艦隊これくしょん ー空に誓った約束ー   作:ジャスSS

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第二十六話 狂宴

――「あら、あなた達も呼ばれていたのね」

 

昼下がりの鎮守府、呼び出しを受けた蒼龍と飛龍が向かった先の執務室には、加賀と瑞鶴の二人が既にいた。

 

「その様子だと、加賀さん達も呼び出されたんですね」

 

「えぇ。 提督の秘書艦さんに」

 

そう言うと、真顔のまま吹雪の方を向いた。

 

「ほんとなら司令官に呼んできてほしかったのですが、幾分食べるスピードが遅いもので……」

 

「中々に衝撃的ですね……あっ、だから今いないのか」

 

二航戦の二人が見渡すと、海原の姿は確かになかった。

 

「今はトイレですね。 さすがにそこまで遅くはないですよ……と、来ましたね」

 

部屋のドアが開かれ、遅れてやってきた海原が姿を現す。

 

海原を見るやいなや、五人の艦娘は即座に敬礼をする。

 

「待たせてすまない。 それじゃあ始めようか」

 

「そうですね、始めましょう。 今回皆様にお集まりいただいたのは次作戦についてのことです」

 

「次作戦……?」

 

「はい。 まずはこちらをご覧下さい」

 

予め用意されていたホワイトボードに地図を貼り、そこにピンを差し込んでいった。

 

「ここ――我が鎮守府が目標としている佐渡鎮守府に軍事侵攻の兆候が見受けられました。 とは言っても新潟に向けてではなく、東にあるこの粟島に向けてだと思われます」

 

「粟島……確か総人口300人程の小さな島だったかしら。 でも何故?」

 

「例え面積が小さくても軍事基地化するには十分なのでしょう。 奴らからすれば。 そしてここを占領された場合、人類からすれば非常に大きな脅威となります。 地図をご覧下さい」

 

四人が目を向けた地図では、粟島のところにピンが突き刺さっていた。

 

「……かなり本土に近い」

 

「そうです。 ここをしっかりと守りぬかなきゃ、次は本土にて戦闘が起こることとなります」

 

「つまりは、深海棲艦の上陸部隊を潰せばいいんでしょ」

 

「そうなりますね。 もちろんそこには護衛部隊というものが存在しますが」

 

「質問いい? 粟島には守備隊置いてるの?」

 

「私達の一存では決められません。 一応大本営に通達しますが、それで動くかというのはわかりません」

 

吹雪の言葉に、全員が驚きの表情を見せる。

 

中でも瑞鶴は興奮した様子で吹雪に噛み付いた。

 

「ちょっと、それはどういうことなのよ。 守備隊いなきゃほぼ無理難題押し付けられてるじゃない」

 

「……私達どもで色んな所に働きかけてみます。 なるべく守備隊置けるようにしますから」

 

「でもさ……あまりにも敵の動きが不透明すぎるよ。 これじゃどこからも増援出してくれないんじゃないの?」

 

「守備隊だけなら酒田に沢山いる。 陸戦隊の数は心もとないが、最低限の数は用意してあるはずだ」

 

山形県西部を指さし、海原が話に割って入った。

 

「それなら大丈夫……だと良いのだけど」

 

「まあ、私達が頑張ればいい話でしょ! 簡単なことじゃない!」

 

「そう……結局は私達の努力が結果を左右するわ。 それに、粟島にいる数百人の島民には、それぞれの思い出があの島に詰まってるはず……力を持ってる私達が頑張らなくてはいけないわね」

 

「つまりはそういうことになりますね。 ところで、ドアの向こうで小さな女の子が集まってるように見えますが……」

 

四人がすぐ後ろを振り向くと、そこには沢山の駆逐艦娘が。

 

今か今かとドアの前でじっと待ち続けている。

 

「それじゃあ、私達はここで……空母組だけで話しておきたいこともありますので」

 

「お疲れ様です、皆さん」

 

海原に向けて一礼し、空母の四人は部屋を出ていった。

 

