白き王女は後悔していた。
自分が生まれる少し前、姉がもう一人いた。
けれど、その姉は暗夜王国に攫われた。
幼い自分は、その意味が分からなかった。
会ったことのない姉に、ただ会いたいと純粋に思っていたあの頃。
けれど、ある時聞いてしまった。
……姉は自分の代わりに攫われたのではないか、と。
怖かった。
会ったことのない姉に会うのが。
けれど、会いたいと思ってしまう。
姉に会った時、姉は自分をどう思うのか。
怖いけれど、知りたい。
そして姉は帰ってきた。
自分達の元へ。
危ないところを、助けに来てくれた。
身をていして、自分達の元へ来てくれた。
けれど、姉は自分達の事を覚えていなかった。
それでも、姉と共に過ごした時間は楽しかった。
嬉しかった。
こうして、家族として過ごせるこの時間がとても愛おしい。
そう心から想った……
ーーフードの彼女とは、別行動をしていた。
彼女との待ち合わせ場所に向かうために歩いていた。
そのカムイ達が歩く先に、煙が見える。
カムイがそれに気付き、
「ん⁈皆さん、待ってください!向こうに煙が……」
「あれは狼煙ね……」
アクアもそれを見る。
スズカゼは眉を寄せて、
「ええ。あれは、兄さんの上げた狼煙です。」
「サイゾウさんの?意味はなんです?」
カムイがスズカゼを見る。
スズカゼは静かに、
「はい、『大規模な敵兵力と交戦中』を示したものです。」
「なんですって⁉︎でしたら、助けに行かないと‼︎」
「いえ、忍びがあの狼煙を上げる意味は、助けを求めてのことではありません。この敵に襲われぬよう、自分を見捨てて逃げろ、と言う意味なのです。……だから、行くべきではないのです。」
「そんな……」
カムイは俯き、拳を握りしめた。
そして顔を上げた。
「皆さん、戦闘準備を!すぐに助けに向かいます!」
「それでこそ、カムイ様ですな。」
「ええ。流石、カムイね。」
「では、すぐに準備を致します。」
「全く、変わらないな。」
ギュンター、アクア、ジョーカー、リンカが笑みを浮かべて武器を整える。
カザハナ、ツバキ、サクラも、
「たく、仕方ないわね。」
「完璧に任務遂行しますよ〜♪」
「はい!私も頑張ります!」
彼らも闘いの準備をする。
スズカゼは驚きながら、
「待ってください!ど、どうして⁉︎危険なのですよ‼︎」
「だからと言って、見捨てる訳にはいきません!私たちは逃げる為にいるのではありません。ただ、真の敵を討つ為にいる訳でもありません。仲間を集め、大切なモノを護るためです。一人ではダメなことも、強敵に会っても、皆んなで立ち向かうために!」
「ですが……」
「それに、サイゾウさんは大切な仲間です。その仲間を見捨てることはできません!」
「カムイ様……ありがとうございます。」
スズカゼはカムイに頭をさげる。
そして彼らは、急いでそこに向かう。
フードの彼女はカムイ達と別れ、森に来ていた。
辺りを探り、
『……確か、この辺りのはずだが……』
と、目的の団体を見つけた。
丁度、すぐ近くでは狼煙を上げった所だった。
『……あそこか。全く、こうも同じ必然を作り出してくれるとは。』
彼女の目の前には、捕らえられた白夜のくノ一達と
「罠にかかったな、白夜王国リョウマの臣下であるくノ一カゲロウ!」
「くっ!フウマ公国は、白夜王国の同盟国であったはずだ!」
「ふん、白夜の同盟国だと?残念だが、私はガロン王と手を組んでいたのだ。こうして、戦端が開かれるのを、今か今かと待ち望んでいたのだ。この戦で白夜を滅ぼせば、フウマは白夜に代わる王国にはとして認められる。そうすれば……この私はフウマ王国の王となるのだ!」
「この……外道が!」
「ははっ!どうとでも言え、負け犬が!どうせ、人質の価値が無くなれば、お前は死ぬ。」
「……それは仕方ない。任務で死ぬことは、覚悟していた。だが、リョウマ様のご命令を……あの伝言を皆に伝えられないことだけが……私の心残りだ!」
白夜のくノ一カゲロウは唇を噛む。
彼女は、長剣を抜く。
そして斬り込む。
同時刻、白夜の忍びサイゾウの集団。
彼らは辺りを警戒しながら、森を駆ける。
「おい、カゲロウが捕まっているというのは、この辺りか⁉︎」
「そうじゃな……情報によれば、そのはずじゃが……」
白夜の忍びサイゾウは隣を走る白夜の占い師オロチを見る。
白夜王国の忍びサイゾウは、白夜王国第一王子リョウマの臣下である。
カムイ達とは、テンジン砦で刃を交えた。
隣の占い師オロチは、白夜王国の王妃ミコトの臣下。
彼女もまた、テンジン砦でカムイ達と刃を交えた。
と、彼らの前方の方から金属音が鳴り響く。
オロチの上空を金鵄に乗って飛んでいた女性が、
「ふふ、焦っても仕方ないですわ。それにしても……この殺気に満ちた場所。邪魔者の殲滅は、このユウギリにお任せくださいな。ここでなら、敵の断末魔はさぞかし美しく響くでしょうね……」
金鵄に乗った女性は、ユウギリ。
オロチと同じ、白夜王国の王妃ミコトの臣下だ。
白夜の忍びサイゾウはため息をつき、
「はぁ……くれぐれも、無理はするなよ。こんな所で、命を落とすわけにはいかん。カゲロウ……待っていろ。今、助けに行く。」
彼らは、そこに向かう。
