ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

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第一章 運命の選択
第一話 夢


そこは自分の知らないはずの風景。

だが、自分はなぜかこの場所を知っている。

日の登らない暗夜(自国)は、いつも夜に包まれていた。

しかし、ここは太陽が昇る緑豊かな土地。

だが、そこは金属音や怒声、馬のかける音、飛竜の羽根の音、天馬の羽ばたき音が聞こえてくる。

そう、この風景は戦場だ。

闇夜兵と知らない白き兵が闘い、倒れ逝く。

斬られ、焼かれ、吹き飛ばされ、打たれて逝く。

 

自分はなぜか、自国(暗夜)と向き合っていた。

自分の後ろから、

 

「カムイ!」「カムイ……姉さん!」「カムイ姉様!」

 

自分の名が呼ばれる。

彼らを見ると、自分は彼らを知らない。

でも、彼らはどこか懐かしく、愛おしく思う。

そしてまた、自分の後ろから、

 

「カムイ!」「カムイ姉さん!」「カムイお姉ちゃん!」

 

自分の名が呼ばれる。

彼らはよく知ってる。

自分の大切な姉弟妹(きょうだい)

そして、自分の横に剣を交えた兄と知らない男性。

でも、彼もどこか懐かしい。

 

「「カムイ!こっちだ‼︎」」

 

二人が自分に手を伸ばす。

赤い瞳が揺れる。

とても悲しい。

とても辛い。

自分がなぜそう思うかは解らない。

自分は手を伸ばす。

でも、どちらに?

 

 

ーー私はヒヤッという感覚を感じ、目を覚ます。

 

「おはようございます、カムイ様♪」

「今日も、沢山寝ていましたね。」

 

私は目を擦りながら、起き上がる。

 

彼女の名は暗夜王国の第二王女カムイ。

彼女は幼い頃より、この城『北の城塞』に限られた人達と住んでいる。

それは、彼女が病弱であるからとも言える。

 

そしてカムイは伸びをして、

 

『なにか、夢を見ていた気がするんですが……なんだったでしょう?』

 

姿勢を正すと、

 

「おはようございます。フェリシアさん、フローラさん。」

 

横を見る。

そこには、メイド服を着た長いピンクの髪をポニーテールにしたフェリシア。

彼女はとても明るいが、少しドジっ子である。

その双子の姉のメイド服を着た長い水色の髪を下にツインテールしたフローラ。

彼女はフェリシアとは違い、完璧に仕事をこなす。

彼らは、カムイのお世話をする専属メイド。

それに加え、彼女を守る為に、戦闘も行う。

さらに二人は氷の部族出身であり、触れるだけで物を凍らせる力を持つ。

 

私はベッドから降り、二人に身支度を手伝ってもらう。

私の寝癖で跳ねている長い髪を、フローラさんがとかしていく。

と、横で転けて水を盛大に零すフェリシアさん。

 

「フェリシア!あなた、なにやってるの!」

「はわわ!ご、ごめんなさい!」

 

フローラが、腰に手を当てて怒る。

私はフェリシアさんの前で膝をつき、

 

「大丈夫ですよ、フェリシアさん。拭いてしまえば、元通りです。だから、あまりフェリシアさんを怒らないであげて下さい、フローラさん。」

「カ、カムイ様‼︎」「カムイ様が、そう仰るなら……」

「さ、私も手伝いますから。」

 

と、三人で濡れた床を拭いていく。

それが終わると、フローラが頭を下げる。

 

「カムイ様、申し訳ありません。このような事をさせてしまい。」

「気にしないでください。私も好きでやってる事ですから。それに、私は嬉しいんです。フローラさんとフェリシアさんが来て下さって。ずっと一人だった私に、友達ができたんですよ。幼い頃の記憶が曖昧な自分に取って、お二人はとても大切な家族です。だから、私は本当に嬉しいんです!」

「カ、カムイ様ー‼︎」

 

と、フェリシアはカムイに抱きついた。

カムイは笑顔で彼女を抱き返す。

だが、フローラの表情が暗い事に気付き、

 

「もしかして、フローラさんは嫌でしたか?」

「いえ、そんな事はありません。私も嬉しいです。ありがとうございます、カムイ様……」

 

と、「コンコン」とドアが鳴り、開く。

一人の灰色の長い髪を結い下げた執事がお辞儀をし、

 

「おはようございます、カムイ様。」

「ジョーカーさん、おはようございます。」

 

彼の名はジョーカー。

彼もまた、カムイのお世話をする専属執事にして、バトラーだ。

そして、フローラとフェリシアの先輩だ。

 

