ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

10 / 26
第十話 仲間を求めて〜その1〜

とある黒騎士は思い出す。

愛しき妻子(家族)と共に過ごした懐かしき故郷での思い出。

けれど、その故郷にも、愛しき妻子(家族)には会えない。

 

復讐すると決めた。

自分から愛しきモノを奪ったあいつに……

 

その機会が来た。

居たのは、幼い少女。

記憶の混乱が激しく、まともにコミュニケーションも取れない。

自分はその子に、自分の娘の影を見る。

 

ある時、少女が記憶を取り戻した。

そして、また失った。

今度は記憶だけでなく、感情までも。

あの時の少女を想うと、自分は彼女を利用しようとしていたことを思い出す。

復讐と少女。

この天秤に、自分はどちらを選ぶのか……

 

 

ーー白夜と暗夜がある世界に、戻って来たカムイ達。

その場所は、雷鳴轟く無限渓谷の場所だった。

カムイは思い出したように、

 

「そう言えば、ここに昔は扉があったと言ってましたね。」

「ええ。けど、それは少しだけ力が残っているだけよ。……『白夜が暗夜に。暗夜が白夜に。そのとき扉は閉じられる』。」

 

アクアは瞳を閉じて、思い出すように言う。

カムイはアクアを見て、

 

「……え?なんですか、それは。」

「昔、お母様から聞いたの。『暗夜が白夜に、白夜が暗夜になるとき、『次』にそれが起きたときは無限渓谷の扉は閉じられる』って。」

 

アクアは目を開ける。

それを聞いたギュンターは、

 

「……暗夜が白夜に、白夜が暗夜に。聞いたことがありますぞ。確かそれは、十数年に一度、暗夜と白夜の空の色が入れ替わる現象。あと数ヶ月で、起きることではありませんか。」

「ええ。きっと、扉があった頃はそうやって開閉を繰り返し行っていた。けれど、扉は壊されてしまった。おそらく、残った力の残留はその時、完全に失われると思うわ。つまり、こちらからあの禁忌の国には行けなくなる。もう時間がないわ……」

「……では、あのとき禁忌の国に行ったあの力。あれは、あなたの力ではないのですか?」

 

カムイがフードの彼女を見る。

彼女は首を振り、

 

「あれ自体は、私の力だ。だが、限度がある。白夜と暗夜の協力を得た時、私の力ではあの禁忌の国には行けない。元々の、力の質の違いでな。」

「……そうですか。だったら、どうやって兄さん達を禁忌の国へ?」

「私が用意する。その為に、色々準備してきたのだからな。その為にも、彼らをここに呼ぶ必要がある。」

「……分かりました。行き方は、あなたに任せます。私は、兄さん達の協力を得られるように……いえ、得る為に頑張ります。」

「ああ……そうだな。」

 

そう言うと、彼女は腹を抑えて膝をつく。

カムイが驚き、彼女に近づく。

 

「だ、大丈夫ですか⁉︎」

「やっぱり、あの時のケガが……」

 

アクアも、側による。

ジョーカーが手当をしようとしたが、それを拒否した。

そして、フードの彼女はカムイの手を掴み、

 

「……しばらく、じっとしていろ。」

「え?は、はい……」

 

フードの彼女はカムイの手を掴んだまま、肩を上下して深呼吸する。

しばらくそうした後、カムイの手を離し、立ち上がる。

 

「……もういい。気にするな。」

「ですが……」

「もう、本当にいいのだ。それよりも、お前には成さなければいけない事があるだろう。」

「はい……」

 

カムイは頷く。

アクアはカムイを見て、

 

「……とりあえず、白夜に行きましょう。リョウマなら、話に耳を傾けてくれるかもしれないわ。」

「……そう、ですね。分かりました、白夜に行きましょう。」

 

カムイは頷く。

フードの彼女は彼らに背を向け、

 

『……さて、白夜と暗夜。どう動き出すか。そして、あいつも動き出した今、私も前に出なくては。透魔での動きも気になるが……』

 

