ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
投稿今年で最後最後詐欺になったらごめんなさい。
聖地マリージョア「権力の間」。
荘厳な雰囲気漂うこの部屋で、五老星はある兵器に関する話をしていた。
「古代兵器〝プルトン〟の設計図……やはり実在していたか」
「兵器だからな。設計図が存在してもおかしくはあるまい」
プルトン。
それはかつて、ウォーターセブンで造られた造船史上最悪の戦艦。一発放てば島一つを跡形も無く消し飛ばす程の威力を持つと言われ、〝
五老星を筆頭とした世界政府の中枢は、プルトンが世界を滅ぼす力を持つ戦艦であることも、〝
その上で先日設計図の報告をしたスパンダムは見事と言える。ただ、親が親なのでそこは心配だが。
「プルトンが暴走的に使用された時の「抑止力」の為に、設計者は設計図を後世に残した……そう考えるのが妥当だろう」
「仮に奴の報告に虚言が混じったとしても、ウォーターセブンに設計図が存在する可能性は極めて高い。プルトンはウォーターセブンで造られたのだからな」
大海賊時代が開幕して、10年が経とうとしている。
今は海賊王ロジャー最大のライバルであった〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートが増え続ける海賊達を押さえつけながら君臨しており、海軍もテゾーロ財団から提供される資金で年々軍拡され、世界のパワーバランスはどうにか均衡を保っている。それでも海賊達は力をつけ数を増やしており、より強大な力を得ることも考えねばならない。
そこにスパンダムは、古代兵器の一角・プルトンの設計図を手に入れるべきと主張した。プルトンの設計図が実在している以上、反政府勢力の手に渡る心配を消すためにも世界政府が所持して活用すべきだと。
五老星は「一理ある」として設計図を手に入れてみるよう指示をした。だが指示をしたのはいいが、問題が一つ生じた。
「問題はテゾーロとの対立だな……」
五老星の一人が、溜め息を吐く。
そう、今ウォーターセブンにはテゾーロがいる。しかもその付き人にサイファーポールの諜報員を兼ねているサイもいるのだ。
トムの罪状をめぐって二人が対立するのは、非常に厄介だ。ただでさえトムとテゾーロは今後の世界に必要とされる人材――強大なプルトンの設計図と天秤にかけた場合、さすがの五老星も頭を悩ませてしまう。
「しかし、所詮スパンダムは親譲りの俗物だ……失敗する可能性の方が高い。プルトンの設計図はともかく、テゾーロと対立すれば被害が出るのは我々の方だ」
「うむ。テゾーロを切り捨てれば、それこそ政府への不信感を煽りかねん」
スパンダムを取るかテゾーロを取るか――五老星にその選択を迫られたら、間違いなくテゾーロを取る。
テゾーロの資産は政府に回されており、それを断ってしまえば経済面での悪影響が露骨に出る。それにテゾーロとゴルゴルの実の能力が海賊達の方に渡れば、世界の均衡を大きく崩し勢力図も秩序も滅茶苦茶になりかねない。何よりもイムがテゾーロに興味を示して注目しているのだ、機嫌を損ねればタダでは済まない。
「……スパンダムの案件は、奴の行動次第と言ったところだろう」
「そうだな。テゾーロと対立しなければそれでよし……あとは結果待ちだ」
五老星は「スパンダムの行動と結果次第で処分の有無を決める」として、次の議題へと移った。
*
ウォーターセブン。
海列車の開通以降豊かになっていったこの町で、テゾーロはある人物と電伝虫で通話していた。
「ええ……はい、そのつもりです。それではまた……」
通話を終え、溜め息を吐くテゾーロ。
その様子を不審に思ったタナカさんは、声を掛ける。
「どうかなさいましたか?」
「コング元帥から海軍に提供している軍資金の額を増やせってよ。しかも前回の倍にしろって……」
テゾーロは「全く何に使うんだか」とボヤきながら頭を抱える。
海軍へ提供している軍資金の用途は、テゾーロ財団に書類で渡されており逐一確認している。大抵は軍艦と武器の維持費や各支部への配分が過半数を占めており、かつての政府の役人のように私腹を肥やしている様子は見えない。
だが、一つだけ気掛かりな点が存在する。書類には「その他」という項目があるのだが、それが一体どういう内容なのかわからないのだ。海軍側は海兵のボーナスだと主張しているが、軍というものは政府から給与を与えられるシステム。世界政府直属の軍隊なので、給料は政府から貰っているはずなのだ。
それを踏まえると、「その他」の項目の資金は別のところで使われてると考えられるのだ。
(考えられるとすれば、パシフィスタとかか?)
パシフィスタ。
それは平和主義者という意味の名を持つ、ベガパンクにより開発された「人間兵器」。ロボットの類ではなく人間――〝暴君〟の異名で知られる海賊バーソロミュー・くま――がベースのサイボーグであり、その戦闘能力は白ひげ海賊団傘下の海賊達でも倒すのに苦労するレベルだ。
製作費は軍艦一隻分に相当するが、その鋼鉄以上の硬度を持つ体と金属をも溶かすレーザーは海軍にとって大きな戦力であり、同時に世界中の悪党達の脅威として認識するに十分すぎる代物だ。
(
そう……絶対的正義を掲げる海軍にも、自らの利益のみを目当てに非道な行いをするチンピラ海兵が混ざっている。
東西南北の支部とはいえ、〝ノコギリのアーロン〟と癒着して賄賂を受け取りコノミ諸島の支配を黙認していた海軍支部大佐――海軍本部大尉に相当する地位――のネズミや、自身が駐在するシェルズタウンを恐怖支配していたモーガンのような海兵がいたのだ。財団から莫大な額の金を提供されていることを利用して、どさくさ紛れに搾り取っている輩がいてもおかしくない。
(だが今は目先の問題が優先だ。海列車がこれで完成した以上、トムの無罪は確定――あとはその裁判を邪魔する〝ゴミ野郎〟の対処をしねェとな)
そう、現在の優先順位ではトムの裁判に横槍を入れる
彼は
その時――
「テゾーロさん、面白い情報を得ましたよ」
「サイか。面白い情報ってのは?」
「これはもしかしたら予想通りかもしれませんが……トムの無罪を無かった事にしようとする連中がいるそうです」
テゾーロはそれを聞き、呆れた表情を浮かべる。
どうやらスパンダムはすでに動いているようだ。
「今から一週間後、司法船が到着します。その際に襲撃を仕掛け、それをトムに擦りつけようという腹積もりのようです」
「何と……!」
サイの報告に、タナカさんは絶句する。
あの偉大な船大工をなぜ逮捕したがるのか――それが理解に苦しむからだ。
「ハァ……目的が出世狙いかどうかはともかく、黒幕はわかってるのか?」
「ええ、CP5のスパンダム主官です」
「……マジかよ」
予想通りの返答に、テゾーロは笑ってしまう。
サイが有能なのかスパンダム達が無能なのか、もはやわからなくなってしまう。
「一週間、か……なら準備はできるか」
「「え?」」
「舞台を整えるんだよ……せっかく向こうが来てくれたんだし、ここいらでお灸を据えてしっかりしてもらわねェと」
そして、一週間が経過した。
原作の方読んだんですが……花魁・小紫太夫、モモの助の妹である日和じゃないかな?
あとキッド、赤髪海賊団を相手によく生きてられたなァ。赤髪海賊団は傘下無しで「海の皇帝達」の一角なんだけど……。