ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

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第十ニ話 仲間を求めて〜その3〜

白き王女は後悔していた。

自分が生まれる少し前、姉がもう一人いた。

けれど、その姉は暗夜王国に攫われた。

幼い自分は、その意味が分からなかった。

会ったことのない姉に、ただ会いたいと純粋に思っていたあの頃。

けれど、ある時聞いてしまった。

……姉は自分の代わりに攫われたのではないか、と。

 

怖かった。

会ったことのない姉に会うのが。

けれど、会いたいと思ってしまう。

姉に会った時、姉は自分をどう思うのか。

怖いけれど、知りたい。

 

そして姉は帰ってきた。

自分達の元へ。

危ないところを、助けに来てくれた。

身をていして、自分達の元へ来てくれた。

けれど、姉は自分達の事を覚えていなかった。

それでも、姉と共に過ごした時間は楽しかった。

嬉しかった。

こうして、家族として過ごせるこの時間がとても愛おしい。

そう心から想った……

 

 

ーーフードの彼女とは、別行動をしていた。

彼女との待ち合わせ場所に向かうために歩いていた。

そのカムイ達が歩く先に、煙が見える。

カムイがそれに気付き、

 

「ん⁈皆さん、待ってください!向こうに煙が……」

「あれは狼煙ね……」

 

アクアもそれを見る。

スズカゼは眉を寄せて、

 

「ええ。あれは、兄さんの上げた狼煙です。」

「サイゾウさんの?意味はなんです?」

 

カムイがスズカゼを見る。

スズカゼは静かに、

 

「はい、『大規模な敵兵力と交戦中』を示したものです。」

「なんですって⁉︎でしたら、助けに行かないと‼︎」

「いえ、忍びがあの狼煙を上げる意味は、助けを求めてのことではありません。この敵に襲われぬよう、自分を見捨てて逃げろ、と言う意味なのです。……だから、行くべきではないのです。」

「そんな……」

 

カムイは俯き、拳を握りしめた。

そして顔を上げた。

 

「皆さん、戦闘準備を!すぐに助けに向かいます!」

「それでこそ、カムイ様ですな。」

「ええ。流石、カムイね。」

「では、すぐに準備を致します。」

「全く、変わらないな。」

 

ギュンター、アクア、ジョーカー、リンカが笑みを浮かべて武器を整える。

カザハナ、ツバキ、サクラも、

 

「たく、仕方ないわね。」

「完璧に任務遂行しますよ〜♪」

「はい!私も頑張ります!」

 

彼らも闘いの準備をする。

スズカゼは驚きながら、

 

「待ってください!ど、どうして⁉︎危険なのですよ‼︎」

「だからと言って、見捨てる訳にはいきません!私たちは逃げる為にいるのではありません。ただ、真の敵を討つ為にいる訳でもありません。仲間を集め、大切なモノを護るためです。一人ではダメなことも、強敵に会っても、皆んなで立ち向かうために!」

「ですが……」

「それに、サイゾウさんは大切な仲間です。その仲間を見捨てることはできません!」

「カムイ様……ありがとうございます。」

 

スズカゼはカムイに頭をさげる。

そして彼らは、急いでそこに向かう。

 

フードの彼女はカムイ達と別れ、森に来ていた。

辺りを探り、

 

『……確か、この辺りのはずだが……』

 

と、目的の団体を見つけた。

丁度、すぐ近くでは狼煙を上げった所だった。

 

『……あそこか。全く、こうも同じ必然を作り出してくれるとは。』

 

彼女の目の前には、捕らえられた白夜のくノ一達と(フウマ王国)の忍び達がいる。

 

「罠にかかったな、白夜王国リョウマの臣下であるくノ一カゲロウ!」

「くっ!フウマ公国は、白夜王国の同盟国であったはずだ!」

「ふん、白夜の同盟国だと?残念だが、私はガロン王と手を組んでいたのだ。こうして、戦端が開かれるのを、今か今かと待ち望んでいたのだ。この戦で白夜を滅ぼせば、フウマは白夜に代わる王国にはとして認められる。そうすれば……この私はフウマ王国の王となるのだ!」

「この……外道が!」

「ははっ!どうとでも言え、負け犬が!どうせ、人質の価値が無くなれば、お前は死ぬ。」

「……それは仕方ない。任務で死ぬことは、覚悟していた。だが、リョウマ様のご命令を……あの伝言を皆に伝えられないことだけが……私の心残りだ!」

 

白夜のくノ一カゲロウは唇を噛む。

彼女は、長剣を抜く。

そして斬り込む。

 

同時刻、白夜の忍びサイゾウの集団。

彼らは辺りを警戒しながら、森を駆ける。

 

「おい、カゲロウが捕まっているというのは、この辺りか⁉︎」

「そうじゃな……情報によれば、そのはずじゃが……」

 

白夜の忍びサイゾウは隣を走る白夜の占い師オロチを見る。

 

白夜王国の忍びサイゾウは、白夜王国第一王子リョウマの臣下である。

カムイ達とは、テンジン砦で刃を交えた。

隣の占い師オロチは、白夜王国の王妃ミコトの臣下。

彼女もまた、テンジン砦でカムイ達と刃を交えた。

 

と、彼らの前方の方から金属音が鳴り響く。

オロチの上空を金鵄に乗って飛んでいた女性が、

 

「ふふ、焦っても仕方ないですわ。それにしても……この殺気に満ちた場所。邪魔者の殲滅は、このユウギリにお任せくださいな。ここでなら、敵の断末魔はさぞかし美しく響くでしょうね……」

 

金鵄に乗った女性は、ユウギリ。

オロチと同じ、白夜王国の王妃ミコトの臣下だ。

 

白夜の忍びサイゾウはため息をつき、

 

「はぁ……くれぐれも、無理はするなよ。こんな所で、命を落とすわけにはいかん。カゲロウ……待っていろ。今、助けに行く。」

 

