ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

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第十四話 虹の賢者

若き黒き騎士は想い続ける。

幼い頃、親から王家の命令が下された。

ある城に行き、王女の遊び相手をする事。

けれど、決してその王女の事を外に漏らしてならないと。

 

自分の会った王女は、体の弱い自分よりも年下の子。

記憶が曖昧で、彼女の話す事は自分の故郷(暗夜)にない事ばかり。

何となく分かった気がした。

壁に覆われ、隔離された城。

彼女は暗夜の人間では無いと。

けれど、彼女と共にいる時間は楽しかった。

 

ある日、暗夜の第一王子に会った。

彼女は、彼に誰かを重ねていた。

第一王子は戸惑いながらも、何かに償うかのように彼女に接していた。

しばらくして、今度は暗夜の第一王女がやって来た。

彼女は愛おしそうに、けれど少し憐れむように彼女に接する。

そして、城に来るたびに大量のお菓子を持って来る。

自分は彼女(あの子)と共にそれを食べる。

 

あの子はいつも、外を見ていた。

暗い空を見ながら、いつになったら晴れるのか。

そう呟いていた。

彼女は外に出たがっていた。

その瞳は、どこかに帰りたいと想わせる。

自分は彼女を連れて、こっそり城を出た。

それが悲劇の始まりだった。

外に出たら、白夜の忍びがいた。

まるで、ずっと機会を伺っていたかのように。

彼女の前に膝を着き、彼女を王女と呼び、助けられずにいた事を詫びていた。

彼女は涙を流し思い出した。

自分が白夜の王族だという事を。

彼らの手を取ろうとしたが、そこに暗夜の第一王子が兵を連れてやって来てしまった。

 

あの子は泣きながら、懇願した。

ーー国に返してくれと。

みんなの元に返して、と……

 

白夜の忍びに連れ去られ、自分は発見した。

白夜と暗夜の争った跡。

そして、双方の返り血を浴び、放心状態の彼女。

その彼女の前にはフードを深く被った者がいた。

その者は自分を見ると言った。

 

「……カムイを守ってくれ。」

 

そう言うと、その者は走って行った。

第一王子が駆け付け、血で汚れたあの子を抱きしめる。

しばらく経って、自分たち一族全員の死刑が決まった。

けれど、それを止めてくれたのが第一王子と放心状態だったあの子だった。

自分たち一族は死刑を免れた。

けれど自分は、あの子の側からは降ろされた。

あのフードの者の言葉が残る。

自分は、彼女を守りたい。

友と呼び、自分を助けてくれたあの子を。

必ず、再び会いに行く。

そのためにも強くなる。

今度は自分の手であの子を守れるように……

 

 

カムイ達はノートルディア公国に向かう為、港町ディアにやって来た。

 

「ここが、港町ディアですか?」

「ええ。ノートルディア公国行きの船を探しましょう。」

 

と、馬の鳴き声と走り音がこっちに向かって来る。

そして、馬を落ち着かせる。

 

「やっと見つけたぞ、カムイ!久しぶりだな!」

 

そこには馬から降りる黒い甲冑を来た暗夜兵の青年。

カムイは目をパチクリした後、

 

「え……?えっと?」

「やっと会えて嬉しく思うぞ!この日の為に、俺は王城騎士までに力をつけたんだ。今度こそ親友の俺が、お前を守ってやるからな!」

「え?親友?あなた……が⁈」

「……もしかして覚えていないのか?幼い頃、お前と共に居たんだが……それもそうだよな。俺のせいであんな危険な事に合わせてしまったからな。」

 

と、頭を手に当てて眉を寄せる彼。

そこに、マークスがやって来る。

 

「ん?そこにいるのは、サイラスか。」

「マークス王子。ご無沙汰しております。」

 

サイラスと呼ばれた彼は、頭をさげる。

カムイはマークスを見て、

 

「マークス兄さんは、彼を知っているのですか?」

「ああ、そうか……カムイ、覚えてないか?サイラスはお前の遊び相手として、城に連れられてきたのだが。」

「そ、そうなんですか?」

「……ああ、カムイがあそこに置かれて少し経ったくらいだからな。カミラも少しだが、サイラスとは関わりがある。」

「そう、なんですか……でも、私は覚えてなくて。」

 

カムイが視線を落とす。

 

サイラスと呼ばれた彼は、カムイの遊び相手として北の城塞に連れてこられたらしい。

王城騎士という事は強い。

 

