黒き王子は、周りを警戒していた。
自分の母は、父を振り向かせる為に子供である自分を使った。
自分、周りの
持てば、母がいい顔をしない。
自分としては、どうでも良かった。
自分は、母にとっては父を振り向かせる道具に過ぎない。
と、母はイラついていた。
正妻が消え、誰もが正妻の座をかけて争っていた。
だが、正妻の座に着いたのは見知らぬ女性。
しかも、その女性には子がいた。
誰もが、彼らを邪険にした。
だが、その女性が消えると争いは激しくなった。
妻たちによる正妻の座。
多くの者がそれによって死んだ。
そんな時だ。
正妻の子であった第一王子に会ったのは。
彼は自分を含めた残った
彼は素直に自分達を受け入れてくれた。
そんな兄に、連れられて行ったのは古びた城。
壁が高く、使われていないはずの城。
そこには、母を持たない
けれど、彼女は城から出られない。
そんな姉に、自分は何度も会いに行った。
彼女は自分にとって、かけがえのない姉だ。
けれど、自分は気づいてしまった。
彼女が、自分とは違う血を引いてる事を。
彼女は、黒ではなく白の者。
それでも自分は、彼女か向けてくれる笑みが好きだった。
ーー暗夜城の王座にて
暗夜王ガロンは、とある女性魔導師からの報告を受けていた。
それは彼以外には見えない女性魔導師。
「そうか。やはり、『カムイ』は生きていたか……。そして知っている。知ってはならぬ真実を。うむ、案ずるな。手は打ってある。『カムイ』など、恐れるに足らぬ。簡単に捻り潰してくれる。主も分かっておろう。わしを止めることは誰にも出来ぬ、とな。この世界は、もうすぐワシのもの!……全ては、我が神の為に。クハハハハッ‼︎」
その姿を密かに、扉の向こう側で聴いていたエリーゼ。
『……やっぱり、あいつは変だ。お父様の皮を被った悪魔……絶対に、カムイお姉ちゃんは守ってみせる。マークスお兄ちゃんに言わないと!』
エリーゼはそっとその場を離れて、走り出す。
カムイ達はタクミ救出の為、黄泉の階段と呼ばれる道を歩いていた。
その道のりは階段で坂道が続く。
ギュンターが立ち止まり、
「少し、休憩と致しましょう。カムイ様のお体のこともあります。」
「はぁ……はぁ……い、いえ、私は大丈夫……です!」
「では、言い方を変えましょう。この階段と坂道は、老体の私には少し厳しいのです。」
ギュンターは、カムイを見て微笑む。
カムイは深呼吸して、
「……わかりました。休憩にしましょう。」
彼らは腰を下ろして休憩にする。
フードの彼女は一人立って、辺りを警戒していた。
カムイは階段の上を見上げ、
「ですが、この階段はどこまで続くのでしょうか?」
「……はっきりは言えないわ。でも、目的に最短で行くには、この黄泉の階段を抜けた方が早いの。」
アクアも、上を見ながら言う。
サクラは眉を寄せて、
「はい。中立国のイズモ公国ですからね。白夜からも、暗夜からも、攻めにくい所に配置されています。」
「そう、だからひとまず白夜の追っ手との戦いも避けれるわ。あの国では、全ての戦闘行為が禁止されているから。」
「な、なんだか霧が濃くなってきましたよ?」
サクラは辺りを見渡す。
フードの彼女は前に歩み出る。
そこにはノスフェラトゥが二体、突如現れた。
「きゃあああっー!皆さん、ノスフェラトゥです!」
サクラの悲鳴が響く。
「サクラ様、お下がりを!」「カムイ様!お下がりを!」
サクラとカムイの臣下が彼らの前に出るが、
「……お前達が構える必要はない。あれは、人だ。」
「え?」
そう言うと、彼女は思いっきり、ノスフェラトゥの腹と頭を蹴る。
それは後ろと前乗りに倒れる。
それは彼女の言う通り、人に変わった。
アクアは倒れこんだ彼らを見て、
「……風の部族の人たちね。」
フードの彼女は斜め後ろの岩を見上げる。
そこに、暗器を投げる。
「ひぃ!」
