ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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やっと更新です。


第59話〝ホネホネの能力〟

 フォードの一件から、早2週間。

 ケガもある程度治ったテゾーロは、退院して松葉杖生活を送っている。

 さすがのテゾーロも今回は無茶をやってしまったのか、後遺症は残らないが暫くの間は松葉杖を相棒とした生活を送るハメになった。しかしそこは天下のギルド・テゾーロ――すぐに順応して不自由ない生活を送っている。とはいえ、激しい運動は身体に障るので作業現場からはさすがに離れた。

「内臓にまで響いたから、しゃあねェか」

「よくぞまァ、生きてましたね」

「そりゃあ、ここでくたばるわけにゃいかねェだろ」

 松葉杖をつくパーカー姿のテゾーロ。彼の隣には、着流しの上に白いラインが入ったフード付きの紺色のマントを羽織り、首元にマフラーを、額に包帯を巻いたタタラが。

「んで、どうだ? 〝表〟の空気は」

「澄んでいていいですね……今までああいう所で生きてたので、スッキリします」

「そりゃあ何よりだ」

 そんな会話をしながら歩いていくと、暖簾(のれん)が掛かった屋台が視界に入った。

「今日はあそこで飲むか?」

「屋台でですか? ではお言葉に甘えて」

 

 

 屋台の席で、テゾーロとタタラは飲み交わしていた。

「久しぶりに飲むと美味いものですね」

「酒ってのは、止められると余計飲みたくなるモンだからな」

「意地の汚ェモンだからねェ。だがあんまり飲み過ぎないでよ? 後始末が大変なんだから」

 テゾーロの言葉に、主人は呆れた笑みを浮かべながらうどんを出す。

 テゾーロとタタラは一言礼を言ってうどんを食べ始める。

「これはいい味ですなァ」

「そうかね? そいつァどうも」

 酒を飲みながらうどんを食べる二人。

「テゾーロさん、今日は私が奢りますよ。先日の件のお返しの一つです」

「それはありがたいけど……お前、金持ってんの?」

「ええ、この諸島の鉄火場で儲けまして」

「鉄火場?」

「ええ、イカサマの裏をかいて10万ちょっと。まァ、イカサマと言ったってこんな私にバレる程度のイカサマなんで。ちょろいモンです」

 どうやらタタラは、シャボンディ諸島で賭け事にハマっているようだ。

(鉄火場って、賭場のことだったのか…)

 そんなことを心の中で呟きながら、お猪口に酒を注ぐテゾーロ。

「そうそう、その鉄火場で面白い方と出会いまして」

「へェ~……一体誰だい?」

「博打好きなのに賭け事の結果は散々なモノらしいんですが、私に乗っかって儲けて満足したようで。確か……コーティング職人のレイさん、とか言ってましたね」

(レイリーさん……またあんた……)