「それは仕方ない。俺のせいでカムイは白夜での記憶が戻ってしまったからな。」

「え?」

「外の話をするお前は、暗夜にはない事ばかりだった。それで俺はなんとなく気づいた。暗夜の人間じゃないと。けど、お前は無意識だったんだ。だから俺は、この暗夜を教えようと思った。城の外に連れ出したんだ。そしたら、白夜の忍びに会った。それをきっかけに、お前は白夜の事を思い出してしまった。だが、お前は白夜と暗夜の両方の戦闘を見た。おそらく、幼いお前は耐えられなかったんだろうな。しばらく放心状態だった。そのこともあって、俺はお前の側から降ろされた。一族まとめて死刑になるところを、マークス王子に救われたんだ。何より、放心状態になってしまったお前に救われた。だからこそ、今度は俺自身の力でお前を守る為にここに来た。」

「……すみません。」

「お前が謝ることじゃない。それにな……俺には、『騎士の誓い』がある。救われたこの命は、守りたいものの為に使う。その覚悟はとうにしている。俺は、俺のしたいようにしたんだ。」

「……分かりました。これからよろしくお願いします、サイラスさん。」

「おお、任せといてくれ。」

 

サイラスはバッチコイという顔で、カムイを見た。

アクアがカムイを見て、

 

「話は済んだみたいね。サイラス、私はアクア。よろしく。」

「はい。えっと、暗夜の王女様ですよね。話は聞いています。サイラスです、お願いします。アクア様。」

「……じゃあ、私たちは船を探してくるわ。行きましょう、カムイ。」

「はい。」

 

アクアとカムイは歩いていく。

サイラスはマークスを見て、

 

「申し訳ございません、マークス王子。本来なら、こうしてカムイの前に俺がいるのも嫌でしょうが……」

「いや、私は嬉しく思う。カムイの為にも、よろしく頼むぞ。」

「はい。」

 

二人も、船を探しに行く。

一方、リョウマ達の方には二人のメイドが来ていた。

 

「白夜王家の方ですね。私たちは、カムイ様が北の城塞にいた頃にお世話係として、共に居ました。私はフローラ、隣はフェリシアと申します。カムイ様のお力となる為、参りました。」

「……カムイの?」

 

リョウマは辺りを見て、カムイを探すがいない。

そこに、サクラとエリーゼがやって来た。

 

「あ、あなた達は……」「あれ?フローラとフェリシアだ。」

 

二人は彼女らを見ていた。

リョウマは二人を見て、

 

「うむ。二人が知っているのなら、間違い無いだろうな。二人は、カムイの為に来てくれたようなのだ。」

「そうなんだ!ありがとう‼︎お姉ちゃんきっと喜ぶと思う!」

「はい、これからよろしくお願いします。」

 

フローラとフェリシアは頭をさげる。

二人も、船を探すのを手伝うのであった。

 

ーー透魔王国、ある廊下にて。

 

「お初にお目にかかります、我らが軍師殿。私は、カインと申します。これより、正式に透魔軍に加わります。」

 

白騎士カインが透魔軍師ルフレに頭を下げる。

彼女は笑顔のまま、

 

「……お初にお目にかかります、カイン殿。聞けば、アベル殿の兄君とか。」

「ええ、アベルは私の弟です。」

 

彼は顔を上げる。

彼女を見つめて、

 

「……あなたは似ています。」

「誰にです?」

 

透魔軍師ルフレは、ジッと白騎士カインを見つめる。

彼は懐かしむように、

 

「あなたの身に纏う独特の雰囲気はどこか、かつての主のご友人を思い出します。それに、その容姿もまた……あの赤子を思い出す。名は確か……『カムイ』様でしたかな。」

「……そうですか。それなら、歌姫の元にいますよ。『カムイ』は、ハイドラ様の大切な駒であり、器の一つですから。」

 

そう言って、彼女は目線だけを斜め後ろに向ける。

そこには、黒騎士アベルが身を隠して聞き耳をたたている。

それは白騎士カインも気づいているだろう。

 

「ルフレ殿、あなたの策戦を見ました。どれもこれも、その年で考えたとは思えませんな。本当に、そのお姿のご年齢で?」

「ふふ、私の年齢は秘密ですよ。さて、カイン殿。私はこれで失礼します。まだ考えたい策戦もありますので。それと、これはアベル殿にお渡し下さいな。」

「ええ、確かにお預かり致しました。渡しておきますね。」

 

透魔軍師ルフレは書類を渡して、彼の横を通って行く。

 

「では、また後で。」

 

彼女は長い廊下を歩き、

 

『……全く、アベル殿はどちらも信用していないな。いや、それ以前の問題か。』

 

 

