黒き王女は想う。
幼き頃、自分には多くの
たまに見る
側に行く子供はいつも、正妻の
けれど、目が合えば微笑みかけてくれた。
幼いおぼろげな記憶にある
けれど、いつからか
あれは確か……そう、正妻が亡くなったからだ。
自分の母や他の
そして、正妻の座に着いたのは見知らぬ女性。
彼女には子供がいたと言う。
名は確か……アクア。
けれど、それがその子供にとっては悲劇の始まりだったのかもしれない。
見れば、酷い仕打ちを受けていた。
自分は見て見ぬフリをするしかなかった。
関われば、自分も同じ目にあうのは目に見えている。
だから、忘れるように、気付かぬように過ごした。
そしてそれは、次第にそれは薄れていく。
突然、彼女の母が死んだ。
再び、正妻が亡くなったのだ。
正妻の座をかけた女の醜い争い。
けれど、妻も子も次々と死んでいった。
残ったのは正妻の子ども二人と自分、幼い弟と妹だった。
自分は正妻の子である兄に連れられ、幼い弟と妹に出会った。
可愛い、愛おしい子ら。
ある時、後妻の正妻の子は誘拐されたと聞いた。
代わりに、新たな姫が北の城で発見されたと。
その子は病弱で、城から出る事は出来ないのだと。
けれど、自分は噂を聞いた。
ーーあの城にいるのは、白夜王国から誘拐された姫だと。
それは確かかもしれないと思う。
まるで檻に囲われた生活。
籠の中の鳥。
初めて会ったあの子は、あまりにも弱かった。
父を失い、母もいない。
本当の
何も知らないこの子を、愛おしく想う。
自分達を
ーーカムイは甲板の上で、カミラとエリーゼと話していた。
「フローラさんたち、上手く逃げれたらいいのですが……」
「大丈夫よ、カムイ。私やエリーゼの部隊が共にいるんですもの。それに、フローラやフェリシアも、とても強いもの。その気になれば、氷を自在に使って逃げ延びるわ。それこそ、昔あなたが作った隠れ家みたいな、ね。」
「ふふっ、懐かしい話ですね。」
「そうだよ!カムイお姉ちゃんが居なくなって、大騒ぎになったんだよ!」
「そうでしたね。」
と、三人は笑いあう。
カムイはホッとしたような笑顔で、
「私、嬉しいです。こうして、カミラ姉さんやエリーゼさんと昔みたいにお話できて……本当に嬉しいんです。」
「それは私もだよ、お姉ちゃん!」
「ふふ。そうね、まるで夢でも見てるみたいね。あなたのおかげで、私もエリーゼもこうして笑える。あなたを信じて良かったわ。」
「もちろん、私も、いつだってお姉ちゃんを信じてるよ。」
「……カミラ姉さん、エリーゼさん。」
二人は、カムイに微笑む。
カミラは笑顔のまま、
「けど、やっぱりまだ信用はされてないみたいね。そちらで盗み聞きしているのは、白夜の方々かしら?」
と、船の隅を見る。
ガタっと言う音と共に、
「ひゃっ⁉︎え、えっと、私は、その……」
「ごめんなさい。盗み聞きするつもりはなかったのだけど、どうしても気になってしまって。」
サクラが慌てて出てくる。
その後ろから、アクアがゆっくり出てくる。
カムイは苦笑して、
「サクラさんに、アクアさん……多分、それだけではないとは思いすが……」
おそらく、物陰に隠れた白夜軍勢と暗夜軍勢。
もしかしたら、フードの彼女もいるかもしれないとカムイは思う。
だが、カムイの言葉を、いや、カムイが言った名を聞いたカミラが表情を変えて、
「アクア……?もしかして、あなたは……あのアクアなの⁈あの日、城から連れ去られた……」
「……私を覚えていたの?」
「ええ。城で何度か、見ていたわ。ごめんなさいね、アクア。あの頃の私は、あなたを救ってあげられなかった。あなたがどんな辛い目にあっていたか、知っていたのに……」
カミラが涙目になる。
カムイはアクアとカミラを交互に見て、
「え?アクアさんが⁈」
「アクアはシュンメイ王妃と言う、お父様の後妻の子なの。けれどお城では、前妻であるエカテリーナ王妃の派閥が強くて……私のお母様も、エカテリーナ派だったわ。だから、アクアには関わるなと言われていたわ。それはもちろん、エカテリーナ王妃の子であるマークスお兄様も。そしてしばらくして生まれたレオンも、同じことを言われていたわ。でも、私たちはずっと、アクアとは
カミラは真剣な表情でアクアを見つめる。
ずっと考え込んでいたエリーゼが、
「つまり、あなたは私のお姉ちゃんになるんだよね?嬉しいな、お姉ちゃんが増えた!よろしくね、アクアお姉ちゃん!」
パッと笑顔になって、大いに喜ぶ。
アクアは視線を落として、
「カミラ、エリーゼ……ありがう。また、あなたに妹と、姉と呼ばれて、私は嬉しいわ。けど、私は暗夜の血を引いていないの。詳しいことは、ここでは言えないけど……」
「そうなの?でも、お姉ちゃんには、変わりないよ。」
「ええ、そうね。カムイが、私たちとは血は繋がってないとわかっても、
「ありがとう……」