 自分の師がまた遊び呆けていることを知るテゾーロ。

 天下の冥王は、すっかり余生を謳歌しているようだ。

「レイさん、また博打かい? あの方もしょうがないねェ……身売りして金奪ったばっかだってのに」

「知ってるんですか?」

「この諸島じゃあ、コーティング屋としてかなりの腕利きだからね。何十年か船乗りもやってたようだし、地元の漁師からも顔が知られてんだ」

 どうやら主人も、レイリーとは面識もあるようだ。ただ、その素性はよくわかってないようだが。

「それにしても着物のお兄さん、その顔の傷……もしかして目が見えないのかい?」

「いえ……見えるっちゃ見えるんですが、三つ目族なもんで気味悪がられるんで、子供の頃から盲人の振りをして杖持って生きてます。これが証拠です」

 タタラは被っていたフードを頭の後ろにやると、包帯を解いて額にかかっていた髪をかきあげ、額の目を見せた。

「こりゃたまげた……!」

 主人は驚愕し、どこか興味深そうな目でタタラを見る。

 酒を飲んでいい気分になったタタラは、己の目について語り始める。

「といっても、額の目(こっち)じゃない方――右目と左目は戦闘で塞がってしまいまして。でもシャバの皆さんは親切で助かりますよ」

 解いていた包帯を巻き、タタラはフードを深く被る。

「戦闘? 傭兵か何かでもやってるのかい?」

「いえ、闘技場の剣士をやってた時期がありまして。今は潰れたおかげで足を洗えましたよ」

「闘技場? ……フォードの野郎、やはりああいう商売をやってたのか」

「何かご存じで?」

 屋台の主人は、フォードに関する話を始めた。

 彼曰く、このシャボンディ諸島で人身売買に手を染めて色んな種族を集めており、そうして集めた人々を自分の商売道具として使っていたという。恐らくその中に、先日テゾーロ達が摘発した地下闘技場も含まれているだろう。

「だが奴が取っ捕まっちまったからにゃ、もう大丈夫だろうよ」

「膿を出し切ったってトコですかね」

「いや……この諸島は昔から闇が深い。今はちったァマシだが、お前さんらも気をつけるこったな」

 

 

           *

 

 

 一方のハヤトは、シードと模擬戦を行おうとしていた。

 〝海の掃除屋〟として名を馳せるハヤトと、元海軍本部准将のシード。テゾーロと同じ覇気使いの戦いに興味が湧いたのか、メロヌスが観戦している。

「じゃあシード、始めるぞ」

「いつでもどうぞ」

 するとハヤトは背負った大太刀の柄を握り、抜刀して強烈な斬撃を飛ばした。それに対しシードは、手を叩いて身の丈よりも大きな骨をいくつか生み出して壁のように並べた。

 斬撃が骨に直撃すると、骨は衝撃で大きなひびが入るが斬撃を見事相殺した。

「じゃあ、次はこちらの番です――〝剣硬骨(けんこうこつ)〟!!」

 シードが手を叩くと、ひびの入った骨が粉微塵となって両刃剣に変化した。

「骨の剣……!?」

「当然、切れ味抜群です」

 シードは骨の剣に覇気を纏わせ、一気に距離を詰める。

 ――斬り合いになる。

 そう判断したハヤトは、大太刀に覇気を纏わせて構える。

 

 ガギィン!

 

 覇気を纏った斬撃が激突し、火花を散らして鍔迫り合いになる。しかし体格差や得物の力が影響し、徐々にシードが押され始める。

「くっ……!」

 シードは鍔迫り合いでは確実に押し負けると判断し、距離を取って骨の剣を何度も振るい、複数の斬撃を飛ばした。

 放たれた斬撃は一直線にハヤトへ向かうが、ハヤトは大太刀を横薙ぎに振るって巨大な斬撃を飛ばして相殺する。

(鍔迫り合いと斬撃でダメなら……)

 シードは次の手として、骨の剣を杭のような形に変化させ、それを遠隔操作してハヤト目掛けて杭のように打ち込んだ。

「〝威骨(いこつ)〟!!」

「!?」

 高速で向かうそれは、ハヤトの想像を遥かに超えたスピードであり、止むを得ず避けた。

 骨の杭はそのままヤルキマン・マングローブへと向かい――

 

 ズゥン!!

 

「んなっ……!?」

 骨の杭はヤルキマン・マングローブの巨大な幹に直撃し、何とそのまま貫通した。

 まさかの高威力に、唖然とするハヤト。

「……避けてばかりでは困りますよ……被害が拡大するので!」

 シードはそう言いながらも、手を叩いて次々と骨を生み出し杭の形にする。

「おいおい、マジか…!!」

 あの高威力の骨が無数に来ると想像し、顔を引きつらせる。

「〝大隊骨(だいたいこつ)〟!!」

 シードは無数の骨の杭を放つ。しかし、相手は〝海の掃除屋〟と呼ばれた強者…そう易々と敗れる訳はなかった。

 

 ブワッ!! ゴウッ!!