彼らは、そこに向かう。

そこにはフードを被った者が、長剣を振るい気絶した白夜のくノ一カゲロウを守る姿があった。

フードの者は、彼らに気づく。

 

「……やっと来たか。」

 

そう言って、気絶していた白夜のくノ一カゲロウを投げる。

縛られた彼女は、白夜の忍びサイゾウに受け止められる。

彼が縄を解き、

 

「貴様、どういうつもりだ!」

「今に、あいつらも来るだろうさ。それより、来るぞ。」

 

フードの者は長剣を振るう。

白夜の忍びサイゾウ達も、武器を構えて応戦した。

 

狼煙が上がっただろう場所にカムイ達は来た。

カムイは辺りを見て、

 

「狼煙はこの辺で上がっていましたが……」

「カムイ、気を引き締めて。ここは、もうフウマ公国の領内よ。ずいぶんと暗い森だから、迷わないようにしないといけないわ。それに、足元を見て。戦闘の後が残っているわ。複数の足跡……奥に続いているわね。これを追っていけば、合流できるかもしれないわ。」

「はい!」

 

彼らは奥に進む。

サクラは肩をすくめ、

 

「な、なんだか暗くてジメジメしています……ちょっと、怖いかも……」

「サクラさん、手を繋ぎましょうか。」

「え?」

「実は、私も少し怖かったんです。ね。」

「は、はい!姉様!」

 

カムイの差し出す手を、サクラは嬉しそうに握る。

その状態で、さらに奥へと進む。

と、金属と金属がぶつかり合う音が聞こえてくる。

彼らは武器を構えて突入した。

そこには、フードを被った彼女が戦っていた。

 

「チッ、また乱入者か‼︎あいつらも仕留めろ!」

「はっ!コタロウ様!」

 

敵の将らしき忍びが声を上げる。

カムイは正面の方に白夜の忍びサイゾウ達を見た。

 

「居ました、サイゾウさん達です‼︎」

「そうね。彼女も居るみたいだし、私たちも……!」

 

アクアがそう言うと、表情を変える。

そこには透魔兵達が現れる。

カムイは眉を寄せて、

 

「くっ!こんな時に!サクラさん達は、サイゾウさん達をお願いします!私たちは視えない敵を倒しますので!」

「わ、わかりました!」

 

透魔兵達が見えるカムイ達は、サクラ達と別れる。

フードの彼女と合流し、

 

「やはり来たか。お前達も来たのなら、注意しろ。見える敵と視えない敵を、同時に相手することになる。」

「はい!」

 

カムイ達も、応戦を始めた。

カムイは白夜の忍びサイゾウと目が合った。

 

「貴様までも、ここにいるとは!何故いる‼︎」

「え?は、はい。助けに来たんです。さっきの狼煙は、サイゾウさんですよね?」

「なに?狼煙を?……だが、あれは助けを求めるものではないのだぞ⁉︎スズカゼはそんな事も、教えなかったのか。」

「いえ。スズカゼさんは、意味を教えてくださいました。あの狼煙は、敵勢力に襲われないよう逃げろと示す為のものだと。だからこそ、放っておけませんでした。信じて貰えなくても、敵だと思われても、私にとってあなたたちは大切な人なんです。それを失う訳にはいきません!」

 

カムイは襲いかかる透魔兵を斬り、ジッと白夜の忍びサイゾウを見る。

彼は手裏剣をフウマ公国の忍びに向かって投げ、

 

「……たったそれだけのことで、わざわざこんな死地まで来たというのか。俺たちを助けるために……」

 

彼はカムイの方に手裏剣を投げる。

それは彼女の横を通り、後ろから彼女を襲うとしていた敵に当たる。

 

「注意が足らん。だが、お前には敵わない。裏切り者のやる事とは到底思えん。サクラ様の言うように、何かしらの事情はありそうだ。お前達は、そのまま見えない敵と戦え!」

「はい!」

 

二人は互いに背を向け合い、互いの敵を倒していく。

白夜の忍びサイゾウ達の共闘もあり、カムイ達は透魔兵達を速く倒す事が出来た。

そして、敵の将らと向かい合う彼らと合流する。

敵の将コタロウと白夜の忍びサイゾウが互いに武器を構えていた。

 

「くそっ!私はお前たちを全て倒し、フウマ王国の王となるのだ!それを……よくも!」

「ふん。知るか、そんなモノ!だが、フウマ公国公王コタロウ!よくもカゲロウを人質にしようとしてくれたな。」

「貴様は……白夜王国の王族に、代々仕えているサイゾウか。」

「ああ、五代目サイゾウだ。」

「ふ。あの老いた上忍の息子か。」

「ほう。やはり、知っているのだな……父を。昔、この国に来てそのまま帰ることのなかった……俺の父のことを!」

「ああ。あの小癪な上忍は、この私の野望に感づいたのうでな。同じ忍びとして、そのような真似はするなと説教してきた。そんな時だ、白夜王スメラギが死んだのは。しかも、話によれば姫を暗夜に攫われたと。その姫を助けに行くと言ったあ奴に、協力してやったわ。そして、あ奴をそこで始末してやった。」

「くっ……!やはり、お前が‼︎」

「知らぬ存ぜぬで通す心算だったが、息子には感づかれていたか。親子揃って、勘だけはいいようだな。ただ、腕が伴っていなければ、全くの無意味だが。」

「貴様、弱かったというのか。俺の父が!」

「ああ。弱かったぞ、ヤツは。弱すぎて弱すぎて、この私に指一本触れることすらできずに、地獄に堕ちていきおったわ!全ては、姫を預けなければこうなる事もなかったのだがな!あははは‼︎」

「くそっ‼︎許さんぞ、貴様だけは‼︎父の仇、討ってみせる!」

 

怒りに燃える彼の前に、長剣を構えたフードの彼女が立つ。

 

「感情的になるな、白夜の忍び。」

「貴様に言われるまでもない!」

「そうか……先程は気付かなかったが、お前は……ふははは!これは傑作だ。いい事を教えてやろう、そこの娘はあの時……お前の父を見捨てた者だ!」

「なに……?」

「……だからなんだ。」

 

