ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

11 / 26
第十一話 仲間を求めて〜その2〜

黒き王子は、周りを警戒していた。

自分の母は、父を振り向かせる為に子供である自分を使った。

自分、周りの異母兄弟姉妹(きょうだい)とは交流を持てなかった。

持てば、母がいい顔をしない。

自分としては、どうでも良かった。

自分は、母にとっては父を振り向かせる道具に過ぎない。

 

と、母はイラついていた。

正妻が消え、誰もが正妻の座をかけて争っていた。

だが、正妻の座に着いたのは見知らぬ女性。

しかも、その女性には子がいた。

誰もが、彼らを邪険にした。

 

だが、その女性が消えると争いは激しくなった。

異母兄弟姉妹(きょうだい)達による王位争い。

妻たちによる正妻の座。

多くの者がそれによって死んだ。

そんな時だ。

正妻の子であった第一王子に会ったのは。

彼は自分を含めた残った異母兄弟姉妹(きょうだい)を集め、交流を図った。

彼は素直に自分達を受け入れてくれた。

兄弟姉妹(きょうだい)として、絆を深めた。

 

そんな兄に、連れられて行ったのは古びた城。

壁が高く、使われていないはずの城。

そこには、母を持たない異母姉(きょうだい)がいた。

けれど、彼女は城から出られない。

そんな姉に、自分は何度も会いに行った。

彼女は自分にとって、かけがえのない姉だ。

けれど、自分は気づいてしまった。

彼女が、自分とは違う血を引いてる事を。

彼女は、黒ではなく白の者。

それでも自分は、彼女か向けてくれる笑みが好きだった。

 

 

ーー暗夜城の王座にて

暗夜王ガロンは、とある女性魔導師からの報告を受けていた。

それは彼以外には見えない女性魔導師。

 

「そうか。やはり、『カムイ』は生きていたか……。そして知っている。知ってはならぬ真実を。うむ、案ずるな。手は打ってある。『カムイ』など、恐れるに足らぬ。簡単に捻り潰してくれる。主も分かっておろう。わしを止めることは誰にも出来ぬ、とな。この世界は、もうすぐワシのもの!……全ては、我が神の為に。クハハハハッ‼︎」

 

その姿を密かに、扉の向こう側で聴いていたエリーゼ。

 

『……やっぱり、あいつは変だ。お父様の皮を被った悪魔……絶対に、カムイお姉ちゃんは守ってみせる。マークスお兄ちゃんに言わないと!』

 

エリーゼはそっとその場を離れて、走り出す。

 

 

カムイ達はタクミ救出の為、黄泉の階段と呼ばれる道を歩いていた。

その道のりは階段で坂道が続く。

ギュンターが立ち止まり、

 

「少し、休憩と致しましょう。カムイ様のお体のこともあります。」

「はぁ……はぁ……い、いえ、私は大丈夫……です!」

「では、言い方を変えましょう。この階段と坂道は、老体の私には少し厳しいのです。」

 

ギュンターは、カムイを見て微笑む。

カムイは深呼吸して、

 

「……わかりました。休憩にしましょう。」

 

彼らは腰を下ろして休憩にする。

フードの彼女は一人立って、辺りを警戒していた。

カムイは階段の上を見上げ、

 

「ですが、この階段はどこまで続くのでしょうか?」

「……はっきりは言えないわ。でも、目的に最短で行くには、この黄泉の階段を抜けた方が早いの。」

 

アクアも、上を見ながら言う。

サクラは眉を寄せて、

 

「はい。中立国のイズモ公国ですからね。白夜からも、暗夜からも、攻めにくい所に配置されています。」

「そう、だからひとまず白夜の追っ手との戦いも避けれるわ。あの国では、全ての戦闘行為が禁止されているから。」

「な、なんだか霧が濃くなってきましたよ?」

 

サクラは辺りを見渡す。

フードの彼女は前に歩み出る。

そこにはノスフェラトゥが二体、突如現れた。

 

「きゃあああっー!皆さん、ノスフェラトゥです!」

 

サクラの悲鳴が響く。

 

「サクラ様、お下がりを!」「カムイ様!お下がりを!」

 

サクラとカムイの臣下が彼らの前に出るが、

 

「……お前達が構える必要はない。あれは、人だ。」

「え?」

 

そう言うと、彼女は思いっきり、ノスフェラトゥの腹と頭を蹴る。

それは後ろと前乗りに倒れる。

それは彼女の言う通り、人に変わった。

アクアは倒れこんだ彼らを見て、

 