だが、一度考えを隅に置く。

すでに行く気満々のカムイを見たからだ。

フードの彼女はカムイの横に行き、

 

「どちらにせよ、今日は休むべきだ。場所は、私が用意してある。」

「え、は、はい!」

 

歩き出す彼女を、カムイ達もついていく。

森のどこかの小屋、そこに身を寄せた。

 

「……安心しろ、すでに魔術を発動してある。外からは、ここは見えない。」

「ありがとうございます。」

 

カムイは部屋の隅にいる彼女を見る。

と、ジョーカーの作るスープが完成した。

 

「さ、カムイ様。」

「は、はい。ありがとうございます、ジョーカーさん。」

「アクア様も、遠慮せずに食べてくださいね。」

「ええ、ありがとう。」

 

カムイとアクアは、ジョーカーからスープを受け取る。

ジョーカーはギュンターを見て、

 

「ほらよ、ジジイ。」

「うむ、お前の料理が上達してると良いのう。」

「黙って食えよ。」

 

ジョーカーはギュンターを睨んでいた。

カムイの側にいるリリスにも、渡す。

 

《ありがとうございます、ジョーカー様。》

 

そして、ジョーカーは立ち上がると、

 

「あなたも、食べてください。言っておきますが、私は借りを作りたくないタイプなのです。」

「……わかった。」

 

彼女はそれを受け取り、食べる。

と言うより、黙って黙々と食べていた。

そして、彼に返して戻った。

その間、カムイ達は話をしながら食べていた。

カムイもジョーカーに器を戻し、

 

「……なんか、彼女は変わってます。なんというか、距離をあえて作っているかのような……」

「彼女にしてみれば、私たちは仲間ではなく協力者。関われば、情が生まれてしまうから……かもしれないわね。」

 

アクアも、ジョーカーに戻しながら言う。

ギュンターは顎に手をやり、

 

「情……ですか。確かに、そうかもしれませぬな。」

「ええ。時に、情は厄介なものだから……」

 

アクアは視線を落とす。

そして彼らは、明日に向けて眠る。

フードの彼女は、彼らが眠るのを確認して外に出た。

彼女は長剣を抜き、走り出す。

彼女は一人、見えない敵(透魔兵)を相手に戦う。

と、後ろから槍が突きつけられる。

 

「……彼らの側にいなくていいのか。」

「あちらはジョーカーとリリスに任せてありますゆえ、お気遣いなく。それよりも、教えてくださればお供をしたのですがね。」

「……必要ないからな。」

 

彼女は次々と、敵を斬り裂いていく。

それを見たギュンターは槍を構え直し、

 

「負けておれませんな。」

 

二人は颯爽と戦い終わった。

フードの彼女は長剣についた血を払い、鞘に戻す。

ギュンターも槍を立て、

 

「しかし、お強いですな。その剣技は、誰から習ったのです?」

「…………」

「これは失礼。あなたの剣技が美しかったもので。いけませんな。」

「……幼い頃、父の側近の人に教わった。それ以外にも、兄や父にも教わった。」

「そうなのですか。ご家族は今ーー」

「それは言う必要はない。私は、仲間ではないからな。」

 

そう言って、小屋に向かって歩き出した。

ギュンターはため息を一つついて、後に続く。

 

翌朝、カムイ達は白夜のテンジン砦に向かって歩いていた。

アクアはフードの彼女を見て、

 

「正直なところ、あなたから見て白夜と暗夜は味方につくと思う?」

「……本来なら無理だな。現在、我らは白夜からも、暗夜からも敵として見られている可能性もある。それは、白夜の広場の事件、戦場での行動を考えれば解るばずだ。それに、お前たちが関与したという疑いが向かなければな。でなければ、私に誘拐された集団だ。だが、強いて言うのなら……白夜の第二王女であるサクラ王女、暗夜の第二王女であるエリーゼ王女は仲間にしやすいのではないか。」

「サクラさんとエリーゼさんですか?確かに、あのお二人なら私の話を素直に聞いてくれるかもしれません。」

 

