ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第57話〝作戦終了〟

 フォードとの激闘に勝利したテゾーロは、倒れたまま動かないでいた。

「テゾーロ、大丈夫か!?」

「テゾーロ!!」

 スライス達は、フォードとの戦闘で傷だらけになったテゾーロの元へ駆けつける。

 テゾーロは死んではいないが、激しい戦闘で蓄積されたダメージが相当響いているのか、中々起き上がれないでいた。

「骨が何本かイッちまってるな…応急処置しようにも、満足に体動かせねェや――参った」

 呆れた笑みを浮かべるテゾーロ。

 何度も衝撃波を打ち込まれ、覇気で殴られ、よく生きていられるものである。

「さて…フォードの野郎を潰した以上、残りは烏合の衆。どう料理するか…」

 スライスは残党達に視線を向ける。

 空気も凍てつき、もはや形勢は不利だとわかっていながら…彼らは未だ虚勢を張った。

「てっ、てめェら……こんなマネして、ただで済むと思ってんのか!? おれ達のバックに誰がいると思ってんだ……!!」

「クク……さァな、検討もつかねェ」

 下らぬ戯言、虚勢に呆れながら言葉を促す。

 だが彼らの儚い虚勢と淡い期待は、すぐに消え失せた。

 舞台に次々と立ち入る、武装した乱入者達――それは、どこかで見覚えのある衣装の者達だった。

「おめェ達の後ろに、誰がいるかだってェ~……?」

 新たな声と、新たに突きつけられた光り輝くモノと嫌という程に感じる冷たい気。

 男達の動きを止めていたのは、2人の海兵の姿だった。

「それはわっしら、海軍だよォ~……!!」

「あららら……おっかない人達がついてるんだねェ」

 ボルサリーノとクザンが、海兵達を連れて乗り込んだ。

 その後、スライスに無理やり付き合わされたモモンガも現れた。

「全員、大人しくしろ!! この場は我々海軍本部が制圧した!!!」

 モモンガが声高に告げる。

「ヤベェ!! 海軍本部の将校達だ!!」

「ずらかれェ!!」

 海軍本部の部隊が乗り込み、大混乱になる。

 一刻も早く逃げ延びるべく、一斉に出入口へ向かうが……。

「全く……暴れすぎですよ皆さん、少しくらいは残しておかないと。我々は彼らの供述を基に書類書かなきゃいけないんですよ?」

 その声と共に、帽子を被り直しながらスーツ姿の集団を引き連れて男性が倒れているフォードのそばに現れた。

 サイだ。

「……ま、まさか……お前らは――サイファーポール!?」

「ウソだろ、政府の諜報機関もか!?」

「いかにも。暫く様子を見させてもらい、包囲網を敷いておきました――全員、ここまでです」

 サイは冷酷な笑みを浮かべ、まだ残っていた残党達を見下す。

 フォードを倒したテゾーロとその部下、スタンダード・スライス、中将二名と准将一名が指揮する海軍の部隊、サイファーポール……これ程までに圧倒的な戦力の前では逃げ切ることは不可能だと悟ったのか、残党達は大人しく手をあげた。

 これで完全に、この舞台は幕を下ろし「地下闘技場摘発作戦」は完遂した。

 地下闘技場鎮圧の瞬間…会場にいた客達は皆捕縛され、海軍の援軍が更に来て騒ぎが一層大きく響き渡る。

 だが、闘技場の観客席で一連の出来事を見届けた青年の視線が、一行へ向いていたことに誰も気づけなかった。

 

 

           *

 

 

 アルベルト・フォードの逮捕。

 それは瞬く間に様々な影響を孕んで世界を駆け巡り、表の人間も裏の人間も混乱した。

 彼と取引をして武器や船を手に入れていた諸国は、事実上内乱や戦争が続行できなくなったので和解や降伏といった形で終結していった。海賊をはじめとした反社会的勢力は取引の破綻を嘆くばかりだった。

 

 

           *

 

 

 新世界。

 とある海域を進む、三日月型の白いひげと骨十字が描かれた海賊旗を掲げる鯨を象った船首の海賊船。

 海賊王ゴール・D・ロジャーと唯一互角に渡り合った、世界最強の海賊――〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートが率いる「白ひげ海賊団」は、海の王者たるロジャーの死後、世界中の海賊達の頂点に君臨して自由に航海をしていた。