そこにはフードを被った者が、長剣を振るい気絶した白夜のくノ一カゲロウを守る姿があった。
フードの者は、彼らに気づく。
「……やっと来たか。」
そう言って、気絶していた白夜のくノ一カゲロウを投げる。
縛られた彼女は、白夜の忍びサイゾウに受け止められる。
彼が縄を解き、
「貴様、どういうつもりだ!」
「今に、あいつらも来るだろうさ。それより、来るぞ。」
フードの者は長剣を振るう。
白夜の忍びサイゾウ達も、武器を構えて応戦した。
狼煙が上がっただろう場所にカムイ達は来た。
カムイは辺りを見て、
「狼煙はこの辺で上がっていましたが……」
「カムイ、気を引き締めて。ここは、もうフウマ公国の領内よ。ずいぶんと暗い森だから、迷わないようにしないといけないわ。それに、足元を見て。戦闘の後が残っているわ。複数の足跡……奥に続いているわね。これを追っていけば、合流できるかもしれないわ。」
「はい!」
彼らは奥に進む。
サクラは肩をすくめ、
「な、なんだか暗くてジメジメしています……ちょっと、怖いかも……」
「サクラさん、手を繋ぎましょうか。」
「え?」
「実は、私も少し怖かったんです。ね。」
「は、はい!姉様!」
カムイの差し出す手を、サクラは嬉しそうに握る。
その状態で、さらに奥へと進む。
と、金属と金属がぶつかり合う音が聞こえてくる。
彼らは武器を構えて突入した。
そこには、フードを被った彼女が戦っていた。
「チッ、また乱入者か‼︎あいつらも仕留めろ!」
「はっ!コタロウ様!」
敵の将らしき忍びが声を上げる。
カムイは正面の方に白夜の忍びサイゾウ達を見た。
「居ました、サイゾウさん達です‼︎」
「そうね。彼女も居るみたいだし、私たちも……!」
アクアがそう言うと、表情を変える。
そこには透魔兵達が現れる。
カムイは眉を寄せて、
「くっ!こんな時に!サクラさん達は、サイゾウさん達をお願いします!私たちは視えない敵を倒しますので!」
「わ、わかりました!」
透魔兵達が見えるカムイ達は、サクラ達と別れる。
フードの彼女と合流し、
「やはり来たか。お前達も来たのなら、注意しろ。見える敵と視えない敵を、同時に相手することになる。」
「はい!」
カムイ達も、応戦を始めた。
カムイは白夜の忍びサイゾウと目が合った。
「貴様までも、ここにいるとは!何故いる‼︎」
「え?は、はい。助けに来たんです。さっきの狼煙は、サイゾウさんですよね?」
「なに?狼煙を?……だが、あれは助けを求めるものではないのだぞ⁉︎スズカゼはそんな事も、教えなかったのか。」
「いえ。スズカゼさんは、意味を教えてくださいました。あの狼煙は、敵勢力に襲われないよう逃げろと示す為のものだと。だからこそ、放っておけませんでした。信じて貰えなくても、敵だと思われても、私にとってあなたたちは大切な人なんです。それを失う訳にはいきません!」
カムイは襲いかかる透魔兵を斬り、ジッと白夜の忍びサイゾウを見る。
彼は手裏剣をフウマ公国の忍びに向かって投げ、
「……たったそれだけのことで、わざわざこんな死地まで来たというのか。俺たちを助けるために……」
彼はカムイの方に手裏剣を投げる。
それは彼女の横を通り、後ろから彼女を襲うとしていた敵に当たる。
「注意が足らん。だが、お前には敵わない。裏切り者のやる事とは到底思えん。サクラ様の言うように、何かしらの事情はありそうだ。お前達は、そのまま見えない敵と戦え!」
「はい!」
二人は互いに背を向け合い、互いの敵を倒していく。
白夜の忍びサイゾウ達の共闘もあり、カムイ達は透魔兵達を速く倒す事が出来た。
そして、敵の将らと向かい合う彼らと合流する。
敵の将コタロウと白夜の忍びサイゾウが互いに武器を構えていた。
「くそっ!私はお前たちを全て倒し、フウマ王国の王となるのだ!それを……よくも!」
「ふん。知るか、そんなモノ!だが、フウマ公国公王コタロウ!よくもカゲロウを人質にしようとしてくれたな。」
「貴様は……白夜王国の王族に、代々仕えているサイゾウか。」
「ああ、五代目サイゾウだ。」
「ふ。あの老いた上忍の息子か。」
「ほう。やはり、知っているのだな……父を。昔、この国に来てそのまま帰ることのなかった……俺の父のことを!」
「ああ。あの小癪な上忍は、この私の野望に感づいたのうでな。同じ忍びとして、そのような真似はするなと説教してきた。そんな時だ、白夜王スメラギが死んだのは。しかも、話によれば姫を暗夜に攫われたと。その姫を助けに行くと言ったあ奴に、協力してやったわ。そして、あ奴をそこで始末してやった。」
「くっ……!やはり、お前が‼︎」
「知らぬ存ぜぬで通す心算だったが、息子には感づかれていたか。親子揃って、勘だけはいいようだな。ただ、腕が伴っていなければ、全くの無意味だが。」
「貴様、弱かったというのか。俺の父が!」
「ああ。弱かったぞ、ヤツは。弱すぎて弱すぎて、この私に指一本触れることすらできずに、地獄に堕ちていきおったわ!全ては、姫を預けなければこうなる事もなかったのだがな!あははは‼︎」
「くそっ‼︎許さんぞ、貴様だけは‼︎父の仇、討ってみせる!」
怒りに燃える彼の前に、長剣を構えたフードの彼女が立つ。
「感情的になるな、白夜の忍び。」
