艦隊これくしょん ー空に誓った約束ー   作:ジャスSS

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第九話 会議

――自信満々に策を語ろうとする吹雪。

 

「司令官、見てください」

 

吹雪は地図のある一点を指差した。

 

「まず、本作戦の概要を復習しましょう。 本作戦の目的は、《樺太周辺深海棲艦の殲滅》です。 その達成のため、深海棲艦に逃げられないよう包囲網を敷きます。 この包囲網において、最も突破されやすい地点、それはどこだと思いますか?」

 

「……宗谷海峡? あそこ狭いし、乱戦になりやすいし」

 

「そうです宗谷海峡です。 あそこは乱戦になりやすいので、例え数量で有利を取ったとしても、不利な側にやられる可能性が十二分にあります。 恐らく、ここにはそこまで人員を配置しないでしょう。 また、数が少なくても勝機があるということから、私たちにもチャンスがあるということでもあります」

 

「なるほどね。 つまり、宗谷海峡で逃げ込んできた深海棲艦を待ち受けて叩くと。 なんか弱いものいじめみたいだな」

 

「こうでもしないといけないんですよ……それに、こういうことをするのは、もう一つの目的があるからなんですよ」

 

「……ほう」

 

「この作戦で明確な戦果を挙げることで、今後国からの待遇の改善を要求することです」

 

その言葉に、思わず怯んでしまう。

 

「……そ、そんなことも考えてるの?」

 

「ええ。 というか、これが一番大事な部分でしょうか」

 

「……なんかその……凄いね」

 

「装備は古いし、数も多くない。 艦娘も頭数が絶対的に足りない。 とにかく、今はないない尽くしなんですよ。 その状況を早く変えたいんですよ」

 

「まあ、気持ちは分かるよ。 確かに、今はないものだらけだ」

 

「とりあえず、国に強さを見せつければいいんです。 そうすれば、いざという時に戦えます」

 

「いざって……例えば?」

 

「……佐渡鎮守府が攻撃されたときとか」

 

瞬間、海原の背中が凍る。

 

それまで笑みを含んだ顔だったが、突如として笑みを失った。

 

「……はは。 そんなこと言うなよな。 怖すぎるわ」

 

「……でも、可能性としては十分あるんですよ」

 

「大体、深海棲艦が佐渡鎮守府を奪ったとして、すぐさま新潟には来れねえだろ」

 

「ここが戦力のない基地だということは偵察で判明するはずです」

 

「国が助けにくるだろ。 本土に上陸されてしまったら国民の士気なんてだだ下がりだぞ」

 

「すぐさま助けにこれないのがいまの兵の配置なんですよ。 防衛は全て佐渡鎮守府に任されているんです」

 

凛とした顔で語る。

 

「それを直すためでもあるんです。 だからこの作戦に参加するんです」

 

「……そんなことまで考えていたんだな……ありがとう」

 

「いえ、これは《戦場に出ない艦娘》である私の役目です」

 

「……吹雪」

 

「はい?」

 

恐る恐る、話していく。

 

「居心地、悪くない?」

 

「……はい? どういうことですか?」

 

「あ、その、戦闘をしないことに対してだけど……」

 

「あー、そのことですか。 それなら大丈夫です。 艦隊の皆さんにはしっかりと理解してもらってますし。 私も、この役目が適任だと思ってますし」

 

落ち着いて受け答えをする吹雪。

 

その声音には、覚悟の念が入っているようにも見える。

 

「……強いな。 吹雪は」

 

ボソッと呟く。

 

「ん? 何か言いましたか?」

 

「いや、気にしないでいい。 それより、作戦について」

 

「あ、そうですね。 とは言っても、さっき言ったことがほぼ全てなんですが」

 

あっさりと話を終わらせる吹雪。

 

「現場での戦術に関しては加賀さんに任せましょう」

 

「そうだな。 俺たちが決めるのは戦略レベルの話だからな」

 

「ただ……」

 

「ただ?」

 

何か思案を巡らす吹雪。

 

その吹雪に問う海原。

 

「一つだけ……戦術レベルの話で加賀さんに伝えたいことがあるんですよ」

 

「ふーん……」

 

 

 

――「以上が本作戦の概要です。――質問はありますか?」

 

翌日、鎮守府での作戦会議が行われた。

 

場所は鎮守府内にある会議場。

 

学校の会議室のような部屋となっており、海原達は一番奥の席に。

 