ジョーカーは顔を上げ、

 

「早速ですが、マークス様とレオン様がお見えになっております。」

「マークス兄さんとレオンさんが!フローラさん、剣をお願いします。マークス兄さんに稽古をつけて貰ってきます!」

 

カムイは手を合わせて、喜ぶ。

だが、ジョーカーは眉を寄せ、

 

「カムイ様、あまり無理をなされては……昨日、体調を崩されたばかりですし……」

「大丈夫ですよ、ジョーカーさん!私は、この通り元気です!」

 

と、カムイはガッツポーズを取る。

ジョーカーは頭を下げ、

 

「……わかりました。マークス様方にお伝えしてきます。」

「お願いしますね。」

 

ジョーカーは部屋を後にする。

フローラが剣を渡しながら、

 

「カムイ様、ジョーカーの言う通り、あまり無理はなさらぬようにお願いします。お身体が弱いこと、お忘れないように。」

「そうですよ、カムイ様!無茶は禁物です。カムイ様は、すぐ無茶しちゃいますからね!」

 

二人にそう言われ、上目使いで、

 

「わかってます。無茶はしません、約束です。」

 

カムイは剣を受け取って、屋上に向かう。

扉を開け、そよ風が頰や髪を撫でる。

 

「おはよう、カムイ姉さん。今日は元気そうだね。」

「レオンさん、おはようございます。」

 

カムイの前には、カチューシャをつけた金髪の少年がいる。

彼は暗夜王国の第二王子レオン。

カムイの弟であり、暗夜の天才魔導師であり、ダークナイトだ。

そして、神器・ブリュンヒルデの持ち主だ。

 

よく見ると、レオンのマントは裏表逆だった。

カムイは苦笑して、

 

「レオンさん、マントが逆ですよ。」

「え⁈」

 

レオンは急いでマントを直す。

カムイは辺りを見回し、

 

「あれ?レオンさん、マークス兄さんはどこですか?」

「ああ、今に来るよ。ほら……」

 

レオンが扉を指差す。

そこから、眉を寄せた金髪の男性が出でくる。

 

彼の名は、暗夜王国の第一王子マークス。

カムイとレオンの兄であり、剣術はとても強いパラディンだ。

そして、彼もまた神器『ジークフリート』の使い手である。

 

カムイはパッと笑顔になり、

 

「マークス兄さん、おはようございます!」

「ああ、おはよう、カムイ。」

「マークス兄さん、今日は剣を教えてください!」

 

カムイは剣を振るう。

マークスは苦笑して、

 

「教えるのは構わないが、先日体調を崩したばかりだろう?無茶はいかんぞ。」

「無茶じゃありません!少しだけ、少しだけでいいので!」

「仕方ないんじゃない、マークス兄さん。カムイ姉さんは、言い出したら諦めが悪いよ。」

 

レオンは肩を少し上げる。

マークスはため息をつき、

 

「少しだけだぞ、カムイ。」

「はい!お願いします、マークス兄さん!」

 

カムイは構える。

マークスも、腰の剣を抜く。

レオンは少し離れたところで、二人を見守る。

 

「行きます!」

 

カムイはマークスに近づき、剣を横に振る。

それをマークスは剣を斜めにして受け止める。

カムイは右に回転して、再び横に剣を振るう。

だが、これもマークスは剣を斜めにして受け止めた。

カムイは一端後ろに下がって、左手に握る剣を構え直す。

そこに、マークスが剣を振り上げてくる。

カムイは剣を横にして受け止める。

 

「甘いぞ、カムイ!」

 

マークスはカムイの持っている剣を弾く。

 

「きゃ!」

 

剣はカムイの後ろの方で回転しながら、突き刺さる。

カムイは尻餅をつく。

両手を上げ、

 

「参りました、マークス兄さん……」

 

マークスは剣を鞘にしまう。

レオンが近づき、

 

「今日も、マークス兄さんから一本取れなかったね。」

「はい……」

 

マークスの手を借りながら、カムイは立ち上がる。

そして、ガッツポーズを取り、

 

「でも、いつかちゃんと取ってみせます!」

「だが、カムイ。なにも、剣士に拘らなくてもいいのだぞ。お前には才能がある。だが、体が弱いのだ。魔法師や弓兵といった後方の方が、お前には良いのではないか?」

「魔法の方も、僕が見る限りは悪くないしね。」

 

二人は互いにカムイを見た。

カムイは剣を鞘に戻し、

 

