ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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やっと更新ですね。
お待たせしました。

オリキャラがどんどん増えますが、ご了承ください。


第50話〝赤の兄弟〟

 闘技場での観戦を終えたスライスとハヤトは、近くのホテルで宿泊の手続きを取ってから捜査を続行した。

 次に調べるのは、地下闘技場周辺だ。

「……どう思う?」

「どう思うって……」

「おれの作戦なら、奴を潰すには十分だろ?」

「それは……何とも言えない……」

 スライスの言う作戦の内容は、こうだ。

 タタラを尾行し、彼のような強者を全員丸め込んで反乱を起こし、フォード達を動かす。それと同時にモモンガら海軍が介入し、その場にいる犯罪者の捕縛と共に地下闘技場に関する数々の証拠を集める。それらの中に一つでも違法性があれば裁判を起こしてフォードを起訴し、地下闘技場の運営に関わった人物を根こそぎ罰する。

 つまり、違法行為を証明する証拠が一つでも見つかればいいという事である。

「そう易々と尻尾を出すとは思えないが……それに天竜人がバックにいるんだろう? もみ消すように命令するかもしれないじゃないか」

「成程、否定はできないな。だが、あのクズ共がフォードを庇うと思うか? 自分の身に危険が及んだら尻尾巻いて逃げ出すだろうよ」

「……」

「……まァ、そんなことは後回し。捜査を続けよう」

「……わかった」

 

 

 1時間後。

 薄暗く広い廊下。どこかジメジメした居心地の良くない空間を、二人で歩く。

 ここは地下闘技場の真下にある、関係者以外は立ち入り禁止の区域だ。

「立ち入り禁止区域まで入っていいのか?」

「バレたらおれの覇気で気絶させるさ」

 そんな会話をしながら、スライスとハヤトは〝見聞色〟の覇気を用いて気配を探った。

 しかし、暫くしてから困惑した様子で互いに見つめた。

「おい……なんか、妙じゃねェか?」

「確かに……なぜ子供が? それも男の気配……少年か?」

 そう…地下闘技場の真下とはいえ、立ち入り禁止の区域に子供の気配がしたのだ。

「……裏の界隈からの話は耳にしているが、ここまで多くの少年がいるという話は聞いてないぞ……」

「じゃあ、一体……?」

 その時だった。

 

 チャキッ……

 

「?」

「っ!!」

 スライスの首元に、刃が突きつけられていた。

 それを見たハヤトは瞬時に大太刀を抜き、構える。

「……あんた、何しに来た」

「フッ……その前にてめェが先に名乗るんだな。丸腰の他人様に光り物突きつけといてそりゃねェだろ」

 スライスに刃を突きつけていたのは、一人の少年だった。

 白い髪の毛に鋭い目、赤のマント、身体に刻まれた複数の刀傷……この闘技場で戦っている剣闘士のようだ。

 しかし少年は出血しており、まともな治療もされていない。

「んで……名前は?」

「……おれはオルタ……シュート・オルタだ」

「シュート・オルタか……おれはスタンダード・スライスという。そっちはハヤトだ」

「いきなり抜いて悪かった……こちらも色々と嗅ぎ回っていたんだ」

 一言謝罪しつつ、大太刀を鞘に収めるハヤト。それを見たオルタも、手にしていたサーベルを鞘に収めた。

「こちらもすまない、どうやら敵ではないようだな」

「わかってくれて何よりだ」

 すると、遠くから人の声が聞こえてきた。

 複数の男性らしく、声は段々近づいてきている。

「! ここはマズイ、場所を変えるから着いてきてほしい」

「「……」」

 

 

           *

 

 

 オルタによってとある場所へと案内されたスライスとハヤトは、驚愕した。

「っ……!」

「こいつは……!!」

 二人の視線の先には、100人はいるであろう少年達だった。

 包帯を巻いてたり血を流した跡があることから、地下闘技場で戦っているという事実が容易に窺える。

「こんなにも…これは何かの組織なのか?」

「おれ達は「赤の兄弟」……ここにいる皆が、同じ境遇で闘技場(このばしょ)にいる」

 地下闘技場の過酷な訓練や大会に生き残るため、お互いに協力したり訓練を手伝ったり理不尽な事に立ち向かったりして生き延びようと集まったのが、「赤の兄弟」という組織である。

 彼らは義兄弟の想いや誓いをして、その証として赤い衣類を身に着けるようになったという。

「〝人間屋(ヒューマンショップ)〟に売られて奴隷にされたり、犯罪組織に人質にされてここへ投げ込まれたりしたのが揃ってんだ」

「成程……随分とまァ大変な経歴で」

「あんたらは、何か目的でも?」

「タタラって奴に、ちょっとな……」

「……あの男達を倒すのか」

「「「!!」」」

 

 カッ……カッ……カッ……

 

 杖を突く音を響かせながらゆっくりと近づく、一人の男。

 先程まで闘技場で凄まじい力を見せつけた、タタラだった。どうやら彼も、この「赤の兄弟」と何らかの関係があるようだ。

「あんた…」

「この子達とは長い付き合いで……互いに協力し合う間柄なんだ。それで、この地獄で苦しむ者達を解放するために、あの男達を倒す気で?」

 タタラの問いに、スライスは頭を掻きながら答えた。

「ん~……何つーか……ぶっちゃけた話、フォードの野郎を野放しにする訳にはいかねェから潰しに来ただけだ。お前達のことは知らなかったし、これからどう動こうかすら悩んでる始末だ」