 そんな中、あるニュースが飛び込んできた。

「グララララ……随分と威勢のいいガキがいやがる」

 愉快そうに笑いながら新聞を読む白ひげ。金髪を生やし帽子を被っているその姿は、まだまだ全盛期ならではの若さを感じる。

 そんな彼が読んでいたのは、号外だった。

「アルベルト・フォード……あの野郎がぽっと出の若造に足をすくわれたか」

「名を上げてから、随分と周知されるようになってるぜ親父。あの〝海の掃除屋〟も、そいつの部下になってるって話だぜ」

 白ひげと共に新聞の記事を読むのは、白ひげ海賊団四番隊隊長のサッチ――後に〝黒ひげ〟マーシャル・D・ティーチに殺されてしまう一味の古株だ。

「近頃勢力を拡大している組織で、海賊も寄せつけねェ力を持ってると聞くよい」

「面白い連中だとは思うぜ」

 2人の会話に、一番隊隊長マルコと三番隊隊長ジョズが絡む。

「グララララ、こんな若ェのが何を企んでやがる……?」

『?』

「後先考えねェで喧嘩売る奴たァ思えねェな。グララララ……!」

 

 

 同じく、新世界。

 ビッグ・マム海賊団の拠点である「万国(トットランド)」の中心に位置する島――ホールケーキアイランドにあるホールケーキ(シャトー)では、一人の女海賊が新聞を読んでいた。

 彼女こそ、新世界でも有数の大所帯たるビッグ・マム海賊団の首領であるシャーロット・リンリン――通称〝ビッグ・マム〟だ。

「ハ~ッハハママママ……!」

「嬉しそうだね、ママ」

 上機嫌なリンリンに声をかけているのは、何と表情のある火の玉と雲。

 自他の魂を操り、擬人化もできる〝ソルソルの実〟の能力者である彼女は、自らの分身ともいえる「太陽」プロメテウスと「雷雲」ゼウス、「二角帽」ナポレオンを従えている。この3人…いや、3体は常に彼女のそばに付き従っているのだ。

「ねェねェ、怒らないの? ママ」

「ああ……スッキリしたからねェ♪ ママママ……!」

 プロメテウスの問いに、リンリンは口角を上げる。

 実を言うと彼女もまた、フォードと取り引きをして武器を仕入れていた。しかしテゾーロによってこれを潰されたので、事実上取引は中断となって武器が手に入らなくなった。ゆえにプロメテウスは、欲しいモノはどんな手段を使ってでも手に入れるリンリンのことなのでブチギレると思っていたのだ。

 しかし、彼女は寧ろ吹っ切れていた。これには彼女の性格が関係している。

 リンリンは甘い菓子に対しては常軌を逸した貪欲さを有しており、何よりもまずお菓子を最優先する。フォードとの取り引きにおいてもお菓子の案件を持ち出したが、何と彼に「そんな時間は無い」と一蹴されてしまったのだ。

 当然、烈火のごとく怒ったリンリンだが……フォードとの取り引きは最重要案件な上に彼自身が常に「お茶会」に参加していたので、制裁を科したいところだが一味の都合上妥協せざるを得なくなったのだ。

 欲しいモノを妥協することを嫌う彼女にとっては、フォードは「嫌な男」だったのだ。

 そんな奴がぽっと出の若造に足をすくわれたのだから、本来ならば自分の手で潰したかったが結果オーライという訳で清々していたのだ。

「どこの馬の骨だかわからねェが……中々面白いじゃないかい。ハ~ハハハハマママ……!」

 悪漢(フォード)を倒した若造(テゾーロ)に、興味を抱き始めるリンリンだった。

 

 

 一方、聖地マリージョアのパンゲア城内にある「権力の間」では五老星がフォードの案件について話し合っていた。

「どうやら全て終わったようだな……」

「フォードの勢力はこれで消滅……これで少しは息抜きができそうだな」

 今回の一件で、アルベルト・フォードは世界政府に対する反逆罪や違法な地下闘技場の運営、武器の密輸などで罪を問われ、大罪人としてインペルダウンへと収監されるだろう。

 だが、問題はここからだった。

 フォードが逮捕されたことにより、彼が主導してきた全ての事業が頓挫した。その事業で雇われた者達は皆失業し、低所得者や貧困者を不本意ながら増加させてしまった。

 しかも反社会的組織または反政府組織、戦争をしている国々、紛争当事国に武器を売りつけていたことが発覚し、世界各地で起きている戦争にも影響を与えた。戦争を助長させていたフォードが天竜人とコネがあるせいで今まで野放しにしてた世界政府も、これには困った。

「これを全てテゾーロに押し付けては、世界政府に対する不信感を抱かせかねん」

「海軍もスライスも動いてくれたのだ……誰が責任を取るか取らないかではなく、今後の策や体制の改正が大事だろう」

 政府であれ企業であれ、上司が責任を取って辞職すれば組織として成り立たない。そういう意味の見解で一致しだす五老星。

 そして 着物姿の坊主頭の老人が、刀の手入れをしながら口を開いた。

「これでテゾーロがどう出るか……フォードが消えたこの世界は少し荒れる」

「そうだな……だからこそ、少し様子を見てから我々も動くとしよう」

 残りの老人も、皆頷くのだった。


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