そこには、暗夜軍師マクベスがいた。
フードの彼女は彼を見て、
「暗夜王ガロンに伝えよ。お前の計画はすべて壊す、とな。」
彼はすぐさま転移魔法を使って、その場から消えた。
カムイはフードの彼女を見て、
「えっと……何が、どうなったんですか?」
「……お前達を罠にはめようとしたのだ。風の部族の者を殺させ、争わせるために為にな。」
「……そうだったんですか。」
カムイは視線を落とす。
カザハナは、フードの彼女を睨んで、
「何で、そんな事が分かったのよ。」
「……同じ事をされた事があるからだ。」
「は?え?」
「そして、必然を望むのなら……やると思った。」
フードの彼女は、倒れこんでいる風の部族の者を見る。
カムイが倒れこんでいる者の一人の手を取り、抱える。
「このまま、ほっとけません。風の部族の方々の所に戻しましょう。」
「はい、姉様!」
サクラも手伝う。
それを他の者達は苦笑して、カムイとサクラと変わる。
フードの彼女は考え込んでから歩き出す。
風の部族がある場所へ向かう。
そこは砂漠だった。
フードの彼女が先頭を歩き、
「あそこが、風の部族長が治める烈風城だ。」
「これが……」
カムイが城の見つめる。
と、フードの彼女は立ち止まる。
カムイも止まり、
「ど、どうしましたか?」
その瞬間、突風が彼らを襲う。
それが治ると、フードの彼女は城に向かって走り出した。
「え⁉︎えぇ⁈」
カムイの困惑の叫び声は、風にかき消された。
カムイ達が、彼女を追って城に来ると、そこは戦場とかしていた。
カムイ、アクア、ジョーカー、ギュンター、リリスの目には、透魔兵が視えていたが、他の者には見えていない。
なので、
「ど、どういう事よ!何でいきなり斬られているの⁉︎」
「うーん、これはマズイな。サクラ様、危険ですので下がって下さい。」
「で、でも……」
カザハナ、ツバキの二人は、サクラの前で剣を構える。
スズカゼは眉を寄せ、
「まるで、何かがいるような……そんな気配を感じますが……」
と、視えていないサクラ達の元に透魔兵が襲いかかる。
カムイが剣を抜き、透魔兵を斬る。
「えっと、サクラさん達には視えていない敵がいるんです!危険ですので、下がっていて下さい!」
「そうね。ここは、視えてる者が動くしかないわね。」
「ですが、この人数では厳しいですね。」
「泣き言を言っとる暇はないぞ、ジョーカー。」
「うるせー、ジジイ!」
彼らは二組で動き出す。
リリスは、サクラ達を守るように、側にいる。
と、カムイの背後から襲いかかる透魔兵に矢が刺さる。
その方向を見ると、城の屋根の上で矢を番えて再び矢を放つフードの彼女の姿。
それを見たジョーカーは、
「あの方は、弓も使えるのですね。」
「はい。凄いです!」
だが、その彼女の後ろにも透魔兵が襲いかかる。
彼女は屋根から飛び降りる。
空中で回転して、自分に襲いかかる透魔兵を射る。
そして、カムイとジョーカーの前に着地した。
「……遅いぞ。」
「何も言わずに走って行ったのは、あなたですよ。」
ジョーカーは笑顔と共に、怒りがあった。
それを、彼女はさっと受け流し、
「……まあ、いい。片付けるぞ。」
弓を捨てて、左手に長剣と右手に短剣を握る。
敵に向かって、走って行った。
「わ、私たちも頑張りましょうか。」
「……そうですね。」
二人も再び戦い出す。
と、カムイは見覚えのある人を見つけた。
「リンカさん⁈」
「ん?カムイか!」
それは、炎の部族リンカがいた。
その隣には、ムキムキの坊さん的な男性がいた。
「知り合いか?」
「ああ、あいつはカムイ。白夜王国の第二王女だ。」
「む?あれがそうか……。私の名は、フウガ。この風の部族の長だ。」
「あ、はい。私はカムイです。」
カムイは、リンカの横の風の部族長フウガに頭をさげる。
そして、剣を構え直し、
