――今、目の前で起きている事象が何故起きてるのかを説明することは非常に難しい。
何故二次元の住人が目の前にいるのか――
それを説明することだってできないのだ。
そこに変な言葉を投げかけられてしまったらどうなるか。
「あ、あの、い、意味がわかんないんだけど」
「……は? いや、言葉そのままの意味だけど」
澄ました顔で答える瑞鶴。
「というか気付いたんだけどさ、さっきから敬語じゃない?」
「え、別にいいのですか?」
「別に……というか逆に敬語だとなんか話しづらいんだけど」
余裕をもった表情の瑞鶴と、緊張した顔の海原。
あまりに対照的だ。
「そ、そうか。 だったらタメ口でいかしてもらうけど。 んで、さっきの言葉の意味って……?」
「ん? あれ? え、あなた知らないの!?」
なにが、と考えても分からない。
だってこの世界のことなんてほぼ知らないから――
「は~、横須賀の首席にもなると艦娘のことはアウト・オブ・眼中ですか……」
「いや、あの」
「……仕方ないから教えてあげる。 この事聞いたらあなたも《聞いたことある!》って言うだろうし」
ここに来てまだ一日。
さらに昨日はほぼ他人との接触がない。
この世界で長いこと過ごしていれば分かることなのか―――
「私も……あなたと同じ、首席なの」
「……そう」
素っ気ない返事。
もしかすると彼はそれに納得したのかもしれない。
「……なんか反応してよ。 恥ずかしいんだけど……」
「あ、ごめん。 ど忘れしてたわ。 今思い出した」
(ま、嘘なんだけどね)
勘が良い人だったらこの嘘はすぐ見抜くだろう。
もし本当に首席であれば――
「……嘘ね」
「あ、バレた?」
「見え見えよ。 そんな嘘」
やはり、気付いた。
「まぁ、別にいいけど。 そんな事私あんまり気にしてないし。 ――というか、やっぱり首席ね。 私のことなんて全く怖がらない」
(戦闘能力は差がありまくるけどな)
海原たち海軍幹部候補生はいわゆる後の《提督》である。
そして瑞鶴たちは《艦娘》である。
艦娘たちを束ねるのは提督で、地位も基本提督が上だが、実際の戦闘能力は艦娘が圧倒的に高い。
「あなたと私、同じ首席同士でいつか同じ鎮守府に配属されるかもね! それなら私、やっていけると思う!」
「それはないね」
「へ? なんで?」
「それは……」
新潟にいるから――というのは恥ずかしかったのであろう。選んだ答えは――
「君がこれからも首席であるという保証がないじゃないか」
「え、なにそれおかしくない?」
それもそうだ。
海原は一緒にならないと《断定》しているのだ。
「……いや、さっきの話は忘れてくれ。」
「そう……なんかよくわかんないけど――ってあっ!?」
何かに気付いた後、食事のスピードを急速にあげる瑞鶴。
(……在校生?)
――「ふい~、もう大丈夫かな?」
時計を確認し、落ち着きを取り戻して呟く瑞鶴。
「……在校生なの?」
「え? あぁ、そうだよ。 っていうか知らなかったの!?」
「……思い出した」
再び嘘をつく海原。
「バレバレよ……まあ追及しないけど」
また救われた――というよりか、元々こういう性格なのかもしれない。
「あ、そうだ!」
何か閃いた瑞鶴は、小悪魔のような顔でこちらを向き――
「これからさ、私模擬戦闘やるんだけどさ」
「見に来ないってことだろ?」
「ご名答。 じゃ、どうする?」
この世界で艦娘はどのように戦っているのか――それを知りたいという知的欲求が働いた。
「あぁ。 もちろん見るさ」
この言葉を受けた瑞鶴は、ニヤリと笑い、海原を先導した。