アクアは顔を上げる。
カミラはサクラを見て、
「すぐに信じろ、とは言わないわ。元々、敵同士でいたものね。けど、安心して。私はカムイの悲しむことはしないわ。これから先は、暗夜と白夜が手を取り合って戦うことができる。共に、平和な世界を作りましょう。だから、よろしくね。」
「は、はい!こ、こちらこそ!」
サクラは元気よく返事する。
エリーゼはサクラを見て、
「サクラ王女、年が近いもの同士仲良くしようね!」
「は、はい。エリーゼ王女、よろしくお願いします。」
二人は互いに微笑み合う。
それから、各々休息や話をしだす。
カムイはリリスと共に、甲板を歩いていた。
「こうして、白夜と暗夜の
《はい、カムイ様。きっと、カムイ様たちなら大丈夫です。》
と、カムイはオロオロして悩んでいるエリーゼとサクラを見つけた。
カムイは二人に近づき、
「どうしたんですか?サクラさん、エリーゼさん。」
「あ、姉様!じ、実は……」
二人は互いに見合う。
そしてエリーゼが、
「あの人が、あそこで寝てるみたいなんだけどね、ここだと寒いと思うの。でね、毛布を渡そうかなって思ったんだけど、それよりも、部屋で寝たほうがいいかなって……」
そうエリーゼが見る先には、フードの彼女が船の柱に背を預けて座っていた。
その彼女の方が上下しているのを見て、寝ているとわかる。
カムイも頷き、
「そうですね。ここでは風邪を引いてしまいますね。」
「じゃ、みんなで行こう!そうすれば、怖くない!」
「そ、そうですね!」
二人は頷き合う。
カムイは苦笑して、二人と共にフードの彼女に近づく。
そして、エリーゼとサクラが声をかける。
「あ、あの!ここだと、風邪を引いてしまいますよ!」
「だから起きて!ね!」
エリーゼが彼女の肩を触れようとした時、フードの彼女が反応する。
彼女から放たれる殺気は怖かった。
彼女は短剣を抜き、振るう。
「「きゃっ‼︎」」
「サクラさん!エリーゼさん!」
カムイが咄嗟に二人の前に手を広げて立つ。
リリスが慌てる。
が、彼女の短剣は、カムイの顔の前でピタッと止まる。
しばらく固まり、彼女は頭を押さえて辺りを見渡す。
彼女は短剣をしまい、
「……すまない、寝ぼけていた。こちらの不手際で、危ない目に合わせてたな。」
「い、いえ。大事がなかったのでよかったです。」
カムイは手を下す。
サクラとエリーゼも頷く。
フードの彼女は伸びをして、
「……普段は誰の目にも止まらないとこで寝るのだが、どうやら寝落ちしてしまったようだ。」
カムイはその言葉に、フードの彼女を見る。
「どうしてですか?一緒に寝ても、誰も怒りませんし、不快にも思いませんよ?」
「……それは、お前の価値観だ。誰しも皆が、そうではない。それに、寝込みを襲われて死ぬのは避けたいからな。」
「‼︎そんなことーー」
「無論、ここの連中がそんな事をするとは思っていない。が、警戒は解かないほうが良いのだ。どこに敵の目があるかは、わからないのだからな。」
「ですが……」
「忘れるなよ。私は仲間ではない。あくまで協力者として、共にいる。」
フードの彼女はカムイ達に背を向けて歩いて行った。
サクラは困ったような顔をして、
「あの方は、よくわかりませんね。味方だけど、とても遠い。」
「はい。ですが、いつだって私たちを助けてくれます。」
「うん。あの人はきっと、カムイお姉ちゃんと同じくらい優しい人なんだと思う。けど、それと同じくらい自分に厳しい人なのかも。」
「そうかもしれませんね……いつか、あの人とも、本当の仲間になれると良いです。いえ、きっとなってみせます。」
カムイは、表情が暗くなる二人を見ながら言う。
二人も、明るい表情になって頷く。
船は順調に進み、港に無事着いた。
ここからは徒歩で進む。
すると、シュヴァリエ公国が見えてきた。
だが、遠目からでもわかる。
煙が見えてくる。
これは戦闘での煙だ。
カムイ達は急いで向かう。
シュヴァリエ公国に着くと、辺りは倒壊していた。
所々、戦火の煙や炎、瓦礫の後がある。
そして、未だ戦闘音が鳴り響くアミュージアへとやって来た。
カミラが辺りを見渡し、
「なんてことなの……アミュージアが見る影もないわ。」
「……戦いがあったのは間違いないですね。」
カムイも辺りを見渡す。
カミラは苦しそうに、
「ああ……そんな、アミュージアは戦いとは無縁の町だったのに。」
「私たちが白夜にいる間に、こちらで何かあったのかもしれませんね。」
「そうね……リョウマたちが、どこがにいるはずだけど……」
アクアは眉を寄せて、フードの彼女を見る。
「……本来なら、ここで訪れる必然は少なからず、回避にしたに近い。なのに、被害はここまで拡大している……だとすると、やはりあいつが……」
フードの彼女からは殺気が放たれる。
カムイ達はビクッと反応し、何人かは視線をそらす。