彼女は剣を振るう。

白夜の忍びサイゾウは、暗器を握りしめ、

 

「後で問い詰める!」

「好きにしろ。答えるかどうかは、別だがな。」

 

二人は睨み合う。

というより、彼女の顔が見えない以上雰囲気でしかないが……

そして、敵の兵をカムイたちが、フウマ公国公王コタロウを白夜の忍びサイゾウが相手をする。

兵を全て片付けると同時に、白夜の忍びサイゾウが一撃を与えた。

フウマ公国公王コタロウは地面に倒れ込み、

 

「グッ!ば、馬鹿な……こんな、若造に……この私の野望が……私の、フウマ王国が……」

「……指一本触れたぞ。仇は討った、父上……」

 

白夜の忍びサイゾウは拳を握りしめた。

カムイ達は休める場所に移動する。

カムイは、イズモ公国公王イザナの言葉を彼らに伝える。

 

「イザナ公王様が……そうか。それで、お前はさっきのはどうなんだ。」

「……答えるかどうかは、別だと言ったはずだ。」

「貴様!」

 

白夜の忍びサイゾウはフードの彼女を睨みつける。

そこに、ギュンターが一歩前に出て、

 

「先の話、おそらく暗夜に攫われた姫とはカムイ様の事でしょう。おそらくカムイ様は、それ自体覚えてはおられないでしょう。一度、カムイ様は記憶を取り戻した事がありました。その時、白夜兵がカムイ様を取り戻しに来たのです。ですが……」

 

ギュンターは視線を落とし、拳を握りしめる。

フードの彼女は視線を彼らから外し、

 

「……だが、白夜兵は仲間の裏切りにあった。まだ息のあった白夜の忍びはなんとかその姫を護り抜いた。だが、すぐ側には暗夜兵達が居た。それを、私が倒した。だが、その幼い姫の心は、その光景に耐えられず、壊れかけていた。すぐに、次の追撃が来る。あの白夜の忍びも、最後まで守りきれなかったと悔やんでいた。だから私は、カムイの記憶を封じ、『カムイ』を生かした。そういった場に、私が居たにすぎない。……けれど、私はあの勇姿を忘れる事はないだろう。今も昔も。『カムイ』のために、己が命をかける彼らを。」

 

フードの彼女は壁に寄りかかったまま、最後は静かに呟いた。

白夜の忍びサイゾウも、彼女から視線を外し、

 

「……少しだが、我が父のことを教えてもらった事には感謝しよう。」

 

隣では、スズカゼが頭を下げた。

そして、白夜のくノ一カゲロウが目を覚ました。

 

「ん……?私はそうだ!」

 

ガバッと起き上がる。

白夜の忍びサイゾウが彼女を見て、

 

「目を覚ましたな、カゲロウ。」

「サイゾウ……それにカムイ様も⁉︎」

「良かったです、カゲロウさん。」

 

カムイも、白夜のくノ一カゲロウをホッとして見る。

 

白夜のくノ一カゲロウは、サイゾウと同じく白夜王国の第一王子リョウマの臣下である。

そして、カムイが白夜王国に戻った頃は、カムイの身の回りの世話は彼女が行ってくれた。

 

カゲロウはカムイの前で頭を下げる。

 

「良かった、カムイ様。実は、リョウマ様より言付けを預かっております。」

「リョウマ兄さんから?」

「はい。リョウマ様は、カムイ様は敵ではないと。真の敵は、暗夜王ガロンでもなく、水面に隠れる者だと。」

「そ、それは!イザナ公の言っていた事と、ほとんどあってます。もしかして、リョウマ兄さんは禁忌の国を知っているのでしょうか?」

 

カムイはアクアを見る。

アクアは首を知り、

 

「どこまで知っているかはわからないわ。それは直接聞いてみないと。けど、リョウマと合流できればこちらの事はある程度言えるわ。」

「はい。カゲロウさん、リョウマ兄さんはどこに?」

「リョウマ様は……暗夜王国にほど近い、シュヴァリエ公国に向かっています。暗夜王国第一王子マークスに会うと言っておられました。」

 

白夜のくノ一カゲロウは顔を上げる。

カムイは一瞬間を置き、

 

「マークス……兄さんに会う?それって……?それにシュヴァリエ公国って……」

「はい。カムイ様が、暗夜に攫われた場所です。そして、今は反乱が起きている地です。暗夜のやり方に耐えられなくなった民たちが反乱兵となり、暗夜の者と闘っているらしい。リョウマ様は生き残った兵たちを味方につけ、暗夜王国第一王子マークスと共に……暗夜王ガロンを討つつもりなのです。」

 

カムイは胸の辺りで拳を握りしめ、

 

『……お父様を……兄さんたちが……』

 

白夜の忍びサイゾウは腕を組み、

 

「ふん。相変わらず、我が主は無茶をする御方だ。一刻も早く合流し、御身を守らねばな。」

「……それなら、他の白夜の人にも伝えるべきよ。それに、イザナ公王の言葉も含えてね。タクミの事も気になるし。」

 

アクアが彼らを見て言う。

フードの彼女も壁から腰を離し、

 

「それには同意する。白夜の第二王子とは、合流を図るべきだ。それに……白夜王国第一王子が、暗夜王国第一王子と手を組むのであれば、あちらも動き出す。問題は、暗夜の第一王子に向けられている監視をどうするか。それを壊すためにも、こちらは急いで彼らと合流し、見えない敵に対処した方がいい。」

「タクミ様や、リョウマ様の伝言、イザナ公の予言については、わらわたちが行おう。」

「ええ、私たちにお任せを。飛んで行った方が早いですし、私たちならば、話も伝わりやすいでしょうからね。」

 

白夜の占い師オロチと金鵄使いユウギリが名乗り出る。

カムイは彼らを見て、

 

