ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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久しぶりの投稿ですね。お待たせしました。
オリキャラ募集は延期したので、どんどん送ってください。


第40話〝五老星〟

 2日後。

 世界を一周する大陸〝赤い土の大陸(レッドライン)〟にある、世界政府の首都「聖地マリージョア」。

 スーツ姿のテゾーロはハヤトとメロヌスと共に、マリージョアで勤務している海軍将校に案内され廊下を歩いている。

「これがマリージョアか……」

「初めて来たな……」

「おれもそうさ」

 そんな話をしつつ、、テゾーロは世界政府からの令状をチラリと見る。

 用件は思いつく限りでは、オハラへのバスタコールの案件だろう。

 バスターコールの折、サカズキは学者ではない民間人を乗せた避難船を爆破・轟沈させた。サカズキにとってオハラが滅びるということは「学者だけではなく、オハラに住む人全員を抹殺する」という意味という解釈だったのだろう。テゾーロはそれを見越して、政府上層部及び海軍上層部に「対象外の民間人を巻き込んだら制裁をする」と通告したのだ。しかし、サカズキは…海軍と政府は通告を無視した。テゾーロ自身は海軍と政府のやり方に口出しする気は無いが、通告を無視したのは事実であるため経済制裁を実行した。

 その上、あの件にて世界政府上層部高官達がテゾーロから提供された軍資金の一部を横領をしていた問題が判明し、それにCP9長官であるスパンダインが関わっていた事も判明した。こんな国際的大問題を引き起こしたからには、政府中枢も重い腰を上げたということだろう。

 ましてや政府や海軍とパイプがあるとはいえ、民間人に制裁された上に不祥事も発覚したら面子も立たないだろう。

「ここです」

 唐突に止まったのは、見上げる程に大きな扉の前。

「この「権力の間」の奥に、五老星がいらっしゃいます。お入り下さい」

 唐突に止まったのは、荘厳な両開きの扉。

 この先に、世界政府の行く末を担う世界政府最高権力(ごろうせい)がいるのだ。

「……おれだけか?」

「はっ、お二方は別室でお待ちしていただきます」

 テゾーロは欠伸をすると、スカーフを整えて襟を正す。

「じゃあ、行ってくらァ」

 テゾーロは扉を開け、五老星の部屋へと入っていった。

 

 

 広く天井の高い、丸い荘厳な大部屋。

 世界を統べる五人の老人……五老星の鋭い視線が、テゾーロを捉える。

「来たか……お前がギルド・テゾーロだな?」

 長髪で長いひげを蓄えた老人が尋ねる。

「はい…と言っても、私のことは大方把握していると思いますが」

 テゾーロは物腰の柔らかい対応をするが、内心緊張していた。

 相手は本物の五老星。その上、彼らは実力が一切わからない。生前はネットサーフィンで様々な情報を得ていたが、圧倒的強者であるとか情報通なだけだとかという推測のみで、実際戦ったらどうなるやら。

(それ以前にここで騒動起こしたら、それこそヤバイけどな…)

 すると、五老星の一人――頭に痣のある白い口ひげを蓄えた老人が告げる。

「我々は別にお前さんと事を構える気は無い――だがお前さんのことだ、オハラの件が気掛かりだろう?」

 どうやら五老星は、オハラの件だけでテゾーロを呼んだわけではないようだ。そしてテゾーロが何を物申したいのかも見抜いていたようだ。

「さすが五老星……全てお見通しですか」

 テゾーロは思わず笑みを零す。

 そうとわかれば、遠回しに言う必要も無い。

「私は海軍と政府のやり方に一々口出しをする気はないですが、筋の通らない話は嫌いです。罪の無い民間人を巻き添えにしてまでオハラを消す必要はあったのか……その点だけでも説明してくれませんか?」

 そう言って、テゾーロは〝覇王色〟の覇気を放つ。

 テゾーロが〝覇王色〟の持ち主であったのは想定外だったのか、五老星は目を見開く。しかし反応はそれだけで、〝覇王色〟による威圧を前にしても一切動じない五老星にテゾーロは感心した。

(さすが世界政府の頂点に立ってる権力者……この程度じゃあ動じないか)

 すると金髪と金色のひげの老人が口を開いた。

「なぜオハラを消したか、か……それはオハラの学者達が〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟の解読を行っていたからだ」

 五老星曰く、世界政府は「〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟は古代兵器の復活を招く」として解読はおろか探索すら法で固く禁じている。

 古代兵器とはプルトン・ポセイドン・ウラヌスの三つの兵器のことであり、その強大な力は世界を滅ぼすほどである。そしてその在処や詳細は〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟に記されているという。

