍を抜けたというのだから、相当の不信感を抱いたのだろう。

「じゃあ、お互い同僚ですね!」

「まだトップが来て決めてないし年も違うけど……まァそうだろうな」

 テゾーロ財団に、新たな社員が加わろうとしていた。




肘神さま氏のオリキャラを自分なりにいじって登場させました。
ありがとうございます。

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