それに入れ替わるように八人の駆逐艦娘が入ってくる。

 

「失礼します。 第十一駆逐隊、白雪、初雪、深雪、叢雲、参りました」

 

「一航戦、秋雲、曙、潮……それと雪風、参りました」

 

「うむ。 今回みんなを集めたのは今度発動予定の作戦のことなんだが――」

 

 

 

 

 

「――というわけだ。 何か質問などは?」

 

「一ついい?」

 

真っ先に手を挙げたのは叢雲。

 

「夜戦に持ち込んでの撃滅はしないの? 航空攻撃だけじゃ不十分に思えるんだけど」

 

「先の海戦により、敵艦隊の力は衰えていると考えています。 もちろん幾分かは戦力を取り戻してるでしょうが、さすがに五月頃の戦力は有していないでしょう」

 

「それに奴らからすれば攻撃戦だ。 海では昼間に戦い、攻略する粟島では夜戦を仕掛けてくるだろう。 新潟沖海戦での夜戦がトラウマになっているだろうし」

 

確かに、先の海戦において、新潟艦隊の活躍は目覚しく、深海棲艦からすれば苦く――そして驚愕とも言える敗北であっただろう。

 

それに比べ、昼戦ではその力が拮抗していたと言える内容で、深海棲艦側がそう判断するだろう。

 

「まあ、俺たちの裏をかく可能性だって否定できない。 潜水艦隊によると空母機動部隊の出撃が見込まれているが、まだ断定はできん。 一応夜戦部隊の編成も行うぞ」

 

「なるほどね。 分かったわ」

 

「じゃあ……はーい!」

 

次に手を挙げたのは一航戦秋雲。

 

「空母機動部隊での出撃理由は分かったし、空母も四隻いるってことで十一駆も護衛に加わるのは分かるけど、なんで雪風もいるんだ?」

 

「あ、それは気になってました! なんで私が呼ばれたのでしょう、しれぇ?」

 

小動物の如き顔つきをしながら、首を傾げて聞く雪風。

 

「単に護衛任務に適していると思ったからです。 蒼龍さん飛龍さんが艦隊に加わったこともありますし、将来的には直属の護衛艦を用意すべきかと思いましたので」

 

「ん、それはつまり今の一航戦護衛三人に雪風を加えて二つに分けようってこと?」

 

「そういうことになりますね。 あくまで案の一つですから、今は二航戦に置いている蒼龍さん飛龍さんを一航戦に異動させるというのも案の一つとしてはあります。 直属の護衛を置かないという選択肢もありますし」

 

「今の段階ではなんにも言えないってことね……まだ実験段階ってことかな?」

 

「そういう感じです」

 

納得した秋雲は一歩後ろに下がって、これ以上の疑問はないというサインをとった。

 

「……他に質問ありますか?」

 

吹雪の呼びかけに、誰一人反応する者はいない。

 

「では、本日はここまでで。 後日また呼びますので、頭に留めておいてください。 ではお疲れ様でした」

 

そう言われた八人の駆逐艦娘はそれぞれ敬礼をして部屋を出ていった。

 

「……さて、次は夜戦部隊ですが……」

 

「編成考えてないんでしょ? まあ今さっき決めたことだから仕方ないと思うし、また後に呼び出せばいいと思うけど」

 

「そうしましょうか。 そもそも夜戦部隊の活躍機会があるかどうかが不明瞭ですがね」

 

「それもそうだな。 とりあえず今日はたんまりと仕事残ってるし、早く終わらせて寝よう。 緊張しっぱなしで生活しなくちゃいけないからな」

 

「了解しました」

 

 

 

 

 

――ここは駆逐艦白雪の部屋。 駆逐隊司令の白雪は何故か他の娘よりも部屋が広いのだが、その広さから何らかの集いの際にによく利用される。

 

白雪からすればとんだ迷惑ではあるが。

 

「なんでいつもここで集めるの秋雲ちゃん……確かにここは広いけどね」

 

「だからここにするんでしょうが。 それにね、白雪の部屋って全く散らかってないし」

 

