ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第61話〝風と白土〟

 さて、ロジャー処刑から4年が経とうとしている。

 テゾーロ財団はフォードを潰して以来その財力と影響力をより強大なものとし、ちゃっかり人数をかき集めながら更なる急成長を遂げている。海軍・世界政府の資金源となり、覇気を扱える歴戦の兵達を従え、裏社会にも顔が知れる大物ともコネを持つテゾーロは、ビジネスパートナーのモルガンズの過大な報道も含め世界屈指の有名人となっていた。

「「どんな依頼もしっかり解決!! テゾーロ財団にご相談を」……って、モルガンズの鳥野郎、おれァこんな広告頼んでねェぞ!!! 焼き鳥にされてェのか!!!」

 世経の広告欄を見て、暴言を吐いてキレながらテゾーロは乱暴に投げ捨てる。

 テゾーロ財団の「始まりの地」ともいえるウォーターセブンの事務所では、先日ちょっとした事件で知り合い半ば強制的に就職させられたタナカさんと共に業務を行っていた。

「テゾーロ様はモルガンズ氏とはコネでも?」

「ビジネスパートナーだそうです。報道関係も含めて、ウチは色んな業界と通じてますから」

「そういえば「海の戦士ソラ」が書籍化されたという話もありましたが、もしやそれも?」

「はい、テゾーロさんが」

 そんな会話をしながら、タナカさんとシードは書類を処理し続ける。

 テゾーロ財団の上層部は、実はステラを除いてはほとんどが多忙な状況だ。テゾーロ本人は先程新聞を読んでいたため暇そうだが、実際は海軍・世界政府との交渉は自ら行い、スライスやモルガンズといったビジネスパートナー達と情報を交換し合いながら様々な事業の責任者として動いているので忙しいと言えば忙しい。メロヌスはその頭脳を買われて会計士として働き、サイは政府とのパイプ役を担い、タタラとハヤトはテゾーロ財団による各事業の監督を任されたりすることもある。ステラ自身、シャクヤクやココロから家事を学んでいるため彼女もまた働いていると言えば働いているが、いずれにしろ財団の社員と比べると遥かに忙しいだろう。

「しかし、タナカさんがここまで要領がいい方だったのは驚きでした。おかげで助かります」

「するるるる……それは恐れ入ります」

 テゾーロ財団に所属することになったタナカさんは、事務において凄まじい程の潜在能力を発揮した。

 テゾーロ財団の事務は、テキーラウルフやジャヤをはじめとした各地域での各種消耗品の申請・食料申請・報告書などの書類処理、スライスやモルガンズといったビジネスパートナーとの交渉記録の整理及び管理、港湾労働者組合による活動報告書など様々だ。当然、それを処理するにはかなりの人材が必要だ。

 しかし、事務処理の経験が豊富な人物はテゾーロ財団ではかなり少ない。理事長(テゾーロ)は前世でレポート提出を経験しているため少しはこなせるが、やはり適材適所というものがあり、事務仕事には不向きだ。その反面、海軍で報告書や始末書等の提出を数え切れない程に経験したシードは事務処理の面でも優秀だ。

 その上で、タナカさんの事務処理能力は目覚ましいものだった。彼自身は事務の経験は少ないが、原作の方で伝令役を担当したり他の幹部や部下の動向を調べて報告する役目も担うだけあり、仕事に対する堅実な姿勢と要領の良さはテゾーロ財団随一だろう。

「こういうのはお互い助け合うのが大事です」

「ステラさんの財布をスッた奴の発言とは思えませんね」

「やめてください、黒歴史」

 書類の処理をしながらディスるシードに、泣きそうな顔になるタナカさん。

「まァ、とりあえずはうまく進んでんだ。お前らには感謝してるぜ?」

「「……!」」

 ここまでの成長を遂げられたのは、確かにテゾーロ自身の力量はあるが、当然彼の元に集った一癖も二癖もある部下のおかげでもある。テゾーロにとって、シード達の支えは恩恵のようなもの――ゆえに、彼らには言葉だけでは感謝しきれないのである。