「……風の部族の人たちね。」

 

フードの彼女は斜め後ろの岩を見上げる。

そこに、暗器を投げる。

 

「ひぃ!」

 

そこには、暗夜軍師マクベスがいた。

フードの彼女は彼を見て、

 

「暗夜王ガロンに伝えよ。お前の計画はすべて壊す、とな。」

 

彼はすぐさま転移魔法を使って、その場から消えた。

カムイはフードの彼女を見て、

 

「えっと……何が、どうなったんですか?」

「……お前達を罠にはめようとしたのだ。風の部族の者を殺させ、争わせるために為にな。」

「……そうだったんですか。」

 

カムイは視線を落とす。

カザハナは、フードの彼女を睨んで、

 

「何で、そんな事が分かったのよ。」

「……同じ事をされた事があるからだ。」

「は?え?」

「そして、必然を望むのなら……やると思った。」

 

フードの彼女は、倒れこんでいる風の部族の者を見る。

カムイが倒れこんでいる者の一人の手を取り、抱える。

 

「このまま、ほっとけません。風の部族の方々の所に戻しましょう。」

「はい、姉様!」

 

サクラも手伝う。

それを他の者達は苦笑して、カムイとサクラと変わる。

フードの彼女は考え込んでから歩き出す。

 

風の部族がある場所へ向かう。

そこは砂漠だった。

フードの彼女が先頭を歩き、

 

「あそこが、風の部族長が治める烈風城だ。」

「これが……」

 

カムイが城の見つめる。

と、フードの彼女は立ち止まる。

カムイも止まり、

 

「ど、どうしましたか?」

 

その瞬間、突風が彼らを襲う。

それが治ると、フードの彼女は城に向かって走り出した。

 

「え⁉︎えぇ⁈」

 

カムイの困惑の叫び声は、風にかき消された。

カムイ達が、彼女を追って城に来ると、そこは戦場とかしていた。

カムイ、アクア、ジョーカー、ギュンター、リリスの目には、透魔兵が視えていたが、他の者には見えていない。

なので、

 

「ど、どういう事よ!何でいきなり斬られているの⁉︎」

「うーん、これはマズイな。サクラ様、危険ですので下がって下さい。」

「で、でも……」

 

カザハナ、ツバキの二人は、サクラの前で剣を構える。

スズカゼは眉を寄せ、

 

「まるで、何かがいるような……そんな気配を感じますが……」

 

と、視えていないサクラ達の元に透魔兵が襲いかかる。

カムイが剣を抜き、透魔兵を斬る。

 

「えっと、サクラさん達には視えていない敵がいるんです!危険ですので、下がっていて下さい!」

「そうね。ここは、視えてる者が動くしかないわね。」

「ですが、この人数では厳しいですね。」

「泣き言を言っとる暇はないぞ、ジョーカー。」

「うるせー、ジジイ!」

 

彼らは二組で動き出す。

リリスは、サクラ達を守るように、側にいる。

と、カムイの背後から襲いかかる透魔兵に矢が刺さる。

その方向を見ると、城の屋根の上で矢を番えて再び矢を放つフードの彼女の姿。

それを見たジョーカーは、

 

「あの方は、弓も使えるのですね。」

「はい。凄いです!」

 

だが、その彼女の後ろにも透魔兵が襲いかかる。

彼女は屋根から飛び降りる。

空中で回転して、自分に襲いかかる透魔兵を射る。

そして、カムイとジョーカーの前に着地した。

 

「……遅いぞ。」

「何も言わずに走って行ったのは、あなたですよ。」

 

ジョーカーは笑顔と共に、怒りがあった。

それを、彼女はさっと受け流し、

 

「……まあ、いい。片付けるぞ。」

 

弓を捨てて、左手に長剣と右手に短剣を握る。

敵に向かって、走って行った。

 

「わ、私たちも頑張りましょうか。」

「……そうですね。」

 

二人も再び戦い出す。

と、カムイは見覚えのある人を見つけた。

 

「リンカさん⁈」

「ん?カムイか!」

 

それは、炎の部族リンカがいた。

その隣には、ムキムキの坊さん的な男性がいた。

 

「知り合いか?」

「ああ、あいつはカムイ。白夜王国の第二王女だ。」

「む?あれがそうか……。私の名は、フウガ。この風の部族の長だ。」

「あ、はい。私はカムイです。」

 