「秋雲ちゃんが散らかしすぎなの。 部屋が汚いと言われてる瑞鶴さんが呆れかえるほどらしいんだって?」

 

「まあね!」

 

「なんで自信満々に答えるの……」

 

瑞鶴同様、秋雲に呆れ返ったところでこの集まりの趣旨を語っていく。

 

「えーと、初めてチームを組むから親睦を深めようという理由で集めたんだよね?」

 

白雪と同格とも言えるリーダー格な深雪が問う。

 

「そそ。 軍事行動っていうのは連携が必要だからねぇ」

 

すかさず叢雲がツッコミを入れる。

 

「艦娘になってから一年のあんたが何語ってんのよ……そういや曙は?」

 

「ぼの? ぼのはね……」

 

「曙ちゃんは……部屋に籠るって、言ってた……」

 

なにやら怖がっている潮。

 

「……潮ちゃん、大丈夫?」

 

「……」

 

首をコクっと縦に振る。

 

「どこも大丈夫に見えないんだけど……ねえ秋ぐ――」

 

「まあまあ! 今は親睦を深める場だよ!」

 

「でも、互いに互いのことを理解しないといけないんじゃ――」

 

秋雲に左手をポンと叩かれる感触を感じ、すぐ自らの左手を見るとそこには叢雲の好きなストラップシリーズが。

 

秋雲はいつも見せる笑顔をばら撒いている。

 

(買収のつもりかしら……腹が立つわね)

 

しかし秋雲の笑顔の裏に何かしらの感情を感じ取り、それから先潮を問い詰めることはなかった。

 

(ってかなんで私の好み知ってるのよ……)

 

少し顔を赤らめる。

 

「よし、それじゃ私主催のレクリエーションしてこうか!」

 

「あんた主催とかやな予感しかしないんだけど」

 

「そんな疑わなくたって……酷いよ叢雲……」

 

「これまでの行いを省みなさい……って初雪?」

 

叢雲の隣に座る初雪が何かを察知したように立ち歩く。

 

「なんか発見したのかな? 興味津々に見渡してるけど」

 

「……あった」

 

嬉しそうにそれを見つめる初雪。

 

視線の先には――

 

「……なかなか可愛らしいマンガじゃない秋雲」

 

「あっ! ちょっ、それ返して!」

 

顔を真っ赤にして初雪を追いかけ回すが、初雪はそれを手放さない。

 

「……秋雲ってこういうマンガ好きなんだね」

 

「べ、別に好きってわけじゃあ……」

 

「へぇ。 今度ここにあるやつ色々読み漁ってもいくね」

 

「はあ!? これ以外にないって!」

 

「その顔、嘘ついてるね」

 

「嘘なんてついてなーい!」

 

必死に潔白を証明し続ける秋雲とそれを弄ぶ初雪。

 

当然周囲のギャラリーからしてみれば滑稽な情景に見えるだろう。

 

だが――少しはしゃぎすぎたかもしれない。

 

「失礼しま……うわ、狭い!」

 

「し、時雨ちゃんと夕立ちゃん……念の為聞くけど、ご用件は?」

 

「白雪ちゃんが思っていることっぽい! ちょっとうるさいっぽい!」

 

「ごめんね時雨ちゃん、夕立ちゃん……ほら初雪ちゃん、そこらへんでおしまい! 秋雲ちゃんも!」

 

「う……ごめんね二人とも」

 

「ごめん……」

 

「分かってくれたら問題ないよ。 にしても、とても楽しそうだね……ね、夕立?」

 

「うんうん! ねえ白雪ちゃん、私達も混ぜてくれないかな?」

 

「う、うん! いいよね秋雲ちゃん!」

 

「おお、私のために参加してくれるなんて……」

 

「あんたのためなわけないでしょうが!」

 

叢雲がツッコミを入れると、部屋に笑い声がこだまする。

 

結局、白雪の部屋には曙を除いた十一人が居付き、またも怒られることになるとさ。

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