カムイ達はノートルディア公国行きの船を見つけ、航海を始めた。

サイラスやフローラ、フェリシアに加え、ニシキとフランネルも正式に加わった。

船では、白夜と暗夜関係なしに話しで盛り上がる。

そんな中、アクアは海を眺めていた。

 

「アクア姉様。」

 

アクアが振り返ると、そこにはサクラとエリーゼがいた。

 

「なにかしら?」

「と、特に用というわけではないのですが……」

「えっとね、アクアお姉ちゃん。向こうで、お兄ちゃん達が盛り上がってるの。アクアお姉ちゃんもどうかなって。」

「……そうね。もう少し、したら行くわ。今は海を眺めていたいの。」

「うん、わかった。待ってるね、アクアお姉ちゃん!行こ、サクラ!」

「は、はい、エリーゼさん。では、また後で、アクア姉様。」

 

二人は楽しそうに駆けていく。

アクアはそれを嬉しそうに微笑み、

 

「また、仲良くなれてよかったわ。サクラ、エリーゼ……」

 

あの二人は、もう仲の良い友達となった。

王女として、そしてただの一人として、友となったのだ。

アクアは海を見つめる。

 

「……いつかきっと、またあの時のような……白夜と暗夜が平和になる日がやって来る。だからこそ、今度は本当の平和を。……待っていて。私たちは、あなたを必ず救ってみせるわ……」

 

そしてアクアは、胸のペンダントを優しく、それでいて強く握りしめる。

 

今回は無事航海が進み、ノートルディア公国に着けた。

船を降り、虹の賢者について聞き込みを行っていた。

リョウマやマークスは、別の方法で虹の賢者を探しに行ていた。

カムイはアクア、リリス、そしてフード彼女と共に聞き込みを行っていた。

ある家の前に座っていた老人と話をした。

それは、カムイがある情報を手に入れたからだ。

 

「このノートルディア公国まで、よく来なすったのう。異邦の旅人殿。して、わしに何用じゃ?」

「はい。公国内では、あなたが最も『虹の賢者』について詳しいと聞きました。お願いします。賢者様の居場所を教えて下さい。」

 

すると、老人は顔付きが変わる。

カムイをジッと見つめ、

 

「……ふむ。お前さんが持っている武器は夜刀神じゃな?」

「え?は、はい。そうです。よくご存知で。」

「なぜ、賢者に会いたい?お前さんも力を求めるのか?」

「いえ、私は力を望んで、ここに来た訳ではありません。賢者様に、お聞きしたいことがあって来たんです。」

 

すると、老人は意外そうな顔をして、

 

「……ほう、知識を求めるか。なるほどのう。ノートルディア山の頂に、『七重の塔』が建っておる。賢者は、その塔の最上階にいるらしい。もっとも、ノートルディア山は高峰じゃ。ほとんどの者は、塔にすら辿り着けんがな。わしが知るのは、これくらいじゃ。」

 

カムイは老人に頭を下げてから、

 

「ありがとうございます。賢者様に会うことが出来たら、必ずここにまたご挨拶にきます。」

「ああ、くれぐれも死なんようにな。」

 

老人はカムイ達を見送る。

カムイはみんなと合流した。

リョウマとマークス、その臣下とは合流はできなかったが、老人から聞いた事を話す。

彼らは一先ず、ノートルディア山に登る事にした。

フードの彼女に関しては、途中から抜けた。

彼女は、『カムイが賢者様に会う時に、いる』と言って、離れたのだ。

 

カムイ達は山脈を登っていると、

 

「くっ、確かにキツイ。こんなの初めてだよ。」

「おや?もう泣き言かい、タクミ王子。」

 

タクミが汗を拭いながら言うと、隣でレオンが鼻で笑いながら言う。

タクミはムッとすると、

 

「そう言う、レオン王子も辛そうだけど?」

「僕は平気さ。これくらい!」

 

二人は睨み合う。

カムイは汗を拭いながら、

 

「ふふ、お二人とも仲が良いですね。」

「「どこが⁉︎」」

 

タクミとレオンは声を合わせて言った。

そしてタクミは腕を組み、

 

「大体、僕はカムイ姉さんを心配して言ったんだ。体の弱い姉さんじゃ、辛いだろうからね。」

「それもそうだ。カムイ姉さん、ここで休憩を取ろう。」

 

レオンも頷き、カミラがカムイの顔を見て、

 

「そうね。カムイの顔も、少し辛そうだわ。」

「ああ、そうだ!カムイ、こっちの日陰に入るといい。」

 

ヒノカが、日陰を見つけてカムイを引っ張る。

サクラとエリーゼが、水とハンカチを渡す。

 