「お願いします、オロチさん、ユウギリさん。」

「安心してください、カムイ様。私は、ミコト様のあなたに対する愛情を知っています。そして、幼き頃のあなたも。だからこそ、やり遂げてみせますわ。」

 

と、金鵄使いユウギリは微笑む。

白夜の占い師オロチは背を向け、

 

「善は急げじゃ!行くぞ、ユウギリ!」

「ええ。」

 

二人は、外に出て金鵄に乗って飛んで行った。

アクアがカムイを見て、

 

「決まりね。カムイ、港に向かいましょう。」

「港に?」

「ええ。シュヴァリエ公国に行くには、船に乗らなくてはいけないの。」

「わかりました。港に向かいましょう。」

 

と、カムイ達が動き出すと、

 

「待て、カムイ……様。」

「えっと……サイゾウさん、もし私のことをまだ疑っているのなら、呼び捨てで構いませんよ。」

「いや、主君が敵でないと言ったのだ。なら、俺はそれに従う。カムイ様、我ら二人の動向を許していただきたい。」

「いいのですか?」

 

白夜の忍びサイゾウと白夜のくノ一カゲロウは頷く。

カムイも頷き、

 

「わかりました。これからよろしくお願いします、サイゾウさん、カゲロウさん。」

「「御意。」」

 

彼らは港に、急いで向かう。

 

ーー透魔王国、透魔城にて

透魔軍師ルフレは長い廊下を歩いていた。

それは、黒騎士アベルの言う戦略を立てたからだ。

 

『アベル殿は、どこにいるのか……』

 

と、一人のフードを被った男性がいた。

透魔軍師ルフレは彼に話しかける。

 

「これはこれは、お久しぶりですね。」

「ん?ルフレ殿か。お主が、部屋から出ているとは珍しいのう。」

「……私も、部屋に閉じこもってばかりはいられませんよ。でも、今はアベル殿を捜しているだけなのですが……知りませんか?」

「アベル殿なら、外に行きましたよ。」

「は……?」

 

透魔軍師ルフレは思わず眉を寄せて、笑顔が崩れた。

そして、一度咳払いし、

 

「失礼。わかりました。外ですか、そうですか、外に……。では、私はこれで……」

 

彼に背を向け、来た道を戻る透魔軍師ルフレ。

早歩きで歩き、

 

『私に、作戦を立てさせておいて居ない。全く、自分勝手にも程がある。さて、これからどうするか……』

 

彼女は、自室に急いで戻るのであった。

 

カムイ達は港に着き、船に乗り込んだ。

何とか、今日最後の船に乗ることができたのである。

カムイは甲板で海を眺めながら、

 

「ふぅ、なんとか出航に間に合いましたね。」

「そうね。」

 

カムイの隣で、同じように海を眺めていたアクアが言う。

と、その二人の元に、

 

「カムイ姉様、アクア姉様。お疲れではありませんか?ずっと戦闘続きで、カムイ姉様も疲れが溜まっていると思います。姉様は、お身体が弱いのですから、船の上では沢山休んでくださいね。」

 

サクラが歩いてきた。

アクアはサクラの言葉に同意し、

 

「そうね。カムイ、あなたは今日はもう休みなさい。」

「はい、そうさせていただきます。ありがとうございます、サクラさん。」

 

彼らは疲れを癒す。

船の旅が数日続き、

 

「失礼します、カムイ様。」

「ジョーカーさん。」

「お体は大丈夫ですか?」

「はい。この数日、いっぱい寝ましたから!」

「それは良かった。では、船は順調に進んでおります。明日には、港に着けるでしょう。」

「そうですか。それは良かった。ありがとうございます、ジョーカーさん。」

 

と、カムイは窓の外を見る。

空が薄暗くなってきた。

 

「……外の雰囲気が変わってきましたね。波も高くなってます。」

「ふむ、嵐の予兆かもしれませんね。」

《船に影響が出なければ良いのですが……》

 

カムイの横で浮いていたリリスも、心配そうに外を見る。

と、その瞬間だった。

外で爆発音が鳴り響く。

船が大きく揺れ、

 

「きゃっ!」

「カムイ様!」

 

ジョーカーが、カムイを支える。

 

「船が止まった……?大丈夫ですか、カムイ様。」

「はい。私は大丈夫です。ありがとうございます、ジョーカーさん。でも、どうしたんでしょう。船の故障でしょうか?」

「様子を見て参ります。」

「私も見に行きます。」

 

二人は部屋を出ると、フードの彼女と鉢合わせる。

 

「……敵襲だ。いちを、警戒はしろ。」

「え?敵襲⁈」

 

カムイが驚く。

ジョーカーは笑顔のまま、

 

「その割には、あなたは落ち着いておりますね。」

「今回の敵襲は、知る顔だからな。いや、お前にとっては、か。」

 

フードの彼女は、カムイの方を向いて言った。

そして、甲板へと急ぎ足で歩いていく。

 

「わ、私の知ってる顔?……まさか、暗夜の誰かでしょうか?とりあえず、私たちも向かいましょう!」

「はい、カムイ様!」

 

二人は駆け足で甲板に向かう。

フードの彼女が出て来たカムイ達を見て、

 

「来たか。今に来るぞ。」

 

外に出たカムイ達は、海を見渡す。

と、海は一面見渡す限り、凍っていた。

 

「う、海が……凍ってる⁉︎」

「こ、これは……まさか、いきなり冬になったなどという事は……」

 

ジョーカーが辺りを見渡す。

正面の方には、何隻かの船が見える。

と、その船の奥の方から飛竜に乗った人影が見える。

 

「ん?誰かがこちらに向かってきます。もしや、あれは……カミラ様⁉︎」

「え?カミラ姉さん⁉︎」

 

彼らの上空に、飛竜が現れる。

その背には、紫色のフワッとした髪をなびかせるカミラが現れた。

船の横に並び立ち、

 

「ああ、カムイ……元気そうで良かったわ。私、あの日から心配で心配で……ずっと、あなたに会いたかったのよ。」

 

