ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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やっと投稿です。
原作の最新話、エライことになりましたねwwww


第63話〝世界会議(レヴェリー)

 今年は〝世界会議(レヴェリー)〟がある年でもある。

 〝世界会議(レヴェリー)〟とは、世界政府に加盟する世界各国の代表の内50の国の王達が聖地マリージョアに集結し、4年に一度だけ開催される世界最高峰の会議。世界中の由々しき案件を言及・討議して今後の指針を決定してゆくもので、現実世界でいえばサミットや国際連合安全保障理事会にあたるものだ。

「かのアルベルト・フォード氏……いや、アルベルト・フォード死刑囚(・・・)の失墜で世界中が巻き込まれた。これを機に、我々も今までの姿勢を改めて今後に臨むべきだろう」

『……!』

 〝新世界〟に位置する国家「ドレスローザ」の国王リク・ドルド3世――リク王の言葉に、静まり返る議場。

 今回のフォードの不祥事は世界的に伝えられ、彼と関与していた各国の王侯貴族が立場を危ぶめていた。表面上は世界的に禁じられている人身売買と違法な闘技場運営による莫大な「裏のカネ」で世界の実権を画策してた男に、金を払って娯楽を楽しんでいただけとはいえ間接的に加担していたのだから、ある意味では当然だ。

 

「我々に求められるのは、人を見極める目だ!! このような事が二度と起きぬよう、各々がその目で国の為に判断せねばならん!!」

 

 リク王の大声と鋭い眼差しに、怯む王達。彼は戦いは好まない平和主義者だが、戦争で国民を巻き込まないために常に他国へ睨みを利かせてもいる。その覚悟と実績は確かなもので、世界各国にも知れ渡っている程だ。

 今回は戦争というわけではないが、誤った判断は国民を危険に晒し国家間の混乱を生むと語るリク王には、賛同しているのか多くの王が何度も頷いている。

「その上で欠かせないのは、やはりテゾーロ財団であるな」

「そうだな……では会議の本題といこう」

 今回の議題でメインとして取り上げられたのは、フォードを倒したテゾーロ財団の躍進だった。賞金稼ぎから実業家へ転身した異色の経歴を持つテゾーロ財団創立者のギルド・テゾーロによる活動は、ジャヤの治安回復、廃れたウォーターセブンの活性化、テキーラウルフの労働監督など、この手の知識のある者ならだれもが耳を疑うような事業に取り組んでいる。今やテゾーロは世界政府の頂点である五老星や天竜人――ただしクリューソス聖だけだが――にも謁見できる程の立場の人間。各国の王侯貴族とは別の世界で大きな力を得ているのだ。

 しかし一方で、底辺から天上まで一気に上り詰めたかのような出世をしたテゾーロを気に食わない加盟国代表も多い。それもそうだろう、テゾーロは王侯貴族でないにもかかわらず世界一気高い血族から気に入られ五老星からも一目置かれているのだから。

 

「――生まれや育ちはどうあれ、世界の平和と安寧の為に貢献する若者がいることにありがたいのは変わりないのではないか?」

 

『コブラ王!!』

 口を開いたのは、他国でも「名君」として有名なアラバスタ王国現国王のネフェルタリ・コブラだった。

「我々のような王侯貴族は国の長としてやるべき事・果たすべき仕事はある。治安回復、廃れた土地の復興、人々の生活の安全と保障……それらは王として、一国の主として取り組まねばならん。だがこの若者はそれを見事成し遂げた……我々はこのような若者から学ぶこともあるのではないか?」

 コブラの言葉に、リク王をはじめとした一部の王は賛同する。

 テゾーロが成し遂げた数々の活動は、政治にも活用できるものだ。政策や国のシステムを改善することで国を大きく発展できる。特に新規事業で廃れた土地を開拓・復興することは国力の強化にもつながるので、テゾーロが行った活動は実践してみる価値がある。

「国は人だ。民が苦しめば国も苦しむ。国と国民の為には、時には近隣諸国だけでなく部外者の助けが必要な場合もあるのではないか?」

 コブラの力説に、賛同していなかった王達も唸る。

 いずれにしろ、テゾーロ財団は今後政府加盟国にとっても有益な存在となるのは明白だ。民間組織ではあるが、世界政府も頭を悩ませた案件を担って解決に導くその活動は効果抜群――国家間の問題も解決してくれるはずだろう。

「確か……ゴア王国はテキーラウルフでの事業で支援をしていると聞く」

「東の海で最も美しい国と呼ばれるだけありますな」

 ゴア王国はテキーラウルフへ貧困者や浮浪者を中心とした労働者を派遣しており、事実上の支援を行っている。それが他国にも知れ渡っており、かなり好感を持たれているようだ。しかし実際は表面上の清潔さを維持するために下流階級の人々を追い出しているに過ぎない。無論、テゾーロはゴア王国の思惑を看破しているが。

「では話をまとめよう……フォードの一件及び数々の事業による功績を踏まえ、我々はテゾーロ財団を世界政府加盟国公認の〝史上初の民間団体〟として連携を取る。これでよろしいかな?」

 その直後、賛同の拍手が沸く。

 この日を以て、テゾーロ財団は史上初の国際統治機関公認の民間団体となるのだった。

 

 

           *

 

 

