ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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とりあえずフレバンスは終わったので、いつも通りに行こうと思います。


大海賊時代Part3
第85話〝まるで嫌がらせ〟


 フレバンスの事業を終えたテゾーロ財団。

 その功績から理事長のテゾーロはフレバンスの民に救国の恩人として「永久名誉国民」の称号を与えられ、彼は財団を率いて〝北の海(ノースブルー)〟から撤退した。

 その後フレバンスは経済的事情によって珀鉛産業を再開するが、同時に珀鉛中毒を中和する特効薬の投与無償化や掘削における助剤入りガスマスクの配備、医療器具の輸入などで医療大国としての道も歩むようになるのだが、テゾーロはまだ知る由も無い。

 

 

 さて、テゾーロはフレバンスの件が終わったことを知った五老星からの命を受け、聖地マリージョアを訪れていた。

「テゾーロ……此度の事業、ご苦労であった」

「勿体無いお言葉……」

 「権力の間」にて、テゾーロに労いの言葉を投げ掛ける五老星。

 相変わらずの仏頂面ではあるが、その声色には安堵の感情がこもっているようでもあった。

「お前とその部下達がたてた数々の功績を評価し、国家樹立を改めて認めよう」

「土地は新世界に今は使われていない海軍基地を譲ろう。そこは我々が所有する島の中でも広く大きい場所で、今は誰も使っておらん」

「自由に使うがいい……だが忘れるな。お前達は我々と共に〝世界の為〟に在るということを」

「委細承知。このテゾーロ、世界の為に全力を尽くします」

「うむ。大儀であったな、下がってよい」

「では……」

 五老星に一礼し、彼らのいる「権力の間」を去るテゾーロ。

 だが、ここでテゾーロはふと思い出した。

(――アレ? 何気におれ、ローの運命変えてね?)

 そう……この男、今更ながら重大なことに気づいた。

 後に原作の主人公(ルフィ)と手を組む海賊トラファルガー・ローは、幼少期に珀鉛病を患ったがゆえに天涯孤独の身で世界の破壊を望む程に自暴自棄になった時期がある。

 今回のテゾーロの活躍により、その運命を回避して自由に生きることができるようにはなったが、同時にとんでもないフラグが立ってしまった。

(ってことは……ちょっと待て、それって〝オペオペの実〟がドフラミンゴの手に渡る確率が上がるってことじゃ………)

 オペオペの実の特性を思いだし、背筋が凍るテゾーロ。

 〝究極の悪魔の実〟と呼ばれるオペオペの実は、「不老手術」という自身の命と引き換えに他者に永遠の命を与える手術を施すことができる。ドフラミンゴは不老手術で永遠の命を得て、マリージョア内部に存在する「国宝」を利用して世界の実権を握ろうと画策していた。しかも彼はオペオペの実の在りかと取引に関する情報の入手に成功している。

 野放しにすれば、本当にヤバイ事になるではないか。

(ヤッベェ、フレバンス救えたわーいって浮かれてる場合じゃねェ!! 落ち着け、おれ……とりあえず先のビジョンを予想するんだ!!)

 テゾーロは今後の展開を予想する。

 この流れだと、恐らくローは医療の道を向かうことになるだろう。原作では命令されることを極度に嫌うが、意外と良心的な一面を見せていた。前者の方は素である可能性が高いためどうしようもないが、後者の方は今後多く見せるかもしれない。

 また、センゴクの部下であるロシナンテがドフラミンゴの下でスパイ活動をする際にも有利だ。原作においては、ローの珀鉛病を治しに行くと別行動した際に海軍がその間一度も現れなかったことで不信感を抱かれたが、これでローが彼らと関わりにくくなったことで、未来が変わっただろう。

(――いや待てよ、海軍にはヴェルゴが潜入してたな……ってことは、ヴェルゴをどうにかしないとコラソンはまだ安全じゃねェってことだよな?)

 ロシナンテが殺される一番の原因は、ヴェルゴの存在だろう。

 〝オペオペの実〟の取引はセンゴク自身がトップシークレットと言っているが、その情報がドフラミンゴのところに流れているのに、センゴクもロシナンテも軍の中に情報を漏らしている輩がいないかを探っている様子は無かったはずだ。

 つまりヴェルゴが海軍に潜入した現役の海賊であることを証明して裁けば、ロシナンテどころか海軍や世界の未来を変えることもできる。事実、ドフラミンゴにとって最も重要な部下である彼はドレスローザの国盗り事件の際もその地位を使って情報操作を行ったらしく、行方不明の子供達の安否を「海難事故による事故死」として隠蔽していたのだから。

(でもあいつ(つえ)ェだけじゃなく、海軍側からも信頼されてたしな……すぐに潰せる程甘くねェよな……)