と、カムイは向かいの方から誰かが来るのを見た。
「ん?こっちに、誰か来ますね?」
「あれは……」
カミラも、遠目で同じものを見る。
そこには大きな金狐が、耳と尻尾が生えた人型の何かを咥えてやって来た。
見ると、怪我をしている。
そして、カムイ達の前に来ると彼を下ろし、金狐は彼と同じ人型へと変わる。
金狐の方は膝を着き、
「そ、そこのヒトたち……来ちゃダメだ……」
「この町は……危険だ。近付くな。」
金狐が咥えてきた彼が起きる。
カムイは真剣な顔になり、
「サクラさん、エリーゼさん、治療をお願いします!」
「は、はい!」「う、うん!」
二人は彼らに治癒をかける。
二人の傷が癒え、
「へへ、傷が治ったぜ!生き返った気分だ!」
「ありがとう、親切なヒト!この恩は必ず返すよ!」
と、二人は元気にサクラとエリーゼを見る。
二人は微笑み、
「い、いえ、私たちはできる事をしただけで……」
「そうそう、元気になって良かったわ!」
アクアが二人の前に立ち、
「ねぇ、ところであなたたち。どうして、ここがこうなったか知ってるかしら?」
「えっとね、ボクたちは、ただこの町に立ち寄っただけなんだけど……不思議な事に、暗夜の第一王子と白夜の第一王子が共闘をすると言ったんだ。そして、反乱兵とも共闘をするってさ。けど、そこに暗夜軍が押し寄せてきたんだ。そんなに多いわけでもないのに、彼らのほうが苦戦しててね。一気に戦火が広がったんだ。」
「しかも、戦闘が行われていなかった場所でも、兵士もいないのに町が破壊されていくんだ。俺らはなんとかしようとしたけど、何かに返り討ちにされた。」
二人は眉を寄せて、思い出して言う。
フードの彼女は腕を組み、
「なるほど……なら、見えない敵は見える我々が、他の者たちは第一王子達と合流しろ。」
「え?でも……」
心配するカミラ達。
だが、カムイは武器を構えて、
「大丈夫ですよ!見えない敵は、私たちに任せて下さい!それよりも、兄さんたちも心配です。それに、この町の人たちの避難も済ませないと!」
「そうね……わかったわ、カムイ。」
カミラは力強く頷く。
と、二人がカムイ達を見て、
「それなら、ボクらも手伝うよ。恩は返さないと!ボクは世界一美しい妖狐のニシキ。」
「俺は、ガルー一族のリーダー、フランネルだ!町の連中は俺らがなんとかする。俺らは獣石と呼ばれる石を使って、狐と狼になれる。だから、戦闘も可能だしな。」
「わかりました。私はカムイ。ニシキさん、フランネルさん、お願いします。」
カムイ達は、三手に分かれる。
カミラ達は戦闘を行っている兄達の元へ行く。
「お兄様!」「マークスお兄ちゃん!」「兄様!」
カミラ達が武器を構える。
マークスとリョウマは敵をなぎ払い、
「カミラ!エリーゼ!」「サクラ!」
二人は彼らと合流する。
マークスは、カミラとエリーゼを見て、
「お前達が、白夜の者達と共にいるということはカムイと合流できたのだな。カムイは?」
「ええ。カムイ達は見えない敵を倒しに行ったわ。私たちは、お兄様達を助けに!」
カミラとエリーゼ、サクラ以外はすでに動き出した。
リョウマは敵を見ながら、
「なら、頼む!だいぶ、兵の数は減らしたが、ここにも見えない敵がいるみたいでな……苦戦している。敵は暗夜王の放つ敵だけではないということだ。向こうはすでに、裏切り者マークスを討つ為に来ている。そして、ここに来るであろう『カムイ』を殺すつもりだ。」
「そんな⁉︎」「お姉ちゃんが⁈」
サクラとエリーゼは悲鳴をあげる。
エリーゼはグッと拳を握りしめ、
「よーっし!行くよ、サクラ王女!みんなを回復しに!」
「は、はい!エリーゼ王女!」
二人は駆けていく。
リョウマも、奥の方での爆発を聞き、
「あっちもか!俺はあちらに行く!」
そこに向かって駆けて行った。
カミラは眉を寄せ、
「お兄様、レオンは……」
「レオンは、後から合流するはずだったのだが……」
「きっと、無事ですわ。あの子はとても聡明ですもの。」
「そうだな。」
二人は頷き合い、敵と向かい合う。
フードの彼女は暗器を投げて、
と、鳴き声と呻き声が消えてくる。
「うわーん、お母さん!」
「逃げなさい!あなたまで下敷きになってしまうわ!」
「イヤだ!絶対にお母さんを助けるんだ!」
フードの彼女は二人を見た。
子供は、瓦礫の下敷きになった母親を必死になって助けようとしていた。
『……救える命と救えぬ命。』
その親子の元に、暗夜兵が近づく。
フードの彼女は長剣を振るい、兵を斬る。
そして剣をしまう。
と、彼女のフードを引っ張る。
「お願い、します!お母さん……お母さんを助けて!」
彼女は子供を見る。
子供の姿が変わる。
彼女の中にある、一人の男の子。
ーー絶対に……お母さんを助ける……んだ!ボクが……ボクが‼︎約……束……するよ……
そして彼は死んだ。
その姿を、ふと思い出す。
