ONE PIECE ~アナザー・エンターテインメンツ~ 作:悪魔さん
できれば平成終わるまでに原作開始のところまで行きたいし。
司法船襲撃未遂事件から、一年が経過した。
スパンダムによる司法船襲撃計画は、テゾーロを介してモルガンズに情報が渡り「世界政府の一大スキャンダル」として世界中に伝わった。当然このニュースは諜報機関の汚点を晒すことになり、一部の新聞社では「これは氷山の一角に過ぎない」と隠蔽された不祥事がもっとあるのではと主張しだした。こうした世論にさすがの政府もこれはマズイと思ったのか、事態収拾の為に「掃除」をはじめた。
まずスパンダムをCP5主官から強制退任させ、後の調べで父親・スパンダインが役職につかせたことが発覚したため任命責任としてスパンダインも政府から追放した。スパンダインはCP9司令長官であると同時にここ最近はCP-0への昇格が決まっていたが、当然却下された。CP9の司令長官はラスキーが就任し、CP9の内部改革をする方針とのこと。
次に行ったのはサイファーポール内の改革。サイファーポールはCP-0を除くとCP1からCP8――CP9は一般人には知られていない裏の組織であるため――まであるが、それぞれの部署に主官が置かれておりそれなりの権限がある。スパンダムの件は彼自身の卑劣さも影響しているだろうが、権力の多元化に問題があると判断して各部署のCP主官を廃止した。代わりにCP長官という新たな役職を配備し、組織を再編成した。
そして仕上げに、サイファーポール内の改革と同時に極秘調査・逮捕を始めた。逮捕された面々は全員権力を握ってた各部署の大物であり、汚職・不正に満ちていた。ある意味でブラック企業と化していたサイファーポールの各部署は、情報操作と隠蔽を
こうした経緯によりサイファーポールは生まれ変わり、原作本編とは異なる形で活躍することになる。
新世界。
グラン・テゾーロ計画が着実に進行する中、テゾーロはアオハルとタタラを呼び出した。
「お前らを呼んだのは……いい加減わかるよな?」
「マリージョアの件……ですね?」
「その通りだ」
テゾーロは二人に話し始める。
つい先日、テゾーロはシャボンディ諸島で諜報活動をしていたサイからある報告を聞いた。それはフィッシャー・タイガーと思われる魚人が人目を避けながら、武器を購入しているという情報だ。
今のシャボンディ諸島は
そんな中、タイガーは人目を避けて武器を買い集めているという情報が飛び込んだ。襲撃計画を目論んでおり、近い内に起こすことは明白だ。実際に襲撃すれば、甚大な被害が生じ死傷者も出てもおかしくない。
「襲撃も秒読みになってきた。海軍と交戦すれば、甚大な被害が生じるはずだ」
「要はそれを防ぐためにもおれ達に出張れってこと? ギル
「そこまでわかれば、もう十分だな」
テゾーロはサイが得たタイガーの情報を伝える。
元々魚人族という人種は人間の十倍の腕力を有し、魚の能力を併せ持つので海上戦で圧倒的に有利。さらに「魚人空手」と「魚人柔術」という武術を操る者もおり、陸上においても優れた戦闘力を発揮する。それを踏まえ、タイガーは荒くれ者揃いの魚人達の頂点に立てる程の実力者だという。
「単騎でも油断したら大ケガするってことか……」
「そうだ。魚人本来の力に加えて覇気が操れるとしたら、かなり厄介だ」
「タイガーは討ち取ればよいのですか?」
「いや、お前ら二人――特にアオハルが下手に暴れれば、マリージョアが火の海になる。最小限の被害で事を収めなければならないんだ、タイガーを追い払うか拘束する程度で十分だ。もっとも、これは政府が今まで黙認してきた〝闇〟のツケを払うような事態だからそこまでする必要は無いかも知れないが」
テゾーロは「痛い目に遭わなきゃわからない連中だし」と溜め息交じりに呟く。
人身売買は世界的に禁止であるのにもかかわらず、それを黙認し続けてきた――というよりもほとんどグルに近い――世界政府。ここらで一度痛い目に遭い、猛省を促す必要があるだろう。
「そういう訳だ。すぐにでも出発し、クリューソス聖と面会してくれ。話は通してある」
「「了解」」
「……頼んだぞ」
*
数日後。
「……そういえば、私とアオハルがコンビになるのは初めてでは?」
「そういやあそうだったね」
マリージョアの郊外でテントを張り、お茶を飲むアオハルとタタラ。いくら離れてるとはいえ、世界政府の本拠地・聖地マリージョアで野宿をするのは後にも先にもこの二人だけだろう。
そんな二人は、タイガー襲撃に備えて最後の作戦会議をしていた。
「アオハル、やはりここは二手に分かれましょう。あなたは新世界側に待機して下さい、魚人島はこの聖地マリージョアの真下と聞きます。どちらかから必ず現れるかと」
「まァ、さすがに空は無いだろうしね」
「目的は何であれ、恐らく相手は目立たぬためにも単独の夜襲を仕掛けるでしょう。奇襲は
「――その目的なんだけどさ、奴隷解放だったらどうする?」
「!」
アオハルの一言に、顔色を変えるタタラ。
テゾーロ財団による活動でシャボンディ諸島の
確か襲撃すると見なされているフィッシャー・タイガーは冒険家だが、数年間奴隷だった過去があった。もしかしたら生き地獄を味わう奴隷達を解放しようと考えているのかもしれない。
「そういえばギル兄は、フィッシャー・タイガーのことを海軍やサイファーポールに伝えてなかったな……」
「――まさか、これを機に奴隷制度の撤廃を!?」
そう声を上げたタタラに「考え過ぎかもね」と一言加えるアオハル。
だがマリージョアが襲撃される可能性があるというのに、ここ最近の
事実、テゾーロは奴隷制度と人身売買に対し強い不快感を示しており、人が人を虐げるという負の連鎖を断ち切りたいという思いを持っている一面もあった。彼の野望である世界的な革命は、その奴隷制度の撤廃も含むのだろう。
「………これさ、おれの
「? どういうことですか?」
「ギル兄はもしかしたら……」
――フィッシャー・タイガーがマリージョアを襲撃して大暴れすることを事前に知っていて、それを利用しようとしているのかもしれない。
アオハルの独り言という名の推測に、タタラは絶句する。
利用しようとしているのは、理解できなくもない。テゾーロは世界政府を「痛い目に遭わなきゃわからない連中」と評していることから、恐らくタイガーによるマリージョア襲撃を機に五老星に人身売買の取り締まりの厳格化や奴隷制度の撤廃を訴えることだろう。
問題なのは「タイガーのマリージョア襲撃を事前に知っていた可能性」の方だ。〝見聞色〟の覇気は極限まで鍛えると「少し先の未来が見える」という一種の予知のレベルにまで達するというが、それはあくまで
「……ダメだ、考えるとややこしくなる」
「……」
「でもまァ……どっちにしろギル兄はギル兄なんだし、真相なんてどうでもいいけどね」
アオハルは立ち上がり、タタラの言われた通り新世界側へと向かった。
(……テゾーロさん。あなたが
そして、運命の夜が来た。
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