学園黙示録 〜7日も生き残れたら上々Death〜 作:シータが立ったァァア!!
一人で《奴ら》殲滅作業をしてきたナナシを迎えた言葉は、罵声であった。オレンジ色が此方と、その後ろの紫藤を睨み付けて再度、叫ぶ。
「なんでコイツがいるのよッ!」
何やら、彼女はお怒りの様子だ。まあ、その気持ちは分からなくも無いのだが。
しかし、それでもこれだけの拒否反応が出ているのは異常である。過去に何かの確執があったと見て良いだろう。
しかしそれでも……この場は抑えたほうがいいな。出るか。
「そこま——」
「おやおや、いきなりな歓迎ですねぇ、宮本さん」
ナナシが喋ろうとした所を、紫藤が遮る。コイツはしゃしゃり出る事が好きだなと、ナナシは内心で毒吐く。
そんな内心を知らない紫藤は、更に続ける。
「全く……我々は数少ない生き残り同士なのですよ? こんなのでは、組織としてやっていけませんよ!」
何故かここでも演説をし始める紫藤。しかもそれを願望の眼差しで見つめる生徒にも、反吐が出る。
まあ、ピンク色達には効いていないようだが。
「これはやはり、リーダーが必要ですね。宮本さん達の所のリーダーはやはり、毒島さんですか?」
チラリと紫髪の方をみる紫藤。その視線を気にも留めない紫髪は、作業のように答える。
「いや、私たちにリーダーは居ない。強いていうなら、一番活躍している彼だろう」
そして人差し指をナナシへと向けた。
リーダーと言うのは分からないが、生活拠点を整えたり《奴ら》の掃討を行なったりしているのだから、確かに一番活躍しているだろう。
まあ、リーダーとは程遠いかも知れないが。
「ほう、リーダーが居ない、ですか……。それはマズイですねぇ、実にまずい」
それをキッカケに、悦に入る紫藤。何やら悪い事を企んでいるに違いない。
暫く自分を抱きしめた後、ふと肩を竦めて演説を再開する。
「やはり、リーダーが必要なのですよ! 先ほどの宮本さんのような間違いを起こさないような、リーダーが!」
非常に強い声で演説しているが、言っている事は確かに合っているように見える。
が、ハッキリ言ってそれは間違いだ。間違いが起きない人間なんて居ない。本当に大事なのは、その場や未来を最初に考えて行動できる力である。
「へぇ、でその候補者は一人きりって訳?」
ピンク色がツンツンした態度で睨みを効かせる。やはり、ピンク色もこの男の危険性に気付いたらしい。
流石にこの男は、危険思考過ぎる。
「ええ、そうです。私は教師、あなた方は生徒です。それだけでも、資格の有無はハッキリしていると思いますが?」
その考えならば、もう一人適任者が居るではないか、と一人で思考を回すナナシ。紫藤をどう対処しようか、今はそんな事を考えていた。
「私なら問題が無いように手を打てます! どうですか、皆さん!!」
腕をバッと広げて、過大なる自己アピールをする。この世紀末世界では、実に浮いた行動だ。
しかし、そんな大き過ぎる表面だけの看板は生徒の魅力を惹きつけるには十分なようで。
——パチパチパチパチ。
紫藤が連れてきた生徒の全てが賛同してしまった。見掛け倒しでも、学生相手にはかなりの効果があるらしい。
紫藤はそれを見て、勝ち誇ったような笑顔で最悪の言葉を口に——
「と言う訳で、多数決の結果私がリーダーに——」
「なるとでも思ったか、馬鹿者め」
——する前にナナシが言葉を遮る。そもそも、ナナシは言ったはずだ。
「おい紫藤、俺がここに連れてくる時に言った事、忘れたのか?」
「……えっと、なんの事でしょうかねぇ?」
惚けている紫藤だが、ナナシはこう言ったのだ。
「『俺の縄張りで勝手な事をするな』……もう忘れるなど、貴様は鶏か? あぁ?」
いつの間にか、紫藤の呼び方が貴様に変わっていた。それぐらいには、ナナシも怒っていたと言う事だろう。
紫藤は鶏という言葉に青筋を浮かべた。
「鶏とは、随分な——」
「なんだ、文句があるようだな。ならば仕方ない、他の動物に変えてやろう。アヒル、バッタ、ハエ……どれがいい?」
「……!!」
因みにちゃんと意味はある。
アヒルは
バッタは他人のテリトリーで好き勝手やるクソ野郎。
ハエはナナシの周りで煩く暴れようとしているクソ野郎。
全てにクソ野郎という共通点が付いているのが、ミソである。
「さあほら、やってみろよ。俺という異分子に、問題が無いように手を打てるんだろう?」
殺すのか、追放するのか、それとも放置するのか。何をするのか、実に面白そうな考察である。紫藤という奴のロジック解析でもしてやろうでは無いか。
ナナシは違う意味で何故か面白みを感じていた。
「え、えぇっとですねぇ……」
しかし、何故か言い淀んでしまう。恐らく、最初の部分は考えていたのだろうが、肝心の部分はからっきしだったのであろう。予想大ハズレである。
ならばと、ナナシは違う例題を上げてみる。
「ならば、この場合はどうする? 《奴ら》がこの場に一斉に30体ほどなだれ込んで来た。スピードも早い。どうする?」
因みにこの場合ナナシだったら、ドアを固定してドア窓を破壊、そこからチクチクと近場のやつを排除していく。後はドアを解放し出てきた瞬間に頭を叩き潰したりする。スタミナ回復の意味で交代してやればなんとかいけるだろう。
「ええっとですねぇ……そうだ、ドア付近に机を並べてバリケードを作るのは如何でしょうか! これならば破られる事はないでしょう!」
紫藤のその幼稚な回答は、憐れと言わざる無かった。装備だけでなく、心までも逃げ腰である。30体という数にビビったのか?
