ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第4話〝初舞台〟

 街を荒らしてる海賊は〝女狩りのトリカブト〟率いるトリカブト海賊団。

 懸賞金は懸賞金1億ベリーで、凶悪な海賊として知られている。

「奪え!! 抵抗する者は容赦なく殺せ!!」

 一味の船長・トリカブトの命令が下され、海賊が雪崩れ込む。

 街を荒らし蹂躙するその姿は、世間から恐れられている海賊である。

「ヒャハハハ、大漁だぜ!!」

「女は全員(さら)って来い、近くの〝人間屋(ヒューマンショップ)〟に売り飛ばせ!!」

 海賊達は非情にも女性を誘拐しようと命令した。

 トリカブトの異名は、女性を攫って次々と人攫いグループや〝人間屋〟に売り飛ばすゲスさから称されている。当の本人は興味など皆無だが。

「おい、その女も連れてけ!!」

「へへ、了解……おい! 大人しく来い!!」

「いや!! 誰か助けて!!」

 女性が助けを求めた時だった。

 

 パリィン!

 

「ガッ……!?」

 逃げ遅れた女性を攫おうとした海賊は後頭部の衝撃によって倒れる。

 倒したのは、テゾーロだ。

「すまん、手が滑った」

 突然現れたテゾーロの登場に、周囲は静まる。

 海賊も住民も、テゾーロに釘付けだ。

「…何だガキ?」

「なァに、ただの人助けさ。大丈夫ですか?」

「え? あ、はい……」

 女性が無事であることに内心安堵しながら、テゾーロはトリカブトらを一瞥(いちべつ)する。

 敵は大将(トリカブト)含め30名。一人で相手取るとなると、ゴルゴルの能力は使わざるを得ないだろう。

「気に入らねェ……ぶっ殺しちまえ野郎共!!」

『ウオォォォ!!』

 襲い掛かる海賊。

 するとテゾーロはそばに置いてあった店のイスを掴み、一人目を殴った。怯んだところを一人目の得物――棍棒を奪い取り、次々と喧嘩殺法で片づけていく。

「せ、船長! あのガキ、意外とやりやすぜ!」

「落ち着け! 銃で撃ち殺しゃあいい!」

「ゲッ!」

 海賊達が拳銃を構える。

 蜂の巣にされてはたまらないと、テゾーロは持っていた棍棒を投げ捨てて街角へ逃げる。

 逃がすまいと発砲しながら海賊達は追うが、テゾーロは武器をも持たぬ丸腰の分身軽なため、見失ってしまう。

「ちっ、あのガキどこにいやがる!?」

「海賊をナメやがってェ……!!」

 

 バゴッ!!

 

「「「ぐげェッ!!」」」

 大きな酒樽が落ち、海賊達に直撃する。

 落としたのは勿論、テゾーロだ。

「これはストリートのケンカっつーより、市街戦に近いな……」

――できる限り民家を壊さないようにしなきゃいけないな。

 そう呑気に思っていると下が騒がしくなった。どうやらバレたようだ。 テゾーロは声のする方の反対側から飛び降りるが……。

「見つけたぞ、クソガキィ!!」

「うわ、マジか!」

 運悪く敵の前に降り立ってしまった。しかも結構いる。

「鬼ごっこは終わりだ!!」

 そう言い、石斧を持った大男はテゾーロを狙う。

 テゾーロは右腕に意識を集中させ、黄金を形成し構えた。

「〝黄金爆(ゴオン・ボンバ)〟!!」

 テゾーロは腕に手甲状の黄金を纏わせてパンチを放つ。

 自らの倍の身長はあろう大男の鳩尾に直撃し、大男は得物を落とし血を吐きゆっくりと倒れた。

「な、何だあいつ!?」

「悪魔の実の能力者か!?」

黄金の腕をしたテゾーロを前に混乱する海賊達。

(相変わらずすげェ威力だな。でもいつまでも素手で戦うわけにはいかないよなァ…)

 超硬度の黄金を生み出し、一度触れた黄金であれば自在に操ることができる〝ゴルゴルの実〟。覚醒すれば新世界の大海賊とタイマンを張れるだろうが、今は覚醒していない。覚醒していない状態での技は限られる。

(ぶっちゃけどうすれば覚醒するのかは全然わかんねェんだよな…)

 黄金形成を応用して武器ぐらいは作れるだろう。剣技は誰かに教わればいいので、打撃系で十分だろう。

 剣は――峰打ちできないので却下。

 刀は――何か勿体無いから却下。

 鉄球は――回収が面倒くさいので却下。

 銃火器は――いきなりは危険なので却下。

 そうなると――思いつくのは、槌だった。

(でも、重くないのか……?)

「野郎、ナメやがって!!」

 色々と考えている隙にアフロの男が刀を抜いて斬りかかる。

 テゾーロは慌てず、自分が使いたい(ぶき)をイメージすると、腕に纏った黄金が変成して大きな槌に変わった。

「〝黄金鉄槌(ゴオン・マルテッロ)〟!!」

 

 ドゴォォン!!