 なお、テゾーロが経済制裁したきっかけとなったオハラの民間人の皆殺しは、五老星にも言い分がある。五老星はあくまでオハラの学者達を処罰するだけで民間人は対象外だったのだ。サカズキの避難船轟沈は五老星としても想定外だったという。しかしサカズキの「学者が乗船している危険があり、万が一乗っていれば作戦の全てが無意味となる」という言葉も一理あるので、彼自身の処罰は政府が決めるのではなく海軍の総大将たる海軍元帥(コング)に一任したという。

「……これで納得したか?」

「……まァ、あなた方にも言い分があって避難船の件は想定外だったってのはよくわかりました」

「……そうか」

(本当は〝空白の100年〟の真実が露見することだろうけどな)

 テゾーロ自身、生前の記憶があるので「ONE PIECE」におけるオハラ滅亡の真実は知っている。

 オハラ滅亡の真実は、考古学の権威であったクローバー博士が五老星に報告した「〝歴史の本文(ポーネグリフ)〟と〝空白の100年〟に関する仮説」が政府の核心に迫りすぎていたからだ。

もっとも、テゾーロは自身の野望を叶えたいから興味などこれっぽっちも無いが。

「……それで、私をここまでお呼びした理由は?」

「お前にある依頼を頼みたい」

 刀の手入れをしていた、眼鏡を掛けた白い着物姿の老人がそう告げる。

 それに続き、黒い帽子を被った左目付近に傷のある巻き髪の老人が口を開く。

「〝東の海(イーストブルー)〟に「テキーラウルフ」という国がある」

「そこでは700年前から、島と島をつなぐ巨大な橋を建設しているのだ」

 テキーラウルフ。

 それは、ニコ・ロビンがシャボンディ諸島編にて王下七武海兼革命軍幹部である〝暴君〟バーソロミュー・くまによって飛ばされた場所。建設をしている人は世界政府の加入を拒んだ者達や犯罪者達で、過酷な労働を強いられている。しかも橋を建設するように命令したのは天竜人である。

「ここまで話せば、我々がお前さんに何を言いたいのかわかるだろう?」

 テゾーロは五老星の依頼の意味を察し、顔を引きつらせた。

「それって……私にその橋を完成させろ、と? あの……お断りしていいですか」

「却下だ」

 悪い予感が当たってしまう。

 まさかテキーラウルフのあの巨大な橋の工事をしろと命ぜられるとは。

「時間はいくら掛かっても構わん」

「橋が完成した暁には、それ相応の報酬を与えよう」

 テゾーロは聞き逃してはいけない言葉を聞いた。

 テキーラウルフの橋が完成次第、自分の望みを叶える。これほどのビッグチャンスが来るのは人生で一度あるかどうかだ。

これに食らいつかない訳がない。

「その仕事、ぜひお任せを」

「そう言ってくれて何よりだ」

 テゾーロの回答にご満悦の五老星。

 元はと言えば天竜人の命令で始まった事業。いつまでもやっているのは政府としても色々と面倒だったので、これで悩みの種が少し減ったと考えれば気が楽になれるだろう。

「我々からの話は以上だ」

「他に何か聞きたいことはあるか?」

 聞きたいこと。

 テゾーロはそう言われ、ある一件(・・・・)を追及することにした。

「一連の不正の件、どうなさいましたか」

「ああ……例の横領事件か」

 五老星は溜め息を吐く。

 テゾーロが提供した軍資金を一部横領していたという大汚職事件。ここで襟を正さないとさらにキツイ制裁措置を執られてしまうと判断した政府中枢は、密かに逮捕を行ったという。

 当然、この事件に関わっていたCP9長官のスパンダインも拘束された。しかし厄介なことに彼の後任がいないことが発覚し、止むを得ず釈放して謹慎処分を下したという。

(――まァ、政府としては一応頑張った方か)

 世界政府のことだから手を抜いていると思っていたテゾーロは、少し感心した。

「然るべき罰を与えてくださり感謝しております。私は世界の為に身を削って提供しているので……」

「そうわかってくれるとありがたい」

「全く、とんだ醜態を晒しおって……」

 五老星の愚痴に、テゾーロは苦笑いするばかり。

 どの世界でも、老人は労るべきである。

「では、用件は済んだので私はここで失礼します」

「うむ、大儀であった」

「我々はお前さんに期待している」

「今後も世界の秩序と安寧、そして発展の為に力を尽くしてくれることを願う」

 こうして、世界政府の頂点に君臨する五老星との会談は終わった。

 そしてテゾーロは、緊張で疲れたのか若干やつれた顔でマリージョアを後にしたという。


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