カムイは、リンカの横の風の部族長フウガに頭をさげる。

そして、剣を構え直し、

 

「えっと、ここは任せてください!みなさんには、見えない敵がいるんです!」

「……わかった。ここは任せよう。」

「はい!」

 

カムイ達が透魔兵を倒しきり、風の部族長フウガの前に立つ。

 

「城の者達から聞いた。倒れた仲間を連れて来てくれたそうだな。礼を言う。」

「い、いえ、あれはこちらが招いた事故でもあるので。」

「……だが、噂とは当てにならぬものよ。」

「噂?」

 

カムイは風の部族長フウガの言葉に首を傾げる。

サクラ達も、心あたりがない。

リンカがカムイを見て、

 

「実は、お前が白夜と暗夜を裏切り、世界へ破滅を迎えようと動いている、という噂が流れているのだ。」

 

カムイ達に少し間が生まれた。

フードの彼女は腕を組んで考え込んでいた。

カムイはハッとして、

 

「いえ、違います、フウガ様!リンカさん!私は、そんなこと考えていませんし、やろうとも思ってません!」

「それは知っておる。先のお前たちを見て、そう思った。」

「ありがとうございます。私たちを信じてくださり。」

 

風の部族長フウガは、カムイを見る。

そして笑みを浮かべ、

 

「はは!スメラギよ、喜ぶがよい!お前の娘は立派に成長しておるぞ。」

「え?父上様をご存知で?」

「そうだな。私はかつて、白夜王スメラギとは親友だったのだ。若き日のあいつとは、共に闘い、背中を預け合ったものだ。」

「そう、なんですか……」

 

カムイは驚く。

カムイは真剣な顔に戻り、

 

「フウガ様。私たちは今、さっきの見えない敵と戦うために仲間を集めています。あれが、私たちの真の敵なんです。」

「……信じがたい事ではある。お前たちが戦っておる姿を、確かに見た。だが、それでも私は長として、すぐには決められん。」

「……そうてすね。」

「だからこそ、見極めたいのだ。……ツクヨミ!」

「なんですか、フウガ様。」

 

彼がそう言うと、一人の占い師の少年がやって来る。

 

「こ奴は、ツクヨミ。ツクヨミよ、この者たちと共に行き、修行して参れ。カムイ、こ奴はこう見えても、類い稀な才能を持っておる。きっと、お前たちの力となるだろう。」

 

と、彼の頭を豪快に撫でながら言う。

彼は少し照れた後、

 

「……フウガ様。こんな弱そうな奴らが、さっきの見えない何かとやらを倒したのか?私のまじないも、効かなかったのに。」

「そう言うな。何しろこのカムイは、あの『夜刀神』を持つ者だ。この刀の事は、スメラギより聞いている。神の刀である『夜刀神』は、『炎の紋章』を繋ぐ鍵となるもの。炎の紋章は、絶対的な力を持ち、創造主である神さえも、滅ぼせると言われているものだそうだ。」

「神さえも滅ぼせる力……?」

 

カムイは眉を寄せる。

フードの彼女は無言で何かを想いながら、彼らを見る。

カムイはアクアを見て、

 

「アクアさん、その力ならあいつを……」

「ええ、可能よ。希望が見えてきたわね。」

「はい。フウガ様、夜刀神について、他に何か知っていますか?」

「私も、そんなには詳しくないのだ。だが、夜刀神について詳しく知っているのは、イズモ公国のイザナのはずだ。炎の紋章について聞いてみるといい。」

「はい。ありがとうございます、フウガ様。ツクヨミさん、これからよろしくお願いします。」

「仕方がない。フウガ様の頼みだ。特別に力を貸してやる。感謝しろ。」

 

ツクヨミは両手を腰に当てて、頷く。

リンカが、カムイを見て、

 

「カムイ、あたしもついてくよ。あんたの敵とやらを一緒に倒そうじゃないか!」

「ありがとうございます、リンカさん。」

 

カムイはみんなを見て、

 

「行きましょう、みなさん。イズモ公国には、暗夜に捕まったタクミさんもいる。そして、イザナ様から炎の紋章について聞きましょう。」

 

カムイ達はイズモ公国へと急ぐ。

その途中、カムイは思い出した事をフードの彼女に言う。

 