と、フードの彼女に魔術を放つ。

彼女はそれを交わすと、今度は飛竜に乗ったまま襲いかかる。

フードの彼女は長剣を抜き、彼女の斧を受け止める。

 

「やめてください、カミラ姉さん!彼女は敵ではありません!」

「ああ、カムイ……可愛い子。私をまだ姉と呼んでくれるのね。でも、もう私のことを……そんな風に呼んでは駄目よ。あなたは白夜の本当の兄弟姉妹(きょうだい)を得てしまったのだから……」

「カミラ姉さん……」

 

カムイは視線を落とす。

カミラは表情を暗した後、小声で話し始める。

 

「……マークスお兄様からあなたに伝言よ。『私たちは動く。だが、今は動けない。』と。」

「だろうな……貴殿達には見えない敵が、暗夜王ガロンの元にいる。貴殿達が奇襲をかけた所で、見えない敵に殺られるだけだ。ところで、白夜の第一王子が動いているのは気づいているか?」

「ええ。だから、彼と合流をすると言っていたわ。そして私とエリーゼは、カムイの元に居ろと。けど、私たちも、お兄様達の方にも……」

「監視が付いている、か。」

「……自身の家臣達に加え、あの王の配下が数人いるわ。そして、あの邪悪な奴からは、カムイを殺せと言われているの。」

「なるほど。では、それはこちらでなんとかしよう。」

 

彼女は、カミラの斧を弾く。

そして距離を置く。

カミラは体勢を整え、斧を構え直す。

 

「ああ、カムイ……愛してるわ。けど、お父様からの命令なの。だから、カムイ……あなたを愛してるからこそ、私の手で殺してあげるわ。」

「構えろ。ひとまず、敵を無力化する。」

「は、はい!」

 

カムイも構える。

そして続々と、

 

「カムイ!」「カムイ姉様!」

 

アクアやサクラ達がやって来る。

彼らも武器を構える。

カミラの後ろには、暗夜兵が沢山出てくる。

カミラは上昇し、

 

「フローラ。」

「はい、カミラ様。」

 

船の縁に立ったフローラが手をかざす。

すると、吹雪が吹き荒れ始める。

カムイは腕で顔を覆う。

 

「ぐっ‼︎」

「申し訳ありません、カムイ様。ですが、こうなってしまった以上、私はあなたの敵です。例え、カムイ様が相手でも‼︎」

 

フローラがカムイ達を睨みつける。

ジョーカーがカムイの前に出て、

 

「下がってください、カムイ様!フローラ、お前本気か!本気で、俺たちを殺しに来たのか⁉︎」

「ええ。私は、本気よ。私たち氷の部族は、あなた達の逃げ場をなくす為に海まで凍らせた。カミラ様に従い、あなた達を殺すようガロン王より命じられた。逆らえば、私たち部族は殲滅させられる。仕方ないのよ!」

「だが、お前はカムイ様に忠義を誓ったはずだ!それは、家臣のやることじゃねぇぞ‼︎」

「無駄よ、ジョーカー。今のあなたが、私に何を言っても届きはしないわ。私は氷の部族の女……だから、今はただ、冷たく、硬く、心を凍らせる。」

 

フローラは、ジョーカーに向けて氷の刃を放つ。

そこに同じく氷の刃が飛んできて壊れる。

 

「姉さん、やめて!」

 

そこには、フェリシアが駆けつけた。

フェリシアは、ジョーカーの横に並ぶ。

フローラは拳を握りしめて、

 

「フェリシア……あなたも、氷の部族の一員なら戦いなさい!私たちには、この道しかないの‼︎」

「姉さん!」

「くそっ!フローラ、てめぇ……お前は俺が相手する!目を覚まさせてやる!」

 

ジョーカーは武器を構え直し、フローラに向かって走り出す。

 

「カムイ。待っているわ、あなたが私の元に来るのを。」

 

カミラは後方へと飛んでいく。

フェリシアはカムイを見て、

 

「カムイ様、申し訳ありません!ですが……姉さんを殺さないでください!みんなを……」

「わかっています、フェリシアさん。止めましょう、一緒に。」

「カムイ様!はい!」

 

フェリシアも、武器を取り出す。

カムイ達も武器を構え直し、

 

「来ます!」

 

カムイ達は陣形を作って対応していく。

敵をある程度倒していくと、敵の隙間が見えるようになって来た。

フードの彼女はそれを見て、

 

「……私は少し席を外す。私のいない間に死ぬなよ。」

「え?」

 

カムイが彼女を見ると、彼女はすでに敵の間を抜けて行っていた。

フードの彼女は氷の部族の元へと向かう。

そして氷の部族長らしき男性の前で止まる。

 

「何者だ。」

「……氷の部族長クーリアであっているな。私は戦いに来たのではない。話し合い……いや、取引をしに来た。」

「取引だと?」

「ああ。氷の部族は、暗夜王ガロンを討ちたいのだろう。なら、ここは一旦退くべきだ。そして、暗夜王国第一王子であるマークス王子と共闘する事をオススメする。」

「暗夜の王族に?馬鹿な事を。だったら何故、暗夜王ガロンの言うことに従っている。」

「暗夜の王子と王女は、あの王がかつての()でない事を知っている。だが、あいつを討つには見えざる敵をなんとかしなければならないのだ。」

「見えざる敵、だと?」

「ああ。禁忌の国の見えない敵……それが暗夜王を守っている。あの傀儡には禁忌の呪い(加護)がかけられている。それをなんとかしない限り、暗夜王を倒す事は出来ない。」

「……それでどうすると?」

「ここには、『夜刀神』の使い手が居る。その者に、カミラ王女を抑えてもらう。彼女らの近くには、暗夜王ガロンのつけた監視がある。それを利用して、カミラ王女らを敗者にする。暗夜王ガロンは敗者を許さない。だから、カミラ王女らをこちらに取り込む。その間に、頃合いを見て、ここから離脱して貰う。」