「えっと、ここは任せてください!みなさんには、見えない敵がいるんです!」
「……わかった。ここは任せよう。」
「はい!」
カムイ達が透魔兵を倒しきり、風の部族長フウガの前に立つ。
「城の者達から聞いた。倒れた仲間を連れて来てくれたそうだな。礼を言う。」
「い、いえ、あれはこちらが招いた事故でもあるので。」
「……だが、噂とは当てにならぬものよ。」
「噂?」
カムイは風の部族長フウガの言葉に首を傾げる。
サクラ達も、心あたりがない。
リンカがカムイを見て、
「実は、お前が白夜と暗夜を裏切り、世界へ破滅を迎えようと動いている、という噂が流れているのだ。」
カムイ達に少し間が生まれた。
フードの彼女は腕を組んで考え込んでいた。
カムイはハッとして、
「いえ、違います、フウガ様!リンカさん!私は、そんなこと考えていませんし、やろうとも思ってません!」
「それは知っておる。先のお前たちを見て、そう思った。」
「ありがとうございます。私たちを信じてくださり。」
風の部族長フウガは、カムイを見る。
そして笑みを浮かべ、
「はは!スメラギよ、喜ぶがよい!お前の娘は立派に成長しておるぞ。」
「え?父上様をご存知で?」
「そうだな。私はかつて、白夜王スメラギとは親友だったのだ。若き日のあいつとは、共に闘い、背中を預け合ったものだ。」
「そう、なんですか……」
カムイは驚く。
カムイは真剣な顔に戻り、
「フウガ様。私たちは今、さっきの見えない敵と戦うために仲間を集めています。あれが、私たちの真の敵なんです。」
「……信じがたい事ではある。お前たちが戦っておる姿を、確かに見た。だが、それでも私は長として、すぐには決められん。」
「……そうてすね。」
「だからこそ、見極めたいのだ。……ツクヨミ!」
「なんですか、フウガ様。」
彼がそう言うと、一人の占い師の少年がやって来る。
「こ奴は、ツクヨミ。ツクヨミよ、この者たちと共に行き、修行して参れ。カムイ、こ奴はこう見えても、類い稀な才能を持っておる。きっと、お前たちの力となるだろう。」
と、彼の頭を豪快に撫でながら言う。
彼は少し照れた後、
「……フウガ様。こんな弱そうな奴らが、さっきの見えない何かとやらを倒したのか?私のまじないも、効かなかったのに。」
「そう言うな。何しろこのカムイは、あの『夜刀神』を持つ者だ。この刀の事は、スメラギより聞いている。神の刀である『夜刀神』は、『炎の紋章』を繋ぐ鍵となるもの。炎の紋章は、絶対的な力を持ち、創造主である神さえも、滅ぼせると言われているものだそうだ。」
「神さえも滅ぼせる力……?」
カムイは眉を寄せる。
フードの彼女は無言で何かを想いながら、彼らを見る。
カムイはアクアを見て、
「アクアさん、その力ならあいつを……」
「ええ、可能よ。希望が見えてきたわね。」
「はい。フウガ様、夜刀神について、他に何か知っていますか?」
「私も、そんなには詳しくないのだ。だが、夜刀神について詳しく知っているのは、イズモ公国のイザナのはずだ。炎の紋章について聞いてみるといい。」
「はい。ありがとうございます、フウガ様。ツクヨミさん、これからよろしくお願いします。」
「仕方がない。フウガ様の頼みだ。特別に力を貸してやる。感謝しろ。」
ツクヨミは両手を腰に当てて、頷く。
リンカが、カムイを見て、
「カムイ、あたしもついてくよ。あんたの敵とやらを一緒に倒そうじゃないか!」
「ありがとうございます、リンカさん。」
カムイはみんなを見て、
「行きましょう、みなさん。イズモ公国には、暗夜に捕まったタクミさんもいる。そして、イザナ様から炎の紋章について聞きましょう。」
カムイ達はイズモ公国へと急ぐ。
その途中、カムイは思い出した事をフードの彼女に言う。
「そういえば、あなたは弓も使えたんですね。魔術も使えるし、なんでも出来て凄いです。」
「……昔、教わっただけだ。」