「そういえば、あなたは弓も使えたんですね。魔術も使えるし、なんでも出来て凄いです。」

「……昔、教わっただけだ。」

「そうなんですか?誰からですか?」

「……先を急ぐぞ。」

「え?あ、はい……」

 

彼女はどんどんスピードを上げて、進んで行った。

 

 

ーー透魔王国、透魔軍師ルフレの自室にて。

そこには沢山の本があった。

かつては、とあるこの国の王家に関係する者の部屋だったらしい。

いや、なるはずだった部屋だ。

机の上には、ここ最近考えた戦術が散らばっている。

窓からは、荒れた大地が見える。

 

透魔軍師ルフレは、ソファに腰をかけて寝ていた。

と、戸が叩く音が聞こえる。

彼女は目を覚まし、

 

「どうぞ……」

「……失礼する。」

 

彼女の部屋に入ってきたのは、黒騎士アベル。

透魔軍師ルフレは少し意外そうな顔をした後、笑顔になる。

 

「これは、アベル殿。珍しいですね。どうぞ、お掛け下さい。」

「どうも。」

 

彼は、彼女の前のソファに座る。

彼女は立ち上がり、紅茶を淹れる。

それを彼に渡し、

 

「お口に合うかわかりませんが、よかったらどうぞ。」

「頂こう。」

 

彼は紅茶を飲む。

彼女は残っていた自分のコーヒーを一口飲み、

 

「それで、アベル殿。私の部屋に来たのは、どう言ったことで?」

「この間、ルフレ卿の言った子の様子を見に行って参りました。確かに、『カムイ』と共に行動していましたよ。おかげで、あるべき必然を作り出すのに苦労しました。ですが、彼女はそれを打ち壊しに来る。」

「……では、アベル殿は必然を起こすたい。だから私に、戦略を立てさせる為に来たのですか?」

「いいえ。貴女には、彼女を捕らえる方法を考えて貰いたいのですよ。」

 

黒騎士アベルは冷たい笑顔になる。

透魔軍師ルフレは、彼をジッと見る。

 

「……情ですか、アベル殿。あの者は貴方の弟子だ。だから、生かしたいのですか?」

「いいえ、違います。捕らえて、ハイドラ様の前に突き出す。そして、あの子の前で希望(カムイ)を殺す。ただ、それだけの為にですよ。」

「……貴方も、随分と人が悪い。確かに、『カムイ』という名の器が欲しいとはいえ、生死は関係ない。……わかりました、アベル殿。作戦は考えておきます。」

「そうですか。ありがとうございますよ、ルフレ卿。」

 

黒騎士アベルは立ち上がる。

そして、ドアを少し開け、

 

「ああ、そうだ。紅茶、美味しかったですよ。懐かしい、とても懐かしい味でした。昔、あの子が淹れてくれた味にソックリです。」

「……そうですか。あれは、この城に残っていた茶葉です。元ここの騎士であった貴方には、さぞや懐かしいことと思いますよ。」

 

彼女は笑顔のまま、そう言った。

黒騎士アベルは冷たい笑みを浮かべ、

 

「……ふ。やはり貴女の……その笑顔の下にある悪意は、嫌いじゃないですよ。では、また。」

 

黒騎士アベルは、透魔王国軍師ルフレの部屋から出て行った。

彼女は再び寝だし、

 

『……何とも、厄介で面倒な事を考えるものだ。』

 

 

カムイ達がイズモ公国の前に来ると、

 

「ここからは、別行動をさせて貰う。頑張って、事を成せよ。」

 

彼女はどこかに走り出して行った。

カムイは手を伸ばしていた手を引き、

 

「え?あ……行っちゃいました。」

「仕方ないわ。こちらは、こちらで動きましょう。」

「はい。」

 

カムイ達は王宮の方へと進む。

カムイは辺りを見て、

 

「なんだか、神々しい雰囲気の所ですね。」

「ええ。イズモ公国は古くから神々の国として知られているわ。他の国々が対立をしている時も、常に中立を守り続けているの。でも、無事につけて良かったわ。さっそく、公王様に会いに行きましょう。炎の紋章のこともそうだけど、タクミの事も調べないと。」

 

アクアがカムイを見る。

カムイは頷き、

 

「はい。タクミさん、無事で居てくれるといいんですけど……」

「大丈夫ですよ、姉様。タクミ兄様は、きっと無事にいると思います。」

「ええ、信じましょう。」

 