フードの彼女は少し沈黙した後、母親を押しつぶしている瓦礫に手をかける。
そして上に持ち上げようとするが、ビクともしない。
魔術という手もあったが、それでは逆に危険だと判断したのだ。
だからこそ、瓦礫を退かそうとしたのだ。
「お願いです……私の事はいいです……だから……お願いです。この子を……この子を安全なところへ……この子だけでも……」
母親が、フードの彼女に訴える。
彼女は瓦礫から手を離そうとした時、
「諦めるな!いま助ける!」
男性の声が聞こえてきた。
その声と共に、瓦礫が持ち上げられる。
フードの彼女は、彼を見る。
赤い鎧を着た白夜の王子。
彼はそれを退かし、瓦礫から解放された母親が起き上がる。
そして子供と抱き合う。
母親は涙を流しながら、自分を救ってくれた二人を見る。
「ありがとうございます!」
「いや、いい。それより、早くここから避難するんだ。」
「は、はい。」
親子は頭を下げてから、避難する。
フードの彼女は彼を見て、
「……礼を言う、白夜の第一王子。」
リョウマは、フードの彼女を見下ろし、
「礼には及ばん。助けられる命があるのなら、助けて当然だ。だが、あのとき諦めようとしたか?」
「ああ……私では、あの母親は救えない。そう判断した。なら、あの母親が望むように子供だけは助ける、そう決めた。それが、関わった者の責任だ。」
「そうだな。確かに、そうだ。」
「白夜の第一王子、救える命と救えぬ命が目の前にあった時……貴殿ならどうする。」
「どちらも救いたい。だが、それができぬ時もある。それでも、一人でなければ救える道はあるはずだ。」
フードの彼女は、彼の力強い瞳を見た。
そして、やって来た敵を見て、小さく呟いた。
「……貴殿は、変わらぬな。」
「ん?何か言ったか?」
「気にするな。それより、退がれ。」
自分の横で、刀を構えるリョウマに彼女は言う。
リョウマは眉を寄せ、
「何故だ。この程度の数ならーー」
「ああ、貴殿なら問題ないだろう。だが、貴殿には見えぬ敵にも囲まれた。なら、ある程度まとめて一掃した方がいい。」
そう言って、彼女は右手を上げる。
足元には魔法陣が浮かび、空に上がっていく。
「貴殿の
そう言うと、空から雷が鳴り響く。
雷が敵にめがけて、何本も落ちてくる。
カムイは飛竜に乗った女戦士と会った。
「……もしかして、アンタがカムイかい?」
「は、はい。」
「やっぱりね。私はクリムゾン。このシュヴァリエ公国で、反暗夜のレジスタンスをしている。あんたの事は、リョウマから聞いてるよ。」
彼女が、カゲロウが言っていた反乱軍のメンバーであるクリムゾン。
暗夜の方針に、反旗を掲げる女戦士。
カムイは少し驚き、
「リョウマ兄さんから?」
「ああ。元々、私とリョウマは暗夜を倒す協力者同士だったんだ。そんなリョウマから、幼い頃のあんたのことや帰って来たあんたの話を聞いた。話じゃ、白夜と暗夜の両方と協力して平和を掴もうとしていると聞いた。」
「はい。」
飛竜使いクリムゾンは、カムイの瞳を見る。
彼女は、カムイの瞳を見て微笑む。
「ふふ。思った通り、いい目をしてる。リョウマと同じ、嘘のない澄んだ目だ。……リョウマが、暗夜の王子と共闘をするって言った時は驚いた。けど、『自分は知っている。暗夜と共に戦えることを。』そう言ったんさ。そして暗夜の第一王子に、『自分はカムイを信じる。カムイの平和を守ろうとする意志を知っている。自分は白夜の王子として、あの子の兄として、真の敵を討つ!』。そう言って、手を握り合うリョウマを見たら、嘘じゃないって思った。」
「兄さん……」
飛竜使いクリムゾンはカムイをジッと見て、
「私はあんたを信じるよ、カムイ。だから私も、あんたらの仲間になった。それを裏切らないでおくれよ。」
「はい、クリムゾンさん!その為にも、今はここをなんとかしてみせます!」
「ああ、期待してる。見えない敵とやらを倒してくれ。見える敵は、私らがなんとかする!」
二人は互いに背を向けあい、敵に向かっていく。
フードの彼女はリョウマを見て、
「これくらいなら、いいだろう。片付けるぞ、白夜の第一王子!」
「おう!」
二人は互いに背を預ける。
リョウマは敵を倒しながら感じる。
彼女には、自分の背中を預けられる。
強く懐かしい、それでいて護りたくなる。
やはり自分は、この少女を知っている。
なのに、思い出せない。
フードの彼女は、リョウマには見えない
そして想うのだ。
この懐かしさを。
けれど、彼女はその想いを捨てる。
戦いに集中する為に。
彼を、いや、彼らとの
カムイは、アクアと合流する。
飛竜使いクリムゾンは、避難している村人達の方を手伝いに行った。
カムイとアクアはマークス達の元へ向かっていた。
マークスの臣下であるラズワルドが、
「マークス様!」
マークスを背後から斬ろうとしていた
マークスは彼を見て、
