艦隊これくしょん ー空に誓った約束ー   作:ジャスSS

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第二話 転生

――気がついた時には、体が横に倒れていた。

 

視界には雑草ばかりが見える。

 

(……?)

 

天国とは思えなかった。

 

天国であれば、もっと心地よくさせる何かがあるはずだ。

 

それは雰囲気であったり、一つ一つの物体から出る質感だったり――では、ここはどこなのか。

 

ただひたすらに考え、考えぬいたが、大した答えは見つけられなかった。

 

そんなことよりも動いた方が良いと感じた彼は、横たわってる体を起こし、周りを確認した。

 

周りを見渡すと、赤レンガの建物が見つかった。

 

彼の脳内で、海軍という言葉が連想される。

 

艦これ好きの彼からすれば、海軍という言葉が目の前にぶら下がるのはやや嬉しさを含むのだ。

 

自らの身辺確認よりも目の前の物を選んだ、青年――海原海斗(うなはらかいと)は、その建物へと向かった。

 

 

 

物の入り口は、横須賀にある海軍幹部候補生学校に近い匂いがする。

 

彼自身もどうやらそう思っていたらしく、入り口の前で思い出すような仕草をしていた。

 

周りを見渡してみると、何人かの人―制服姿の男達―が外で騒いでいる。

 

何が起きているか、彼はやはり気になってしまったが、あくまで気になる程度に留め、その中に入っていった。

 

建物の看板には、"海軍幹部候補生学校 横須賀校"と書かれてあった。

 

 

 

――何気なく学校を歩く海原。

 

だがある時、あるポスターを見てしまう。

 

なんと、そこに描かれているものは、なんとあの深海棲艦の姿。

 

艦これを知っている彼からすればこの紙切れは衝撃と、不信感を運んできた。

 

更に、それは複数あり、それぞれのポスターには別々の深海棲艦が写っていた。

 

そんな彼に、一つの可能性が思い浮かんだ。

 

それは、ここが艦これの世界であることで、彼は転生してここに来たということだ。

 

若干夢見すぎなように見えるが、彼はもう既に確信――というより、過信しているようだ。

 

だが、寧ろ彼は動揺していた。

 

元の世界に戻れないこと、この世界には知り合ってる仲間などいないこと、そして、何故ここに来れてしまったのか、ということがあるから。

 

 

 

複雑な感情を心に抱きながら、彼は自らの寮へと辿り着いた。

 

ここには、数人程の仲間がいるはずだが、実質的に言えば初対面の相手。

 

先程までの感情が嘘みたいに、彼の心は混沌に包まれていた。

 

 

 

恐る恐る、ドアを開ける。

 

一つ一つの動きが、彼の不安を丁寧に表現していた。

 

だが、目の前に広がっていた景色は想定の範囲外をゆく物だった。

 

ベッドは一つしかなく、部屋は小さい。

 

しっかりと綺麗になっているのがまだ救いか。

 

まさかの個人寮に、彼は混乱の渦に入ってしまった。

 

そんな中で、ベッドの上にちょこんと置かれていた紙を発見する。

 

そして、その紙には卒業証書の文字が書かれていた。

 

このことはつまり、自分はこの学校を既に卒業しているということを示している。

 

しかし、この卒業証書には驚愕の事実が紛れ込んでいた。

 

「……え、首席……!?」

 

思わず閉ざされていた口を開けてしまった。

 

しかし、海軍学校の首席ということを鑑みれば、致し方ないのも頷ける。

 

 

 

海原が部屋で棒立ちになっている中、部屋内のスピーカーが突然音を上げる。

 

「……出席番号3番。 学校長室へ来て下さい」

 

突然の呼び出し。

 

人生で一度は経験し、一瞬で自らを恐怖の底を陥れる瞬間だ。

 

しかも、ただでさえ心が不安定な海原だ。

 

並の人間なら耐え難い不安感を伴っていると想像できる。

 

が、行かないことの方がより大変だと彼は自覚していた為か、なんの躊躇いもなく部屋を後にした。

 

 

 

学校長室の前に到着する。

 

ドアは高級そうな木目調であしらわれていた。

 

ドアをノックする。

 

「出席番号3番、海原海斗です」

 

自らの名前と出席番号を告げると、ドアの向こう側から声が聞こえてきた。

 

「入ってどうぞ」

 

その言葉を受け、厳かなドアを開ける。

 

開けた先には、いかにもな老人が一人、いかにもな秘書が二人いた。

 

「……来たか。 では、早速君の配属先を伝えよう」

 

「はい……はい?」

 

またも声を上げてしまった。

 

だがやはり、いきなり呼び出されて、訳も分からぬまま配属先を伝えられる――色々なことが詰め込まれていて、大変だ。

 

そんな海原に、対する三人は気にも留めなかった。

 

「海軍幹部候補生学校第二十五期卒業生、海原海斗。 貴官を新潟鎮守府司令長官に任ずる」

 

この瞬間、彼の運命の歯車は動き出した。

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