「貴様に言われるまでもない!」
「そうか……先程は気付かなかったが、お前は……ふははは!これは傑作だ。いい事を教えてやろう、そこの娘はあの時……お前の父を見捨てた者だ!」
「なに……?」
「……だからなんだ。」
彼女は剣を振るう。
白夜の忍びサイゾウは、暗器を握りしめ、
「後で問い詰める!」
「好きにしろ。答えるかどうかは、別だがな。」
二人は睨み合う。
というより、彼女の顔が見えない以上雰囲気でしかないが……
そして、敵の兵をカムイたちが、フウマ公国公王コタロウを白夜の忍びサイゾウが相手をする。
兵を全て片付けると同時に、白夜の忍びサイゾウが一撃を与えた。
フウマ公国公王コタロウは地面に倒れ込み、
「グッ!ば、馬鹿な……こんな、若造に……この私の野望が……私の、フウマ王国が……」
「……指一本触れたぞ。仇は討った、父上……」
白夜の忍びサイゾウは拳を握りしめた。
カムイ達は休める場所に移動する。
カムイは、イズモ公国公王イザナの言葉を彼らに伝える。
「イザナ公王様が……そうか。それで、お前はさっきのはどうなんだ。」
「……答えるかどうかは、別だと言ったはずだ。」
「貴様!」
白夜の忍びサイゾウはフードの彼女を睨みつける。
そこに、ギュンターが一歩前に出て、
「先の話、おそらく暗夜に攫われた姫とはカムイ様の事でしょう。おそらくカムイ様は、それ自体覚えてはおられないでしょう。一度、カムイ様は記憶を取り戻した事がありました。その時、白夜兵がカムイ様を取り戻しに来たのです。ですが……」
ギュンターは視線を落とし、拳を握りしめる。
フードの彼女は視線を彼らから外し、
「……だが、白夜兵は仲間の裏切りにあった。まだ息のあった白夜の忍びはなんとかその姫を護り抜いた。だが、すぐ側には暗夜兵達が居た。それを、私が倒した。だが、その幼い姫の心は、その光景に耐えられず、壊れかけていた。すぐに、次の追撃が来る。あの白夜の忍びも、最後まで守りきれなかったと悔やんでいた。だから私は、カムイの記憶を封じ、『カムイ』を生かした。そういった場に、私が居たにすぎない。……けれど、私はあの勇姿を忘れる事はないだろう。今も昔も。『カムイ』のために、己が命をかける彼らを。」
フードの彼女は壁に寄りかかったまま、最後は静かに呟いた。
白夜の忍びサイゾウも、彼女から視線を外し、
「……少しだが、我が父のことを教えてもらった事には感謝しよう。」
隣では、スズカゼが頭を下げた。
そして、白夜のくノ一カゲロウが目を覚ました。
「ん……?私はそうだ!」
ガバッと起き上がる。
白夜の忍びサイゾウが彼女を見て、
「目を覚ましたな、カゲロウ。」
「サイゾウ……それにカムイ様も⁉︎」
「良かったです、カゲロウさん。」
カムイも、白夜のくノ一カゲロウをホッとして見る。
白夜のくノ一カゲロウは、サイゾウと同じく白夜王国の第一王子リョウマの臣下である。
そして、カムイが白夜王国に戻った頃は、カムイの身の回りの世話は彼女が行ってくれた。
カゲロウはカムイの前で頭を下げる。
「良かった、カムイ様。実は、リョウマ様より言付けを預かっております。」
「リョウマ兄さんから?」
「はい。リョウマ様は、カムイ様は敵ではないと。真の敵は、暗夜王ガロンでもなく、水面に隠れる者だと。」
「そ、それは!イザナ公の言っていた事と、ほとんどあってます。もしかして、リョウマ兄さんは禁忌の国を知っているのでしょうか?」
カムイはアクアを見る。
アクアは首を知り、
「どこまで知っているかはわからないわ。それは直接聞いてみないと。けど、リョウマと合流できればこちらの事はある程度言えるわ。」
「はい。カゲロウさん、リョウマ兄さんはどこに?」
「リョウマ様は……暗夜王国にほど近い、シュヴァリエ公国に向かっています。暗夜王国第一王子マークスに会うと言っておられました。」
白夜のくノ一カゲロウは顔を上げる。
カムイは一瞬間を置き、
「マークス……兄さんに会う?それって……?それにシュヴァリエ公国って……」
「はい。カムイ様が、暗夜に攫われた場所です。そして、今は反乱が起きている地です。暗夜のやり方に耐えられなくなった民たちが反乱兵となり、暗夜の者と闘っているらしい。リョウマ様は生き残った兵たちを味方につけ、暗夜王国第一王子マークスと共に……暗夜王ガロンを討つつもりなのです。」
カムイは胸の辺りで拳を握りしめ、
『……お父様を……兄さんたちが……』
白夜の忍びサイゾウは腕を組み、
「ふん。相変わらず、我が主は無茶をする御方だ。一刻も早く合流し、御身を守らねばな。」
「……それなら、他の白夜の人にも伝えるべきよ。それに、イザナ公王の言葉も含えてね。タクミの事も気になるし。」
アクアが彼らを見て言う。
フードの彼女も壁から腰を離し、
「それには同意する。白夜の第二王子とは、合流を図るべきだ。それに……白夜王国第一王子が、暗夜王国第一王子と手を組むのであれば、あちらも動き出す。問題は、暗夜の第一王子に向けられている監視をどうするか。それを壊すためにも、こちらは急いで彼らと合流し、見えない敵に対処した方がいい。」
「タクミ様や、リョウマ様の伝言、イザナ公の予言については、わらわたちが行おう。」