「色々頑張ってくれるし、せっかくだからボーナスもちょいとばかし多くすっか――」

「「ホントですか!?」」

「うおっ!?」

 テゾーロが漏らした言葉に反応し、書類処理を区切って詰め寄るシードとタナカさん。

「ボーナス追加って、いくらですか!? 10万? 100万!?」

「いつ支給で? 今月? 次週!?」

「現金な人間(やろう)だったのかお前ら!?」

 興奮気味の二人に顔を引きつらせるテゾーロ。

「いや、そのあたりはこれから決めるがよ……」

 その時だった。

「テゾーロ、いるか?」

「ハヤトか、どうした?」

 ハヤトが一枚の紙を持って現れ、テゾーロの元へ向かってそれを渡した。

「……本当か?」

「ああ、至急ウォーターセブンに来てくれって」

 テゾーロに渡した紙には、海列車の試運転について記載されていた。

 

 

           *

 

 

 ここは白土の砂漠に覆われた島「バルディゴ」。この島には、〝革命軍〟という反世界政府組織の本部が置かれている。

 革命軍は、世界政府が統治するこの世界の不条理な在り方に疑問と反感を抱く勢力。現時点では結成して数年なので世界政府に認知されていない程度の規模と影響力だが、確実に同志が揃っているのも事実だ。そんな革命軍の指導者たる総司令官は、モンキー・D・ドラゴン――かつて海賊王(ロジャー)と拳骨一筋で渡り合ったあの伝説の海兵・英雄ガープの息子だ。

「アルベルト・フォードの失墜は甚大だったな。違法な地下闘技場が摘発された以上、これで無駄な犠牲者は出ずに済むだろう。――だがこれで裏社会の流れにも影響が出る。十分に気をつけろ」

 ドラゴンは定期的に行う会議で、同志達に告げる。

 彼もフォードを危険視しており、天竜人と癒着している以上は手が出せないため、いずれ力をつけたら倒そうと考えていた。しかしその矢先にフォードは倒されインペルダウンに投獄されたのだ。

「それにこのテゾーロ財団という組織の動向にも気を配っておけ。海軍や政府と密接に関わっている以上、どういった行動をするかは予測できん」

 一民間団体とはいえ、海軍に軍資金を提供したり政府の命を受けたりするテゾーロ財団。その影響力は強くなっており、多くの太いパイプもある。近い内には世界の勢力図を塗り替える程の存在になる――ドラゴンはそう読んだのだ。

「フォードを倒したテゾーロ財団の情報もできる限り収集しろ。万が一の場合にも備えねばならん。会議は以上だ」 

『はっ!!』

 会議を終え、同志達は散り散りになる。

 すると、革命軍の幹部でもある〝ホルホルの実〟の「ホルモン自在人間」――エンポリオ・イワンコフがドラゴンの傍へと立った。

「随分とテゾーロボーイに気にかけてるようね、ドラゴン」

「…イワ」

「でも、ヴァナタの読みは当たってたりしてるわよ?」

 イワンコフは、ある書類をドラゴンに渡す。

 ドラゴンはそれを手に取り、ペラペラと捲る。

「ヴァターシ達が問題視していたテキーラウルフでの奴隷労働も、彼の尽力でウソのように良くなってね。ンフフ、まるで革命でも起きたようだわ。ドラゴン……テゾーロボーイとは案外気が合うんじゃない?」

「……おれがか?」

「ええ……今までの体制を大胆にも変えたのよ? ヴァナタとテゾーロボーイ……立場は違えど、互いに意識していないだけで意外な接点はあるんじゃない?」

「……」

 イワンコフの言葉を黙って聞くドラゴン。

 すると彼は立ち上がり、外へとつなぐ扉へと向かう。

「……風に当たってくる」

「ええ、どうぞ」

 

 

 辺り一面が白土の砂漠であるバルディゴの風に当たりながらある方向(・・・・)を見つめ続けるドラゴン。

 彼は風に吹かれるのか趣味だが、常に故郷のある東の海(イーストブルー)の方向を向く癖がある。当の本人はそれを全く意識していないが。

(ギルド・テゾーロ……お前は意識しているかどうかはわからんが、この世界の在り方を少しずつ変えようとしている。我々は政府を倒す組織である以上……お前とはいずれ相容れることとなるだろう)

 邂逅の時は、立場上敵となるかもしれない。しかし彼と出会うのは楽しみだ。

 テゾーロとの出会いを想像し、不敵に笑うドラゴンだった。




原作の方、ついに緑牛が登場しましたね。
モデルは三船敏郎かなと思ってましたが…何か違うようですね。
原田芳雄さんが最有力候補ですが、どんな出で立ちか楽しみです。

それにしてもサカさん、センゴクさんに対して「半隠居人」は…。

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