「そんなことをすれば、我が部族は壊滅だ。」

「いや。離脱と同時に故郷に帰れ。そして、部族全員を連れて、しばしの間だけ隠れ過ごしてほしい。あの暗夜王ガロンは、必ず必然を望む。今回の件で、すでに必然は大きく変わりつつある。それを戻すために動くはずだ。そうなれば、敗者となった氷の部族に構っている暇はないだろう。だが、策は多いほうがいい。だからこそ、しばらくの間隠れてて欲しいのだ。つまり、私の出す条件は、ここからの撤退と身を隠すこと。」

「……よくわからないが、ガロン王には何かをしようとする為の時間が欲しいというわけか。だが、どうやるというのだ。」

「カミラ王女らの戦いが終わったら、合図を送る。それと同時に、双子を帰す。」

「合図とは?」

「この氷を溶かす、火の玉だ。安心しろ、船に当てるヘマはしない。」

 

と、彼女は足元の分厚い氷を蹴る。

氷の部族長クーリアは眉を寄せ、

 

「そんなことーー」

「できるさ。」

 

彼女は指をパチンと鳴らす。

彼女の周りの氷が炎に包まれ、氷が溶ける。

水の上に立っている彼女は、

 

「魔術は得意だ。剣と同じく、頻度も、経験も大いにある。何度も、何度も、繰り返し使って得た力だ。それに、水に変わればこちらの領分。私の加護は水だからな。」

「……わかった。君との取引に乗ろう。では、こちらの条件は我らを生かし、我らと共に暗夜王ガロンを討つことだ。」

「いいだろう。」

 

彼女は彼らかに背を向ける。

 

『……これで、氷の部族は無力化できたな。』

 

そして、次の目的地へと向かう。

フードの彼女が氷の部族長と話していた頃、カムイは飛竜に乗った暗殺者と武器を交えていた。

 

「私はベルカ。カミラ様の臣下。私の任務は、あなたたちの船を沈めること。そして、あなた……カムイの殲滅。邪魔をする者は全て、消す。カミラ様の為に!」

 

飛竜に乗った暗殺者の名はベルカ。

カミラの臣下で、カミラと同じように飛竜の使い手でもある。

カムイは剣を強く握り、

 

「させません!私たちには、やらねばならないことがあるんです!」

「私だって、カミラ様の為に殺る!」

 

二人の攻防戦は続く。

 

フードの彼女は、この戦場から一番遠い船にやってきた。

その船の甲板に立ち、エリーゼに剣を向ける。

 

「暗夜の第二王女……ここで人質になって貰おう。暗夜の第一王女を止める為に。」

「エリーゼ様、お下がりを!」

「ここは我らが!」

 

と、エリーゼの前にピンクの鎧を着た女性と斧を構えた男性が立つ。

二人は槍と斧を構えて、フードの彼女を睨む。

そして、ピンクの鎧を着た女性が槍を振り下ろす。

フードの彼女はそれを避けると、そこの部分の氷は大きくヒビが入る。

その横に、斧を持った男性が第二波を繰り出す。

それすらも、フードの彼女は避ける。

エリーゼは杖を握りしめ、船の上から叫ぶ。

 

「エルフィ!ハロルド!」

 

ピンクの鎧を着た女性はエルフィ。

エリーゼ様臣下で、怪力の持ち主である。

斧を持った男性はハロルド。

彼も、エリーゼの臣下である。

 

フードに彼女は長剣を構え直し、

 

「……面倒だな。」

 

彼らに向かって走り出す。

否、彼らの奥の暗夜王ガロンの向けた兵を暗器を指の間に挟んで放つ。

そして、長剣でトドメを刺す。

フードの彼女は後ろに一回転し、

 

「さて、他は……」

 

彼女は暗器を指の間に挟む。

それをどれくらいやったか、彼女は剣をしまう。

そしてエリーゼを見て、

 

「暗夜の第一王女カミラから聞いている。これで、貴殿を監視する兵はいない。」

 

それを聞いたエリーゼは頷き、

 

「エルフィ、ハロルド!止めて!みんなも!」

「エリーゼ様?」

 

エリーゼは二人の前に駆けて行き、フードの彼女の前に両手を広げて立つ。

 

「この人は敵じゃないわ。私たちの敵は、偽物の暗夜王よ。それに……私たちに見えない敵。そうマークスお兄ちゃんは言っていた。だから、この人との戦闘はここまで。私につけられていた監視はいなくなった。だからやっとみんなに言えるわ。」

「……エリーゼ様、それはつまり……」

「ガロン王を裏切る、という事ですね。」

「あれは、もうお父様じゃないもん。」

 

一同、シーンとする。

そして武器を下ろし、

 

「それがエリーゼ様の命令とあれば、私たちは従います。」

「どこまでも、エリーゼ様と共に。」

「ありがとう!」

 

エリーゼはパッと明るくなる。

フードの彼女はエリーゼを見て、

 

「では、貴殿は人質になって貰おう。暗夜の第一王女であるカミラ王女の監視は殺さず、奴の元に戻さねばならないからな。その為にも、貴殿らは『カムイ』に負けたと言う事実を作らねばならない。そして、あの王は敗者を許さない。待っているのは死だ。だから貴殿らの命は『カムイ』が貰う。これで、貴殿らをうまく引き入れる事はできる。」

「……分かった。それでどうしていればいい?」

「これは貴殿の姉君にも言うつもりであったが、臣下二人以外は氷の部族を守って貰いたい。彼らを無事、故郷まで帰し、来るべき時が来るまで、彼らには生きていてもらわねばならない。氷の部族には、すでに言ってある。」

「うん。エルフィとハロルド以外は、氷の部族を守って。でも、バレないようにね。」

 

エリーゼは部下たちを見る。

彼らは頷き、行動に移す。

 

「頃合いを見て、カムイ達と合流して貰う。合図はカミラ王女が負けを宣言し、私が貴殿を人質に取った時だ。」

「えっと、わかった……?」

 

フードの彼女は既に走り出していた。

エリーゼは困惑しながらも、臣下二人と共に動き出す。

 