「ええ、私たちにお任せを。飛んで行った方が早いですし、私たちならば、話も伝わりやすいでしょうからね。」
白夜の占い師オロチと金鵄使いユウギリが名乗り出る。
カムイは彼らを見て、
「お願いします、オロチさん、ユウギリさん。」
「安心してください、カムイ様。私は、ミコト様のあなたに対する愛情を知っています。そして、幼き頃のあなたも。だからこそ、やり遂げてみせますわ。」
と、金鵄使いユウギリは微笑む。
白夜の占い師オロチは背を向け、
「善は急げじゃ!行くぞ、ユウギリ!」
「ええ。」
二人は、外に出て金鵄に乗って飛んで行った。
アクアがカムイを見て、
「決まりね。カムイ、港に向かいましょう。」
「港に?」
「ええ。シュヴァリエ公国に行くには、船に乗らなくてはいけないの。」
「わかりました。港に向かいましょう。」
と、カムイ達が動き出すと、
「待て、カムイ……様。」
「えっと……サイゾウさん、もし私のことをまだ疑っているのなら、呼び捨てで構いませんよ。」
「いや、主君が敵でないと言ったのだ。なら、俺はそれに従う。カムイ様、我ら二人の動向を許していただきたい。」
「いいのですか?」
白夜の忍びサイゾウと白夜のくノ一カゲロウは頷く。
カムイも頷き、
「わかりました。これからよろしくお願いします、サイゾウさん、カゲロウさん。」
「「御意。」」
彼らは港に、急いで向かう。
ーー透魔王国、透魔城にて
透魔軍師ルフレは長い廊下を歩いていた。
それは、黒騎士アベルの言う戦略を立てたからだ。
『アベル殿は、どこにいるのか……』
と、一人のフードを被った男性がいた。
透魔軍師ルフレは彼に話しかける。
「これはこれは、お久しぶりですね。」
「ん?ルフレ殿か。お主が、部屋から出ているとは珍しいのう。」
「……私も、部屋に閉じこもってばかりはいられませんよ。でも、今はアベル殿を捜しているだけなのですが……知りませんか?」
「アベル殿なら、外に行きましたよ。」
「は……?」
透魔軍師ルフレは思わず眉を寄せて、笑顔が崩れた。
そして、一度咳払いし、
「失礼。わかりました。外ですか、そうですか、外に……。では、私はこれで……」
彼に背を向け、来た道を戻る透魔軍師ルフレ。
早歩きで歩き、
『私に、作戦を立てさせておいて居ない。全く、自分勝手にも程がある。さて、これからどうするか……』
彼女は、自室に急いで戻るのであった。
カムイ達は港に着き、船に乗り込んだ。
何とか、今日最後の船に乗ることができたのである。
カムイは甲板で海を眺めながら、
「ふぅ、なんとか出航に間に合いましたね。」
「そうね。」
カムイの隣で、同じように海を眺めていたアクアが言う。
と、その二人の元に、
「カムイ姉様、アクア姉様。お疲れではありませんか?ずっと戦闘続きで、カムイ姉様も疲れが溜まっていると思います。姉様は、お身体が弱いのですから、船の上では沢山休んでくださいね。」
サクラが歩いてきた。
アクアはサクラの言葉に同意し、
「そうね。カムイ、あなたは今日はもう休みなさい。」
「はい、そうさせていただきます。ありがとうございます、サクラさん。」
彼らは疲れを癒す。
船の旅が数日続き、
「失礼します、カムイ様。」
「ジョーカーさん。」
「お体は大丈夫ですか?」
「はい。この数日、いっぱい寝ましたから!」
「それは良かった。では、船は順調に進んでおります。明日には、港に着けるでしょう。」
「そうですか。それは良かった。ありがとうございます、ジョーカーさん。」
と、カムイは窓の外を見る。
空が薄暗くなってきた。
「……外の雰囲気が変わってきましたね。波も高くなってます。」
「ふむ、嵐の予兆かもしれませんね。」
《船に影響が出なければ良いのですが……》
カムイの横で浮いていたリリスも、心配そうに外を見る。
と、その瞬間だった。
外で爆発音が鳴り響く。
船が大きく揺れ、
「きゃっ!」
「カムイ様!」
ジョーカーが、カムイを支える。
「船が止まった……?大丈夫ですか、カムイ様。」
「はい。私は大丈夫です。ありがとうございます、ジョーカーさん。でも、どうしたんでしょう。船の故障でしょうか?」
「様子を見て参ります。」
「私も見に行きます。」
二人は部屋を出ると、フードの彼女と鉢合わせる。
「……敵襲だ。いちを、警戒はしろ。」
「え?敵襲⁈」
カムイが驚く。
ジョーカーは笑顔のまま、
「その割には、あなたは落ち着いておりますね。」
「今回の敵襲は、知る顔だからな。いや、お前にとっては、か。」
フードの彼女は、カムイの方を向いて言った。
そして、甲板へと急ぎ足で歩いていく。
「わ、私の知ってる顔?……まさか、暗夜の誰かでしょうか?とりあえず、私たちも向かいましょう!」
「はい、カムイ様!」
二人は駆け足で甲板に向かう。
フードの彼女が出て来たカムイ達を見て、
「来たか。今に来るぞ。」
外に出たカムイ達は、海を見渡す。
と、海は一面見渡す限り、凍っていた。
「う、海が……凍ってる⁉︎」
「こ、これは……まさか、いきなり冬になったなどという事は……」
ジョーカーが辺りを見渡す。
正面の方には、何隻かの船が見える。
と、その船の奥の方から飛竜に乗った人影が見える。