因みに、そんな事をすればいつか破壊されてなだれ込み、集団に囲まれてリンチされるだけである。もしもフェラル状態だったら、それこそ終わりだろう。
「ふ〜ん、それだといつかバリケードが壊されて終わるが良いのか? それに食料の確保は如何する、屋上でずっと過ごす気か?」
「むむむ……ならば、一体ずつ囲んで倒していくというのは? これならば《奴ら》を蹴散らせます。屋上からも降りられますよ!」
「あんた、あいつの話聞いてなかったの? 《奴ら》は30体来る設定なのよ?」
すぐさま別の案をピンク色によって潰されていく。その時の紫藤の表情は、絶望そのものだった。まさか横槍が入って来るとは思わなかったのだろう。
その後もいろいろな質問をして行った。食料の確保は? 服の調達・洗浄は? この学校に残って何をするつもりなのか。
結局彼はどれもマトモな答えは出せなかった。教師としての資格はあるようだが、サバイバーには向いてないらしい。
そんな彼の慌てるような姿を見てか、いつの間にか狂信者の数は減っていた。今では筋肉質の男のみが彼の守護をしている。
「——この学校にて救助を待つのは如何でしょう!! 屋上に航空隊に向けたサインを置けば気付いてくれるはずです!」
「ダメだな、それではいつ来るか分からんぞ? 日本中がこんな状況だと仮定するならば、自衛隊の救助優先度は低い。時間だけが過ぎてしまう」
こんな感じで紫藤が出す政策の殆どを潰して行くのだから、最早かわいそうである。
まあ、ナナシはそんな事は微塵も思っていないが。なので、彼は慈悲も無い宣告をする。
「ダメだな、時間の無駄だ。……紫藤、お前は俺の前から消えろ」
「!? き、君は何を言っていんですかぁ!? 数少ない生き残り同士助け合わないと——!!」
「生憎ながら、お荷物はいらない。ましてやバックファイヤでもしそうな危険な奴だからな、そんな奴を仲間と認める訳にはいかない」
次に、生徒の方にも顔を向ける。
「お前らは如何するんだ? 色々なパターンのシミュレーションをしてきたが、紫藤が出した問題の無いように打てる対策とはアレだ。
その上で問うが、お前らはこれからどうする?」
別に、大した意味は無い。紫藤に付いて行くか、ナナシに従うか、それだけである。
因みに、ナナシに従った場合重労働の未来が待っている事は言うまでもない。
「……私はここに残るわ」
「ゆ、夕樹さん!?」
最初に名乗りを上げたのはカチューシャで前髪を上げた少女だ。自ら重労働の道を進むとは、微笑ものである。せせら嗤いでもある。
そんな少女の言い分は、こうだ。
「先生は大人だからちゃんとした判断を出来ると思ったのだけれども……さっきの会話を聞いて、考えて直したわ。先生の場所じゃ、生き残れる気がしない」
「そ、それじゃあ
確かにそうだが、ナナシはゲームを開始する前は会社やら何やら思っていた記憶がある。会社名などは思い出せそうにないが、恐らく精神年齢で言えば彼は立派な社会人だろう。
「学生でも、頼りになるわ。校庭に置かれた罠の効果を見たでしょ。校庭にいた《奴ら》を一掃出来る手段を思い付くような人物なのよ、彼は」
まあ確かにアレを思い付いたのナナシだが、7DTDをやっていなかったら思い付けなかった戦法だ。最終的にはゲームが偉大と言う事になるだろう。……現実でソレを実行できるかどうかは別にして、だが。
カチューシャがチラリと此方を振り向いた。
「それに、校舎内には《奴ら》が全くと言っていいほど居なかったわ。あの罠の事を見るに、貴方なんでしょう? あれも」
「まあな」
アイテム回収も兼ねて、近隣の《
「これでハッキリしたわ。彼には行動力がある、私達と違って力もあるわ。先生も大人として精一杯やってくれたけど、全て逃げ腰。彼のように身の回りと安全を開拓するのとは、訳が違う」