「そうなんですか?誰からですか?」
「……先を急ぐぞ。」
「え?あ、はい……」
彼女はどんどんスピードを上げて、進んで行った。
ーー透魔王国、透魔軍師ルフレの自室にて。
そこには沢山の本があった。
かつては、とあるこの国の王家に関係する者の部屋だったらしい。
いや、なるはずだった部屋だ。
机の上には、ここ最近考えた戦術が散らばっている。
窓からは、荒れた大地が見える。
透魔軍師ルフレは、ソファに腰をかけて寝ていた。
と、戸が叩く音が聞こえる。
彼女は目を覚まし、
「どうぞ……」
「……失礼する。」
彼女の部屋に入ってきたのは、黒騎士アベル。
透魔軍師ルフレは少し意外そうな顔をした後、笑顔になる。
「これは、アベル殿。珍しいですね。どうぞ、お掛け下さい。」
「どうも。」
彼は、彼女の前のソファに座る。
彼女は立ち上がり、紅茶を淹れる。
それを彼に渡し、
「お口に合うかわかりませんが、よかったらどうぞ。」
「頂こう。」
彼は紅茶を飲む。
彼女は残っていた自分のコーヒーを一口飲み、
「それで、アベル殿。私の部屋に来たのは、どう言ったことで?」
「この間、ルフレ卿の言った子の様子を見に行って参りました。確かに、『カムイ』と共に行動していましたよ。おかげで、あるべき必然を作り出すのに苦労しました。ですが、彼女はそれを打ち壊しに来る。」
「……では、アベル殿は必然を起こすたい。だから私に、戦略を立てさせる為に来たのですか?」
「いいえ。貴女には、彼女を捕らえる方法を考えて貰いたいのですよ。」
黒騎士アベルは冷たい笑顔になる。
透魔軍師ルフレは、彼をジッと見る。
「……情ですか、アベル殿。あの者は貴方の弟子だ。だから、生かしたいのですか?」
「いいえ、違います。捕らえて、ハイドラ様の前に突き出す。そして、あの子の前で
「……貴方も、随分と人が悪い。確かに、『カムイ』という名の器が欲しいとはいえ、生死は関係ない。……わかりました、アベル殿。作戦は考えておきます。」
「そうですか。ありがとうございますよ、ルフレ卿。」
黒騎士アベルは立ち上がる。
そして、ドアを少し開け、
「ああ、そうだ。紅茶、美味しかったですよ。懐かしい、とても懐かしい味でした。昔、あの子が淹れてくれた味にソックリです。」
「……そうですか。あれは、この城に残っていた茶葉です。元ここの騎士であった貴方には、さぞや懐かしいことと思いますよ。」
彼女は笑顔のまま、そう言った。
黒騎士アベルは冷たい笑みを浮かべ、
「……ふ。やはり貴女の……その笑顔の下にある悪意は、嫌いじゃないですよ。では、また。」
黒騎士アベルは、透魔王国軍師ルフレの部屋から出て行った。
彼女は再び寝だし、
『……何とも、厄介で面倒な事を考えるものだ。』
カムイ達がイズモ公国の前に来ると、
「ここからは、別行動をさせて貰う。頑張って、事を成せよ。」
彼女はどこかに走り出して行った。
カムイは手を伸ばしていた手を引き、
「え?あ……行っちゃいました。」
「仕方ないわ。こちらは、こちらで動きましょう。」
「はい。」
カムイ達は王宮の方へと進む。
カムイは辺りを見て、
「なんだか、神々しい雰囲気の所ですね。」
「ええ。イズモ公国は古くから神々の国として知られているわ。他の国々が対立をしている時も、常に中立を守り続けているの。でも、無事につけて良かったわ。さっそく、公王様に会いに行きましょう。炎の紋章のこともそうだけど、タクミの事も調べないと。」
アクアがカムイを見る。
カムイは頷き、
「はい。タクミさん、無事で居てくれるといいんですけど……」
「大丈夫ですよ、姉様。タクミ兄様は、きっと無事にいると思います。」
「ええ、信じましょう。」
彼らは王宮へと足を踏み入れる。
すぐに、公王イザナとの謁見が叶った。
と、言うより彼の方から来たのだ。