「ん?誰かがこちらに向かってきます。もしや、あれは……カミラ様⁉︎」
「え?カミラ姉さん⁉︎」
彼らの上空に、飛竜が現れる。
その背には、紫色のフワッとした髪をなびかせるカミラが現れた。
船の横に並び立ち、
「ああ、カムイ……元気そうで良かったわ。私、あの日から心配で心配で……ずっと、あなたに会いたかったのよ。」
と、フードの彼女に魔術を放つ。
彼女はそれを交わすと、今度は飛竜に乗ったまま襲いかかる。
フードの彼女は長剣を抜き、彼女の斧を受け止める。
「やめてください、カミラ姉さん!彼女は敵ではありません!」
「ああ、カムイ……可愛い子。私をまだ姉と呼んでくれるのね。でも、もう私のことを……そんな風に呼んでは駄目よ。あなたは白夜の本当の
「カミラ姉さん……」
カムイは視線を落とす。
カミラは表情を暗した後、小声で話し始める。
「……マークスお兄様からあなたに伝言よ。『私たちは動く。だが、今は動けない。』と。」
「だろうな……貴殿達には見えない敵が、暗夜王ガロンの元にいる。貴殿達が奇襲をかけた所で、見えない敵に殺られるだけだ。ところで、白夜の第一王子が動いているのは気づいているか?」
「ええ。だから、彼と合流をすると言っていたわ。そして私とエリーゼは、カムイの元に居ろと。けど、私たちも、お兄様達の方にも……」
「監視が付いている、か。」
「……自身の家臣達に加え、あの王の配下が数人いるわ。そして、あの邪悪な奴からは、カムイを殺せと言われているの。」
「なるほど。では、それはこちらでなんとかしよう。」
彼女は、カミラの斧を弾く。
そして距離を置く。
カミラは体勢を整え、斧を構え直す。
「ああ、カムイ……愛してるわ。けど、お父様からの命令なの。だから、カムイ……あなたを愛してるからこそ、私の手で殺してあげるわ。」
「構えろ。ひとまず、敵を無力化する。」
「は、はい!」
カムイも構える。
そして続々と、
「カムイ!」「カムイ姉様!」
アクアやサクラ達がやって来る。
彼らも武器を構える。
カミラの後ろには、暗夜兵が沢山出てくる。
カミラは上昇し、
「フローラ。」
「はい、カミラ様。」
船の縁に立ったフローラが手をかざす。
すると、吹雪が吹き荒れ始める。
カムイは腕で顔を覆う。
「ぐっ‼︎」
「申し訳ありません、カムイ様。ですが、こうなってしまった以上、私はあなたの敵です。例え、カムイ様が相手でも‼︎」
フローラがカムイ達を睨みつける。
ジョーカーがカムイの前に出て、
「下がってください、カムイ様!フローラ、お前本気か!本気で、俺たちを殺しに来たのか⁉︎」
「ええ。私は、本気よ。私たち氷の部族は、あなた達の逃げ場をなくす為に海まで凍らせた。カミラ様に従い、あなた達を殺すようガロン王より命じられた。逆らえば、私たち部族は殲滅させられる。仕方ないのよ!」
「だが、お前はカムイ様に忠義を誓ったはずだ!それは、家臣のやることじゃねぇぞ‼︎」
「無駄よ、ジョーカー。今のあなたが、私に何を言っても届きはしないわ。私は氷の部族の女……だから、今はただ、冷たく、硬く、心を凍らせる。」
フローラは、ジョーカーに向けて氷の刃を放つ。
そこに同じく氷の刃が飛んできて壊れる。
「姉さん、やめて!」
そこには、フェリシアが駆けつけた。
フェリシアは、ジョーカーの横に並ぶ。
フローラは拳を握りしめて、
「フェリシア……あなたも、氷の部族の一員なら戦いなさい!私たちには、この道しかないの‼︎」
「姉さん!」
「くそっ!フローラ、てめぇ……お前は俺が相手する!目を覚まさせてやる!」
ジョーカーは武器を構え直し、フローラに向かって走り出す。
「カムイ。待っているわ、あなたが私の元に来るのを。」
カミラは後方へと飛んでいく。
フェリシアはカムイを見て、
「カムイ様、申し訳ありません!ですが……姉さんを殺さないでください!みんなを……」
「わかっています、フェリシアさん。止めましょう、一緒に。」
「カムイ様!はい!」
フェリシアも、武器を取り出す。
カムイ達も武器を構え直し、
「来ます!」
カムイ達は陣形を作って対応していく。
敵をある程度倒していくと、敵の隙間が見えるようになって来た。
フードの彼女はそれを見て、
「……私は少し席を外す。私のいない間に死ぬなよ。」
「え?」
カムイが彼女を見ると、彼女はすでに敵の間を抜けて行っていた。
フードの彼女は氷の部族の元へと向かう。
そして氷の部族長らしき男性の前で止まる。
「何者だ。」
「……氷の部族長クーリアであっているな。私は戦いに来たのではない。話し合い……いや、取引をしに来た。」
「取引だと?」
「ああ。氷の部族は、暗夜王ガロンを討ちたいのだろう。なら、ここは一旦退くべきだ。そして、暗夜王国第一王子であるマークス王子と共闘する事をオススメする。」
「暗夜の王族に?馬鹿な事を。だったら何故、暗夜王ガロンの言うことに従っている。」
「暗夜の王子と王女は、あの王がかつての
「見えざる敵、だと?」
「ああ。禁忌の国の見えない敵……それが暗夜王を守っている。あの傀儡には禁忌の
「……それでどうすると?」