「それでも、私は剣士でいきます。なぜかは解らないんですが、そうの方がいいって……そう思うんです。」

「そうか。では、私は一端城に帰る。」

「もう、ですか?」

 

カムイは残念そうな表情をする。

マークスは苦笑し、

 

「すまないな。今回は、お前の様子が気になって来た。この後すぐに、戦場に向かわねばならん。」

「そう、ですか……。気をつけてくださいね、マークス兄さん。」

「ああ。レオンはもう少しここにいる。後は頼むぞ。」

「任せて。」

 

マークスは、扉に向かいながら、レオンと互いに頷き合う。

レオンはカムイを見て、

 

「さ、姉さん。僕たちも中に入ろう。」

「はい、レオンさん。一緒に、お茶でもしながら本を読みましょう。」

「わかったよ、姉さん。」

 

二人も中に入っていく。

 

マークスは、老人騎士と話していた。

 

彼は、カムイの護衛騎士ギュンター。

幼い頃から、カムイの世話もしていた。

それなりの年齢でありながら、その実力は劣っていないグレートナイトである。

 

マークスはギュンターを見て、

 

「では、ギュンター……」

「わかっております。この城の護りはお任せ下さい。マークス様もお気をつけて。」

「ああ。では、頼む。」

 

マークスはマントを羽織り、馬に乗る。

そして、馬を駆ける。

 

『カムイの剣の才能は悪くない。だが、体が弱いのだ……いや、それには語弊がある。あの子はどこも悪くない。体も、心臓も、どこも弱くはない。それこそ、体力も動きもいい方だ。なのに、何かの呪いかのように病弱なのだ。それはやはり、カムイの精神的な問題なのか。何故ならカムイは……』

 

マークスは考え込む。

そして数日前、ここに来る途中に会った人物を思い出す。

フードを深くかぶり、マントで身を包む者。

あの声からして、女性なのは間違いない。

マントからチラリと映った顔の大半は、仮面で隠されていた。

その者は、マークスを見て言った。

 

ーー暗夜の第一王子。時期に歯車は動き出す。貴殿は知っている。あれを想うのであれば、貴殿はあれを、あの城より出さぬことだ。

 

マークスは眉をさらに寄せる。

と、目の前に、木の陰から人が出てきた。

マークスは馬の手綱を引き、飛び越える。

そして馬を落ち着かせ、剣を握る。

 

「貴様は!」

「久方ぶりだな、暗夜の第一王子。」

 

マークスは目の前のフードを被った人物に、剣先を向ける。

そして思う。

この人物に剣を向けると、心のどこかで剣が鈍る。

この声には聞き覚えがある。

だが、目の前の人物は敵か味方か解らない。

警戒を解くわけにはいかない。

 

「貴様は……何者だ!」

 

フードの彼女は彼を見上げ、

 

「……少なくとも、今は敵ではない者だ。暗夜の第一王子、運命の選択はすでに始まっている。貴殿が疑うは身内。」

「なん、だと……?」

「貴殿の知る王は、もう居ない。あれは王の姿をした傀儡。」

「父上を侮辱するか!」

 

マークスは、フードの彼女の首元に剣先を突きつける。

だが、フードの彼女は微動だにせず、

 

「貴殿は誰よりも知っているはずだ。あれは、既に貴殿の尊敬した()にあらず。暗夜の第一王子、貴殿が護るはどちらだ?死人か、偽りの妹か。」

「貴様……‼︎」

 

マークスはフードの彼女の首を斬り裂こうとした。

だが、彼女は後ろに少し下がり、

 

「暗夜の第一王子、あれの命を救いたければ、貴殿は()を疑え。貴殿の王は、あれを殺す。忘れるな、あれは既に死人だ。」

 

そう言って、彼女は森の闇に消えた。

マークスは剣をしまい、再び馬を走らせる。

 

 

カムイはレオンとお茶を楽しみながら話をしていた。

 

「そうだ、レオンさん。お庭に行きましょう!リリスさんが育てているお馬さんが、仔馬を産んだんです。一緒に見にいきましょう。」

「いいけど……この時間帯だと、外は冷えてるだろうね。ジョーカー、姉さんに上着を頼むよ。」

「かしこまりました。レオン様の上着も用意しますね。」

 

ジョーカーは二人の上着を用意する。

そして、二人は庭へと向かう。

無論、ジョーカー・フローラ・フェリシアも付き添う。

カムイは庭の広い一角で、親子の馬と共にいる青い髪の少女と老人騎士がいた。

 