「ボクは公王イザナ!以後、お見知りおきを〜!相当長旅だったんでしょ〜?ささ、ゆっくりしてっちゃいなよ!何ならず〜っといてくれてもいいんだけど……なんてね!」
と、白い衣を纏った長髪の男性が明るい声で言う。
カムイ達は目をパチクリして、しばらく固まった後、
「あ、ありがとうございます……」
「いや〜!それにしても、よぉ〜く来てくれちゃったねぇ!お客さんなんて久しぶりだから、ボク嬉しくなっちゃうな〜!」
その公王イザナの姿に、ツクヨミは半顔で、
「はぁ……なんだ、この軽いノリは……。外の世界の王は皆、このような感じなのか?」
「い、いえ……違います。ちょっとこの人が特別なだけで……」
サクラが眉を寄せて、彼から距離を取り始める。
カムイも、一歩引きそうになったが、
「えっと……あ、あのイザナ公にお聞きしたいことがあります。」
「なになに〜?何でも聞いてよ。ちなみにボクの好きな言葉は愛ね、愛!」
「そう、ですか。では、白夜王国第二王子タクミさんがここにいませんか?それと、この刀『夜刀神』にまつわる『炎の紋章』について教えていただきたいんです。」
「え?知らないよ。それに、タクミ王子も、ここにはいないよ。」
公王イザナは即答だった。
カムイは視線を落とし、
「……そうだすか。せっかく手掛かりが掴めたと思ったのですが……」
「まぁまぁ。そんなに肩を落とさないで。あっちに酒宴の用意してるしさ〜!とりあえず食べて飲んで、盛り上がっちゃえばいいさ〜!」
と、くるっと反転して、カムイ達を案内しようとするが、
「……待って。本当に知らないの?とても大事な事なの。」
「うーん、知らないものは知らないってば〜!」
彼は頰を膨らませる。
ギュンターが槍を構え、
「ああ……確かにお前は知らぬだろうな。偽物のイザナ公よ。」
「え……?偽物?」
カムイは、ギュンターと公王イザナを交互に見る。
そこに駆け足が聞こえてくる。
サクラがその人物を見て、
「タクミ兄様!」
「サクラ!」
タクミはサクラの前に立つ。
そして、サクラは彼と共に来たもう一人の男性を見る。
「そ、それに……イザナ公がお二人⁉︎」
ギュンターは槍を彼に突き立て、
「……やはりそうか。私の甘く見てもらっては困る。この汚らわしい幻術、見覚えがあるぞ!さぁ、正体を見せろ!」
その偽物かもしれない公王イザナの後ろに、フードの彼女が現れる。
彼の首元に短剣の刃を突き立てる。
「くっ!私の術を見破るとは!ギュンターめ!お前も、あいつらを連れてくるとは‼︎」
そう言うと、彼にノイズが走る。
その姿は公王イザナから魔術士へと変わる。
「ひょーっほほほほ!お久しぶりでございますね!ギュンター!」
「やはり貴様か、ゾーラ!」
「か、彼は?」
カムイ達も武器を構える。
ギュンターは眉を寄せ、
「お気をつけよ。こやつは幻術を見せるのが得意な、暗夜王国の魔術士です!」
「さぁ〜!殺っちゃってください!」
そう暗夜の魔術士ゾーラが叫ぶと、物陰に隠れていた暗夜兵が出てくる。
そして、自分の首に短剣を突き立てているフードの彼女とギュンターに魔術を放つ。
二人は彼から距離を置く。
「ふふふ!この、ガロン王様より賜った氷の魔法具で、やっつけてあげますよ!ひょーっほほほ!」
と言って、氷魔法をぶっ放してくる。
それを、フードの彼女が長剣も構えて斬り裂いていく。
その間に、暗夜兵達がカムイ達を囲い出す。
「さてさて〜、ボクは見てるからヨロシク〜♪」
と、公王イザナは安全な真ん中に来る。
タクミはサクラを見て、
「サクラも、真ん中に!」
「は、はい!でも、タクミ兄様たちはどうして⁈」
「……そこのイザナ公と共に、牢屋に打ち込まれてたところをあいつに助けられたんだ。」
タクミは襲いかかる暗夜兵を、弓で倒しながら言う。
カムイは先頭で敵を斬りながら、
「ですが、無事で良かったです、タクミさん。」