 

「!?」

 突如発生した突風。

 コントロールを失った骨の杭は、あらぬ方向へと飛んで行ってしまう。

「これは……」

「大太刀だけで勝てる相手じゃねェってことくらいは解ってるつもりだ」

 ハヤトの左手は、扇子を持っていた。扇子は黒く光っており、〝武装色〟の覇気を纏わせていることが容易に窺える。

「成程、突風で軌道を逸らしたんだね」

「これを使うのは久しぶりだ……」

 大太刀の斬撃と、扇子の突風……元々海賊を船ごと海に沈めるような暴れ方をするハヤトとは、射程範囲が違う。

 シードは至近距離での戦闘が一番だと判断し、〝剣硬骨〟を発動して骨の剣を二振り用意し二刀流で攻めることにした。

「覚悟!」

 シードは六式の〝(ソル)〟を駆使して一気に懐へと飛び込み、猛攻を仕掛けた。それに対しハヤトは二刀流による攻撃を躱し続ける――いや、躱すことしかできないでいた(・・・・・・・・・・・・・)

 大太刀では二本同時に受け止めて封じるのは至難の業。防げてももう一本の骨の剣でやられる可能性が高いのだ。

(大太刀では受け切れないか……!!)

 ハヤトは舌打ちしながら、扇子で突風を起こす。

 至近距離の突風を食らい、シードは吹き飛ばされる。

「っ……何のこれしき!」

 シードは〝月歩(ゲッポウ)〟を駆使して空中を駆け、体勢を整えながら〝大隊骨〟を放って攻撃をする。

 ハヤトは突風を放って軌道を逸らし、防戦に徹するが……。

「これで終わらせます――〝芯骨弔(しんこっちょう)〟!!」

 シードは手を叩き続ける。

 すると一本の骨が生まれ、手を叩く度に巨大化していく。その大きさは10mは遥かに超えている。

「これで終幕です、ハヤトさん!!」

 シードが手を振り降ろすと、巨大な骨はハヤトの真上から襲った。

(突風じゃあ無理か……!!)

 ハヤトは大太刀を両手で持ち、刃を覇気で黒く染めて渾身の力で受け止めた。その途端、ハヤトの全身に凄まじい「重さ」が伝わり、その影響で地面に亀裂が生じ抉れ始めた。

「フンゴゴゴゴ!!」

 ミシミシと体中の骨や筋肉が軋むような音が響くが、覇気を纏った大太刀の刃は鋭さが増しているのか、巨大な骨にも小さなひびが入る。しかし、この〝芯骨弔〟はダイヤモンド並みの硬度を有する上に非常に密度が大きい。ひびが入ろうとも「重さ」は変わらないので、粉々に砕かない限りはその超重が襲い掛かるのだ。

 ハヤトは体中から汗を流しながらも両断しようと力を込めるが……。

 

 ズドォン!! バキャアッ!!!

 

「「!!」」

 突然の銃声。

 放たれたそれは〝芯骨弔〟を貫通し、骨全体にひびを入れた。それと共にハヤトが全力で大太刀を振るい、見事両断する。

 二人の模擬戦に、メロヌスが介入したのだ。

「ハァ……ハァ……何のマネだ……」

「これ以上暴れられたら、シャボンディ諸島の一部が海に沈みかねねェ。この辺で終わらせな二人共」

 ふとハヤトとシードは、辺りを見渡した。

 地面が抉れ、遥か向こうのヤルキマン・マングローブを傷つけ、悲惨な光景となっている。

「「……」」

「熱くなりすぎだ、バカ」

 メロヌスは思わず頭を抱え、ハヤトとシードは暴れすぎたことを反省するのだった。

 後にテゾーロがタタラと共に帰ってきた際、その光景に顔を引きつらせたのは言うまでもない。




一応テゾーロ財団の男子勢最強ランキングは、現時点では以下の通りです。

テゾーロ=サイ>シード=ジン>ハヤト=タタラ>メロヌス

今後の物語の展開では、ランキングは大きく覆ると思ってます。
一応オリキャラは、あと二人ぐらいを投入予定です。

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