ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~   作:悪魔さん

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第5話〝ウォーターセブンへ〟

「え~っと……要するに、億越えの連中を狩りまくって本部に引き渡すから海軍とコネを持たせてって言いてェと?」

「損は無いと思いますよ、クザン中将」

 テゾーロの持ちかけた話――ただし言っているのはステラ――に、青キジことクザンは顎に手を当て悩む。

「……ギルド・テゾーロ、だっけ? 確かに無傷で1億の賞金首をその部下ごと片づける腕は大したもんだ。海兵ならうまくいけば将官にも上り詰められるだろうよ。それに〝ゴルゴルの実〟っつったっけ? 聞いたこたァねェけど結構強力な能力っぽいから、放っておくわけにもいかねェわな」

 テゾーロとステラの話は、とてもうまくいっている。

 このまま丸め込めば万事解決と言うくらいにだ。

「民間人と軍人が手を組む…法を破ってるわけでもない上、あなた達海軍の利益もある……乗るべき話かと思います」

「それに軍に協力するのは民間人の責務の一つでしょう?」

「まァ、言いてェこたァよくわかるが……」

 クザンは二人の話を理解できている。

 この世には多くの賞金稼ぎ共がいるが、億越えの連中を狩れる程の腕を持つ賞金稼ぎはほとんどいない。億越えになると覇気使いや能力者の場合が多くなるからだ。

 これに対抗できるのは、海軍本部の最高戦力である「海軍大将」や海軍将校の覇気使いだが、それはごく一部でありそれも重要なポジションのため外すわけにはいかない。

 では、その役目をテゾーロに任せればどうか?

 まだ若いが、成長すればかなりの大物になるであろう少年を手放すのは勿体無い上、万が一海賊の道を選んでしまったら政府に対する脅威にもつながる。

 それを未然に防ぐためにも、今ここでテゾーロと何らかの形で契約するのが良いだろう。

「……まァ、一般人が億越えぶっ潰した時点で異例だしな。一応掛け合ってみるわ」

 クザンはそう言い、軍艦に一旦戻る。

(気持ち悪いくらいに順調なんですけど……)

 テゾーロは汗を流しながら引きつった笑みを浮かべる。

 クザンがどういう人物なのかは、原作コミック等で知ってる為これといった問題は無いが、この流れのテンポの良さは不気味にすら感じる。

(掴み所が無いからな……さすがに民間人をハメるようなマネはしないと思うが、気をつけなきゃあな……)

 暫くすると、クザンが封筒を携えやってきた。

「そんじゃあ、こん中の紙をここで書いといて。おれが後で上層部(うえ)に出しとっから」

「あ、はァ……」

 手渡された紙を手にし、クザンから渡された紙にスラスラと書状を書く。

 ――部活申請や進路指導を思い出すなァ。

 前世の出来事と似ているなと呑気に考えながら、スラスラと書いて手渡す。

「……その嬢ちゃんも?」

「何か問題でも?」

「いや、関係ねェなら保護して俺の女にしようかなって」

「……海兵じゃなかったら殴ってましたよ、おれ」

「冗談だっての、おれァ他人の女取って食うような男じゃねェから」

 冗談混じりで言うクザン。

 ステラは「テゾーロの女」と言われた事に対し耳まで真っ赤にする。

(原作通り食えない男だな、クザン)

「そうそう、これも縁だから教えといてやるよ……この港から出る船はウォーターセブンに向かう。明日着港すっからな、憶えとけよ?」

「「!」」

 造船業をメインとした町で有名なウォーターセブン。

 宝樹アダムを使ってあの〝海賊王〟ゴール・D・ロジャーの海賊船「オーロ・ジャクソン号」を製造した伝説の船大工・トムはまだ存命中であり、海列車の製造もこれからである。

(船の設計を頼むのは今だな……)

「そんじゃ、おれはここで失礼するわ。ありがとな、君がいなかったらこの街もダメだったろうな」

 クザンは今度こそ軍艦に戻り、海軍本部へ帰還する。

 

 

(ギルド・テゾーロ、か……)

 軍艦の甲板で、デッキチェアに座りながら思い返すクザン。

 先程であったギルド・テゾーロという男は、何とも不思議な雰囲気を纏っていた。海兵としての人生を歩むようになってから10年近く経ち、当然その中で色々な人物を見てきたが、テゾーロは不思議な感じだった。

 危険人物だと言うには随分と穏やかで裏表がなさそうに見え、かといって一般人と言うにはあまりにも常識離れしている。それがテゾーロだった。

(……将来デケェ奴になりそうだな)

 クザンは大きく欠伸をすると、アイマスクを着けて昼寝を始めるのだった。

 

 

           *

 

 

 翌日。

 テゾーロはステラと共に港で船を待っていた。

「初めての船旅ね……」

「怖いかい?」

「テゾーロがいるから大丈夫よ♪」

「っ……!」

 まるで新婚旅行のような雰囲気に、テゾーロはダラダラと汗をかく。

(ウォーターセブンに行ったら、どうするか……)

 テゾーロの野望は、最終的には一国の王となり世界政府を内部から変えるような感じである。

 その為には、あらゆる計画を実行しなければならない。

 その礎となるモノを、ウォーターセブンから用意する必要もあるだろう。

(やはりそれなりの力を持つべきか――財源は賞金首の懸賞金だけで賄えなくなる事も見据えて商業でもしよう)

 商業で儲けるには、その島・その土地に合った商業と公共事業に着手するのが良いだろう。

 ウォーターセブンは造船の町……ならば、材木をはじめとした運輸業を扱うのがいい。

 原作ではトムが開発した海列車の開通によってサン・ファルド、セント・ポプラ、プッチ、エニエス・ロビーへ行けるようになり、更に物資も豊かになったおかげで(ふう)(こう)(めい)()な造船都市・観光都市へと復活する。

 しかし今はその前……テゾーロがウォーターセブンにひとまず拠点を置いて材木運搬などで財を成すのは決して悪くないだろう。

(まァ、何事もチャレンジが大事だな……)

 ――やって見なけりゃわからない。やらないで後悔するより、やってから後悔した方がまだマシだ。

 そう感じ、テゾーロはステラの手を握って船へ乗り込んだ。

 行き先は、ウォーターセブン。


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