カムイが二人を思い出す。

ジョーカーが笑顔のまま、

 

「待ってください、カムイ様が第二王女のはずです。暗夜王国の王女ではなかったとは言え、白夜での彼女は第二のはずです。」

「……いや、サクラ王女が第二であってるのだ。」

 

フードの彼女は淡々と言う。

カムイは首を傾げながら、

 

「それは、私がサクラさんたちとは異母姉妹(きょうだい)だからですか?」

「…………さてな。」

 

彼女は長い間の後、呟いた。

そしてフードの彼女は立ち止まり、

 

「そして、仲間にしにくいのは白夜の第二王子であるタクミ王子と暗夜の第二王子であるレオン王子だ。」

「タクミさんとレオンさん……そうですね。あのお二人はそうなるかもしれません。タクミさんは、お母様を死に追いやった私を許さないでしょうし、レオンさんは正義感が強い方です。場合によっては……」

 

カムイは視線を落とした。

フードの彼女は再び歩き出す。

 

「……だが、あの二人はそれだけ家族想いなのだ。お前なら、気付けるだろうさ。」

「何をですか?」

「……少しは、自分で考えろ。」

「え?待ってください!その少しだけでもいいので、教えてください!」

 

カムイは顔を上げて、彼女を追いかけた。

それを、他の者たちは苦笑して、二人を追う。

しばらく歩き続け、ギュンターが辺りを見渡す。

 

「カムイ様、もうじきテンジン砦です。おそらく、白夜王国の者たちが多くいるはず。何があるかわかりません。いちを、警戒を怠らぬようにお願いいたします。」

「分かりました。兄さん達がいるといいんですが……」

「そうね。けど、呪いのことを忘れないで。何があっても、喋ってはダメよ。」

「はい。気をつけます。そして、信じてもらえるよう頑張ります。」

 

そして、砦の入り口に近づいた。

辺りが静かなのを感じる。

だが、その中には冷たい殺気を感じる。

フードの彼女は長剣の柄を握り、マントの中で隠していた。

カムイはキョロキョロし、

 

「やけに静かですね。もしかして、誰もいないのでしょうか?」

「……いや、誰か来たみたいだ。」

 

カムイの問いかけに、フードの彼女が答える。

砦の中から、眼鏡をかけた一人の男性が歩いて来た。

 

「ユキムラさん!」

 

彼の名は、ユキムラ。

白夜王国の軍師である。

 

彼はカムイをジッと見て、

 

「……カムイ様。それに、アクア様も、ご一緒ですか。」

「良かった、ユキムラさん。実は、話したいことがあって来ました。」

「話、ですか?」

「はい。実は、本当の敵を見つけたんです!だから話をーー」

 

そう言ったカムイに、矢が飛んできた。

それを、フードの彼女が長剣で叩きおとす。

ジョーカーとギュンターが、カムイの前に出る。

 

「カムイ様、お怪我は?」

「ありません。ですが……」

「これは、どうやら我々は敵として見られているようですな。」

「そんな……」

 

アクアも、眉を寄せた。

カムイは拳を握りしめた。

フードの彼女は長剣を、白夜軍師ユキムラに向かって構える。

カムイがジョーカーとギュンターの間から出て、フードの彼女の前に手を広げて立つ。

 

「待ってください!まだ、事情も聞いてないのに敵と判断するのは早いです!」

 

だが、カムイの背から、

 

「何が今更事情ですか!言い訳はよしてください!」

「ユキムラさん……?」

 

カムイは困惑しながら、白夜軍師ユキムラを見る。

彼は怒りを露わにし、

 

「……ミコト様の命を奪っただけでは事足りず、白夜王国を裏切り仲間を見捨てた。あなた自身で、暗夜兵を送り込んだせいで……‼︎」

 

彼は一呼吸おく。

そして拳を握りしめ、

 

「リョウマ様は行方知れずとなり、タクミ様は暗夜王国に捕らわれてしまった!」

「そ……んな、リョウマ兄さんとタクミさんが⁈」

「一体、誰が……」

 

