東方転生伝 ~もう1人のスキマ妖怪~   作:玄武の使者

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第2話 「遭遇」

第2話「遭遇」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焔月Side

 

 

「すぅ・・・すぅ・・・」

 

 

乱れていた竜脈を整えた後、ゆかりは枯れた樹の幹を枕代わりに眠りについていた。

慣れない作業に疲れてしまったのだろう。規則的な寝息が静かな夜空に響いている。

 

 

「よく、寝てる。」

 

 

焔月はゆかりの顔を覗き込みながら、クスッと微笑みを漏らした。

 

 

「焔月。」

 

 

「蒼月?何処に行ってたの?」

 

 

「周囲に妖怪が居ないか見てきた。」

 

 

そっか。そういえば、この時代は妖怪がまだ普通に生きてるんだった。

前の世界には、もう妖怪なんて空想上の生き物になってるから忘れてた。

 

 

「でも、蒼月。私たちは使い手が居なければまともに戦うことはできない。

下手をすれば、妖怪に襲われて・・・・・・」

 

 

「そんなこと分かってる!!」

 

 

蒼月は怒鳴るような口調で言った。

しかし、ゆかりが眠っていることに気づいて声量を小さくした。

 

 

「だけど、ウチは・・・・・・もう二度と担い手を失いたくない。」

 

 

「・・・・・・」

 

 

もう二度と担い手を失いたくない、か。

私たちの元主、理之神は今の主をこの世界に転生させるために遺された神力を使い果たした。

信仰を失い、神力を使い果たした神様に待ち受けるのは消滅という終わり。

つまり、理之神は・・・・・もう居ない。まあ、あの時代だと消滅する神様は少なくはなかったけど。

 

 

 

焔月は少し悲しげな表情を浮かべた。

ゆかりが居た時代は神様という存在がほとんど信じられていない。神社ももはやパワースポットに近い状態になっている。

科学の発展が古き信仰を否定していった結果、神様は“本当の”信仰を得ることは不可能に近い状況になった。

 

 

「ウチらは使われるのが本能の道具。だから、今度こそ、担い手は守る。」

 

 

「まあ、それには賛成。」

 

 

そう言って焔月は地面に寝転がった。

夜空を仰ぐ焔月の姿を淡く光る三日月が照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

 

八雲ゆかりSide

 

 

翌日は生憎の雨だった。空は厚い雲に覆われて、ザーザーと雨を降らせる。

枯れた植物に恵みを与えるように降り注ぐ雨をゆかりたちは洞窟の中で凌いでいた。

 

 

「うーん・・・いろいろ入ってるね。」

 

 

外に出ることができないゆかりたちは、その時間を利用して名を失った神様に与えられた道具を確認していた。

 

 

・植物大図鑑

・何も書かれてない短冊

・携帯書道セット

・何も書かれていない本

・二つの鞘と身体に巻きつけるためのベルト

 

 

確認しただけで、以上の6点がゆかりのスキマに入れられていた。

 

 

「植物大図鑑は分かりますが、何故短冊?」

 

 

「そっか、焔月は知らないんだね。」

 

 

「何を、ですか?」

 

 

「私の家系は巫女だったからね。独自の陰陽術が使えるの。」

 

 

まあ、八雲式符術の扱いに関しては妹の方が私も優れているけどね。

私も一応覚えてはいるけど、使えない術が多い。私は剣舞の方がメインだし。

 

 

「ですが、主の身は人ではなく妖怪です。なのに、陰陽術が使えるのですか?」

 

 

「それが問題なんだよね~」

 

 

私が知ってる八雲式符術は全て霊力を流し込んで初めて発動する。だから、妖力を流し込んでも発動しない。

たとえるなら、交流対応の電化製品に直流の電流を流すようなモノ。つまり、無意味。

いや、改良すれば妖力とかでも使えるようになるけど・・・私は符術の改良なんてできない。

 

 

ゆかりは苦笑いを浮かべながらそんなことを考えた。

その時、洞窟周囲の探索に出ていた蒼月が戻ってきた。

もちろん、雨を避けるためにスキマに入っていた唐傘を持って。

 

 

「今戻りました」

 

 

「お帰り、蒼月。周囲の状態はどうだった?」

 

 

「妖怪や妖精の姿は見受けられませんでした。竜脈が落ち着いてもこの辺りの生態系が元に戻るにはもう少し時間が掛かりそうです。」

 

 

「そう・・・・・・」

 

 

まあ、外の状態を見る限り竜脈は結構長い間乱れてたみたいだし、一度狂った生態系が元通りになるには永い時間が必要になる。

下手をすると、もう元の状態には戻らないかもしれない。

 

 

「それよりも、今がどの時代か分かる?」

 

 

ゆかりの質問に蒼月は首を左右に振った。

 

 

「ただ、かなり昔だと思います。麓の方で縦穴式住居と思われる跡があったから・・・・・・」

 

 

「古くて縄文時代。稲作の跡があれば、弥生時代ぐらいだと思うけど・・・・・・・・・・」

 

 

「どっちにせよ、情報が少なすぎます。」

 

 

「そうだね。早合点するべきじゃない」

 

 

そう言ってゆかりは冷たい岩壁に身体を預けた。

雨足が少し弱くなり、雨の音も弱くなってきた。同時に、ペタペタと誰かの足音が雨音に混じって聞こえてきた。

 

 

「焔月、蒼月。」

 

 

「「はい。」」

 

 

ゆかりたちが雨宿りしている洞窟に近付いてくる足音は当然ながら焔月にも蒼月にも聞こえていた。

2人の姿が光の粒子となって霧散した。代わりに、ゆかりの手に二振りの剣が顕現した。

 

右手に握る剣は茜色の刀身が枝分かれしており、刃紋が燃え盛る炎のように浮かび上がっている。

対して、左手に握る剣はスマートな濃い青色の刀身であるが、幅が普通の日本刀よりも少し広くなっている。

 

 

九十九神である焔月と蒼月が本来の姿を現した。

 

 

「・・・・・・」

 

 

近付いてくる足音を警戒するゆかり。

足音はだんだん大きくなり、おそらく10メートル圏内には居るだろう。

 

 

「来た・・・・・・」

 

 

ゆかりの前に現れたのは、齢12ぐらいの少女だった。

顔をうつ向かせているため、顔立ちや表情はわからない。しかし、敵意らしきものは感じられない。

 

 

「・・・・・・」

 

 

「?」

 

 

ゆかりの前に現れた少女の身体がぐらついたかと思うと、そのまま前めりに倒れ込んでしまった。

 

 

「ちょ、ちょっと!!どうしたの!?」

 

 

「・・・・・・」

 

 

ゆかりが問い掛けても少女は何も応えない。生きてはいるようだが、かなり衰弱しているようだ。

少女の身体をよく見てみると、背中に鋭利な刃物で切られたような傷痕――しかも、ついさっき受けたと思われる――があった。

 

 

「っ!!」

 

 

その時、ゆかりは大きな力を持つ何かが近づいてることに気付いた。

雨に濡れることを無視して、洞窟から飛び出したゆかりの前に現れたのは・・・・・・

 

 

「ぐおぉぉぉぉっ!!」

 

 

五本の龍のような首を持つ異形だった。

 




文字数が前作よりも圧倒的に少ない。具体的に言うと1000字くらい少ないです。
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