もしも友沢が投手を諦めるほどの天才の親友がいたら・・・   作:八百屋財団

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試合展開めっちゃ悩んだ。だけど案外書いて内に思いつくものなんやねって。


メンタルと危機

帝王野球部一軍グランド

 

帝王野球部に与えられた一軍グラウンドはプロチームのグランドこそ及ばないが、

アマチュアが扱うグランドの中ではトップクラスの設備を誇っている。

ただしそのグランド内に入れるのは一軍選手及び指導者。そしてスカウトである。

唯一の例外として「新入部員歓迎紅白戦」のみ二軍選手も入る事が出来る。

 

新入部員歓迎紅白戦。

この紅白戦には三つの意義がある。

 

一つ目は即戦力の一軍入り。

設備と指導力、対戦相手にチームメイトもハイレベルな一軍で早期から育てるという事。

 

二つ目はスタメンの意識を高める。

スタメンに座ってるメンバーに新戦力をぶつける事で、ポジション争いを意識させる。

また格下相手への慢心癖や油断をしないようにするという事

 

そして三つ目は新入部員の()()()()()()である。

この紅白戦は紅組には一切のデメリットはない。

出来なくても仕方ない、出来たら幸運と努力の結果だと思う。

そうゆう状況に陥ると人は慢心する。故に普段の実力さえ出せない。

たださえ戦力的に劣っているというのに、慢心でさらに劣化する。

歴代の紅白戦の勝敗はほとんどが紅組の惨敗という形で終わる。

この紅白戦で結果を出せなかった、、或いは出場すら出来なかった二軍選手。

彼らはそのまま二軍で三年を過ごしたり、野球部をやめてしまう者も多かった。

彼らは実力よりもメンタルが弱かった。だから()()された。

 

スポーツに限らず、あらゆる競技においてメンタルの強さは重要である。

特にチームプレイは周りの感情に左右されやすい。

苦境で一人が諦めれば、他の人間の心境にも諦めがよぎるのだ。

故に紅白戦は選手の実力だけでなく、苦境や好機に対する精神の強さを測る試験なのだ。

 

ただしこの紅白戦には一つの欠点がある。それは—————

 

 

 

「これより新入部員歓迎戦を始める。両チーム、礼!」

 

「「「宜しくお願いします!!!」」」

 

挨拶のあと、両チームともにそれぞれの位置へと動く。

 

「雛壇君」

 

「は~い」

 

先攻後攻を決めるじゃんけんの結果、後攻になったためベンチに戻ろうとした雛壇に蛇島が話しかける。

 

「君達は中学では大した記録を残したみたいだけど、高校ではそれは通じないという事を教えてあげるよ」

 

口調こそ丁寧だが、それは挑発であった。

 

「それは勝利宣言ですか~」

 

「ハハハ、そうなるかもね。少なくとも僕は全打席ヒットを打つつもりだけどね」

 

「そ~ですか~」

 

雛壇はいつもと変わらぬ笑顔と、穏やかな雰囲気を纏っている。

 

「なら蛇島先輩には()()で投げますね」

 

一瞬だけ真剣な顔をし、ベンチへと走っていった。

 

「本気で投げるか・・・(生意気だなアイツ・・・)」

 

蛇島は普段と変わらぬスマイルを張り付けたまま、

内心では少し苛立っていた。

 

 

 

 

「プレイボール!」

 

主審の言葉で試合は開始された。

 

マウンドにいるのは当然白組エースの山口。

対する紅組一番バッターは奥居だ。

 

「さてまずはお前から打ち取ってやる」

 

「おーおー、こえ―こえ―」

 

マウンドに上がった山口は普段の倍増しで威圧感を放っている。

そんな山口に対して奥井は軽い口調であった。

 

「まずはこれだ」

 

山口は投球姿勢に移る。

大きく足を上げ、腕を足の裏に隠れるよう地面ギリギリまで下げ、そこから振り下ろすに投げる。

その姿はまるでマサカリを振り下ろすように見える事から・・・。

 

「うっ」

 

バシンッ!

 

「ストライークッ!」

 

マサカリ投法と呼ばれた。

内角の球を見逃し、ワンストライク。

 

「なるほど、こりゃすげーな」

 

「どうした怖気づいたか?」

 

「まさか~、次は当てますよ」

 

「やってみろ!」

 

軽い問答を交わした後再び投球姿勢に移る。

 

「(確かに速いけど、祭に比べればやりやすいぜ)」

 

山口が放ったストレートを、

 

「そこ!」

 

カキンッ!

 

奥居は二球目で捉えた。

 

「何!?」

 

驚きの表情を見せる山口。

打球は投手の横を抜けてセンター前ヒットとなった。

 

「っち。本当はもっと球数削りたかったんだけどな」

 

「ナイス~ノリく~ん」

 

苦々し気な表情を浮かべる奥居。

彼としては一番バッターらしく相手の球を入念に調べたかったようだ。

しかしベンチからは賞賛はあがった。

この紅白戦は五回までの短期決戦な為、一点の重みが多きいのだ。

 

「さてそれじゃあ予定通り行こうか」

 

続いて紅組二番バッターは日下部。

 

「フン!」

 

山口は先ほどいきなりヒットを打たれたせいか、先ほどより投球に力が入っている。

 

「うわっと!?」

 

バシンッ!

 

山口の剛速球の前に日下部はバットを振り回し、腰が引けて倒れてしまった。

情けない姿だろう、しかし仕事はこなしてた。

 

「随分と情けな「里崎!早く投げろ!」!?」

 

「しまった!」

 

白組捕手の里崎は二塁へと送球する。

山口が投げると同時に奥井は一塁を走り出していた。

 

「遅すぎるってーの」

 

しかし里崎が投げだした時にはすでに奥井は二塁に到達してた。

奥居の俊足と日下部のスイングアシストでノーアウト二塁。

 

「うまく行ってよかったです」

 

日下部は一仕事終えたという表情でバッターボックスに戻る。

 

ノーアウト二塁。この状況で二番バッターが行うのはほぼ間違いなく。

 

「もう一仕事行きましょうか」

 

日下部はバントの構えをした。

 

「ッチ!」

 

小賢しいと言わんばかりに山口は剛速球を投げる。

それと同時に内野陣も前進する。完全なバント対策だ。

ただし同時に奥井も走り出す。

 

「残念はずれです」

 

そう言って日下部はバントの構えを解き、ボールを打ちに行く。

 

「バスターだと!?そんな小細工で我の球が打てるか!」

 

驚きながらも怒る山口。

 

「ええ打てませんよ」

 

空振りながらも笑う日下部。

 

バシンッ!

 

ボールがミットに収まる音が響く。

 

「後はサードに・・・って何!?」

 

里崎はサードに球を投げようとするが、すでに奥居は到着していた。

 

「これぐらいは余裕だぜ」

 

「日下部君ナイスアシスト~」

 

余裕そうに笑う奥井を睨みながら、

山口はミーティングルームで見た奥井のとある記録を思い出した。

 

奥居紀明 シニアの試合にて歴代最多となる、一試合で8個の盗塁を決めた「韋駄天」。

 

「中学レベルだと侮りすぎていたか・・・」

 

山口は自身の過ちを戒め、投球をやり直す事にした。

冷静になった山口相手とスクイズ警戒する内野陣。

日下部はあっさりと打ち取られてしまい、ワンアウト三塁。

 

「さてまずは一点だね~」

 

次に迎えるはクリーンナップ。三番雛壇の打席である。

 

 

 




紅白戦は3~4話の予定。一回の文章量が少ないから長くなる。執筆時間が欲しい(切実)。
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