「ラズワルド、お前は見えているのか?」
「……はい。自分はかつて、彼女の言った禁忌の国に訪れております。。そして僕は、あの国の秘密を知っています。」
「……ならば、お前は見えぬ敵を討て。この場で、見えぬ敵を討てる者は多い方がいい!」
「わかりました!」
彼は武器を構え直し、
カミラは飛竜に乗り、斧を敵に降り下ろす。
だが、カミラを狙った矢が飛んでくる。
「カミラ様!」
ルーナが、矢を斬り裂く。
そして、矢を放った
カミラが眉を寄せ、
「ルーナ、あなたは見えてるのね?」
「……はい。」
「なら、あなたは見えない敵を倒して。」
「はい、カミラ様!」
ルーナは剣を構え直し、
と、同じく
「ルーナ、君もか。」
「ええ。私たちは与えられた使命と命令を果たす。」
「ああ!」
二人は背中を合わせて闘う。
カムイとアクアはマークス達を見つけた。
「マークス兄さん!」
「カムイか!」
「無事でよかったです。……リョウマ兄さんは?」
カムイは辺りを見渡すが、リョウマの姿はない。
マークスは真剣な顔で、
「リョウマ王子は別行動中だ。今に合流できるだろう。」
マークスはカムイの横のアクアを見て、
「ある程度の事は、カミラから聞いている。だが、カムイと同じく、アクアも大切な我らの
「マークス……ありがとう。」
アクアは凪刀を握り締める。
マークスは二人に背を向け、
「では、ここの敵を倒すぞ。」
「はい!」「ええ!」
二人も武器を構える。
フードの彼女は、その場の敵を全て倒し、剣をしまう。
リョウマも敵を倒しきり、剣をしまう。
「そっちも、終わったようだな。」
「ああ。これから、お前はどうする?」
「……他の者達とも、合流した方がいいだろう。こうなった以上、敵の動きを正確に把握しておきたい。それに、残りの戦力を全て送り込む可能性もある。」
「そうか。よし、行くぞ。」
二人は走り出す。
『おそらく、ここの透魔兵の指揮を待っているのは、あいつだ。なら、必ずカムイを襲う。もしくは、歌姫か。』
カムイは剣を振るっていた。
が、
背後からカムイに襲いかかる暗夜兵。
アクアとマークスがそれに気付き、
「「カムイ‼︎」」
「ハッ‼︎」
カムイは咄嗟に振り返るが、防御が間に合わない。
そこに、矢と魔術が放たれる。
「全く、見えない敵とやらに気を取られすぎだよ。カムイ姉さん。」
「レオンさん!」
そこには馬から降りるレオンの姿。
そして、空から天馬の鳴き声と羽ばたき音が聞こえ、
「そうだぞ、カムイ。」
「僕の矢が間に合って、よかったよ。」
「ヒノカ姉さん!それにタクミさんも!」
天馬に乗ったヒノカとその後ろに乗ったタクミが降りてきた。
レオンとタクミは互いに目が合う。
二人はムッとし合った後、視線をそらす。
他にも続々と、
「レオン様、置いてかないでくださいよ!」
「いくら、カムイ様が危なかったとはいえ、敵の中に突っ込むんですから……もっと注意を。」
「オーディン、ゼロ。」
レオンを追ってきた魔術師と弓使いも、馬を降りる。
レオンはカムイを見て、
「姉さん、この二人は僕の臣下。あっちの魔術師はオーディン、弓使いの方はゼロ。」
「よろしくお願いしますね、カムイ様!」
「世話になりますよ。」
二人はさっとカムイを見る。
カムイも頭を下げ、
「はい、こちらこそ。」
「さて、オーディン。お前に命令だ。見えない敵とやらを倒して来い。どうやらお前は、見えてるみたいだしな。ここに来る途中も、倒してたろ。」
レオンは臣下オーディンを見る。
彼は少し驚いた後、
「いやー、レオン様には敵わないな。わかりました、俺行ってきまーす!」
彼は駆け出していく。
そして白夜側でも、
「「タクミ様ー!追いつきましたよ!」」
侍と槍使いが、馬を走らせてやってきた。
「ヒナタ、オボロ。」
タクミはカムイを見て、
「カムイ……姉さんは、初めてだよね。僕の臣下のヒナタとオボロね。」
「よろしくっす!」「よろしくお願いいたしますわ。」
二人はカムイを見た。
カムイ 頭を下げ、
「はい、こちらこそ。」
タクミの臣下の侍はヒナタ。
タクミとは仲が良く、剣の稽古も共にやるとか。
同じくタクミの臣下の槍使いはオボロ。
彼女はオシャレ好きで、時々タクミの髪をといてるとか。
その彼らの後ろから、
「ヒノカ様……やっと追いついた。」
「いやはや、とてもお速い。さすがですねぇ〜。ユウギリさんとオロチさんも、戦闘を始めております。」
ボヤッとした感じの弓使いとフワッとした僧侶が馬を走らせてやってきた。
ヒノカは頭を抱え、
「なら、お前たちも戦わないか……」
「おやおや。セツナならともかく、私は治療専門ですよ。」
「なら、治療に回ってくれ。セツナは援護を。」
「ええ、了解です。」「はーい。」
二人は駆けていく。
タクミの臣下の二人を見て、
「心配だから、二人もよろしく。」