彼らは王宮へと足を踏み入れる。

すぐに、公王イザナとの謁見が叶った。

と、言うより彼の方から来たのだ。

 

「ボクは公王イザナ!以後、お見知りおきを〜!相当長旅だったんでしょ〜?ささ、ゆっくりしてっちゃいなよ!何ならず〜っといてくれてもいいんだけど……なんてね!」

 

と、白い衣を纏った長髪の男性が明るい声で言う。

カムイ達は目をパチクリして、しばらく固まった後、

 

「あ、ありがとうございます……」

「いや〜!それにしても、よぉ〜く来てくれちゃったねぇ!お客さんなんて久しぶりだから、ボク嬉しくなっちゃうな〜!」

 

その公王イザナの姿に、ツクヨミは半顔で、

 

「はぁ……なんだ、この軽いノリは……。外の世界の王は皆、このような感じなのか?」

「い、いえ……違います。ちょっとこの人が特別なだけで……」

 

サクラが眉を寄せて、彼から距離を取り始める。

カムイも、一歩引きそうになったが、

 

「えっと……あ、あのイザナ公にお聞きしたいことがあります。」

「なになに〜?何でも聞いてよ。ちなみにボクの好きな言葉は愛ね、愛!」

「そう、ですか。では、白夜王国第二王子タクミさんがここにいませんか?それと、この刀『夜刀神』にまつわる『炎の紋章』について教えていただきたいんです。」

「え?知らないよ。それに、タクミ王子も、ここにはいないよ。」

 

公王イザナは即答だった。

カムイは視線を落とし、

 

「……そうだすか。せっかく手掛かりが掴めたと思ったのですが……」

「まぁまぁ。そんなに肩を落とさないで。あっちに酒宴の用意してるしさ〜!とりあえず食べて飲んで、盛り上がっちゃえばいいさ〜!」

 

と、くるっと反転して、カムイ達を案内しようとするが、

 

「……待って。本当に知らないの?とても大事な事なの。」

「うーん、知らないものは知らないってば〜!」

 

彼は頰を膨らませる。

ギュンターが槍を構え、

 

「ああ……確かにお前は知らぬだろうな。偽物のイザナ公よ。」

「え……?偽物?」

 

カムイは、ギュンターと公王イザナを交互に見る。

そこに駆け足が聞こえてくる。

サクラがその人物を見て、

 

「タクミ兄様!」

「サクラ!」

 

タクミはサクラの前に立つ。

そして、サクラは彼と共に来たもう一人の男性を見る。

 

「そ、それに……イザナ公がお二人⁉︎」

 

ギュンターは槍を彼に突き立て、

 

「……やはりそうか。私の甘く見てもらっては困る。この汚らわしい幻術、見覚えがあるぞ!さぁ、正体を見せろ!」

 

その偽物かもしれない公王イザナの後ろに、フードの彼女が現れる。

彼の首元に短剣の刃を突き立てる。

 

「くっ!私の術を見破るとは!ギュンターめ!お前も、あいつらを連れてくるとは‼︎」

 

そう言うと、彼にノイズが走る。

その姿は公王イザナから魔術士へと変わる。

 

「ひょーっほほほほ!お久しぶりでございますね!ギュンター!」

「やはり貴様か、ゾーラ!」

「か、彼は?」

 

カムイ達も武器を構える。

ギュンターは眉を寄せ、

 

「お気をつけよ。こやつは幻術を見せるのが得意な、暗夜王国の魔術士です!」

「さぁ〜!殺っちゃってください!」

 

そう暗夜の魔術士ゾーラが叫ぶと、物陰に隠れていた暗夜兵が出てくる。

そして、自分の首に短剣を突き立てているフードの彼女とギュンターに魔術を放つ。

二人は彼から距離を置く。

 

「ふふふ!この、ガロン王様より賜った氷の魔法具で、やっつけてあげますよ!ひょーっほほほ!」

 

と言って、氷魔法をぶっ放してくる。

それを、フードの彼女が長剣も構えて斬り裂いていく。

その間に、暗夜兵達がカムイ達を囲い出す。

 

「さてさて〜、ボクは見てるからヨロシク〜♪」

 

と、公王イザナは安全な真ん中に来る。

タクミはサクラを見て、

 

「サクラも、真ん中に!」

「は、はい!でも、タクミ兄様たちはどうして⁈」

「……そこのイザナ公と共に、牢屋に打ち込まれてたところをあいつに助けられたんだ。」

 