「姉様、お水です。」

「はい、お姉ちゃん!」

「あ、ありがとうございます。ですが、皆さんもちゃんと休憩して下さいね。」

 

カムイ達は休息を取る。

それから、再び山を登り出す。

と、タクミが先の方を見て、

 

「ん?……見て、塔が見えてきたよ。」

「本当です。あれが、七重の塔ですか……という事は、頂上が近いようですね。頑張りましょう!」

 

カムイは拳を握りしめ、腕を上げる。

 

「賢者様に会うには、圧倒的な強者ではないといけないようですので!張り切って行きますよ!」

 

カムイの足取りが早くなる。

タクミとレオンがその後ろを追って、

 

「姉さん、張り切るのは構わないけど気を付けて!」

「そうだよ、姉さん。何が起こるか分からないんだから!」

 

他の者達も、それぞれ互いに見合って後を追う。

そして、彼らが塔の前に立つ。

 

「よく来たな、異邦の者達よ!虹の賢者に会いたくば、七つの試練を突破せよ。そして、最上階にある扉を開くがよい!」

 

塔の上から、一人の陰陽服を来た術士が叫ぶ。

カムイは扉に手を掛け、

 

「行きますよ、皆さん!」

 

カムイは扉を開ける。

彼らは中へと進む。

 

ーー透魔王国、とある部屋。

そこは長い机があり、そこの一席に透魔軍師ルフレは座っていた。

斜め右前には、フードで顔を隠している白き王。

その奥には、影で見え辛いが白き巫女。

その向かえには、フードで顔を隠している女魔術師。

透魔軍師ルフレから見て左の方には、黒騎士アベルと白騎士カインがいる。

透魔軍師ルフレは机に肘をつき、手のひらを組む。

 

「なるほど……シュヴァリエ公国の事は大体分かりました。それにしても……アベル殿は、いささかお遊びが過ぎたのではないですか。いくら、お弟子さんが可愛かったからと言って……」

 

黒騎士アベルは冷たい笑みを浮かべ、

 

「ええ、可愛い弟子ですよ。可愛いからちょっかいを出してしまうんです。……そして、早くあの子の絶望する姿見たい。」

「……まぁ、良いですよ。それより、あの資料は見ていただけましたか?」

「ええ。流石は、我らの軍師殿だ。とてもいい策戦でした。ああ、楽しみだ……あの子の絶望する姿が!」

 

彼は右手で顔を覆って笑い出す。

透魔軍師ルフレは苦笑した後、真剣な顔つきになる。

 

「と、いう訳で、アベル殿のフライングがありましたが……我らのハイドラ様への良き余興ぐらいにはなるでしょう。時期に、白夜と暗夜の空が変わる日がやって来る。カムイ達一行が、この国に入って来る。おそらく、姿を隠している彼も、そのとき動き出すでしょうし……。我々も、準備が必要なのですよ。その為に、皆様方にも動いてもらいます。」

 

彼女は笑みを浮かべる。

女魔術師は透魔軍師ルフレを見て、

 

「では、あなたの言うその準備とやらが終わるで、我々は動かないと?」

 

他の三人も、透魔軍師ルフレを見る。

彼女は笑顔のまま、

 

「ええ。我々は足止めですから。」

「足止め?」

「ふふ。暗夜王には、向こう側で動いてもらいます。カムイ達一行が、こちらにいる間に戦力を整え、白夜を落とす為の。彼らは必ず、こちらに来た後、向こうに戻るでしょうし。それに、カムイ達一行には、やる気を出してもらわなければ……我が王の為に。」

 

彼女は深い笑みを浮かべ、握りあわせる手を強く握りしめた。

そして立ち上がり、

 

「では、皆さん。この資料には目を通しておいて下さいね。後、あなたにはまた、暗夜王へこの事を教えておいて下さい。」

 

そう言って、女魔術師を見た後歩いて行く。

部屋を出て行き、

 

『さてっと、これから忙しくなる……』

 

 

カムイ達は一階から力を合わせて、幻影兵()と戦い登っていく。

階を上がるごとに、試練の難易度は上がっていく。

最上階まで後少しのところで、カムイ達は驚く。

それは先客が敵と戦っていたからだ。

黒い盗賊姿の男性だ。

 

「はぁ……そろそろ、最上階か?力を得る為に、ここまでさせるなんて……虹の賢者様はガード固い事だな。けど、諦めるわけにはいかない。俺は力を手にして、故郷を再建させるんだ。その為なら、なんだってしてみせる!殺しも、盗みも、略奪も!そう……国が滅びたあの日から俺は、そうやって生きてきたんだ‼︎」