「おう、任せとけ!」「お任せを!」
二人も、二人を追っていく。
ヒノカはカムイを見て、
「すまんな、カムイ。あれは私の臣下のセツナとアサマ。あの二人はちょっと……いや、かなり危なかっしくてな。特にセツナが……」
ボヤッとした感じの弓使いはセツナ。
ヒノカの臣下で、彼女を守るというより守られる方が多い。
フワッとした僧侶はアサマ。
彼もヒノカの臣下で、戦闘は不向きだが治療は得意。
頭を抱えているヒノカを見たカムイは、
「そ、そうなんですか……」
苦笑していた。
それは、エリーゼのところの臣下ハロルドを思い出す。
船の中で、彼はことごとく不運に見舞われていた。
そこに、フードの彼女とリョウマが駆けてきた。
カムイの仲間が次々とそろっていく。
「リョウマ兄さん!」
「カムイ!無事でなによりだ。それに、ヒノカとタクミも駆けつけてくれたか!」
「お待たせしました、兄様。」
ヒノカがリョウマを見る。
フードの彼女は見る。
カムイを中心に、白夜と暗夜の者が共にいる。
それはかつての
「どうかしたのか?」
リョウマが一人離れていたフードの彼女に声をかけた。
フードの彼女は自分の仮面を触れ、
「……いや、昔を思い出しただけだ。」
そして、仮面を触れていた手を離す。
マークスが近づき、
「ずいぶんと、リョウマ王子とは仲が良いのだな。」
「……気のせいだ。」
「いや、私の時とは雰囲が違う。それに、何故だろうな……それが本来の姿ではないか、と思うくらいだ。」
「……それは気のせいだ。それより、武器を構えろ。沢山いるぞ。」
彼女は、そう言いながら武器を抜く。
他の者達も武器を抜き、大量にやってきた暗夜兵に戦いを挑む。
フードの彼女は暗夜兵を斬りながら、
『おかしい……透魔兵がいない。あいつなら、仕掛けてくると思ったが……』
暗夜兵の数も減ってくると、ラストスパートはあっという間に終わる。
だが、それなりに体力も、気力も、減っているところに
「ここで来たか……」
「行きます!」
見えるカムイ達はもうひと頑張りする。
カムイとアクアは息を整える。
すぐ近くでは、フードの彼女による魔術が放たれている。
おかげで、敵はだいぶ減っている。
だが、高位魔術を使い続けている彼女にも、疲労は出ている。
アクアは息を整え、
「ユラリ〜♪ユルレリ〜♪」
歌を歌い出す。
その歌を聞いた
「敵が!一気に叩き込みます!」
カムイが剣を振るい続ける。
フードの彼女も、その歌を聴き魔術のペースを上げる。
アクアは膝を着き、歌が止まる。
リョウマとマークスが側に寄り、
「大丈夫か、アクア!」
「無理をするな。」
アクアは息を整え直し、立つ。
「大丈夫よ、リョウマ、マークス。私の歌には力がある。ただ、これは呪いの力も受けてしまう。けど私は、私にしか出来ないことをすると決めたの。」
アクアは力強い瞳を向ける。
カムイもその場に来る。
「アクアさん!大丈夫ですか⁉︎」
「ええ、大丈夫よ。まだやれるわ。」
すると、パチパチと言う音が聞こえてきた。
彼らの前、ミュージアムの舞台があった場所。
そこに黒い騎士が立っていた。
彼が、アクア達を見て拍手していた。
「いやはや……変わりませんね、アクア様。あなたの、その強い瞳は昔から変わらない。」
アクアは、その黒い騎士を見て驚く。
彼女の頬に汗が一つ流れ、
「……アベル。」
「おや?幼かったあなたには、私の事など覚えていないと思っておりました。」
拍手を止め、腕を組んで悩むアベルと呼ばれた黒騎士。
アクアは凪刀を持つ手に力を込める。
「覚えていて当然よ。私の愛しき者たちを傷付けた。あなたは、私の父だけでなく、父の騎士であったあなたの実の兄までも殺した。そして、私と母を死に追いやろうとした張本人。私の目には、今でもあの光景が残っているわ。」
「アクアさん……それって……」
カムイは透魔王国で聞いた事を思い出す。
彼女は透魔王国の王女。
彼女は父を殺され、
黒騎士アベルは頷き、
「なるほどね。……それにしても、白夜と暗夜の合流が早いな。」
辺りを見渡す。
そして、カムイの持っている刀を見て、
「おや?あの時は気づかなかったが、夜刀神を君が持っているとは。」
「え?」
カムイは眉を寄せる。
彼は冷たい笑みを浮かべ、
「でも、当然か……あの子が、その刀を所持していない時点で、『カムイ』の元に『夜刀神』があるのは必然。あの子が、この『カムイ』を殺していない時点で、起こりうる必然か……」
「何を言っているんです?」
カムイは困惑する。
逆にアクアはハッとしたように、眉を寄せる。
黒騎士アベルは笑みをより一層深くし、
「その『夜刀神』は元々、あの子の父親の刀だからですよ。ね、アクア様。」
そう言ってアクアを見る。
それは、アクアが知っていると判断したからでもある。
アクアは額に汗を出し、拳を握り締める。
リョウマは眉を寄せ、