「だが、あの男達を倒すことについては変わりないのだろう? ならば我々と手を組み、反乱を起こすのが理想的だ」

 スライスは考える。

 自分とハヤト以外に、あのフォードを倒そうとする輩は思いの外多くいた。この「赤の兄弟」も数でいえば100人は超えている上、地下闘技場最強の男も加わるとすれば、手を組んだ方がいいだろう。

(後は……テゾーロか。ハヤトがあいつの部下である以上、放っておくわけにもいかないはず――すぐにでも来るだろうな)

「……スライス、どうなんだ」

「……そうだな、わかった。手を組もう……だが少し待ってほしい。知り合いが助太刀に来るだろうから」

 申し出を承諾しつつも、すぐに行動しないよう告げるスライス。

 その時だった。

 

 ……ルプル……ルプルプル……

 

「? 何の音だ?」

 ハヤトが耳を澄ますと何か聞こえる。

 

 プルプルプルプル……プルプルプルプル……

 

「この音は……電伝虫?」

「あ! あァァァ!!」

 電伝虫の音であると知った瞬間、慌てるスライス。

 実はスライスは、部下のコルトに「マリンフォードに行ってくる、すぐ戻る」と言い残して家を出たのだ。

 では、なぜここまで慌てるのかと言うと…一応マリンフォードに行ったのは事実ではあるのだが、何とその足でロワイヤル島へと向かったのだ。しかも「すぐ戻る」とうっかり言ってしまっている。

 要はついていたウソがバレたのである。

「ヤッベ……」

「とりあえず、出てみるか?」

「ゲッ!! オ、オルタ君……これ無かったことにしないか?」

「あんたが嫌なら、おれが代わりに出る」

「あ、ちょっま――」

 

 ガチャリ

 

《何してんですかスライス様ーーーーーーっ!!!》

「うーっ…!!」

 キーンと辺りに響く声。

 その声に思わず耳を塞ぐ一同。

《私を置いてまたほっつき歩いて!! スタンダード家の当主としての自覚を持ってください!! それよりも無事ですか!? ケガしてないですか!? 今どこにいらっしゃるんですかっ!?》

「……あんた、そんな重要な立場なのか………!?」

《? その声は……?》

「………おれはハヤトだ。今、そのスライスと行動を共にしている」

《――! まさか、〝海の掃除屋〟ですか? これはどうも初めまして………じゃなくて!! まさかとは思いますが、スライス様に手を出してないでしょうね!?》

「とりあえず言わせろ。……あんたは母親か何かか?」

 

 

           *

 

 

 

 同時刻、とある海域。

「……」

「……」

 クザンの軍艦の甲板で、イスに座りながら男二人がいがみ合っていた。

 一人は、ギルド・テゾーロ。強大な民間団体「テゾーロ財団」の理事長を務める若い実業家で、たった数年で世界有数の富豪に成長した末恐ろしい青年だ。

 そしてもう一人は、サイ。世界政府の諜報機関「サイファーポール」の諜報員にしてテゾーロ財団の一員であり、テゾーロ財団とサイファーポールのパイプ役を担う、双方にとっても重要な人物だ。

 そんな彼らがいがみ合う原因は…。

「……ここだっ!」

 

 パチッ……パチッ、パチッ、パチッ、パチッ……

 

「そう来ましたか、なら私はここです」

 

 パチッ……パチッ、パチッ、パチッ、パチッ、パチッ、パチッ、パチッ……

 

「私の勝ちですね」

「だーっ!! チキショー、角を三つも取ったのに~っ!!」

 何と、オセロだった。

 実はこのオセロ――世界的には〝リバーシ〟という名称――というボードゲームは、シンプルなルールながら「覚えるのに1分、極めるのは一生」と言われる程に奥深い戦略性が求められている。ただ実戦を重ねるだけではなく、囲碁や将棋と同じように定石や手筋があるのだ。

 それを理解しているテゾーロだが、切れ者の諜報員相手ではキツかったようだ。

「あー、悔しい……」

「これで4勝3敗…私がリードしてますね」

「あ~……何でかねェ……」

「頭の出来が違うんじゃないんですか?」

「それ、ホント腹立つんだけど」

 覇気を放ちながらサイを睨むテゾーロ。

 サイはそれを躱すかのように涼やかな目を向ける。

 すると、そこへクザンが現れる。

「あららら……随分盛り上がってんじゃないの」

「おや、これはクザン中将。 何か用で?」

「あァ、実はコングさんから御達しが来てな……」

「御達し?」

「フォードの逮捕を許可する」ってよ」

「「!?」」

 クザンの言葉に、驚愕する二人。

 何と海軍がフォードの逮捕に動いたという。

「理由はわからねェが……テゾーロ、お前から聞いたマリージョアでの天竜人同士の抗争の件に理由があると思う。世界貴族……天竜人は絶対的な存在だ、万が一の事が起きれば政府の威信にも関わる。天竜人と癒着しているフォードが暗躍してるってことを知ったなら尚更だ」

 なぜコングがそう命じたのか……理由はともあれ、これでテゾーロらが口封じに罰される心配は無くなった。

 あとはフォードの逮捕と地下闘技場の摘発のみだ。

「まァ、おれもその分気も楽だ。お互い頑張ろうや」

「……ええ」

 テゾーロ、ロワイヤル島到着まで、残り1日。




一応テゾーロVSフォードの戦いを予定しています。

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