 その同時刻――

「アルベルト・フォードの一件、誠にご苦労」

「礼には及びません、仕事ですから」

 聖地マリージョアのパンゲア城内にある「権力の間」にて、テゾーロは五老星と会談をしていた。

「全く、けしからんマネをしてくれたものだ」

「よもや世界の実権を握ろうと企んでたとはな」

 フォードの一連のスキャンダルは「世界政府乗っ取り未遂」という些か過大な表現で大々的に報じられた。いや、厳密に言うと五老星が隠蔽しなかった(・・・・・・・)が正しい。

 元々五老星はフォードの力をどうにか削ごうと画策していたのだが、天竜人と癒着関係にあったため手を打とうにも手を出せず、半ば野放しにしていた。そこへ来てテゾーロ財団の働きで力を削ぐどころかフォードを逮捕できたのは願ったり叶ったりなのだ。

「そこでだ……今回の件の報酬として、お前さんの望むものを何でも一つ叶えよう」

「ただし、我々のできる範囲であるが」

 五老星からの直々の報酬は、彼らにできる範囲ならばテゾーロの望みを何でも一つ叶えるという。この機会を待っていたとばかりにテゾーロは笑みを深め、ある要求をした。

「国を創る許可を貰いたいのです」

「国、だと?」

 あまりにも斜め上の要求に、五老星は戸惑う。

「はい。その前に私のある計画を知る必要がありますが……」

「計画?」

 

 

 テゾーロが語った計画は、五老星ですら驚愕する内容だった。その内容は――何と、天上金を加盟国に変わって支払う事業を行うというのだ。

 800年前、世界政府――今の世界を統治するシステムを構築した「創造主」と称される二十人の王達の末裔が世界貴族「天竜人」である。彼らは各国の一般市民から「天上金」という貢ぎ金を徴収しており、一国を飢餓で滅ぼす程の莫大な額を受け取っている。当然加盟国にもそれは義務づけられており、その膨大な額がゆえ国家予算がギリギリである国も多いのが現状だ。

「その現状を憂いて、この計画を練っていたと」

「ええ、まァ……」

 テゾーロは笑みを浮かべながら返答するが、天上金徴収の現状を憂いているのは事実だがそれは表の理由。実際は己の野望である世界的な革命の為だ。

 テゾーロの目論む革命は、軍事力を否定する訳ではないが国家間での武力衝突を無くそうという考え――つまり軍事力を他国を攻めるためではなく海賊や反政府組織から国土と国民を守る「防衛力」にすることだ。この考えは賛同する者も多いように思えるが、それを快く思わない連中が政府側にいる。ジェルマ王国だ。

 ジェルマ王国は、世界中の戦争に金銭を条件に軍事的支援を行う国であると同時に〝北の海(ノースブルー)〟の完全征服を目論んでいる国。戦争への介入は政府加盟国である点やその科学力ゆえか黙認されているが、テゾーロの目論む革命が成就したら〝世界会議(レヴェリー)〟の参加権を剥奪され政府加盟国からも除名されてしまうだろう。あのジェルマがそれを黙って従う訳など無い。

(まァ、その辺りはどうにでもなるか……)

 そもそもテゾーロの野望はそう簡単に叶えられる程甘くはない。時間をかけて確実に進めるべきである。

「……つまり、お前はこう言いたいのかテゾーロ。天上金の件は、民間団体では国としての面子がたたんから加盟国として行うと」

「そうですね…それにそっちの方が今後都合が良いので」

 天上金で苦しむ国家は多い。政府加盟国として肩代わりすれば国交樹立としてうまく機能できるのではないかとテゾーロは考えたのだ。もっとも、政治に関してはド素人の男の考えなのでうまくいく保証は皆無に等しいが。

「フム……」

「どう思う?」

「悪い話ではあるまい。天上金の上納で傾く国々がある以上、テゾーロの話に乗るのも一理無くもない」

 テゾーロが国家元首となる国はどういうモノかは五老星とて想定できないが、少なからず世界政府にとっては大きな利益となるだろう。加盟国ともなれば、一定の権限を与えることを条件に政府の命に従うことも可能だからである。

「……いいだろう。だが暫し待て」

「待て……とは?」

「国を創る以上、土地は必要だろう?」

 その言葉に、テゾーロは目を見開く。

 国を創るには確かに国土が必要だ。ジェルマ王国のような例外はあるが、少なからず島の一つくらい所有するべきだろう。

 今のテゾーロが今後実施する計画の一つである「グラン・テゾーロ計画」は、原作同様の予定だ。しかし肝心の動力――ギガントタートルを探していないのでかなりの時間がかかるだろう。ならばいっそのこと、予定を変更して船ではなく陸地に国を創るのも悪くないだろう。

「わかりました、感謝します」

「では、今日はよろしい」

「ご苦労であったな」

 テゾーロはソファから立ち上がり、一礼して部屋を後にした。

「さて――どうしようか。政治に関わるとなると、少し面倒事になりそうだな」

「だが今の奴には相応の力もある。多少の厄介事を押し付けても文句は言うまい」

「それに奴のコネと経済力をも利用できるとなれば、我々とて多少のリスクは負っても構うまい」

「うむ……ならば奴の要求を呑もう。その方がメリットも多い」

 五老星はテゾーロの力を見込み、要求を呑む方針にしたのだった。


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