「バカな!夜刀神は、伝説の神刀!時代が合わない……いや、待てよ。あの者なら……」
リョウマの中には、ある者を思い出す。
そして、それは確実となる。
「はああぁぁぁ!」
そこに、声が響く。
黒騎士アベルは剣を抜く。
真上から来た剣を受け止め、
「全く……師にむかって、挨拶もなしに斬りかかるとは。」
「黙れ!」
それは、フードの彼女だった。
彼女には怒りが見える。
だが、それよりも彼が、彼女の師と言うのに驚いた。
彼女の剣を交えるその剣技は、確かに似ている。
「やれやれ。昔の君はもっと素直でいい子だったはずだが?」
「黙れと言っている!」
「……そんなにも、私が憎いかい?」
黒騎士は目を細めた。
フードの彼女の剣が重くなると同時に、軽くなる。
彼女は吹き飛ばされた。
瓦礫に叩きつけられ、
「ぐっ!」
追撃を防げない。
それを、リョウマとマークスが剣を振って守る。
「おっと。」
黒騎士アベルは距離をとる。
リョウマが彼女を見て、
「大丈夫か⁉︎」
「……問題……ない。」
彼女は剣を支えに立ち上がる。
そして二人の前に出ると、剣を構え直す。
黒騎士アベルは面白そうに、
「いやー、王子たちと仲良くなっちゃって。それともーー」
彼の雰囲気が変わり、
「懐かしくなった?かつての仲間を思い出しちゃったかな?」
「もとより仲間はいない……。アベル……何故、父を裏切った。」
フードの彼女は握る剣に力が入る。
黒騎士アベルは構えず、笑みを浮かべた。
「それは、どちらの父君かな?」
「両方だ!」
「……決まってる。それが、君の父君の望みだからだ。世界の崩壊を、人類に滅亡を。」
「違う!父は人も、世界も、仲間も大切にしていた。何よりも、家族を愛していた!確かに、人を信じられなくなった父はいた。闇に飲まれた父はいた。けれど、それを嘆き苦しんでいる!」
フードの彼女は剣を握る力が、さらに強くなる。
黒騎士アベルは左手を顔にあて、
「ふ、ふははは!それは、そうだ。あの方々は優しい。けれど、彼らのもたらす闇は美しい!光を塗り潰し、暗よりもなお、黒く輝く……君も、今に同じになる。君は、私と違い非情になりきれない。何故なら……」
顔から左手を外し、
「再び繋がりを使ったからだ!今の君は、殺せない。『カムイ』の仲間を!」
「……アベル‼︎」
フードの彼女は再び剣を降り上げるが、
「そこまで、です。」
彼女の剣は黒騎士アベルではなく、白き騎士に止められた。
フードの彼女は距離を取り、
「……なぜだ……」
「なんであなたが……カイン!」
アクアも眉を寄せて叫ぶ。
カインと呼ばれた白騎士。
彼はアクアに頭を下げ、
「お久しぶりです、アクア様。しばらく見ないうちに、ますますお綺麗になって。あのお二方とソックリです。」
「ちゃんと答えて、カイン!あなたは、あの日アベルに殺されたはずよ!私とお母様を守って……」
アクアは首に下げているペンダントを握り締める。
白騎士カインは顔を上げ、
「ええ、私は死にました。けれど、あの方の
「……カイン!ごめんなさい……」
アクアは瞳を揺らした。
白騎士カインは黒騎士アベルを見て、
「アベル、あまり度の過ぎた行動は慎め。それに、我らが軍師殿が探している。」
「そうでした。ですが、兄上は会ったことはないはずでしょう。」
「白王殿から聞いたのだ。」
「なるほど。では、帰りましょうか。」
黒騎士アベルは笑顔でそう言った。
白騎士カインは拳を握り締め、
「待っていますよ、アクア様。あなたが、私の前に来てくださることを。」
「ええ。必ず……」
アクアは白騎士カインの背を見つめる。
黒騎士アベルと白騎士カインは黒い炎に包まれて消えた。
そして、戦場にいた
フードの彼女は剣をしまい、
「……クソ。」
唇を噛む。
アクアはカムイとリョウマ、マークスを見て、
「……ごめんなさい、詳しく話せないの。話すには、禁忌の国に行かないと……」
アクアは凪刀を下す。
フードの彼女は彼らに近づき、
「冷静さに欠けていた。後、先ほどの事は礼を言う。」
そこにタクミ達がやってくる。
タクミはリョウマ達を見て、
「兄さん、ちょっといい?」
「どうした、タクミ。」
「えっと、イザナ公王の言っていた『竜に会え』って言葉があったよね。あれも含めて、僕は父上の書物を漁ったんだ。そしたら、『竜について知りたければ、ノートルディア公国に迎え。』て言う紙を見つけたんだ。」
そう言って、その紙をリョウマに見せる。
リョウマはそれを見て、
「確かに、これは父上の字だ。」
「ノートルディア公国という事は、『虹の賢者』か。」
マークスがリョウマを見る。
リョウマも頷き、
「ああ、おそらくそうだろう。」
「ノートルディア公国?虹の賢者?それって、なんですか?」
カムイが首を傾げる。
ヒノカが腰に手を当てて、
「賢者様はなんでも知ってるお方らしいぞ。だが、強い者にしか会えないと聞く。」