「フン。裏切り者の奴の言葉なんかいらない!」
「タクミ兄様!それには……」
「サクラ、今は戦いに集中して。カムイ、タクミ、あなたたちもよ。」
「はい!」「わ、わかってるよ!」
アクアが槍で敵をさばきながら言う。
彼らは暗夜兵を、次々となぎ払っていく。
そして、再び魔導士ゾーラの前へと来る。
カムイが彼の前に立ち、
「勝負ありました。もう逃げられませんよ、ゾーラさん。降伏して下さい。」
「くっ!これで、勝ったと思わないで下さい!これだからお嬢様育ちの甘ちゃんが!」
彼は懐から短剣を取り出し、
「隙ありぃぃぃ〜〜!」
「なっ⁉︎」
「いいですか、最後に勝った者こそが正義なのですよ‼︎」
それをカムイに向けて突き出してきた。
だが、それをフードの彼女が刃を掴む。
「な、な、な⁈」
「……気は済んだな。なら!」
彼女は、彼の腹を思いっきり殴る。
「グハッ!」
彼は腹を押さえて倒れこんだ。
フードの彼女は建物の影を見て、
「居るのだろう、暗夜の第二王子。」
「え?レオンさんがいるんですか?」
カムイもそこを見る。
すると、レオンが出て来た。
「……久しぶりだね、カムイ姉さん。意外と元気そうだね。」
「レオンさん、あのーー」
「そこのゾーラに関しては、礼を言うよ。暗夜王国軍の恥さらしを止めてくれたこと。」
彼は冷たく言う。
カムイは拳を強く握りしめ、勇気を出す。
「……えっと、つまり今回の事は間違いだったということですよね。ですが、ここでレオンさんに会えて良かったです。」
カムイは笑みを浮かべる。
レオンは少し頰を赤くした後、
「……こ、今回の件は父上の命があった。けれど、僕自身はこのやり方を良しとしなかっただけだよ。」
「やっぱり、レオンさんは正義感の強い方です。レオンさん、それにタクミさん。お願いです、力を貸して下さい。私たちは、この世界の真実を知っています。暗夜も、白夜も争う必要はないんです。」
「それを信じろというのかい、カムイ姉さん?見るところ、そこの白夜王子も信じてないみたいだけど。」
レオンはタクミと目が合う。
二人は睨み合う。
カムイは彼らをジッと見て、
「……そうですね。ですが、信じて下さい!それに、ガロン王は操られているんです。ここではない、禁忌の国の者に。」
「……姉さんの言うことが本当だったとして、禁忌の国ってのは、どこの国なのさ。場所は?王の名は?」
「そ、それは言えません。ですが、これは本当のことなんです。暗夜と白夜が戦争に導いているは、その国にいる黒幕なんです。その真の敵を倒さなけば、両国に平和はやって来ません。」
カムイは真剣な表情で言う。
と、レオンとタクミは再び目が合う。
二人はムッとした後、レオンはカムイに背を向ける。
「……全く。姉さんの訳の分からない事は、今に始まったことじゃないけど、なんとも曖昧な言葉だ。」
「あ、レオンさん!もし……もし、私を信じて貰えるのなら、暗夜と白夜の空が入れ替わる日に、無限渓谷に来て下さい!お願いします、レオンさん!」
「……悪いけど、姉さんが僕らをどう思っていようが、僕らとはもう関係のないことだ。」
そう言って、彼は歩いて行った。
フードの彼女は彼の背を見て、
『……これで暗夜の王族にも伝わる。そうなれば、暗夜の第一王子が動きを見せるはずだ。彼らは知っている。すでにあの王が、ガロン王ではない事を。』
カムイは視線を落とす。
そんな彼女に寄り添う、アクア。
「カムイ、わかっているはずよ。」
「はい……」
カムイは顔を上げる。
そして、タクミを見る。
「言っとくけど、僕も、あんたたちを信じない。白夜を裏切ったんだからな!サクラをうまく手懐けたようだけど、僕は騙されない。」
そう言って、カムイに背を向ける。
サクラが彼に近寄り、
「タクミ兄様!」
「……サクラ。サクラはしたいようにすればいい。僕は、少し確かめたいことがある。だから、今はサクラの味方にはなってられない。」
