ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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ついに迫った第48回衆議院議員総選挙。
皆さん、選挙に行きましょう。


第38話〝ハヤトから見たテゾーロ〟

 ハヤトは海を愛する賞金稼ぎだ。

 この世の全てを手に入れた〝海賊王〟ゴールド・ロジャーが処刑されて以来、新時代――大海賊時代が幕を開けた。世界中の人間が海の覇権を賭けて争うようになる前から、ハヤトは賞金稼ぎとしてこの〝偉大なる航路(グランドライン)〟で海をのさばる海賊共を狩りまくっていた。

 なぜ彼がこの道を歩んだのかは、世界をこの目で見てみたいという野望もあるが、何よりも「海賊に愛する両親を殺されたから」だった。

 ハヤトの父は海軍将校であり、〝偉大なる航路(グランドライン)〟の前半の海で巡回任務をしていた。ハヤトの父は優れた海兵であり、厳しく優しく鍛えて覇気という力をハヤトに教えた。そんなある日、父を逆恨みしていた海賊達が急襲し父と母を殺し、母の遺体を奪っていった。なぜ奪ったのかは不明だが、今思うと臓器売買の為だろうとハヤトは考えている。

 彼はその悲劇以来、誓いを立てた。亡き両親を弔うためにも――おれが愛する海をのさばる全ての海賊を殲滅すると。

 そしてハヤトは海の面汚しである海賊達を血祭りに上げていった。我武者羅にそれを続けていたら、彼はいつの間にか〝海の掃除屋〟と呼ばれ恐れられ海賊達から恐れられる存在となっていた。

 そんなある日、いつも通り海賊狩りに勤しんでたところで、彼はギルド・テゾーロという男に出会った。しかもその出会いは甲板戦という最悪の形だった。

「……」

「まァ、そう落ち込むなって。誰だって敗北のはの字くらい、嫌でも味わう運命だ」

 終始無言の彼を慰めるかのように声をかける、赤いパーカーを着た男。

 ハヤトはこの金持ちの実業家(おとこ)に――ギルド・テゾーロに事実上敗北した。しかもテゾーロは能力者の上、自分(ハヤト)以上の覇気使いだった。これ程の実力差を感じての敗北は、ハヤトは生まれて初めてだった。覇気使いの自分が負けるなんて、考えたことが無かったのだ。

「おれは……まだ弱い」

「そーゆーおれだってまだ弱いと思ってるさ。個人的には腕っ節は海軍大将を目指してるからな」

「お、おれだって……それなりに高みは目指してるっ!!」

「まァまァ、そうかっかするこたァないさ。君のようなまだまだ強くなれる実力者を欲しかったんだ、願ったり叶ったりだよ」

 そう笑いながら、ハヤトに茶を差し出すテゾーロ。

 ハヤトから見たテゾーロは、彼にとっては不思議な男だと考えている。年は大体自分と同じくらいなのにその経営手腕はプロと言っても過言ではなく、若さとは裏腹に金稼ぎには老練な一面があり、組織のトップの割には堅苦しさの無い振る舞いや性格をしている。

 これはハヤトの推測だが、このギルド・テゾーロの組織に属する全ての人間は、金の臭いだけに惹かれているという訳ではない。ギルド・テゾーロという男の力と器に惹かれたのだ。そしてハヤト自身、ギルド・テゾーロ(このおとこ)に惹かれていた。