「ここには、『夜刀神』の使い手が居る。その者に、カミラ王女を抑えてもらう。彼女らの近くには、暗夜王ガロンのつけた監視がある。それを利用して、カミラ王女らを敗者にする。暗夜王ガロンは敗者を許さない。だから、カミラ王女らをこちらに取り込む。その間に、頃合いを見て、ここから離脱して貰う。」
「そんなことをすれば、我が部族は壊滅だ。」
「いや。離脱と同時に故郷に帰れ。そして、部族全員を連れて、しばしの間だけ隠れ過ごしてほしい。あの暗夜王ガロンは、必ず必然を望む。今回の件で、すでに必然は大きく変わりつつある。それを戻すために動くはずだ。そうなれば、敗者となった氷の部族に構っている暇はないだろう。だが、策は多いほうがいい。だからこそ、しばらくの間隠れてて欲しいのだ。つまり、私の出す条件は、ここからの撤退と身を隠すこと。」
「……よくわからないが、ガロン王には何かをしようとする為の時間が欲しいというわけか。だが、どうやるというのだ。」
「カミラ王女らの戦いが終わったら、合図を送る。それと同時に、双子を帰す。」
「合図とは?」
「この氷を溶かす、火の玉だ。安心しろ、船に当てるヘマはしない。」
と、彼女は足元の分厚い氷を蹴る。
氷の部族長クーリアは眉を寄せ、
「そんなことーー」
「できるさ。」
彼女は指をパチンと鳴らす。
彼女の周りの氷が炎に包まれ、氷が溶ける。
水の上に立っている彼女は、
「魔術は得意だ。剣と同じく、頻度も、経験も大いにある。何度も、何度も、繰り返し使って得た力だ。それに、水に変わればこちらの領分。私の加護は水だからな。」
「……わかった。君との取引に乗ろう。では、こちらの条件は我らを生かし、我らと共に暗夜王ガロンを討つことだ。」
「いいだろう。」
彼女は彼らかに背を向ける。
『……これで、氷の部族は無力化できたな。』
そして、次の目的地へと向かう。
フードの彼女が氷の部族長と話していた頃、カムイは飛竜に乗った暗殺者と武器を交えていた。
「私はベルカ。カミラ様の臣下。私の任務は、あなたたちの船を沈めること。そして、あなた……カムイの殲滅。邪魔をする者は全て、消す。カミラ様の為に!」
飛竜に乗った暗殺者の名はベルカ。
カミラの臣下で、カミラと同じように飛竜の使い手でもある。
カムイは剣を強く握り、
「させません!私たちには、やらねばならないことがあるんです!」
「私だって、カミラ様の為に殺る!」
二人の攻防戦は続く。
フードの彼女は、この戦場から一番遠い船にやってきた。
その船の甲板に立ち、エリーゼに剣を向ける。
「暗夜の第二王女……ここで人質になって貰おう。暗夜の第一王女を止める為に。」
「エリーゼ様、お下がりを!」
「ここは我らが!」
と、エリーゼの前にピンクの鎧を着た女性と斧を構えた男性が立つ。
二人は槍と斧を構えて、フードの彼女を睨む。
そして、ピンクの鎧を着た女性が槍を振り下ろす。
フードの彼女はそれを避けると、そこの部分の氷は大きくヒビが入る。
その横に、斧を持った男性が第二波を繰り出す。
それすらも、フードの彼女は避ける。
エリーゼは杖を握りしめ、船の上から叫ぶ。
「エルフィ!ハロルド!」
ピンクの鎧を着た女性はエルフィ。
エリーゼ様臣下で、怪力の持ち主である。
斧を持った男性はハロルド。
彼も、エリーゼの臣下である。
フードに彼女は長剣を構え直し、
「……面倒だな。」
彼らに向かって走り出す。
否、彼らの奥の暗夜王ガロンの向けた兵を暗器を指の間に挟んで放つ。
そして、長剣でトドメを刺す。
フードの彼女は後ろに一回転し、
「さて、他は……」
彼女は暗器を指の間に挟む。
それをどれくらいやったか、彼女は剣をしまう。
そしてエリーゼを見て、
「暗夜の第一王女カミラから聞いている。これで、貴殿を監視する兵はいない。」
それを聞いたエリーゼは頷き、
「エルフィ、ハロルド!止めて!みんなも!」
「エリーゼ様?」
エリーゼは二人の前に駆けて行き、フードの彼女の前に両手を広げて立つ。
「この人は敵じゃないわ。私たちの敵は、偽物の暗夜王よ。それに……私たちに見えない敵。そうマークスお兄ちゃんは言っていた。だから、この人との戦闘はここまで。私につけられていた監視はいなくなった。だからやっとみんなに言えるわ。」
「……エリーゼ様、それはつまり……」
「ガロン王を裏切る、という事ですね。」
「あれは、もうお父様じゃないもん。」
一同、シーンとする。
そして武器を下ろし、
「それがエリーゼ様の命令とあれば、私たちは従います。」
「どこまでも、エリーゼ様と共に。」
「ありがとう!」
エリーゼはパッと明るくなる。
フードの彼女はエリーゼを見て、
「では、貴殿は人質になって貰おう。暗夜の第一王女であるカミラ王女の監視は殺さず、奴の元に戻さねばならないからな。その為にも、貴殿らは『カムイ』に負けたと言う事実を作らねばならない。そして、あの王は敗者を許さない。待っているのは死だ。だから貴殿らの命は『カムイ』が貰う。これで、貴殿らをうまく引き入れる事はできる。」
「……分かった。それでどうしていればいい?」
「これは貴殿の姉君にも言うつもりであったが、臣下二人以外は氷の部族を守って貰いたい。彼らを無事、故郷まで帰し、来るべき時が来るまで、彼らには生きていてもらわねばならない。氷の部族には、すでに言ってある。」