タクミは襲いかかる暗夜兵を、弓で倒しながら言う。

カムイは先頭で敵を斬りながら、

 

「ですが、無事で良かったです、タクミさん。」

「フン。裏切り者の奴の言葉なんかいらない!」

「タクミ兄様!それには……」

「サクラ、今は戦いに集中して。カムイ、タクミ、あなたたちもよ。」

「はい!」「わ、わかってるよ!」

 

アクアが槍で敵をさばきながら言う。

彼らは暗夜兵を、次々となぎ払っていく。

そして、再び魔導士ゾーラの前へと来る。

カムイが彼の前に立ち、

 

「勝負ありました。もう逃げられませんよ、ゾーラさん。降伏して下さい。」

「くっ!これで、勝ったと思わないで下さい!これだからお嬢様育ちの甘ちゃんが!」

 

彼は懐から短剣を取り出し、

 

「隙ありぃぃぃ〜〜!」

「なっ⁉︎」

「いいですか、最後に勝った者こそが正義なのですよ‼︎」

 

それをカムイに向けて突き出してきた。

だが、それをフードの彼女が刃を掴む。

 

「な、な、な⁈」

「……気は済んだな。なら!」

 

彼女は、彼の腹を思いっきり殴る。

 

「グハッ!」

 

彼は腹を押さえて倒れこんだ。

フードの彼女は建物の影を見て、

 

「居るのだろう、暗夜の第二王子。」

「え?レオンさんがいるんですか?」

 

カムイもそこを見る。

すると、レオンが出て来た。

 

「……久しぶりだね、カムイ姉さん。意外と元気そうだね。」

「レオンさん、あのーー」

「そこのゾーラに関しては、礼を言うよ。暗夜王国軍の恥さらしを止めてくれたこと。」

 

彼は冷たく言う。

カムイは拳を強く握りしめ、勇気を出す。

 

「……えっと、つまり今回の事は間違いだったということですよね。ですが、ここでレオンさんに会えて良かったです。」

 

カムイは笑みを浮かべる。

レオンは少し頰を赤くした後、

 

「……こ、今回の件は父上の命があった。けれど、僕自身はこのやり方を良しとしなかっただけだよ。」

「やっぱり、レオンさんは正義感の強い方です。レオンさん、それにタクミさん。お願いです、力を貸して下さい。私たちは、この世界の真実を知っています。暗夜も、白夜も争う必要はないんです。」

「それを信じろというのかい、カムイ姉さん?見るところ、そこの白夜王子も信じてないみたいだけど。」

 

レオンはタクミと目が合う。

二人は睨み合う。

カムイは彼らをジッと見て、

 

「……そうですね。ですが、信じて下さい!それに、ガロン王は操られているんです。ここではない、禁忌の国の者に。」

「……姉さんの言うことが本当だったとして、禁忌の国ってのは、どこの国なのさ。場所は?王の名は?」

「そ、それは言えません。ですが、これは本当のことなんです。暗夜と白夜が戦争に導いているは、その国にいる黒幕なんです。その真の敵を倒さなけば、両国に平和はやって来ません。」

 

カムイは真剣な表情で言う。

と、レオンとタクミは再び目が合う。

二人はムッとした後、レオンはカムイに背を向ける。

 

「……全く。姉さんの訳の分からない事は、今に始まったことじゃないけど、なんとも曖昧な言葉だ。」

「あ、レオンさん!もし……もし、私を信じて貰えるのなら、暗夜と白夜の空が入れ替わる日に、無限渓谷に来て下さい!お願いします、レオンさん!」

「……悪いけど、姉さんが僕らをどう思っていようが、僕らとはもう関係のないことだ。」

 

そう言って、彼は歩いて行った。

フードの彼女は彼の背を見て、

 

『……これで暗夜の王族にも伝わる。そうなれば、暗夜の第一王子が動きを見せるはずだ。彼らは知っている。すでにあの王が、ガロン王ではない事を。』

 

カムイは視線を落とす。

そんな彼女に寄り添う、アクア。

 

「カムイ、わかっているはずよ。」

「はい……」

 

カムイは顔を上げる。

そして、タクミを見る。

 

「言っとくけど、僕も、あんたたちを信じない。白夜を裏切ったんだからな!サクラをうまく手懐けたようだけど、僕は騙されない。」

 

そう言って、カムイに背を向ける。

サクラが彼に近寄り、

 