青い髪の彼女の名はリリス。

この『北の城塞』でカムイの従者の一人であり、厩舎係だ。

フローラとフェリシアの後輩にあたる。

 

カムイは小走りで、リリスとギュンターの元に行く。

 

「ギュンターさん、リリスさん。」

「カムイ様、こんな時間に外に出ては風邪を引かれてしまいます!」

「大丈夫ですよ、リリスさん。レオンさん、この仔馬がそうなんですよ。可愛いでしょ♪」

 

と、心配するリリスをよそに、カムイは仔馬を撫でる。

レオンは苦笑して、

 

「そうだね、姉さん。ギュンター、リリス。すまないけど、少しだけ姉さんに付き合ってくれ。」

「レオン様も、大変ですな。」

「酷いです!レオンさんも、ギュンターさんも!だって、可愛いこの仔が仕方ないんです!」

「はは、そうだね。」「そうですな。」

 

カムイが、頰を膨らませる。

それを、全員が笑い出す。

しばらくそうしていると、リリスはあるところを見て瞳を揺らし、

 

「カムイ様‼︎」

 

カムイに覆い被さる。

それと、同時だった。

親馬が暴れ出し、カムイに襲い掛かる。

フェリシアが二人の前に出る。

その前に、フローラが出る。

そして、レオンが魔術で馬を木の根でかこう。

ギュンターとジョーカーが抑える。

さらに、すぐ近くで火の魔術が爆発する。

カムイは驚き、

 

「え⁈一体何が……?」

「カ、カムイ様、お怪我は?」

 

フェリシアが、バッと振り返る。

カムイは起き上がり、

 

「わ、私は大丈夫です。それより、リリスさんに擦り傷が!すぐに手当を!」

 

カムイはハンカチを取り出し、リリスの手の甲に縛る。

リリスはそれを包み込み、

 

「ありがとうございます、カムイ様。」

「お礼をいうのはこちらです。皆さんも、ありがとうございます。」

 

頭を下げるカムイ。

カムイはリリスの側に近づいてきた親子馬を見て、

 

「でも、良かった。爆発が起きたから不安でしたが、この子達が無事で。」

 

と、頭を撫でる。

カムイは嬉しそうに、

 

「この城にいるみんな、私の家族なんです。勿論、この子達も。」

「……そうですね、この子達は幸せものです。」

「リリスさんも、私の家族ですよ。」

「……え?ほ、本当ですか、カムイ様‼︎」

「本当ですとも。リリスさんは、私のもう一人の妹です。フローラさんとフェリシアさんは、もう一人のお姉さん。ジョーカーさんは、もう一人のお兄さん。ギュンターさんは、もう一人のお父様です。」

「カムイ様に、父君と思われているなんて光栄ですな。」

 

ギュンターは腕を後ろに組んで、微笑む。

ジョーカーに関しては、祈るように手を組んで泣いていた。

フェリシアは笑顔で、フローラは苦笑していた。

リリスは瞳を揺らして涙を流しながら、

 

「ありがとうございます、カムイ様‼︎カムイ様に、妹と言って頂いて、私はとても嬉しいです!」

 

カムイはリリスの帽子を拾い、彼女の頭を撫でて、

 

「リリスさんは頑張り屋さんの妹です。」

「姉さん、いい雰囲気を壊して悪いんだけど……そろそろ中に入ろう。体が冷えてる。」

 

レオンがカムイの上着を掛けながら言う。

 

「私は部屋を温めてきます。」

「私も、温かい飲み物を用意してきます。」

 

ジョーカーとフローラが歩いていく。

フェリシアが慌てて、

 

「私も手伝います〜!」

 

二人を追いかける。

リリスは涙を拭い、

 

「そうですよ、カムイ様。カムイ様が風邪を引かれては、みんなが困ってしまいます。私は、この子達を送ってきますね。」

「私も、共に行こう。」

 

リリスとギュンターは二匹を連れて行く。

レオンはカムイの肩に手を回し、

 

「さ、姉さん。」

「は、はい。」

 

カムイを連れて行きながら、レオンは爆発が起きたところを横目で見る。

 

『さっきの魔術……いったいどこから?それに、威力も強くもなく、低くもない。魔術に長けた者の技だ。』

 

二人も中に入っていく。

 

 

庭の森の影、一人のフードで顔を隠した者が見据えていた。

そっと、その場を離れ、

 

『動き出した……これは一度、あちら側に行かなくては……』

 

城外へ出て行く。

そして森の中にある湖の中へと入っていった。

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