ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
こうして転生した青年――もとい、ギルド・テゾーロ。
今の彼は、大体16歳頃……俗に言うストリートチルドレンといったところだ。
まず彼が真っ先にしたいのは、空腹を満たすこと。小屋を出て、ポケットの中の財布を見てみたのだが……。
「所持金、112ベリー……」
財布の中身を見て、放心状態になる。
「
(餓死するぞこれェェェェェェッ!!)
現実世界なら、う
では、どうするべきか。
その答えは簡単だ。黄金を生み出せばいいのだ。
恐らく悪魔の実の能力は、能力者自身の意思で発動するのだろう。そう思ったテゾーロは意識を右手の掌に集中させる。
すると次の瞬間――
バチバチッ……ドバッ!!
「うおっ!!」
静電気のようなモノが走り、掌から金が触手のように出てきた。
いきなり出てきたので、慌てて解除すると出て来た金は何とも言えない塊になって床に落ちた。
「……すごいな」
〝ゴルゴルの実〟の能力を目の当たりにし、驚愕するテゾーロ。
しかし、ふとここで気づいた。金の価値は、どうすれば利用することができるのかを。
わかりやすいのは、やはり延べ棒だろう。現実世界で金は大体1g4800~4900円ぐらいとされている。この世界でも適用ならば、1g4800~4900ベリーとなり、1kgでかなりの額になる。
(ふむ……金は大丈夫そうだ、後で加工して延べ棒にすればいいだろうな。でも……問題は換金の方だよな)
そう、問題は換金だ。
換金所ぐらいはあるだろうが、金塊をそのまま受け取ってもらえるのか――それよりも、そもそもセキュリティは大丈夫なのだろうか?
現実世界ならば、管理体制がしっかりなされ職員などのモラルも万全だろうが……この世界は現実世界とは少し違い汚職や賄賂とか案外平気に行われている。どこか信用できない。
(備えてないから嬉しくねェ!!)
しかし落ち込んだところでは何も始まらない。どの道、やらねばならないのだ。
「と、とりあえず延べ棒にして換金だな……」
台形で長いあの金の延べ棒をイメージし、右手の掌に意識を集中させる。
すると、再びバチバチと音が鳴り、掌から本当に思った通りの金の延べ棒が出てきた。
「しっかしこうもあっさり作れるとは思わなかったな……」
手に取ってみると、確かな重みがあるのがわかる。とりあえず資金は手に入れた――というより自分で作った――ので、後は換金所に行って札束と交換すればいい。
「よし、延べ棒が一つでもあればそれなりの金になるはずだ」
その時だった。
「おい、てめェ……いいモン持ってんじゃねェか……!」
「うっひょ~~、金塊かァ!! ここいらにゃあ生ゴミ漁っているガキしかいねェと思ってたが、まさか金塊を持ってる奴がいるとはなァ!!」
「おれ達に寄越せ!! 命が惜しけりゃあな!!」
(典型的なのが来た!!)
どこからどう見ても悪そうな連中がゾロゾロとやってくる。
そのほとんどがモヒカンだったりアフロだったり…なぜか世紀末な連中ばかりだ。
(平和的な解決は……無理だろうなァ~……)
明らかに
「なら……戦うしかないか」
「何をゴチャゴチャ言ってやがる?」
「構わねェ、やっちまえ!!」
『うおォォ!!』
武器を手にし襲い掛かる悪党共。
幸い銃火器は持っていないようだ。
(そういえば……おれ神様に頼んで〝
覇気は、全世界の全ての人間に潜在する「意志の力」であり、〝
(こんな感じか?)
テゾーロは深呼吸をした後、目を見開いて睨んだ。
すると突風のような何かが放たれ、次々に悪党が倒れていく。それはまるで、眼前に君臨する王者にひれ伏すかのようだ。
「あっちゃ~~……こりゃいけねェや」
〝覇王色〟を放った後、テゾーロは頭を掻いて困ったような表情をする。
なぜなら――
「おい、大丈夫かあんた!?」
「何だ、何が起こったんだ!?」
(一般人も気絶させちまった……)
覇気という力は、生まれつき持っていたり戦いの中で覚醒するケースもあるが、基本的には長期の鍛錬により引き出す。
だが、覇王色の覇気だけは別だ。自らの意思で意図的に鍛え上げる事は不可能で、本人の心身の成長でのみ強化されるため、最初の内は敵味方関係なく威圧してしまうという欠点がある。
テゾーロは「今は濫発を控えよう」と肝に銘じ、その場を去ろうとするが…。
「な、何したか知らねェが、金を寄越せ!!」
「うわ、執念って怖いわァ……」
〝覇王色〟の覇気を耐えたのは褒めたいが、金への執念の強さにドン引きするテゾーロ。
原作の方のテゾーロだったら、「金が無ければ何もできない」と嘲笑うのだろうか。
「死ねェェェェェェ!!」
手にした斧を振りかざし、襲いかかってきた。しかしテゾーロは冷静に、右手の拳を握り締めて意識を集中させる。
すると腕から黄金が生み出され、右腕をコーティングするかのように覆われる。
「〝
黄金で覆った拳を思いっ切り振るい、殴りつける。超硬度の黄金の拳は斧を砕き、悪党をそのまま殴り飛ばした。
黄金の拳はどうやら顎に直撃したらしく、殴られた悪党はそのまま気を失った。
「……何ちゅー威力だ……」
*
「あ~、腹いっぱいだ」
満足そうな笑みでカルボナーラを平らげたテゾーロ。
手拭いで手を拭きながら、札束を数える。
「延べ棒一つで500万ベリー……ハハハ、ゴルゴルの能力は実に便利だな」
先程換金所へ向かって例の延べ棒を出したところ、500万ベリーで取引された。
やはりいつの世、どの世界でも金の価値は高いようだ。
「店員さん、ごちそうさん。釣りは結構だ」
テゾーロは1万ベリー札を出して店を後にする。
「さてと、これからどうするか……」
原作開始は、自分が39歳の時。
現在16歳の自分とでは、23年の空白がある。それをどうするかを、考えねばならない。
自らの身体と能力を鍛え上げるのは勿論、この世界に革命をもたらすために様々な力を得て様々な計画を実行するべきだ。そして後に〝黄金帝〟の異名を持つテゾーロにふさわしい立場が欲しいものだ。
「となると……やはり国を作るしかないか」
国を成立させるためには、「主権」「領土」「国民」の三つが必要だ。
そしてこの世界では、何よりも世界政府に莫大な利益をもたらすモノが恐らく一番求められるだろう。
(ってなると、やっぱり金だよな~……)
軍事費や研究費、運営費、維持費、報酬など……政府はあらゆる面で金を欲しがるだろう。
そこに付け込めば、うまく行くのかもしれない。
そんなことを考えていると…。
「あ……」
テゾーロの足が止まる。
目の前の檻に、彼女がいたからだ。
「ステラ……」
鎖に繋がれたステラが、空を見上げていた。
こっからもうすでに変わりますね。
ステラ生存ルートをお楽しみください。