フードの彼女がエリーゼを人質に取っていた頃、フローラと刃を交えていたジョーカーとフェリシア。

 

「姉さん!もう止めて!」

「そうだ!フェリシア!敵は、カムイ様じゃねぇんだ!」

「……無駄よ。私は氷の部族として闘うだけよ。」

 

彼女の氷は、容赦なく二人を襲う。

ジョーカーはそれを避け、

 

「お前に取って、カムイ様との生活は何だったんだ!」

「……私たち双子は元々、人質としてあの城に押し込まれていたのよ。」

「なに……?」

 

フローラの言葉に、ジョーカーはフェリシアを見る。

彼女は顔を伏せていた。

フローラは武器を構え直し、

 

「……私たちは、氷の部族長クーリアの娘。氷の部族が反乱を起こさぬように、私たちは人質にされた。あの城でずっと……」

「でも、お姉さん!それでも私は、あそこでの生活は大好きだった。楽しかった。カムイ様に家族と言われて嬉しかったの!」

 

フェリシアは泣きながら叫ぶ。

フローラは武器を握る手が強くなり、

 

「そんなの……当たり前じゃない!あの方は、なにも知らない。恨みたかった。いざとなったら、カムイ様を殺してでも、フェリシアを連れてあそこから逃げたかった!けれど……あの方はいつも笑顔で私を見る。そんな想いを抱いてる私に……。私だって、あの方との生活はとても楽しかった!大切だった!でも、私たちは氷の部族、部族長の娘として責務を果たさなければならないのよ!」

 

そして、暗器を振るう。

が、それを短剣で抑え込まれた。

 

「ここに居たか。」

「あなたは⁉︎」

 

フローラを抑え込んだのは、フードの彼女だった。

 

「戦いはここまでだ。氷の部族長クーリアは、闘いをやめた。」

「嘘よ!」

「嘘ではない。私は、彼と取引した。氷の部族を、ここから無事逃す。そして、生かすとな。」

「……本当に?」

「ああ……だから、もう争う事はない。そして、お前にまだ『カムイ』を想う気持ちがあるのなら、力を貸すんだ。」

「………わかりました。ひとまず、ここはもう止めます。」

 

フローラから敵意が消える。

フードの彼女も、短剣をしまう。

 

「お前たちは、部族の者たちと一旦ここから合流し、離脱しろ。合図は、部族長に教えてある。」

「わかりました。……カムイ様の事、お願いいたします。ジョーカー、あなたもカムイ様をよろしく。」

「当たり前だ。あの方は、命に代えてもお守りする。」

 

ジョーカーも武器を下ろす。

フローラは少し微笑み、

 

「ええ。あなたはきっと……」

 

フェリシアは泣きながら、

 

「絶対、後で合流しますからね!」

「行くわよ、フェリシア。」

 

フローラが、泣いているフェリシアを連れて歩いて行く。

フードの彼女はジョーカーを見て、

 

「お前はカムイと合流しろ。」

「あなたは?」

「生憎、まだやらねばならない事がある。」

 

彼に背を向け、再び走り出す。

 

『これで、だいぶ戦況が変わる。』

 

そして、この戦場において目的の人物を探す。

フードの彼女は、赤い髪を左右で結い上げている女剣士を見つけた。

その女剣士の剣を、長剣で受け止める。

 

「誰だか知らないけど、あたしはカミラ様の臣下、ルーナ!カミラ様の為に、倒れて貰うわ!」

 

女剣士の名はルーナ。

ベルカと同じくカミラの臣下であった。

彼女は飛竜には乗っていない。

 

フードの彼女は、女剣士ルーナの剣を下に抑え込み、

 

「召喚されし者よ、このまま聞け。」

「‼︎あんた⁈まさか、ラズワルドが言っていた……」

「禁忌の国の兵は見えているな。奴らは、必然を起こすのに必死だ。だからこそ、今がチャンスなのだ。『カムイ』に集まる仲間へ禁忌の国のことを教える。その為に、向こうへ連れて行く。」

「それって……」

「私は、お前たちがここに呼んだ召喚士を知っている。そして、カミラ王女はこの戦闘を望んでいない。カミラ王女を止めるのに、手を貸せ。」

「それが本当として、カミラ様は何でそのことを私たちに言わないのよ。」

「暗夜王ガロンは、既に禁忌の国の呪い(加護)を受けている。そして、あの王の側には透魔兵(見えざる敵)がいる。それを少なからず理解しているから、動けないのだ。」

「つまり、動けるようにしたいってわけね。」

「ああ。」

「……どうすればいいの?」

「カミラ王女のもう一人の臣下と合流しろ。そして、上手くごまかせ。」

「え?ちょっと!それって、かなりの無茶ぶりよね⁉︎」

「……そういう事で任せたぞ。私は、暗夜の第一王女を止めねばならないのでな。」

 

と、フードの彼女は走って行った。

そこに、女剣士ルーナの怒りにも似た叫び声が響き渡る。

 

「ちょっとーー‼︎」

 

彼女の後を追うかのように走り出した。

 

ーーカムイはカミラの臣下ベルカと刃をまだ交えていた。

そこにジョーカーが駆けつけ、

 

「カムイ様!ご無事ですか‼︎」

「ジョーカーさん⁉︎フ、フローラさんとフェリシアさんは⁈」

「えっと……申し訳ありません、不測の事態に見失いました。」

 

ジョーカーは、カムイに襲いかかるカミラの臣下ベルカの斧を防ぎながら言う。

カミラの臣下ベルカは舌打ちをして、

 

「余計なのが増えた……」

 

そこに、また一人駆けてきたのが、

 

「わ、私もいるわよ!」

「ルーナ、何故ここに?持場は?」

「えっと……不測の事態が起きたのよ!走ってたら、丁度アンタを見つけて……じゃなくて、カミラ様の元に……ってカミラ様来てるし⁉︎」

 