「そうなんですか……」
「そうね。賢者様に会って戻ってきた者は、これまでに五人しかいないと聞くわ。一人目はかつての白夜王スメラギ、二人目は若かりし頃のお父様、三人目は名もなき騎士様で、四人目はマークスお兄様、そしてリョウマ王子よ。」
カミラも頬に手を当てて言う。
カムイはマークスとリョウマを見て、
「マークス兄さんとリョウマ兄さんが⁉︎」
「ああ……だが、賢者様からは竜については聞かなかった。だが、賢者様なら知っていて言わなかったのかもしれん。」
「確かに、そうかもしれん。あのお方は、そういうお方だ。」
二人は互いに見合う。
カムイはグッと手を握りしめ、
「ノートルディア公国、行ってみます!」
「その前に、私から提案だ。」
フードの彼女が彼らを見る。
彼女は腕を組み、顎に左手を当てる。
「これからの行動は限りがある。
「何だ?」
「……あの暗夜王を討つのは白夜で、だ。その為には、あの傀儡には白夜の玉座に座ってもらう。」
「ば、バカな⁉︎白夜を開け渡せと言うのか!」
リョウマは眉を寄せ、刀に手をかける。
カムイはハッとして、
「白夜の玉座……お母様が言っていました。あの王座には、古の神である神祖竜の加護が宿ってると。座る者の真の姿、真の心を取り戻すと。」
「それが本当だっとして、何の意味がある。我々はあの王が偽物だと知っている。」
マークスも眉を深くする。
フードの彼女は右手を腰に当て、
「……では、貴殿は何も知らぬ兵を手にかけられるか。」
「なんだと?」
「今の王が編成している直々の軍は、あいつが集めた殺しを楽しむ集団や犯罪者。だが、暗夜に残る兵達の大半は違う。彼らは、王を本物だと思い、恐ろしくとも国や家族、仲間を守る為にあそこに居る。その兵を、貴殿は討てるか?そして、白夜においてもそうだ。いくら王子の名とはいえ、暗夜に恨みを持つ者は多い。そんな暗夜と共闘するといった王子をどう見るか。だったら、王が偽物だというのをすべての者に教えればいい。」
「……けど、それには場所が限られるわ。謁見の間にも限度がある。もっと広いところにしないと……」
アクアがあの場を思い出す。
フードの彼女はリョウマを見て、
「あれは移動できるか?」
「……可能だとは思うが……」
「なら、広場がいいだろうな。敵を討つのにも便利だ。」
「確かにそうだが……」
リョウマは周りを見る。
崩壊した街の姿。
「無論、できればここの復旧と護衛も頼みたい。いくら必然的に、こうなる運命だったとはいえ、変えられたはずの運命でもあった。それをできなかった時点で、ここは何とかしたい。」
「また必然ですか……」
カムイはフードの彼女を見る。
彼女はカムイの方を向き、
「そうだ。この時点では、白夜も暗夜も敵のままだった。だが、その必然は変わり、手を取り合った。なら、ここは戦火になるはずはなかったのだ。けど、その必然は来てしまったのは、私の考えが足りなかった。」
「……あの、アベルと言ったあの黒騎士。あの彼が言う『あの子』とは、あなたのことですよね?だったら、この夜刀神はあなたのお父様の刀何ですよね?なのにーー」
フードの彼女は長剣を素早く抜き、カムイの首元に触れるところに刃を向ける。
「……今は、あの黒騎士の言葉は忘れろ。答える気があれば、向こうで教える。」
剣をしまう。
レオンが警戒しながら、フードの彼女を見て、
「とりあえず、僕の隊は彼女の言う通り、ここの復旧をするよ。」
「それは、僕の部隊も手伝う。兄さんと姉さん、サクラの部隊を白夜に戻る。玉座を動かしたりするのに、人手は多いほうがいいからね。白夜の守りはユキムラがいるけど……」
「それは、わらわとユウギリが受け持とう。」
「白夜の事は、任せてくださいな。」
オロチとユウギリが名乗りを上げる。
そこにもう一人、
「もちろん、私らの部隊も普及作業をやるよ。」
飛竜使いクリムゾンが前に出る。
そして腰に手を当て、
「私はついてくけどね。」
「はい。では、みなさんお願いします。」
カムイは頭を下げる。
フードの彼女は部隊の者達が消え、リョウマ達だけになると、
「さて、肝心な事は詳しくは言えない。味方の中に、敵の目や耳があるからな。今は互いに疑っていても仕方がない。本人には自覚がない者、それを無意識に押さえ込む者、押さえ込んでいる者といる。だったら、ある程度は口に出しておけば、対処はできる。」
「……そうですね。でも、わたしはみんなを信じています!きっと大丈夫です!さて、ノートルディア公国に向かいましょう。」
カムイは元気よく歩き出した。
他の者達もそれに続く。
フードの彼女はカムイの後ろを歩く、ギュンターを見てから歩き出す。
そしてレオンとタクミを見て、
『……さて、あの二人は和解できるか?』
彼らは進む。
白夜と暗夜との共闘。
真の敵を討つためにも、彼らは進見続ける。