カムイとアクアが冷や汗をかき、息を呑む。

白夜軍師ユキムラは眉を寄せ、

 

「白々しい。全ては、あなた方二人が仕組んだことではないですか!」

「え……?」

 

カムイ達は困惑する。

フードの彼女は斜め横の木を見上げる。

そこには、一人の白夜の忍びがいた。

その忍びは片目を怪我をし、口元を隠していた。

彼から感じる怒りと殺意。

 

「……どうやら、私達より先手を打ったものがいるようだ。この必然を知る誰か、が。」

 

カムイは拳を握りしめて彼に言う。

 

「……ユキムラさん!私たちは敵ではありません!私も、アクアさんも、白夜を裏切っても、裏切ったつもりもありません!」

「問答無用!兵達よ、裏切り者を仕留めなさい!」

 

砦の中から、白夜兵達が出てくる。

一人の占い師が、白夜軍師ユキムラの横に立ち、

 

「わらわは、亡きミコト様の臣下のオロチ。そなた達のことは許さぬ。……ミコト様の仇、討たせてもらうぞ!わらわのまじないの前に、倒れ伏すがよい!」

「亡きミコト様の為、白夜に仇なす者たちは私がこの手で討ちます!」

 

白夜軍師ユキムラは獅子舞を取り出した。

そして、木の上から白夜の忍びが降りて来た。

 

「我が名はサイゾウ。リョウマ様の臣下だ!お前達のせいで、リョウマ様は……許さんぞ!」

 

彼もまた、暗器を構える。

彼の投げた暗器を、フードの彼女が弾く。

そして剣を構え、

 

「……覚悟を決めろ。この場を落ち着かせるには、一度落とすしかない。」

「ですが!」

 

フードの彼女は、占い師オロチの術を魔術で阻止する。

そして、白夜軍師ユキムラに暗器を投げる。

そのまま突っ込み、白夜の忍びサイゾウと刃を交える。

奥からくる白夜兵達の前に魔術を放つ。

 

「カムイ、ここはやるしかないわ!」

「カムイ様、もし無理なら後ろにいて下さい。我らでお守りいたしますゆえ。」

「大丈夫です、カムイ様。なんとしてでも、カムイ様をお守り致します。」

「アクアさん、ギュンターさん、ジョーカーさん……」

 

彼らはカムイの前に立ち、武器を構える。

カムイは拳を握りしめた後、自分の頰を両手で叩く。

そして剣を抜き、

 

「私もやります!誰も失わないように、力を貸して下さい!」

「「はい!」」「ええ!」

 

彼らは襲いかかる兵たちと武器を交える。

フードの彼女は白夜の忍びサイゾウと武器を交えていた。

左手に長剣と右手に短剣を構えて、彼と戦っていた。

時折、短剣を宙に投げ、暗器を白夜兵に向けて投げる。

 

「……貴様、中々できるな。一体何者だ!」

「……私は禁忌の国の者。私は、必然を壊す為にここにいる。」

「訳のわからんヤツめ!」

 

二人の攻防戦は続く。

カムイ達は白夜軍師ユキムラと、占い師オロチと対峙していた。

 

「はあぁぁぁ!」

 

カムイは兵たちを吹き飛ばす。

そこに、アクアも加わり、打ち払う。

 

「負けておられんな。ジョーカー。」

「うるせー、ジジイ!そんな事はわかってんだよ。」

 

二人も敵を薙ぎ払う。

カムイを背後から襲うとした敵をリリスが叩く。

カムイが彼らに叫ぶ。

 

「ユキムラさん!オロチさん!一体白夜に何があったんですか!」

「……あの後、白夜王国はミコト様が亡くなった事で結界がなくなった。川の暴流によって、暗夜兵は引きました。リョウマ様が態勢を整え、落ち着いた頃でした。敵襲を受けたのです。そして、ガンズと言う暗夜兵軍団が襲ってきました。」