「タクミ兄様!」

「……サクラ。サクラはしたいようにすればいい。僕は、少し確かめたいことがある。だから、今はサクラの味方にはなってられない。」

 

そう言って、彼は歩いて行った。

カムイは拳を握りしめ、

 

「……タクミさん。」

「タクミ兄様……」

 

サクラは涙を拭う。

アクアはハッとして、フードの彼女を見る。

 

「あなたの怪我は、大丈夫?」

「……問題ない。」

「で、でも、血がたくさん出ています!見せてください!」

 

サクラが彼女の手を取り、治癒をかける。

傷がふさがったその手を見ながら、

 

「礼は言わない。貴殿が勝手にやったことだ。」

「ちょっと!せっかくサクラ様が治してくれたのに、その態度は何よ!」

 

カザハナが、フードの彼女に睨みながら怒鳴る。

フードの彼女は無言となり、それを受け流して背を向ける。

さらに怒り出そうとするカザハナを、ツバキが苦笑して、

 

「落ち着きなよ、カザハナ。」

「そ、そうですよ。それに私は、それで構いませんから……」

 

と、サクラも言うが、いまだに怒るカザハナ。

それを落ち着かせようとするサクラとツバキ。

そんな重苦しいような雰囲気に、

 

「はいはーい!ところで、ボクに聞きたいことがあるんじゃないの?」

「はい……。実は、イザナ公に炎の紋章について、教えて頂きたいのです。」

「ん〜、いいよ。じゃ、先に城の中に入ってて。すぐに準備を済ませていくから〜♪」

「わ、わかりました。」

 

彼らは、公王イザナが呼んだ従者に連れられて、城の中に入って行く。

フードの彼女は彼を見て、

 

「私が、炎の紋章について言ってもいい。そうすればーー」

「それじゃ、意味がないんだよ。代々、これはボクの一族の役目。ボクは彼女を認めてる。だから悔いはないんだ。それと、始めて会った時にも思ったけど、君はやっぱり禁術を使ったね。それをする為に、どれだけの犠牲を出したの?」

 

公王イザナは、彼女を鋭く射抜く。

彼女は少し黙った後、仮面に手をかける。

そして彼女は仮面を外し、彼だけに見えるようにする。

 

「私は、この選択に悔いはない。そして逃げる訳にはいかないのだ。私は全てを背負い、持っていく。受けた憎しみも、悲しみも、私に向けられた、あらゆるもの全てを。その為に、この身がどうなろうと構わない。その覚悟は、とうの昔にしている。」

 

彼女の顔を見た公王イザナは、息を飲んだ。

けれど、表情を改めて、

 

「そうか……君の覚悟は本気のようだ。なら、ボクはやっぱりやるよ。だから止めないでくれ。」

「……わかった。」

 

彼女は仮面を付ける。

彼らも、カムイ達が待つ城の中に入って行く。

カムイ達の前に立つ公王イザナは、

 

「さてさて、炎の紋章についてだったね。」

「は、はい。」

 

カムイが頷くが、サクラの隣にいたカザハナが警戒しながら聞く。

 

「そ、その前に、あなたが本当にイザナ公王様なのですか?」

「うん、そうだよ♪どこからどう見ても、神々しい公王様でしょ?何たってボク、神々の末裔だからね〜っ!」

「に、偽物よりも軽い……」

 

流石のサクラも、眉を寄せて苦笑する。

公王イザナはサクラに微笑み、

 

「そうそう、サクラ王女。安心していいよ。タクミ王子も、ちゃんと分かってくれる。勿論、リョウマ王子も、ヒノカ王女も、ね。」

「……え?」

「間違いないって〜。何たって、神様からの予言だもん♪」

「なんとも軽い予言ね……」

 

カザハナは眉を思いっきり寄せた。

彼はとびっきりの笑顔を向け、

 

「そうそう、予言ついでに、この予言を他の人たちにも伝えてね♪それっじゃ〜、神様からの予言を受けるよ〜♪」

 

と、彼は水晶を取り出す。

そして、真剣な顔つきになり、瞳を閉じて手を水晶にかざす。

すると、水晶が光り出し、

 

「『見えているものが全てとは限らない。真実は深く透明な場所にある。水面に映る、すべてを知る者こそが真の敵。……さらなる暗闇に潜みし悲しき竜の子。闇に堕ち、光さすのを待ちわびる。全ては愛しき約束のため……』」

 

光が収まり、カムイが首を傾げる。

 