 

そこにもう一人いた。

こちらは顔を隠した魔術師の少女だった。

 

「煩わしいわね。どうしてこんなに兵がいるのよ。戦乱を避けようと思って、この地まで来たのに迷いこんだここで、こんな事になるなんて意味がないじゃない。この身は、誰にも見せるべきではないのだから……私は、ずっと一人の方がいい。一人で生きていくのよ……」

 

カムイは駆け出していた。

少女の方に向かい、彼女に振り下ろされる剣を弾く。

そして、彼女を見る。

 

「私は、カムイと言います。えっと、あなたはここに迷い込んだのですよね。なら、私たちが保護します。子供が一人でいては危険です。こちらにーー」

「いらないわ、保護なんて。私は子供ではないもの。」

 

カムイが手を差し出したが、少女はカムイを見上げて睨んだ。

カムイは少女の言葉に困惑し、

 

「え?でも……」

「お嬢ちゃん、耳が遠いの?必要ないと言っているのよ。」

 

彼女はさらに睨んで言う。

カムイはさらに困惑し、

 

「えぇ⁉︎お嬢ちゃん⁈どう見ても、私の方が年上ですよね⁉︎」

「私、面倒事はごめんだわ……。だから、私には関わらないで。私はただ、誰の目にも触れず一人で生きていきたいだけなの。」

「一人?あなた、一人なのですか?ご家族は?」

「ええ。そんなもの……とっくの昔にいなくなったわ。みんな、私のことを気味悪がって離れていった……だから、私は一人よ。今でも、これからも、ずっと……」

 

少女は瞳を閉じ、呟いていく。

カムイは彼女をジッと見て微笑み、

 

「そうですか。じゃあ、私たちと共に来ませんか?いえ、共に行きましょう。」

「はぁ?何言ってるの。人の事情も知らないくせに、仲間に招き入れるだなんて……貴女正気?」

 

少女はもの凄い目で睨む。

カムイは頷き、

 

「はい。確かにあなたの事情はわかりません。ですが、仲間にはなれるでしょう?誰にだって、人には言えない事情や秘密はあるものです。現に、私の仲間にはそういう方もいますし、私にもあります。それでも、私を信じてくれます。だから私は、あなたを一人にはしたくないのです。」

「……ふうん。若いのに、知った風な口を利くじゃない。」

「はい。それに、子供を一人にはしとけません。」

「もう、子供じゃないわよ。……いいわ、仲間になってあげる。あなたを信じてあげるわ。そして、あなたも私を信じて、理解しなさい。あなたには、理解できる気がするの。」

 

彼女は深呼吸し、

 

「私の名は、ニュクス。この力、あなたの好きに使いなさいな。」

「はい。よろしくお願いします、ニュクスさん。」

 

カムイは彼女を連れて、仲間の元に行く。

タクミがカムイを見て、

 

「姉さん、どこに行ってたの。」

「はい、新しい仲間を連れてきました。ニュクスさんです。」

 

カムイが連れてきたニュクス(少女)を見て、タクミが眉を寄せる。

 

「子供じゃないか。」

「黙れ、小僧。私は子供ではない。さて、それとなく私も働くか。」

 

ニュクスは歩いて行く。

カムイは苦笑いし、

 

「彼女にも、何か理由があるみたいなんです。私も行きますね。」

 

カムイは剣を構え、敵に向かっていく。

と、敵と交戦していたカムイは先客だった男性を見つけた。

彼が背後から斬られそうになるのを見て、

 

「危ない!」

 

その剣を受け止める。

男性は驚き、カムイを見る。

カムイは敵を吹き飛ばし、男性に向き直る。

 

「大丈夫そうですね。よかった。あの、あなたはなぜお一人でここに?盗賊……のようですが、宝でも盗みに来たのですか?」

「んにゃ、俺が欲しいのはそんなものじゃない。虹の賢者の力だ。俺には力が必要なんでな。憎きフウマ公王を倒し、俺の故郷を再建するためのーー」

「フウマ公王……!それは確か、あの時の……」

 

カムイは眉を寄せて思い出す。

男性は真剣な顔つきで、

 

「なんだ、お前。奴を知っているのか。」

「はい。彼は、もうこの世にはいません。私たちが討ち倒しました。」

「なんだと⁉︎」

 

彼は目を見張る。

だが、一呼吸おき、

 

「そうか……では、俺たちコウガの民の仇は、あんたたちが討ってくれたって事だな。礼を言う。俺の名は、アシュラ。フウマ公国に滅ぼされた国の忍びだった者だ。あんたは?」