 

 黄金の槌を形成し、思いっ切り叩く。

 超硬度の金で出来た武器の威力は凄まじく、刀を容易く粉砕し敵を叩き潰した。

(ピー)ティー(ピー)ンターの100(トン)ハンマーを思い出すな……)

 某集英社の週刊誌の黄金期を彩った某ハードボイルドコメディのヒロインを思い出しながらもぶん回すテゾーロ。

 黄金を操る能力者だからなのかどうかは知らないが、重量感はあれどそれに見合った威力と意外な使い勝手さが気に入り、テゾーロは思わず笑う。

 殴られた方はまだ息がある…というか生きてるのが不思議だ。モブでも海の過酷な環境を生き抜いてるだけはあるようだ。

「さァ、フィナーレと行こうか!!」

 黄金のハンマーを手に、テゾーロは海賊達に突っ込む。

 次々とハンマーで薙ぎ倒されていく海賊達に、トリカブトは苛立つ。たった一人の少年にコケにされ、屈辱を味わっているのだ。

「来い、おれ様が相手をしてやろう!!」

(! ラスボスの登場か…)

 トリカブトは剣を抜く。

 すると剣の切っ先からポタポタと紫色の液体が流れている。あからさまに毒であるのが目に見えている。

「……毒を塗ってあるのか?」

「勘がいいな、その通りだ。これはドクガエルの猛毒さ。掠っただけで命取りだ!! 急所に当たったら、お前の死は――」

 

 ゴシャッ!!

 

「ボヘェッ!!?」

「いや、だったら早く攻撃しろよ。勿体ねェぞ――あ、もう手遅れか……」

 最後まで言わせずハンマーを投げつけ瞬殺。

 モロに直撃したので、トリカブトは一発で倒れた。

「これでショーは閉幕だ……この勝負、おれの勝ちだ(イッツ・ア・エンターテインメンツ)!」

 高らかに宣言し、テゾーロの初舞台(バトル)大勝利(せいこう)を収めた。

 

 

           *

 

 

 騒動が終わると、ステラが駆け寄ってきた。

「すごい……テゾーロって強いのね!」

「いや、ただの喧嘩慣れさ。ゴルゴルの能力が無かったらマズかった気もするけどね」

 幸いにも、彼らは覇気を得てるどころかそれすらも知らぬ輩だった。幾分戦いやすい相手ではあったのだ。

「ステラ、君は大丈夫か?」

「テゾーロこそ、大丈夫?」

「いや、運が良かった(・・・・・・)よ。 無傷だからね」

 海兵達が集い、一斉検挙が始まる。次々と軍艦に乗せられる彼らに、テゾーロは内心喜んでいた。

 すると――

「あららら……おい(あん)ちゃん、すごいじゃないの」

 黒のサングラスを掛け、黒いコートに袖を通した長身の海兵が現れた。

 どうやら彼が海兵達をまとめ上げている司令官(トップ)のようだ。

「一応アレだわな、ホラ、アレだ……」

「懸賞金ですか?」

「そう、それそれ。後で用意すっから、もうちょっと待っててくれ」

 長身の海兵は「美人だ、羨ましいなあのガキ」と言いながら欠伸をする。

 その時、テゾーロは気づいた。

(あ、〝(あお)キジ〟ィィィィィィィィ!?)

 そう、何と彼は後に海軍本部大将を務める〝青キジ〟ことクザンだったのだ。

 いくら若い頃の風貌とはいえ、あまりにも軽いノリと雰囲気に流され、気がつかなかった。

(…いや待てよ、これってぶっちゃけチャンスじゃないか!?)

 クザンは今、海軍本部中将だ。海軍本部中将は階級的に言うと軍の(ナンバー)3……上層部及び幹部クラスで、それなりの権限もある。

 彼とコネクションを作っておけば、ステラ共々上手くいけば海軍公認の賞金稼ぎ(バウンティハンター)グループとして後の計画で役に立つ。

 何事も始めなければ意味がない。

「あの……海兵さん」

「ん~? 何だい嬢ちゃん」

「少し大事な話をしたいんですが、よろしいでしょうか?」

「おお、いいよ。おれ今ヒマだし」

(ス、ステラァァァァァァ!?)

 ステラから話を切り出すとは思わず、目を丸くさせ驚愕するテゾーロ。

「ちょっと待て、まさか……ステラ、君は世渡り上手か?」

「彼ぐらいなら私一人で何とかなりそうに思えたわ♪」

「……」

 ステラの笑顔に、引きつった笑みを浮かべるテゾーロ。

(交渉術、ステラの方が得意だったりして……)

 もしかしたらゴルゴルの実以上にすごいのではないかと錯覚してしまいそうになるテゾーロであった。


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