ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
感想においてヒューマンショップを潰す話についての指摘がありましたが、地下闘技場摘発編が終了してから本格的に執筆します。
ご迷惑をおかけして申し訳ありません、ご了承を。
日が暮れ、空は黒に染まるテキーラウルフ。
雪が降り続く中でも、橋の工事は着々と進む。
「今日は綿雪か……」
外で空から降ってくる雪を眺めるシード。
ここテキーラウルフは、一年中ずっと雪が降っている。しかも面白いことに、日によって降ってくる雪の性質が違う。ある時は粉雪、またある時は灰雪、またある時はべた雪…様々な雪がランダムに降ってくるのだ。
除雪作業では一苦労するが積もった雪を溶かして水にすることができるので、幸いにも貯水では困らない。
「テゾーロさん、今頃何してるかなァ…」
急用でテゾーロ達が不在の今、テキーラウルフはシード・メロヌス・ステラの3人で指揮をとっている。
一応ウォーターセブンの方はトムズワーカーズに一任しているため、海列車の件は問題無いだろう。ジャヤの方も、海軍本部の第8支部…通称「海軍G-8支部」が警備を担当してくれたおかげで治安も良好化し物流も安定している。暫くの間、安定期としてテゾーロ財団は財を蓄え続けるだろう。
すると――
「ここにいたのね、シード君」
「! ステラさん?」
シードの元に、コートを着用したステラが向かう。
その手にはマグカップが。
「はい、ココア」
「あ、ありがとうございます……」
ココアを渡され、それをゆっくり飲むシード。
「テゾーロもきっと喜ぶわ、自分が不在の間でもこんなにも頑張ってくれたんだもの」
テゾーロが担当して以来、テキーラウルフの工事は急速に進行している。周辺の島々の失業者や貧困者が集まり、それが労働力としてしっかり還元されているからだ。その噂を聞きつけてか、何と先日、世界政府加盟国のゴア王国が「人道的支援」として多くの人員を派遣してくれたのだ。
ゴア王国は「〝
「しかしステラさん……高望みしない方がよろしいですよ。あの国は性根が腐ってますから」
ステラは無言で頷く。
確かにゴア王国はテゾーロ財団を支援したが、その理由は必ずしも〝いい方〟とは限らない。多くの人員を派遣してくれたのは、スラム街で暮らす人々が邪魔であったからとも解釈できるのだ。そして国家が民間団体を支援するのは、その裏で自国のイメージを良くするためだけである可能性もある。
何でもかんでも鵜呑みにしてはならないのだ。
(まァ、これで良くか悪くかテゾーロ財団の名が更に広まるわけですね)
さて、一方のメロヌスは仮設テントで新聞を読んでいた。
「へェ……初めて聞く海賊だな……」
彼が注目したのは、「次々と撃沈!! 頭角を現すルーキー〝赤髪〟」という記事だった。
記事の内容によると、〝
「現在の年齢は19歳……マジか、理事長より若いのか? 相当強いなこいつ……おれでも勝てるか怪しいな……」
そんなことをぼやきながら新聞をめくると…。
「「目撃情報相次ぐ! 〝オハラの悪魔〟、未だ逃亡中」……?」
そこには、ニコ・ロビンという少女の手配書と政府が公表している情報が記されていた。
彼女は海軍の軍艦6隻を沈めた凶悪犯であるらしく、7900万ベリーという破格の懸賞金をかけて世界政府が全力で捜索しているようだが……。
「いやいやいや、絶対あり得ねェって…軍艦6隻も沈めといて7900万ベリーはおかしいだろ」
懸賞金は、高額の賞金首を倒すことをはじめ、世界政府への敵対行為を行ったり民間人に多大な被害をもたらすことで額が上がる。しかし政府にとって不都合な人物の場合だと、老若男女問わず高額の賞金首となるケースがある。
メロヌスは、ニコ・ロビンがそうではないかと読んだのだ。
「軍艦6隻を沈めたのはウソだろうが……何をどうすればここまでの額になるんだか」
最近の世情に思わず悩むメロヌスだった。
*
翌日。
「どうしよう……」
「何か困ってんのか? 理事長さん」
潮風を受けるテゾーロに、ジンが問う。
「いや……実はな、〝
〝
口では後回しにしてたというが、どう考えても忘れていたようにしか聞こえないのは言うまでもない。
(しかし……今思うと、「〝
テゾーロとしては計画は同時進行しておけばよかっただろうが、それが功を奏するとは言い切れない。
天竜人は多種多様かつ多くの奴隷を所有する。奴隷の所有は一種のステータスらしく、どれだけ珍しく多いかでその天竜人の一家の財力・権力がわかるという。気に入った奴隷は傍に置いて遊び、飽きたら適当に労働させる非道な彼らにも、ランキングがあるようだ。
しかしテゾーロの計画が実行された場合、奴隷を有する多くの天竜人を敵に回すこととなる。後回しにした――というより忘れてたに近い――のは、もしかしたら正解だったのかもしれない。
(だが、早めにしないと面倒だよな……)
人身売買で得た利益は、果たしてどこへ行くのか。
原作ではドフラミンゴが経営していたため、恐らく彼の元へ流れていっただろう。だが、ドフラミンゴは今〝
その人物が不明である以上、迂闊に手を出すのもいかがなものか。
(下手こいて足すくわれるわけにはいかんしなァ……)
その時だった。
「おォい、見えたぞ」
「!」
クザンの声が聞こえ、彼の元へ駆け寄る。
するとクザンは、ある島を指差した。
「あそこに見える島が、目的地のロワイヤル島だ」
「アレが…ロワイヤル島…」
見えてきたロワイヤル島に視線を向けるテゾーロ。
「――何つーか、普通って言えば普通の賑やかそうな島だな……」
「ジンさん、見た目で判断してはいけませんよ。私が得た情報だと、あの島は無法者の巣窟らしいですし……」
そう…表面的には賑やかな街が広がる島だが、実際は「闇」が深い。上っ面で判断するのはいけないのだ。
「ん? クザン中将、あの軍艦は……」
「!! あらら……どうやら先客がいたようだなこりゃ」
テゾーロとクザンが発見したのは、海軍の軍艦。
そう、テゾーロらより先に島へ踏み込んだスライスが乗っていたモモンガの軍艦だ。
「モモンガの奴、あいつに付き合わされて大変だな……」
「何か言いました?」
「いや、何でもねェ……」
クザンの軍艦は、丁度モモンガの軍艦の隣に停泊する。ついに「本隊」がロワイヤル島に到達したのだ。
「……後はお前らの好きにしろ。タイミングを見計らってこっちも動いておくから」
「――ご協力感謝します、クザン中将」
テゾーロはクザンに礼を告げ、サイとジンを連れて軍艦を降りた。
(こりゃ少しの間、世界が荒れそうだな……)
クザンはフォードを逮捕した際の今後の動きを予想しながら、アイマスクをして寝るのだった。