「うん。エルフィとハロルド以外は、氷の部族を守って。でも、バレないようにね。」
エリーゼは部下たちを見る。
彼らは頷き、行動に移す。
「頃合いを見て、カムイ達と合流して貰う。合図はカミラ王女が負けを宣言し、私が貴殿を人質に取った時だ。」
「えっと、わかった……?」
フードの彼女は既に走り出していた。
エリーゼは困惑しながらも、臣下二人と共に動き出す。
フードの彼女がエリーゼを人質に取っていた頃、フローラと刃を交えていたジョーカーとフェリシア。
「姉さん!もう止めて!」
「そうだ!フェリシア!敵は、カムイ様じゃねぇんだ!」
「……無駄よ。私は氷の部族として闘うだけよ。」
彼女の氷は、容赦なく二人を襲う。
ジョーカーはそれを避け、
「お前に取って、カムイ様との生活は何だったんだ!」
「……私たち双子は元々、人質としてあの城に押し込まれていたのよ。」
「なに……?」
フローラの言葉に、ジョーカーはフェリシアを見る。
彼女は顔を伏せていた。
フローラは武器を構え直し、
「……私たちは、氷の部族長クーリアの娘。氷の部族が反乱を起こさぬように、私たちは人質にされた。あの城でずっと……」
「でも、お姉さん!それでも私は、あそこでの生活は大好きだった。楽しかった。カムイ様に家族と言われて嬉しかったの!」
フェリシアは泣きながら叫ぶ。
フローラは武器を握る手が強くなり、
「そんなの……当たり前じゃない!あの方は、なにも知らない。恨みたかった。いざとなったら、カムイ様を殺してでも、フェリシアを連れてあそこから逃げたかった!けれど……あの方はいつも笑顔で私を見る。そんな想いを抱いてる私に……。私だって、あの方との生活はとても楽しかった!大切だった!でも、私たちは氷の部族、部族長の娘として責務を果たさなければならないのよ!」
そして、暗器を振るう。
が、それを短剣で抑え込まれた。
「ここに居たか。」
「あなたは⁉︎」
フローラを抑え込んだのは、フードの彼女だった。
「戦いはここまでだ。氷の部族長クーリアは、闘いをやめた。」
「嘘よ!」
「嘘ではない。私は、彼と取引した。氷の部族を、ここから無事逃す。そして、生かすとな。」
「……本当に?」
「ああ……だから、もう争う事はない。そして、お前にまだ『カムイ』を想う気持ちがあるのなら、力を貸すんだ。」
「………わかりました。ひとまず、ここはもう止めます。」
フローラから敵意が消える。
フードの彼女も、短剣をしまう。
「お前たちは、部族の者たちと一旦ここから合流し、離脱しろ。合図は、部族長に教えてある。」
「わかりました。……カムイ様の事、お願いいたします。ジョーカー、あなたもカムイ様をよろしく。」
「当たり前だ。あの方は、命に代えてもお守りする。」
ジョーカーも武器を下ろす。
フローラは少し微笑み、
「ええ。あなたはきっと……」
フェリシアは泣きながら、
「絶対、後で合流しますからね!」
「行くわよ、フェリシア。」
フローラが、泣いているフェリシアを連れて歩いて行く。
フードの彼女はジョーカーを見て、
「お前はカムイと合流しろ。」
「あなたは?」
「生憎、まだやらねばならない事がある。」
彼に背を向け、再び走り出す。
『これで、だいぶ戦況が変わる。』
そして、この戦場において目的の人物を探す。
フードの彼女は、赤い髪を左右で結い上げている女剣士を見つけた。
その女剣士の剣を、長剣で受け止める。
「誰だか知らないけど、あたしはカミラ様の臣下、ルーナ!カミラ様の為に、倒れて貰うわ!」
女剣士の名はルーナ。
ベルカと同じくカミラの臣下であった。
彼女は飛竜には乗っていない。
フードの彼女は、女剣士ルーナの剣を下に抑え込み、
「召喚されし者よ、このまま聞け。」
「‼︎あんた⁈まさか、ラズワルドが言っていた……」
「禁忌の国の兵は見えているな。奴らは、必然を起こすのに必死だ。だからこそ、今がチャンスなのだ。『カムイ』に集まる仲間へ禁忌の国のことを教える。その為に、向こうへ連れて行く。」
「それって……」
「私は、お前たちがここに呼んだ召喚士を知っている。そして、カミラ王女はこの戦闘を望んでいない。カミラ王女を止めるのに、手を貸せ。」
「それが本当として、カミラ様は何でそのことを私たちに言わないのよ。」
「暗夜王ガロンは、既に禁忌の国の
「つまり、動けるようにしたいってわけね。」
「ああ。」
「……どうすればいいの?」
「カミラ王女のもう一人の臣下と合流しろ。そして、上手くごまかせ。」
「え?ちょっと!それって、かなりの無茶ぶりよね⁉︎」
「……そういう事で任せたぞ。私は、暗夜の第一王女を止めねばならないのでな。」
と、フードの彼女は走って行った。
そこに、女剣士ルーナの怒りにも似た叫び声が響き渡る。
「ちょっとーー‼︎」
彼女の後を追うかのように走り出した。
ーーカムイはカミラの臣下ベルカと刃をまだ交えていた。
そこにジョーカーが駆けつけ、
「カムイ様!ご無事ですか‼︎」
「ジョーカーさん⁉︎フ、フローラさんとフェリシアさんは⁈」
「えっと……申し訳ありません、不測の事態に見失いました。」
ジョーカーは、カムイに襲いかかるカミラの臣下ベルカの斧を防ぎながら言う。