「私はカムイです。」

 

男性はカムイの名を聞くと、先程とは違う驚いた顔になり、

 

「ん?カムイ……?もしかして、あんたが白夜王国から連れ去られたっていう王女か?」

「……私の事をご存知で?」

「ははっ。俺の情報網を舐めるなよ。あんたの噂は色んなところから聞いてるぜ。なんでも、伝説の刀を持ち、白夜王国と暗夜王国を平和へと導こうとしているとか。」

「ええ。私たちは、真の敵を倒すために闘っています。だから、ここに来たんです。賢者様に会い、この世界を救う方法を聞くために。」

「なるほどね。あんたの事情は大体わかった。それなら、俺も力を貸そう。」

「本当ですか!」

「ああ。あんたには、フウマの公王をぶっ潰してくれた恩がある。それに、あんたについていけば、俺の野望も果たせるやもしれんしな。」

「分かりました。とても心強い仲間です。ありがとうございます、アシュラさん。」

「ああ、俺に任せな。これからは、あんたが俺の主だ。よろしく頼むぜ、カムイ様。」

 

カムイは新たな仲間、アシュラと元に敵を倒していく。

最上階の扉を開き、カムイ達は中へ入る。

と、扉が閉められる。

炎が灯り、目の前には陰陽姿の幻影兵が現れる。

 

「よくぞ最上階まで辿りついた、勇敢な者たちよ。試練の終わりは近い。この私、塔の番人たる我を倒せば賢者への扉が開かれるであろう。」

 

そう言うと、多くの幻影兵が現れる。

カムイは剣を構え、

 

「行きますよ、みなさん!」

 

カムイ達は挑んで行く。

カムイは剣や槍、斧を受け流す。

目的は、敵の頭を討つこと。

仲間のサポートを受け、カムイは奥へと突き進む。

そして、番人の術を避けて剣を構える。

 

「行かせて貰います!」

 

カムイは剣を振るう。

敵の術を避けては、前へと進む。

カムイは最後の攻撃を避けて、番人に一撃を与える。

彼は膝を着き、

 

「見事……そなたこそ、六番目の勇者に相応しい。」

 

そう言うと、彼は消える。

他の兵達も消える。

エリーゼが笑顔になり、カムイの元に駆けていく。

 

「すごーい!とうとう最上階だね!その扉の向こうに、虹の賢者様がいるのかな?」

 

カムイの斜め後ろにある扉を見る。

タクミが眉を寄せて、

 

「いや、まだ油断は禁物だよ。扉の向こうから、妙な気を感じる。」

「タクミ王子の言うとおりだ。これは高位魔術か?」

 

レオンも眉を寄せる。

カムイは頷き、

 

「分かりました。」

 

カムイは慎重に扉に近づき、扉に手を当てる。

深呼吸して、

 

「あ、開けます!」

 

扉を開く。

辺りは光に包まれた。

 

 

フード彼女は、カムイ達と別れた。

その彼女はある場所へと向かっていた。

そしてある老師の前に立つ。

 

「来たようじゃな、待っておったよ。」

「……やはり、あなたには隠せないか。」

 

フードの彼女は仮面を取る。

老師にだけ、その顔は見える。

その彼女の顔を見て、老師は瞳を細める。

 

「……お前さんは禁忌を犯してまで、救いたいんじゃな。」

「約束した。その為に、私は何度も犠牲を払ってここにいる。その為なら、この身は捧げる。今回が、私にとっては最後の機会……だからこそ、私はやり遂げねばならないのだ。」

 

彼女は右手を握りしめる。

老師はジッと彼女を見つめ、

 

「……お前さんの覚悟は見て分かる。幾度となく、己の身や大切なモノを対価として支払ったのだろうな。だが、お前さんは気づいとるはずじゃ……お前さんは、あのカムイを殺さぬ。」

「だろうな。初めて会った時も、再びあいつの前に出た時も……向けた刃は鈍る。けれど、必要なら私はやる。その為に己自身を捨てて、ここにいるのだから……。全ては約束を果たす為に、私は存在する。」

「ふむ……」

「……だから私は、あなたの命さえも利用する。怨むのなら、私を恨んでくれて構わない。」

 

彼女は仮面をつける。

老師は笑みを浮かべ、

 

「恨みはせぬよ。お前さんは、お前さんの道を信じればよいのじゃ。のう、ーーー。」

 

彼女は背を向け、拳を握りしめる。

しばらくして、リョウマとマークスがやって来た。

 

「やはり、ここにおられましたか……賢者様。」

「お探ししました。」

 