いや、放浪者プレイだったらその考えはあっているんじゃ無いか、とナナシは心の中で否定した。
放浪者であるが故に物資は必要最低限の物しか持てない。物資や体力を節約をするのは放浪者の中では、当たり前と言える。
因みに、立て篭もり派だったら防御装置なしでの逃げ腰はただのバカである。
「皆はどうするの。先生に付いて行くの? ……それとも、残る?」
「俺は先生に付いて行くぜ! 少なくとも、そこの仕切り野郎よりはマシだ!」
カチューシャの問いかけに最初に答えたのは、金髪筋肉だ。わざわざ此方を指差してまでご指名するなんて、また偉そうな奴である。というか、マシとはなんなのか。それは紫藤にちょこっとダメージが入っていると思うのだが?
それに比べ、周りの反応は真逆であった。
「私も残る。なんかナナシくん、問題に気付いたらスグに手を打ちに急行しそうだし」
「確かにそうね。一日経たずに学園の《奴ら》を全部倒しちゃうし……うん、じゃあ私も残るわ」
次に名を上げたのは赤髪ショートと若干青い髪にメガネを掛けた少女の二人組。確かにナナシは物資さえあればすぐさま問題を解消するタチだが、流石に買いかぶりではなかろうか。
あくまでナナシは、自分の生活をよくするだけに動くのである。他者など、関係ない。
そんな3人をきっかけに、次々に名をあげる生徒が増える。俺も俺もと、拠点残存派が増えて言った。ナナシから言えば数が多いのは良いのだが、食料はどうするのか。農業やっても間に合うかどうか疑問である。
「まあ、数が多いに越した事はない……な。よし、じゃあお前らは残るという事で良いんだな?」
肯定の意思を告げる紫藤と金髪筋肉以外の生徒たち。想定外だったが、随分と数が増えたものだ。
ナナシは向きを変えて、紫藤達の方を向く。二人の顔は、実に険しいものだった。
「と、言うわけでお前らは出て行け。そして畑にはちかづくな」
畑にはトウモロコシやアロエを植える予定なのだ。邪魔をされては困る。
邪魔をされては困るので言ったのだが……金髪筋肉には飲み込む気がないらしい。
「はんッ! 誰がお前の指図なんて受けるかよ! お前らん所に近付いて邪魔を——」
——ダガァァアアアン!!
瞬間、粉砕音が響く。何か硬いものを質量で叩き潰すような破壊音だった。
そしてその音の発生地点には、ナナシが居た。
「邪魔を、なんだって? もしも邪魔をすると言うのならば……少し、痛い目に合うかもな」
親指をぐいっと立てて屋上のコンクリート壁を指差す。そこには、蜘蛛の巣のように割れて、既にボロボロになってしまったコンクリート壁があった。
ナナシの片手には先端から白い煙を出しているトゲトゲバットもある。一同は、まさか……、という思念に駆られる。
そこで、もう一度ナナシは忠告する。
「もしも邪魔をすると言うのならば、俺は容赦はしない。仲間を守るのは、当然の行為だ。
しかし、何もしないで立ち去るのならば、俺は何もしない。だから……今すぐ、俺の前から消えろ」
ナナシは、バックアタックが嫌いである。
味方と偽って近付いてきた者に初期の頃は、何度も後ろから刺されて終わっている。
故に、ナナシは赦さない。バックアタックをする者も、するような臭いがする奴も。もしもそんな者が現れればナナシが取る行動はただ一つ。
——排除。
ただそれのみである。
因みにバックアタックでかなり痛いのは『真・女神転生Ⅲ』や『ダークソウル』などですね。
前者はバック取られるとクリティカル確定に敵行動回数増加になり、リンチされます。後者はバックスタブ取られて致命の一撃でどゔぁ! されます。7DTDのバックアタックなんて、まだまだですよ。