「……さらなる暗闇に潜みし悲しき竜の子?何か知っていますか、アクアさん?」

 

そう言って、アクアを見る。

彼女は瞳を揺らして涙を流す。

膝を着き、手を顔に覆って泣き出した。

 

「ア、アクアさん⁉︎」

「ご、ごめんなさい……禁忌の国に戻ったら話すわ。」

 

アクアは涙を拭い、立ち上がる。

その姿を見たフードの彼女は、誰にも聞こえない声で呟いた。

 

「……やっぱり知っているのか。……ごめんなさい……」

 

そう言って、拳を強く握りしめた。

公王イザナは真剣な表情のまま、

 

「そうそう、それでね……炎の紋章のことだけど、あいにくボクはよくは知らない。けど、言い伝えはあるよ。『明るき道、昏き道、どちらも歩めぬ迷い人が訪れたとき……"我が一族がもう一つの道を示す"』ってね。と、言うわけで古の神に聞いてみるよ。」

 

彼は深呼吸して、再び水晶に手をかざす。

そして瞳を閉じ、集中した。

 

「……『竜に会え。汝の望む答えは、そこにあり。』」

「え?竜?」

 

カムイが眉を寄せて、リリスを見た。

リリスは首を振る。

と、水晶をかざしていた公王イザナが倒れこんだ。

 

「イザナ公⁈」

 

カムイが彼を抱き上げる。

彼はカムイを見て、

 

「……今は意味が分からなくてもいい。その内分かるはずだ。何たって、このボクの命をかけた神託だからね……」

「そんな⁉︎命をかけたですって!なんで……なんで言ってくれなかったのですか!」

 

カムイは眉を寄せて、彼を見る。

フードの彼女は、カムイが抱え込む彼の前に膝を着き、

 

「……いつだって、何かを得るときは犠牲がついてくる。古の神の持つ力は増大だ。いくら神の末裔と言えど、今は人の身。人の身では、それを受け止めることはできない。だからこそ、神託は命を対価として行われる儀式だ。」

「あなたは知っていたのですか?こうなる事を!」

「……ああ。」

「なんで止めてくれなかったのです!誰かの命を奪ってまで、私は情報を得たくなかった!何か、別の方法があったはずです!」

 

カムイが泣きながらそう言うと、

 

「ふざけるな!犠牲を出さねば、成せない事もある。犠牲が伴って成した場合、それを受け止めるのは、その代償を知る者だ!お前は、真の敵を討つ為に『炎の紋章』を知りたかった!その代償を知りながら、イザナ公はお前を信じ、認め、託したのだ!その行為に目を背けるな!お前は覚悟していたはずだ!だからお前は、その代償を知った者として受け止めろ‼︎」

 

カムイの襟首を掴んで、フードの彼女は怒鳴りつける。

カムイは泣き続けた。

そのカムイの襟首を掴んでいたフードの彼女の手を、公王イザナが手を伸ばして離す。

 

「……彼女をあまり責めるものではないよ。さっきの神託で、真の君の事も知れた。あまりにも君は業を、呪いを背負いすぎてる。けど、あまり自分を責めるべきではない。そしてなりよりも、『カムイ』を責めるべきではないんだ。君は君で、カムイ(彼女)彼女(カムイ)としての責任と意志がある。」

「………これは、私の背負うべきものだからだ。逃げるわけにはいかない。そう言ったはずだ。」

「ああ……だからこそ、お礼を言うよ。約束を守ってくれてありがとう。実はさ、ボクもこの戦争をなんとかしたかったんだ。戦争を止める為に、この身を捧げる……ボクってば伝説になるかも♪」

「はい……きっと。イザナ公、私はあなたの勇気ある行動を忘れません。ありがとうございます……」

 

カムイは涙を拭う。

彼は、カムイに微笑んだ。

そしてとびっきりの笑顔を向けて、

 

「じゃ、ボクは逝くよ……バイバイ……」

 

フードの彼女の手を取っていた彼の手は落ち、静かに息を引き取った。

カムイやアクア、サクラはしばし泣く。

ギュンターは公王イザナに頭を下げ、

 

「民の笑顔を望み逝く……イザナ公、あなた様は真の王でしたな。」

「私は進みます。イザナ公の想いを無駄にしない為にも……みんなが幸せになれる未来の為にも!」

 

カムイは立ち上がる。

彼らは進む。

次の道標を掴む為に……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。