リョウマとマークスは、フードの彼女の側にいた老師に頭を下げる。

老師は嬉しそうに微笑み、

 

「うむ。リョウマ王子に、マークス王子か。あの時より、随分と成長しておるの。して、何の用じゃ?」

「はい。賢者様なら、竜について何かご存知でないかと。」

「我が父、スメラギ王がそのようなメモも、残しております。」

 

二人は老師を見る。

フードの彼女は彼らの後ろを見て、

 

「それは、カムイ達と共に聞いてはどうだ。」

 

彼女の言葉に、リョウマとマークス達は後ろを見る。

そこに魔法陣が浮かび、カムイ達が現れた。

 

カムイは瞳を開けると、そこは先ほどまでとは違う場所だった。

そして、目の前には兄二人とその臣下達がいた。

 

「え⁈ここは……それに兄さん⁉︎」

 

戸惑っているカムイの後ろから、

 

「これは転移魔術か……」

 

レオンがため息をつく。

と、リョウマ達の間から老人が歩いてくる。

 

「ふぉっふぉっふぉっ。よく帰ってきたのう、お前さんたち。」

「えぇ⁉︎あなたは、さっきのおじいさん⁈ど、どうして?」

 

カムイは目を見張る。

老人は微笑み、

 

「あの塔の最上階の扉を開けると、ここに転移するのじゃよ。試練を乗り越え、よく辿り着いた。お前さんたちこそ、六番目の勇者じゃ。」

 

と、最後の方は真剣な顔で言う。

カムイはジッと老人を見て、

 

「ま、まさか……あなたが虹の賢者様だったのですか⁈」

 

そう、その老人とはフードの彼女と話していた者であり、リョウマとマークスが賢者と呼んだ者。

老人は光に包まれ、姿が変わる。

杖を持ったヒゲの長い老師へと。

 

「いかにも。虹の賢者とは、わしのことじゃ。聞きたいことがあるのじゃろ。さあ、なんでも言うてみい。それは、リョウマ王子とマークス王子が知りたい事でもある。」

 

カムイは頷き、

 

「はい。あなたに聞きたいのは竜の居場所です。私たちはどうしても、イザナ公王は、竜に会えと予言を受けました。だからこそ、私たちは竜に会いたいのです。そして、この戦争を終わらせる方法を聞きたい。白夜と暗夜の無益な戦争を終わらせる為なら、なんでもします!」

「ほう、戦争を終わらせる、か。……なるほど。では、竜の居場所を教えてやろう。その前に、その夜刀神をわしに貸してごらん。」

「は、はい。」

 

カムイは腰から夜刀神を抜き、渡す。

虹の賢者はそれを受け取り、その刃に触れる。

 

「ーー我は神刀を鍛えし者、禁忌を犯せし者、伍色を紡ぎし者……我が名に応えよ、『炎の紋章』よーー」

 

そう叫ぶと、夜刀神が光出す。

その光が収まり、虹の賢者は刀をカムイに返す。

 

「これで、お前さんの刀は力を得たはずじゃ。」

「ありがとうございます!もしかして、これがフウガ様が言っていた『炎の紋章』ですか?」

「いんや、違う。炎の紋章を完成させるには、五つの神器が揃わねばならなん。そして、心を通わせねばならぬ。それが出来た時、炎の紋章は伝説の『ファイアーエムブレム』となる。」

「『ファイアーエムブレム』……」

「ああ。それを得なければ、お前さんたちは、強大な敵には勝てんだろう。だが、案ずるな。自分の信じる道を真っ直ぐに進めば、完成する。」

 

虹の賢者は頷く。

が、突然苦しみだす。

 

「うっ‼︎」

「賢者様⁉︎」

 

カムイは虹の賢者を支え、

 

「サクラさん、エリーゼさん!治癒をお願いします!」

「は、はい!」「う、うん!」

 

二人が駆け寄るが、虹の賢者は手を上げて止める。

 

「やめておけ。わしはもう、寿命じゃよ……」

「え?」

「それに、『人』の魔法は……わしには効かん。」

「『人』の魔法?もしかして、あなたは!」

「ああ。このわしが、お前さんの探していた『竜』じゃ……」

 

カムイはハッと思い出して、カムイは奥で自分達を見るフードの彼女を見る。

 

「そうです!あなたなら、賢者様を癒せるのでは?前にリリスさんを治してくれたように!」

「無理だ。私の治癒は限られた者だけだ。」

「そんな……」

 

カムイは眉を寄せる。

虹の賢者は語る。

 