「ガンズさんが⁉︎」

「……誰かが、手引きをしたという事ね。」

「そうです。ある村人が言っておりました。『カムイ様とアクア様が、白夜王国を裏切った』と!」

「違います!私たちは知りません!私達じゃないです!」

「では、何故今になって現れたのです!今なら畳み掛けれると思ったからなのではないですか!」

「許さぬ!ミコト様の想いを踏みにじるそなたを!」

 

二人の猛攻は続く。

 

ーー透魔王国のとある城の中。

一人の少女が魔導書を持って長い廊下を歩いていた。

その彼女の背に、声がかかる。

 

「これはルフレ卿。貴女をお見かけするとは、なんとも珍しい事ですな。」

「……ああ、アベル殿。それは、こちらの話ですよ。私としても、貴方が動いたと聞いて驚いているところです。」

 

彼女は立ち止まり、振り返る。

そこには黒騎士の姿をした男性が立っていた。

黒い近い紫で、深い蒼い瞳をしていた。

 

「ご謙遜を……私など、それ程でもないですよ。私よりも、あなたを見る事自体稀ですからね。それに、私が動いたところで、貴女の戦術には組み込まれているでしょう。」

「ふふ、当然ですよ。」

 

透魔軍師ルフレは本を抱え、口元に手を当てて微笑む。

黒騎士アベルは目を細め、

 

「ところで……噂では、ハイドラ様の命に背いたとか。」

「背いた覚えはありませんよ。私はいつだって、ハイドラ様の為に動いています。私の考えた数多の作戦を、ハイドラ様が受け入れてくれるからこそです。」

「そうですか。それなら結構。では……」

 

と、自分の横を通る彼に、

 

「……知っていますか、アベル殿。我らの邪魔をする者の事を。アベル殿は、その者をご存知で?」

「……ええ。私の第二の弟子とも言える子ですよ。」

「弟子……ですか。」

「はは、あの子も大変なんですよ。全てを破壊する為に、『カムイ』に縋るしかない。」

 

そう言って歩いていく。

透魔軍師ルフレは彼に振り返り、

 

「……その者が、その『カムイ』と行動を共にしているのを知っていますか?先ほど、透魔兵達から報告を受けました。」

「そう、ですか……それは意外だ。ちょっと見に行ってみようかな。」

 

彼は冷たい笑みを浮かべる。

透魔軍師ルフレは笑顔で、

 

「では、アベル殿。私はこれで。」

「ええ、ルフレ卿。」

 

彼は歩いていく。

透魔軍師ルフレは長い廊下を歩きながら、

 

「弟子、か。嘘つきですね……」

 

彼女は自室へと戻った。

 

 

アクアはフードの彼女を見る。

彼女は白夜の忍びサイゾウとまだやりあっていた。

アクアは薙刀を構え直し、

 

「……私も頑張るわ。」

 

カムイの横に並び立つ。

 

「くっ!やはり強いですね。」

「負けられぬのじゃ!」

 

二人はボロボロになりながらも、カムイ達に向かってくる。

カムイとアクアが占い師オロチを、ギュンターとジョーカーが白夜軍師ユキムラに一撃を与えた。

彼らは肩で息をし、殺されるのを待つ。

だが、カムイは剣を下す。

白夜軍師ユキムラは困惑しながら、

 

「……何故、殺さないのですか?あなたは、白夜兵を簡単に殺せるでしょう。」

「……いいえ。私には、理由も無しには殺せません。それに、ユキムラさん達は勘違いをしています。私たちは、別れたあの時からは白夜兵たちを殺してもいなければ、白夜を攻撃もしてません。それに、私たちは白夜王国と暗夜王国の無益な殺し合いを終わらせる方法を知っています。その為に、あなた方の力をお借りしたいんです。」

 

カムイは剣をしまいながら言う。

白夜軍師ユキムラは拳を握りしめ、

 

「……都合のいいことを!私は信じません!私の大切な人たちを奪った貴女の言葉など……」

「そ、そうじゃ!うっ、グス、ミコト様を……仲間を返しておくれ!うぅ、うぅ……」

 