カミラの臣下ルーナは相方のベルカを見た。

そして、その後方らはフードの彼女と剣と魔術を交えながらやって来るカミラの姿。

それにはカムイ達も驚いた。

 

「ああ、カムイ……生きていたわね。良かったわ、これで私があなたを殺せるわ。」

「カミラ姉さん……!」

 

カミラはカムイへと魔術を放つ。

カミラの臣下ルーナは剣を抜き、

 

「あー、もう!どうにでもなれ‼︎」

「全てはカミラ様の為に!」

 

カミラの臣下ベルカもまた、武器を構えなおす。

カミラから距離を取ったフードの彼女はカムイを見て、

 

「止めたいのならば、戦え。そして勝利するんだ。」

「わかりました。カミラ姉さん、行きます!」

 

カムイは剣を構える。

カミラは瞳を一度揺らした後、

 

「……ええ。いらっしゃい、カムイ。」

 

武器を構えて、カムイに襲いかかる。

カムイはカミラの振るう斧を剣で弾いていく。

フードの彼女はカミラの臣下ベルカを相手にしていた。

もう一人の臣下ルーナは、場を把握しながら動いていく。

だが、戦況は一気に変わる。

カミラの臣下ベルカを相手にしていたフードの彼女が、その彼女を叩き伏せる。

そして今度は、剣をもう一人の臣下ルーナに振るって叩き潰した。

カムイも、カミラの斧を思いっきり弾き飛ばす。

斧は回転して、氷に突き刺さる。

体勢を崩したカミラは、氷の上に落ちた。

 

カムイ達はカミラ達に勝利した。

カミラは膝を着き、

 

「うっ……あなたの勝ちよ、カムイ。……さぁ、私を殺しない。」

「カミラ姉さん⁉︎」「「カミラ様⁉︎」」

 

カムイや臣下達は驚く。

カミラの臣下ルーナは慌てて、

 

「止めろってこういう事なの⁉︎カミラ様、考え直して‼︎」

「そうです、カミラ様!負けを認めるのは早い……命さえあれば、また好機はある。」

 

カミラの臣下ベルカは、斧を支えに立ち上がる。

だが、フードの彼女がどこかに隠していたかのように、エリーゼに短剣を突きつけ、

 

「それは無理だ。こちらには、エリーゼ王女が人質にいるからな。」

「カミラお姉ちゃん……」

「エリーゼ……」

 

二人はて目で語り合う。

と、横の方からタイングを合わせたように、

 

「「エリーゼ様‼︎」」

 

エリーゼの臣下二人が武器を構えて現れる。

カムイはフードの彼女を見て、

 

「や、やめてください!エリーゼさんに、そんなこと‼︎」

「どちらにせよ、この戦いは終わらせなければならない。」

「だからって‼︎」

「……今更、人質をとっても意味はないわよ。ここで、カムイを殺せなかった私たちが戻ったところで、待っているのは死よ。だったら、カムイの手で私は死にたい。」

 

カミラは視線を落とす。

カムイはジッと二人を見る。

まるでそれは事実だというかのように。

カムイは拳を握りしめ、

 

「それは本当なのですね……だったら、お二人の命を私にください。」

「ええ、あなたの手で殺して。」

「はい。ですが、お二人の命は今消えました。今のあなたたちは自由です。その命をください。」

「カムイ……」「カムイお姉ちゃん……」

 

二人はカムイを見る。

そして涙で、

 

「信じていたわ、カムイ。」「信じていたよ、カムイお姉ちゃん。」

「え?」

 

フードの彼女は手を掲げる。

 

「全員、急いで船に上がれ。でないと、巻き込まれるぞ。」

 

そう言うと、彼女の足元には魔法陣が浮かび上がる。

それは空に上がっていき、そこから火の玉が落ちてきた。

 

「えぇ⁉︎み、みなさん、急いで船に!」

 

カムイ達は乗ってきた船に乗り込む。

無論、カミラやエリーゼ達はカムイの乗る船に乗り込む。

火の玉は綺麗に船を避けて氷に当たる。

氷が溶け、辺りは()へと戻る。

フードの彼女は船のふちに立ち、

 

「さて、上手くいってなによりだ。」

「ええ。本当に……」

 

カミラがホッとしたように微笑む。

カミラの臣下ルーナは辺りを見て、

 

「こんなに凄い魔術を持っていながら、名が知れてないなんて……けど、カミラ様。他の者達はどうするんですか?」

「大丈夫よ。みんなには氷の部族を護るように言ってあるわ。それに、不測の事態が起きた時は、エリーゼの部隊に理由を聞くように言ってあるわ。それでわかるはずよ。」

「けど、カミラ様……これは一体どういうことですか?」

 

もう一人の臣下ベルカが、カミラを見る。

カミラはジッと臣下二人を見て、

 

「……私たちは、偽物の暗夜王(お父様)を討ち取る為に動いていたの。けど、見えない敵と私たちにつけられた監視の目が邪魔でみんなにも言えなかったのよ。当初は、私たち兄弟姉妹(きょうだい)だけでやるつもりだったのだけど、見えない敵のせいで手を出せずにいたの。でも、白夜の第一王子が動き出しでもきた。お兄様は、彼にも手を貸して欲しいと言ってあったみたいだから、そうだろうと。だから、私とエリーゼがカムイの仲間になれるように、彼女に手を貸してもらったのよ。」

 

と、フードの彼女を見る。

フードの彼女はふちに座り、

 

「あの双子も、今頃は故郷に戻る所だろう。暗夜王ガロンを討つまでは、氷の部族は大人しくしているだろうさ。」

 

カミラは視線を落とし、

 

「本当にごめんなさい、カムイ。あなたに刃を向けて……」

「い、いえ……私も何も知らなかったとはいえ、姉さん達に剣を向けてしまったのは事実ですので。……お互い様、という事です。」

 

カムイは苦笑する。

カムイは笑顔になり、

 

「仲間が増えましたよ、みなさん!さぁ、行きましょう。兄さん達に会いに!」

 

カムイ達は次の目的地へと急ぐ。

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