「よいのじゃ。……遥か昔、十二の竜はみな野心にあふれ世界の覇権を巡って争った……わしは夜刀神や神器を創り、竜の戦いに人間たちも巻き込んでしまった。その罪滅ぼしができるまでは、死にきれんかったのじゃ……」

「そんな……では、巡り巡ってこの夜刀神は白夜に……あなたのお父様の刀が……」

 

カムイは再びフードの彼女を見る。

彼女は無言だった。

虹の賢者はカムイを見つめ、

 

「お前さんの夜刀神には、わしの最後の力を込めておいた。カムイよ、その夜刀神で……自分の道を切り開くのじゃ。そしてカムイの仲間たちよ、彼女を支え共に歩むのじゃ……」

 

虹の賢者は瞳を閉じる。

フードの彼女は静かに頭を下げた。

リョウマやマークスは拳を握りしめ、悲しみを堪える。

カムイは虹の賢者を降ろし、

 

「賢者様……兄さん、賢者様を弔いましょう。」

「そうだな。」「ああ。」

 

彼らは急いで準備する。

 

ーー暗夜王国の王の間にて、

 

「ガロン様、報告致します。カミラ王女とエリーゼ王女は、カムイ討伐に失敗。その後は、カムイと共に行動していおります。氷の部族も姿を消し、現在は行方を捜しております。レオン王子は任務中に行方が分からなくなっておりましたが、マークス王子と共に行動しております。なお、マークス王子と白夜王国第一王子リョウマ討伐は失敗。彼らはどうやら、ノートルディア公国に向かっている模様です。」

 

王座に座る暗夜王ガロンに、報告をする暗夜軍師マクベス。

その彼の声は震えている。

暗夜王ガロンは頬杖をつき、

 

「……やはり、ノートルディア。虹の賢者に会いに行ったのだろう……マクベス。」

 

彼は冷たい目で、暗夜軍師マクベスを見据える。

彼は震えながら、

 

「は、はい……」

「氷の部族は捨てておけ。どうせ、あの部族は何もできはせぬ。お前は、ガンズと共に白夜の進軍を考えよ。カムイ討伐は、その時に行なう。」

「わかりました!」

 

暗夜軍師マクベスは頭を深く下げて、出て行く。

暗夜王ガロンは立ち上がり、両手を広げる。

 

「く、くはははは!白夜も、暗夜も、滅べ!世界に破滅を‼︎ふははははは‼︎」

 

 

カムイ達は皆で虹の賢者の墓を作り、弔う。

長い黙とうの後、マークスはカムイを見て、

 

「カムイ。」

「なんですか、兄さん。」

「実は、お前に知らせがある。賢者様を探している最中に見つけた新たな仲間だ。」

 

マークスの見る方には、鎧の重層騎士と女性騎士がいた。

二人はカムイに近づき、

 

「初めまして、カムイ様。私は、シャーロッテと言います。以後、お見知りおきを。」

「俺はブノアと申します。これから、お願いいたします。」

 

頭を下げる。

マークスはカムイを再び見て、

 

「彼らは先の戦いで、暗夜兵として戦っていた。だが、あまりにも理不尽な虐殺にも近い戦いに、刃を向けれなくなったそうだ。それが見つかり、兵を追い出されてしまったらしいのだ。行く当てもないとのことだったので、力になってもらう事にした。」

「そうですか。これから、よろしくお願いしますね。シャーロッテさん、ブノアさん。」

「はーい、喜んで♪」「お任せを。」

 

カムイは頭を下げる。

そしてカムイは、虹の賢者の墓に向き直る。

膝を着き、墓に触れて、

 

「……賢者様、ありがとうございました!いえ、いにしえの時代から生きた偉大なる竜よ。あなたの想い、あなたの力は決して無駄にはしません。」

 

カムイは腰の夜刀神の握りしめる。

そして立ち上がり、

 

「行きましょう、みなさん。無限渓谷へ!白夜と暗夜の空が入れ替わる日は、もうすぐです。」

 

彼らは港に向かう。

港に着くと、フードの彼女はカムイ達を見て、

 

「ここからは別行動だ。私は先にあちら側に行って、最終準備をしてくる。次に会うのは禁忌の国だ。」

 

そう言って、海の上に立つ。

カムイが彼女を見て、

 

「待ってください!」

「安心しろ、行けばわかる。」

「え?あ!」

 

カムイの困惑をよそに、彼女は水の中へと入っていった。

カムイはアクアを見る。

彼女は苦笑して、

 

「仕方ないわ。彼女らしいと言えばらしいもの。信じましょ、カムイ。」

「はい。そうですね、信じましょう。」

 

カムイ達は無限渓谷へと急ぐ。

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