そう言って、彼は歩いて行った。
カムイは拳を握りしめ、
「……タクミさん。」
「タクミ兄様……」
サクラは涙を拭う。
アクアはハッとして、フードの彼女を見る。
「あなたの怪我は、大丈夫?」
「……問題ない。」
「で、でも、血がたくさん出ています!見せてください!」
サクラが彼女の手を取り、治癒をかける。
傷がふさがったその手を見ながら、
「礼は言わない。貴殿が勝手にやったことだ。」
「ちょっと!せっかくサクラ様が治してくれたのに、その態度は何よ!」
カザハナが、フードの彼女に睨みながら怒鳴る。
フードの彼女は無言となり、それを受け流して背を向ける。
さらに怒り出そうとするカザハナを、ツバキが苦笑して、
「落ち着きなよ、カザハナ。」
「そ、そうですよ。それに私は、それで構いませんから……」
と、サクラも言うが、いまだに怒るカザハナ。
それを落ち着かせようとするサクラとツバキ。
そんな重苦しいような雰囲気に、
「はいはーい!ところで、ボクに聞きたいことがあるんじゃないの?」
「はい……。実は、イザナ公に炎の紋章について、教えて頂きたいのです。」
「ん〜、いいよ。じゃ、先に城の中に入ってて。すぐに準備を済ませていくから〜♪」
「わ、わかりました。」
彼らは、公王イザナが呼んだ従者に連れられて、城の中に入って行く。
フードの彼女は彼を見て、
「私が、炎の紋章について言ってもいい。そうすればーー」
「それじゃ、意味がないんだよ。代々、これはボクの一族の役目。ボクは彼女を認めてる。だから悔いはないんだ。それと、始めて会った時にも思ったけど、君はやっぱり禁術を使ったね。それをする為に、どれだけの犠牲を出したの?」
公王イザナは、彼女を鋭く射抜く。
彼女は少し黙った後、仮面に手をかける。
そして彼女は仮面を外し、彼だけに見えるようにする。
「私は、この選択に悔いはない。そして逃げる訳にはいかないのだ。私は全てを背負い、持っていく。受けた憎しみも、悲しみも、私に向けられた、あらゆるもの全てを。その為に、この身がどうなろうと構わない。その覚悟は、とうの昔にしている。」
彼女の顔を見た公王イザナは、息を飲んだ。
けれど、表情を改めて、
「そうか……君の覚悟は本気のようだ。なら、ボクはやっぱりやるよ。だから止めないでくれ。」
「……わかった。」
彼女は仮面を付ける。
彼らも、カムイ達が待つ城の中に入って行く。
カムイ達の前に立つ公王イザナは、
「さてさて、炎の紋章についてだったね。」
「は、はい。」
カムイが頷くが、サクラの隣にいたカザハナが警戒しながら聞く。
「そ、その前に、あなたが本当にイザナ公王様なのですか?」
「うん、そうだよ♪どこからどう見ても、神々しい公王様でしょ?何たってボク、神々の末裔だからね〜っ!」
「に、偽物よりも軽い……」
流石のサクラも、眉を寄せて苦笑する。
公王イザナはサクラに微笑み、
「そうそう、サクラ王女。安心していいよ。タクミ王子も、ちゃんと分かってくれる。勿論、リョウマ王子も、ヒノカ王女も、ね。」
「……え?」
「間違いないって〜。何たって、神様からの予言だもん♪」
「なんとも軽い予言ね……」
カザハナは眉を思いっきり寄せた。
彼はとびっきりの笑顔を向け、
「そうそう、予言ついでに、この予言を他の人たちにも伝えてね♪それっじゃ〜、神様からの予言を受けるよ〜♪」
と、彼は水晶を取り出す。
そして、真剣な顔つきになり、瞳を閉じて手を水晶にかざす。
すると、水晶が光り出し、
「『見えているものが全てとは限らない。真実は深く透明な場所にある。水面に映る、すべてを知る者こそが真の敵。……さらなる暗闇に潜みし悲しき竜の子。闇に堕ち、光さすのを待ちわびる。全ては愛しき約束のため……』」
光が収まり、カムイが首を傾げる。