膝をついて泣き出した占い師オロチ。

フードの彼女も、白夜の忍びサイゾウを壁に叩きつけた。

彼は膝をつく。

フードの彼女は、持っている武器を握りしめていた。

だが、白夜の忍びサイゾウが立ち上がり、

 

「……仕方ない。こうなれば、この身をもって暗夜どもに一矢報いてやる!」

 

そう言って、彼は札を持って術を練り出す。

それを見たフードの彼女は、白夜の忍びサイゾウに近づく。

 

「……まずいな。」

「くっ……ぐぐぐっ……!」

 

彼からは炎が湧き出てくる。

ギュンターも、それが何を意味するかを理解した。

 

「いかん!あやつ、自爆をする気だ!」

「やめてください、サイゾウさん!」

 

カムイが近づこうとするのを、ジョーカーが止める。

 

「危険です、カムイ様!」

「ですが!」

 

カムイは眉を寄せて訴える。

フードの彼女は、彼の練る札を斬り裂く。

白夜の忍びサイゾウは瞳を見開く。

彼は爆薬を沢山出し、それを暗器に付ける。

 

「くっ!だが、まだだ‼︎我が信は白夜にあり!死んでも、貴様らの好きにはさせん!」

 

そして、フードの彼女へと向かう。

火を灯そうとした瞬間、馬の鳴き声とともに、

 

「兄さん、いけません!」

「ダメです、サイゾウさん!カムイ姉様を傷つけないでください!」

 

その聞いたことのある声に、カムイは振り返る。

そこには、馬に乗ってやってきた二人がいた。

 

「スズカゼさん、サクラさん!」

 

スズカゼが馬から降り、サクラを下す。

白夜の忍びサイゾウは武器を構えたまま、

 

「なんのつもりだ、スズカゼ。あいつは白夜を裏切った逆賊。憎き相手なのだぞ!」

「いいえ、兄さん。カムイ様は信頼に値するお方です。この方は、暗夜王国に囚われていた私を救ってくださいました。自らの危険を顧みず、敵である私の命を!」

「それに、カムイ姉様はとてもお優しい方です。現に、この砦の方たちは、みんな無事です。怪我はしていますが、誰一人として死者はいません。本当に、姉様が私たちを裏切ったのなら、そんなことをする必要がありますか?あの時のことは、何か事情があったのではないでしょうか。それに、私たちは誰一人として、その場で姉様達を見ていません!だからどうか、話を聞いてあげてください!」

「むむむ……」

 

白夜の忍びサイゾウは、スズカゼとサクラの真剣な眼差しを見た。

武器を下ろす。

スズカゼはホッとして、

 

「兄さん、ありがとうございます。」

「ふん。信じた訳ではない。だが、話は聞かせてもらおうか。」

 

カムイを睨む白夜の忍びサイゾウ。

フードの彼女は一歩彼から下り、武器を下す。

カムイは頷き、

 

「はい。私たちの本当の敵は、暗夜王国ではありません。本当の敵は、もっと別のところにいるんです。お母様……ミコト女王を殺し、白夜王国を壊滅に導いたのはガロン王ではないのです。もっと強大で、もっと恐ろしい野望が、私たちの知らないところで動いているんです。」

「ほう。恐ろしい野望だと?なかなか面白いことを言うな。では、お前の言う真の敵とやらは誰だ。どこにいる。」

「……すみません。それは、言えないのです。ですが、彼女の言っていたように、禁忌の国としか言えないのです。そして、もうすぐ白夜と暗夜の空の色が変わる日が来ます。それが、その敵を討つ最後のチャンスなのかもしれないのです。もし、私たちの事を信じてくださるのなら、その日に無限渓谷に来て欲しいのです。私の話は、それだけです。」

 

白夜の忍びサイゾウは睨みが増し、

 

「貴様、ふざけているのか。」

「いいえ。ふざけていません。でも、今の私が言えるのは、ここまでなんです。」

「……聞くだけ無駄だったようですな。話は終わりです。お引取りを。」

 