加賀らは、海原達から見て右手に手前から加賀、長良、如月。

 

左手に手前から神通、深雪が座っている。

 

本来ならば大きい広間の壇上に提督らが立って説明するが、新潟鎮守府は規模が小さいため、こじんまりとした会議となっている。

 

「……はい。 加賀さん」

 

真っ先に手を挙げた加賀を、吹雪が指す。

 

「本作戦は不確定要素が多すぎます」

 

口を開いて一発。

 

勿論、加賀もしっかりとこの作戦を見た上での質問だ。

 

「確かに、海峡での戦いでは、少数でも勝てる可能性は十分にあります。 ですが、こちらが負ける可能性も十分にあるわけです。 また、海峡は狭いので、負けてしまえば一気に私達が沈められる危険性だってあるんです。 敵は高い生産力を持つ深海棲艦――ですがこちらは数が限られてくるんです。 そういった部分は私達が考えるべきですが、この策を考案したのは提督達ですので、このリスクをどのようにして軽減するべきと考えますか」

 

加賀の強い視線が海原に突き刺さる。

 

同じように、吹雪を除く他の艦娘達も視線を海原に送る。

 

それぞれ、思いは同じだろう。

 

「……その質問は私が答えます」

 

この質問に答えるのは、新潟鎮守府の頭脳、吹雪。

 

次は吹雪に視線が集まる。

 

「今回、私はこの戦術を提案します」

 

手短に説明する吹雪。

 

その説明を、加賀らは真剣な眼差しで聞いていた。

 

説明を終え、各艦娘が納得の表情を見せる。

 

「……賭けの要素もありますが、安定する戦術ですね。 この策を実行すれば、リスクは軽減するでしょう。 ありがとうございました」

 

同じく、加賀も納得し、そのまま席に座った。

 

海原、吹雪は安堵し、席に座った。

 

「よし、納得してくれたな」

 

小声で吹雪に話す海原。

 

吹雪はそれに余裕のある声で応える。

 

「この戦術は自信作なんです。 納得してもらえると思いましたよ。 まあ、不安もありましたが」

 

頼もしく感じる吹雪。

 

それは、新潟鎮守府の艦娘全員が感じていたことであった。

 

「……他の質問は?」

 

座ったまま言う。

 

「……はい、神通さん」

 

次に手を挙げたのは、長良と共に艦隊の準リーダー的存在となっていた、軽巡神通。

 

「本作戦は他の鎮守府も参加しているようですが、佐渡以外の鎮守府との交流はあるでしょうか」

 

大人しい神通にしては、珍しい質問――吹雪は違和感を感じ、神通の周りを見回した。

 

(神通の周りに――いた)

 

神通の隣、艦隊の元気印の深雪が顔を赤らめ、下を向いている。

 

吹雪は察したのか、微笑みを深雪に向ける。

 

「吹雪型の四番艦は残念に思うでしょうが……今回、他の鎮守府との交流は、佐渡鎮守府以外、恐らくないでしょう」

 

その言葉を聞いたのか、深雪は吹雪の顔を赤面のまま見やった。

 

一方、吹雪は微笑みを崩さないまま深雪を見る。

 

新潟鎮守府唯一の同型艦同士であるためか、良いコンビとなっている二人。

 

「……はいはい、二人。 姉妹漫才は終了ね」

 

埒が明かないと見たのか、海原が止めに入る。

 

その言葉に応え、二人は漫才もどきを止めた。

 

「……今回は交流がないですが、今後はあるかもしれません。 恐らく」

 

確証のない言葉に渋々納得する深雪。

 

顔は未だに赤らめていた。

 

「……さて、他に質問は?」

 

三度目の問い。

 

この問いに反応する人はおらず、静寂が訪れる。

 

「……では、作戦会議を終了します。 お疲れ様でした」

 

 

 

 

 

――作戦会議後の会議室。

 

既に加賀らはいなくなっており、部屋には吹雪と海原のみとなっている。

 

「……あれ、成功するのかな?」

 

吹雪に語りかける海原。

 

「そうですねえ……リスキーっちゃリスキーですけど、これぐらいのリスクはどこも背負ってるでしょう。 大丈夫です。 誰も沈めさせません」

 

強い信念を示した吹雪。

 

"誰も沈めさせません――"

 

この言葉は、海原の頭に常にある言葉だった。

 

またも聞くその言葉に、海原は安心と不安が入り交じった気持ちを抱く。

 

「……俺も、沈めさせる気なんてないから。」

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