 テゾーロの前世の記憶が正しければ、ヴェルゴは大佐の階級の時点で〝武装色〟を硬化できる程の使い手であり、六式をも使いこなせていたはず。それ程の戦力を「海賊のスパイではないか」という疑惑程度で海軍が手放すとは思えない。

 それこそ、五老星のような海軍に直接モノを言える権力者でないと対応してくれないかもしれない。それもそれなりの根拠と証拠が無ければ。

(まァ、今は時期(・・)じゃない。気を配って情報収集しながら様子見ってトコか……)

 用心深いヴェルゴが気を抜くのは、ある程度の地位を確立させ疑り深い人間からも信用されるようになってからだろう。その隙を突いて告発し、裏のルートで証拠を集めて排除すれば、頭の切れるドフラミンゴも迂闊に動けないだろう。

(ドフラミンゴ……てめェの思い通りになると思うなよ?)

 

 

           *

 

 

 一週間後。

 テゾーロ達は政府からの使いと共に、五老星が指定した新世界の海軍基地へ向かったのだが……。

「……何これ? 国際レベルのいじめ?」

 広大な土地であるのは事実だが、海軍基地は廃墟と化しており島も荒れ果てていた。

 元々軍事施設であった分、港や堤防は頑丈に造られているがそれ以外はかなりひどい状態だ。道理で世界政府が容易く手放すわけである。

(おれは家康か何かか?)

 かの徳川家康は、小田原平定後に豊臣秀吉から江戸に赴任するよう命ぜられた。しかし当時の江戸は低湿地が広がる利用価値の無いさびれ切った過疎地であり、実質左遷のようなものだった。これは「家康を信頼して関東地方の統治を任せた」という説もあるのだが、秀吉が家康に謀反を起こされるのを恐れていたとされているのが通説だ。

 今のテゾーロは、その家康公と似たり寄ったりの状況だ。まるで世界政府からの嫌がらせであるかのようだ。

「他に土地無かったのかよ……」

「こんな島で……」

(きたね)ェ連中だな、世界政府……」

 世界政府への不満を次々に漏らす幹部達。

 あのような過酷な事業の報酬がこれでは、負の感情しか湧かなくなるだろう。しかしテゾーロはポジティブに捉えていた。

「一から創るんだ、やりがいがあるじゃねェか」

「世界政府の腐敗ぶりは今に始まったことじゃないものね♪」

「副理事長!? あんたいつの間に黒くなっちまったんだ!?」

 どさくさ紛れに言ったステラの発言に、メロヌスは顔を引きつらせてツッコむ。

 しかし、言い合っていても何も始まらないのでテゾーロは動いた。

「今日は何にも考えてねェから、まず仮設事務所を建てよう。話はそっからだ」

「でも、一刻も早く土台だけはどうにかしないといけませんよ!」

「開発するからな……とりあえず大工は来てほしいわな。それ以外ならコネで呼べそうだが」

「大工なら、おれいいトコ知ってるぜ」

「本当か?」

「……じゃあおれも掛け合ってみるよ、一件だけ心当たりがある。うまく行ったら全面的に協力してくれるはず」

 ジンとアオハルの言葉に、目を見開くテゾーロ。

 ジンは世界を放浪してきたのだから、その道中に大工と会ったとしてもおかしくはないだろう。出身がワノ国であるため、祖国の大工と交渉が成立すれば心強い。また、アオハルは情報屋でもあるため様々なルートで手に入れた情報をもとに業者を呼んでくれるかもしれない。

 改めていい部下を持ったと、テゾーロは実感する。

 そしてテゾーロは拍手をしながら口を開いた。

「諸君! フレバンスの件はご苦労だった。しかしまた新たな事業が始まった、今度は国家樹立だ! すでに五老星の許可は下りている……我々が〝理想国家〟を創り、新しい時代の扉を開こうじゃないか!!」

 テゾーロが強く声を上げると、部下達が彼の言葉に拍手喝采する。

 これもテゾーロの為人が成せる業と言えよう。

「さァ、新たなエンターテインメントの時間だ」

 

 

 テゾーロ財団は、ついに国家運営に着手する。

 名は、当然「グラン・テゾーロ」……テゾーロが王となる国が世界にどのような影響を与えるようになるのかは、少し先の話。




最近のワンピースをちょっと調べたら、黒ひげ海賊団のネタに驚きましたね。
「デボン、あんた36歳なの!? スモやんと同い年やん!!」とか、「バスコ・ショット、お前38歳なの!?」とか、「ピサロ、お前ワポルと似たような運命じゃない?」とか。

キッドの覇王色もびっくりです。覇王色が海軍にいないのは残念ですけど。

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