白夜軍師ユキムラは、カムイを睨んで言った。

カムイはアクア達を見て、

 

「行きましょう、皆さん。」

 

そう言って、歩き出す。

そこに、叫び声が響く。

 

「ま、待ってください!カムイ姉様!」

「サクラさん?」

 

カムイは立ち止まり、声の主をみる。

サクラはグッと拳を握りしめて、

 

「あ、あの、私も連れて行ってください!私のような者でも、何かのお役に立てるはずです!」

「サクラ様、何を⁉︎」

「ごめんなさい、ユキムラさん。でも、私はカムイ姉様を信じます。過ごした時間は短いけれど、それでもわかるんです。姉様の目には、嘘を感じません。それに、姉様からは何か大切な使命を感じるんです。」

「全く……今のあなたに、何を言っても聞いてはくださらないでしょうね。ご誕生された時からずっと、サクラ様の成長をお側で見て参りました。だがらこそ、サクラ様の事は、他の誰よりも理解しているつもりです。ですから、お止めはしません。どうか、くれぐれもお気をつけて。」

「ありがとうございます、ユキムラさん!」

 

サクラは白夜軍師ユキムラに笑みを返す。

スズカゼもまた、兄サイゾウを見る。

 

「お許しください、兄さん。私も、カムイ様と共に参ります。」

「……好きにしろ。それだけの覚悟があるのならな。」

「はい。」

 

カムイは二人を見て、

 

「ありがとうございます。サクラさん、スズカゼさん。私の事を信じてくれて。では、行きましょう。次の目的地へ!」

 

彼らは歩き出す。

フードの彼女は武器しまい、

 

『……ここでも、必然が起きた。変えられない……いや、変えてみせる。打ち壊してみせる!』

彼らの後に続く。

 

カムイ達は水辺をあるいていた。

それが湖だと解る。

カムイは立ち止まり、湖を見つめる。

前を歩いていたサクラが立ち止まり、

 

「どうしましたか、カムイ姉様?」

「い、いえ……ここでアクアさんに会ったなっと思って。それに、短かったけれど、白夜王国での生活も楽しかった。家族みんなで集まって花見をして……」

「また、みんなで花見をしましょ、姉様。」

「はい。きっとみんなで。」

 

カムイはサクラと笑い合う。

と、天馬の羽ばたき音が聞こえてきた。

彼らの前に、天馬に乗った長い茶髪を結い上げた青年が現れた。

 

「ふぅ、良かった。やっと追いつきましたよ、サクラ様♪いきなり、スズカゼと共に白夜城から出て行った時は焦りましたよ。」

「わわっ……⁉︎ツ、ツバキさん⁉︎」

 

そして、それを追いかけるかのように走りこんできた一人の少女。

クリームの茶髪にカールのかかった髪。

彼女は息を整え、

 

「もう、サクラ様!あたしたちを置いていくなんて、酷いですよー!」

「カ、カザハナさんまで……二人とも、どうして……」

「はい!サクラ様を追って、テンジン砦に向かったら、ユキムラさんから伝令を貰ったんですよ。サクラ様が白夜王国を出るって。」

「ユキムラさんが……」

「ま、ユキムラさんに教えてもらわなくても、サクラ様がいなくなったら、絶対に追いかけますけどね。」

「うん。俺たちには、サクラ様を完璧にお守りする使命がありますのでー。サクラ様の行くところ、当然どこでも、どこまでもついて行きますよ。俺たちはいつでも、あなたの力になります。」

 

二人はサクラを見て微笑む。

サクラは笑顔で、

 

「あ、ありがとうございます!」

 

頃合いを見計らって、

 

「……あの、サクラさん。この方たちは?」

「えっと……私の臣下のツバキさんとカザハナさんです。いつも私のことを守ってくれる、強くて優しい方たちなんですよ。これから一緒に闘ってくれるので、きっと心強い戦力になって下さいます。」

 

サクラは嬉しそうに言う。

 