カミラの臣下ベルカは舌打ちをして、
「余計なのが増えた……」
そこに、また一人駆けてきたのが、
「わ、私もいるわよ!」
「ルーナ、何故ここに?持場は?」
「えっと……不測の事態が起きたのよ!走ってたら、丁度アンタを見つけて……じゃなくて、カミラ様の元に……ってカミラ様来てるし⁉︎」
カミラの臣下ルーナは相方のベルカを見た。
そして、その後方らはフードの彼女と剣と魔術を交えながらやって来るカミラの姿。
それにはカムイ達も驚いた。
「ああ、カムイ……生きていたわね。良かったわ、これで私があなたを殺せるわ。」
「カミラ姉さん……!」
カミラはカムイへと魔術を放つ。
カミラの臣下ルーナは剣を抜き、
「あー、もう!どうにでもなれ‼︎」
「全てはカミラ様の為に!」
カミラの臣下ベルカもまた、武器を構えなおす。
カミラから距離を取ったフードの彼女はカムイを見て、
「止めたいのならば、戦え。そして勝利するんだ。」
「わかりました。カミラ姉さん、行きます!」
カムイは剣を構える。
カミラは瞳を一度揺らした後、
「……ええ。いらっしゃい、カムイ。」
武器を構えて、カムイに襲いかかる。
カムイはカミラの振るう斧を剣で弾いていく。
フードの彼女はカミラの臣下ベルカを相手にしていた。
もう一人の臣下ルーナは、場を把握しながら動いていく。
だが、戦況は一気に変わる。
カミラの臣下ベルカを相手にしていたフードの彼女が、その彼女を叩き伏せる。
そして今度は、剣をもう一人の臣下ルーナに振るって叩き潰した。
カムイも、カミラの斧を思いっきり弾き飛ばす。
斧は回転して、氷に突き刺さる。
体勢を崩したカミラは、氷の上に落ちた。
カムイ達はカミラ達に勝利した。
カミラは膝を着き、
「うっ……あなたの勝ちよ、カムイ。……さぁ、私を殺しない。」
「カミラ姉さん⁉︎」「「カミラ様⁉︎」」
カムイや臣下達は驚く。
カミラの臣下ルーナは慌てて、
「止めろってこういう事なの⁉︎カミラ様、考え直して‼︎」
「そうです、カミラ様!負けを認めるのは早い……命さえあれば、また好機はある。」
カミラの臣下ベルカは、斧を支えに立ち上がる。
だが、フードの彼女がどこかに隠していたかのように、エリーゼに短剣を突きつけ、
「それは無理だ。こちらには、エリーゼ王女が人質にいるからな。」
「カミラお姉ちゃん……」
「エリーゼ……」
二人はて目で語り合う。
と、横の方からタイングを合わせたように、
「「エリーゼ様‼︎」」
エリーゼの臣下二人が武器を構えて現れる。
カムイはフードの彼女を見て、
「や、やめてください!エリーゼさんに、そんなこと‼︎」
「どちらにせよ、この戦いは終わらせなければならない。」
「だからって‼︎」
「……今更、人質をとっても意味はないわよ。ここで、カムイを殺せなかった私たちが戻ったところで、待っているのは死よ。だったら、カムイの手で私は死にたい。」
カミラは視線を落とす。
カムイはジッと二人を見る。
まるでそれは事実だというかのように。
カムイは拳を握りしめ、
「それは本当なのですね……だったら、お二人の命を私にください。」
「ええ、あなたの手で殺して。」
「はい。ですが、お二人の命は今消えました。今のあなたたちは自由です。その命をください。」
「カムイ……」「カムイお姉ちゃん……」
二人はカムイを見る。
そして涙で、
「信じていたわ、カムイ。」「信じていたよ、カムイお姉ちゃん。」
「え?」
フードの彼女は手を掲げる。
「全員、急いで船に上がれ。でないと、巻き込まれるぞ。」
そう言うと、彼女の足元には魔法陣が浮かび上がる。
それは空に上がっていき、そこから火の玉が落ちてきた。
「えぇ⁉︎み、みなさん、急いで船に!」
カムイ達は乗ってきた船に乗り込む。
無論、カミラやエリーゼ達はカムイの乗る船に乗り込む。
火の玉は綺麗に船を避けて氷に当たる。
氷が溶け、辺りは
フードの彼女は船のふちに立ち、
「さて、上手くいってなによりだ。」
「ええ。本当に……」
カミラがホッとしたように微笑む。
カミラの臣下ルーナは辺りを見て、
「こんなに凄い魔術を持っていながら、名が知れてないなんて……けど、カミラ様。他の者達はどうするんですか?」
「大丈夫よ。みんなには氷の部族を護るように言ってあるわ。それに、不測の事態が起きた時は、エリーゼの部隊に理由を聞くように言ってあるわ。それでわかるはずよ。」
「けど、カミラ様……これは一体どういうことですか?」
もう一人の臣下ベルカが、カミラを見る。
カミラはジッと臣下二人を見て、
「……私たちは、偽物の
と、フードの彼女を見る。
フードの彼女はふちに座り、
「あの双子も、今頃は故郷に戻る所だろう。暗夜王ガロンを討つまでは、氷の部族は大人しくしているだろうさ。」
カミラは視線を落とし、
「本当にごめんなさい、カムイ。あなたに刃を向けて……」
「い、いえ……私も何も知らなかったとはいえ、姉さん達に剣を向けてしまったのは事実ですので。……お互い様、という事です。」
カムイは苦笑する。
カムイは笑顔になり、
「仲間が増えましたよ、みなさん!さぁ、行きましょう。兄さん達に会いに!」
カムイ達は次の目的地へと急ぐ。