「〝海の掃除屋〟……少し前に聞いたことがある。たった一人で大海をさすらい、風を操って海賊狩りを行う若き剣士」

 テゾーロはハヤトを見据えながら口を開く。

「風を操る、か。見たところ能力者じゃなさそうだが?」

「扇子だよ。覇気を纏った扇子で突風を起こして、海賊達を吹き飛ばすことができるんだ」

「成程……そういう使い方(・・・・・・・)もあるんだな、覇気ってのは」

 ズズ、と茶を啜るテゾーロ。

 見た目の割に意外と嗜好が渋いな、とハヤトは思った。

「まァ……君みたいな血気盛んっつーか、勢いのある奴は大歓迎だ。それぐらいじゃないとこのテゾーロ財団(そしき)はやっていけねェしな」

「ハァ……」

「今、ちょっといいビジネス思いついてな。シャボンディの〝人間屋(ヒューマンショップ)〟を全力で(・・・)潰しにかかってるんだ」

「なっ!? 〝人間屋(ヒューマンショップ)〟を!!?」

 ハヤトは絶句した。

 〝人間屋(ヒューマンショップ)〟のバックに、どれほどの大物が絡んでいるのかわかってるとは思えない発言だったのだ。

「人身売買は法律違反だ、襟を正して何が悪い?」

「い、いや……悪ィとかは言わないが、世界を相手に喧嘩する気か……!?」

「ハハハ! ビジネスなんざ大抵は喧嘩さ、世界規模の事業をやるなら世界を相手取るのが筋……だろ?」

 満面の笑みでハヤトを見据えるテゾーロ。

「君の活躍には期待しているぞ」

 その時――

「理事長!! 見えました、シャボンディ諸島です!!」

「お、ついに到着か。よし、上陸の準備を急げ!!」

 テゾーロの命令で、船の帆が畳まれ錨を下ろす準備をし始める。

「さて、久しぶりのシャボンディだ……いっちょやりますか。ハヤト、ついて来い」

「……ああ」

 ――どうやらおれは、選択肢を間違えてなかったようだ。

 内心そう安堵しながら、ハヤトは甲板に出た。

 

 

           *

 

 

 新世界。

 島全体がケーキの形をしている、ここ「ホールケーキアイランド」。この島は海賊王ロジャーの存命時から、後の四皇である大海賊〝ビッグ・マム〟ことシャーロット・リンリンが率いるビッグ・マム海賊団が支配している。

 そんなにホールケーキアイランドにそびえる城「ホールケーキ(シャトー)」のある一室で、口元を隠した長身かつ筋肉質の男が書類に目を通していた。

 カウボーイブーツを履いてジャケットを羽織り、左腕の髑髏の入れ墨と肩幅くらいある大きなファーが特徴のこの男の名はシャーロット・カタクリ……ビッグ・マム海賊団の最高幹部にして〝モチモチの実〟の能力者である。

「……」

「くくくく…どうしたカタクリ?」

 カタクリに声を掛ける、キャンディをペロペロと舐める男。

 シャーロット家長男にしてビッグ・マム海賊団の幹部である〝ペロペロの実〟の能力者…シャーロット・ペロスペローである。

「ペロス(にい)……」

「ペロリンペロリン♪ どうした、何を読んでいる?」

「部下に言わせて集めた、この男の資料だ」

 カタクリはペロスペローに書類を渡す。

「〝ギルド・テゾーロ〟……? ああ……♪ 最近色んな有力者と手を組んで金儲けしてる若造か」

「…つい最近だが、あのスライスと手を組んだと聞く」

「何っ!? あの「スタンダード家」の現当主とか!?」

 カタクリの言葉を耳にし、顔色を変えるペロスペロー。

 スタンダード家は、あのテゾーロと手を組んだ石油王・スライスが当主である新世界有数の名門一族。その影響力はかなりのものであり、特に若くしてスタンダード家を継いだ現当主のスライスは、新世界で名を轟かしている多くの実力者から一目置かれている。

「今はこいつは成長中……いずれはおれ達に匹敵する勢力になる」

「我々に匹敵する、ねェ……」

「たかが若造だからって侮ってると、手痛い目に遭って海の藻屑となる――それが〝偉大なる航路(このうみ)〟の常識。このギルド・テゾーロって奴は、おれ達より弱いのは当然だが、この勢いのまま成長すれば話は別だ……」

「それぐらいの潜在能力を秘めている、ということか? くくくく……確かにモルガンズやギバーソン、ウミットにまでコネがあるとなりゃ、近い内に闇の世界の帝王達の仲間入りかもな。ママには一応報告しておくぞ、ペロリン♪」

 ペロスペローはキャンディを舐めながら、その場を後にした。

「……ギルド・テゾーロ……」

 カタクリは、いずれ巨大な勢力となるであろう男の名を呟くのだった。




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あと、これからもオリキャラ出しますよ。

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