「……さらなる暗闇に潜みし悲しき竜の子?何か知っていますか、アクアさん?」
そう言って、アクアを見る。
彼女は瞳を揺らして涙を流す。
膝を着き、手を顔に覆って泣き出した。
「ア、アクアさん⁉︎」
「ご、ごめんなさい……禁忌の国に戻ったら話すわ。」
アクアは涙を拭い、立ち上がる。
その姿を見たフードの彼女は、誰にも聞こえない声で呟いた。
「……やっぱり知っているのか。……ごめんなさい……」
そう言って、拳を強く握りしめた。
公王イザナは真剣な表情のまま、
「そうそう、それでね……炎の紋章のことだけど、あいにくボクはよくは知らない。けど、言い伝えはあるよ。『明るき道、昏き道、どちらも歩めぬ迷い人が訪れたとき……"我が一族がもう一つの道を示す"』ってね。と、言うわけで古の神に聞いてみるよ。」
彼は深呼吸して、再び水晶に手をかざす。
そして瞳を閉じ、集中した。
「……『竜に会え。汝の望む答えは、そこにあり。』」
「え?竜?」
カムイが眉を寄せて、リリスを見た。
リリスは首を振る。
と、水晶をかざしていた公王イザナが倒れこんだ。
「イザナ公⁈」
カムイが彼を抱き上げる。
彼はカムイを見て、
「……今は意味が分からなくてもいい。その内分かるはずだ。何たって、このボクの命をかけた神託だからね……」
「そんな⁉︎命をかけたですって!なんで……なんで言ってくれなかったのですか!」
カムイは眉を寄せて、彼を見る。
フードの彼女は、カムイが抱え込む彼の前に膝を着き、
「……いつだって、何かを得るときは犠牲がついてくる。古の神の持つ力は増大だ。いくら神の末裔と言えど、今は人の身。人の身では、それを受け止めることはできない。だからこそ、神託は命を対価として行われる儀式だ。」
「あなたは知っていたのですか?こうなる事を!」
「……ああ。」
「なんで止めてくれなかったのです!誰かの命を奪ってまで、私は情報を得たくなかった!何か、別の方法があったはずです!」
カムイが泣きながらそう言うと、
「ふざけるな!犠牲を出さねば、成せない事もある。犠牲が伴って成した場合、それを受け止めるのは、その代償を知る者だ!お前は、真の敵を討つ為に『炎の紋章』を知りたかった!その代償を知りながら、イザナ公はお前を信じ、認め、託したのだ!その行為に目を背けるな!お前は覚悟していたはずだ!だからお前は、その代償を知った者として受け止めろ‼︎」
カムイの襟首を掴んで、フードの彼女は怒鳴りつける。
カムイは泣き続けた。
そのカムイの襟首を掴んでいたフードの彼女の手を、公王イザナが手を伸ばして離す。
「……彼女をあまり責めるものではないよ。さっきの神託で、真の君の事も知れた。あまりにも君は業を、呪いを背負いすぎてる。けど、あまり自分を責めるべきではない。そしてなりよりも、『カムイ』を責めるべきではないんだ。君は君で、
「………これは、私の背負うべきものだからだ。逃げるわけにはいかない。そう言ったはずだ。」
「ああ……だからこそ、お礼を言うよ。約束を守ってくれてありがとう。実はさ、ボクもこの戦争をなんとかしたかったんだ。戦争を止める為に、この身を捧げる……ボクってば伝説になるかも♪」
「はい……きっと。イザナ公、私はあなたの勇気ある行動を忘れません。ありがとうございます……」
カムイは涙を拭う。
彼は、カムイに微笑んだ。
そしてとびっきりの笑顔を向けて、
「じゃ、ボクは逝くよ……バイバイ……」
フードの彼女の手を取っていた彼の手は落ち、静かに息を引き取った。
カムイやアクア、サクラはしばし泣く。
ギュンターは公王イザナに頭を下げ、
「民の笑顔を望み逝く……イザナ公、あなた様は真の王でしたな。」
「私は進みます。イザナ公の想いを無駄にしない為にも……みんなが幸せになれる未来の為にも!」
カムイは立ち上がる。
彼らは進む。
次の道標を掴む為に……