天馬に乗った青年はツバキ。

サクラの説明にあった通り、彼女の臣下である。

駆け込んできた彼女、カザハナもまたサクラの臣下である。

ツバキとは少し違い、サクラとは仲が物凄くいいみたいだった。

 

カムイは微笑み、

 

「そうですか。それはありがたいです。これからお願いします、ツバキさん、カザハナさん。」

 

カムイは彼らに手を差し出す。

ツバキは天馬から降り、カムイの手を握り微笑む。

 

「はい。任務は完璧に遂行しますよー。」

「まぁ、サクラ様をお守りするついでに、加勢してあげるわ。」

 

カザハナは若干カムイを睨みながら言う。

カムイは後ろの彼らを見て、

 

「えっと、この二人は私の臣下のギュンターさんとジョーカーさんです。」

 

ギュンターとジョーカーは頭をさげる。

そして、リリスに関しては「キュン」と鳴いただけだった。

カムイは斜め横のフードの彼女を見る。

 

「で、あの方は……えっと……」

「私は仲間ではなく、協力者に過ぎない。私のことは好きに呼べばいい。」

 

と、フードの彼女は木の陰を見て、暗器を握る。

 

「どうしましたか?……もしかして、敵ですか?」

「……いや、気のせいだったみたいだ。」

 

彼女は暗器から手を離す。

そして歩きながら、

 

「ひとまず、休める場所を探すぞ。」

「は、はい!」

 

カムイ達は進む。

サクラはアクアに近づき、

 

「あ、あの、アクア姉様。彼女は、結局誰なのですか?」

「……あの子は、禁忌の国の者よ。そして、私たちと目的を同じにする者。」

「……あの方のお名前は?」

「残念ながら、私たちも知らないの。」

「そ、そうなんですか……」

 

彼らは少し先の小屋で休んだ。

そして、サクラ達から白夜王国襲撃についての詳しい話を聞いていた。

 

「そうだったんですね……」

「はい……姉様たちがいなくなった後、白夜王城に戻りました。しばらくして、城下町で爆発が起きたんです。兄様たちも駆けつけたときには、暗夜兵たちが暴れていました。その時に、タクミ兄様は暗夜に捕らわれ、リョウマ兄様がそれを追ったのですが……」

「行方不明となってしまわれたのです。」

 

サクラやスズカゼ達は視線を落とす。

アクアはフードの彼女を見て、

 

「あなたは、これについて何か知っているかしら?」

 

壁に寄りかかりっていた彼女は、

 

「……いや。ただ、あるとすれば透魔兵(見えない敵)の仕業であるのは確かだ。しかも、それを『カムイとアクア』と言う特定まで仕込んで……。それができるのは、あの場に駆けつける事ができないと判断しての行動。そして、テンジン砦(あそこに)『カムイ』が現れると知っている者……」

 

フードの彼女は右手を握りしめる。

 

「心当たりがない訳ではない。だが、ここでは詳しくは言えない。」

「そう……」

 

アクア達は察するが、サクラ達は疑問を拭えない。

フードの彼女は彼らの方を見て、

 

「……こちらは、白夜の第二王子のタクミ王子の救出に向かうべきだ。あいつが必然を望むのなら、次に仕掛けてくるのはそこだ。」

 

アクアはカムイを見て、

 

「……そうね。カムイ、タクミが仲間になってくれるかは置いといて、暗夜からは救出した方がいいと思うわ。すぐには殺されないとは思うけれど、あのガロン王がいつまでも生かしておくとは思えないもの。」

「そうですね。でも、タクミさんは、どこにいるのでしょう?」

「中立国イズモ公国。」

 

フードの彼女が、カムイの問いに即答する。

そして、拳をさらに握りしめていた。

 

「あいつは、必ずそこで仕掛けてくる。なら、そこで暗夜の者とも接触する絶好のチャンス。これを逃す手はない。」

 

カムイ達は頷き、話し合う。

イズモ公国に最短で、かつ早急に行ける手段を。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。