数日が経ち、暗夜の第一王子マークスは暗夜城にいた。
隣には、紫の長い髪をフワッとさせた美しい女性がいる。
彼女は、マークスの妹のカミラ。
暗夜の第二王女であり、カムイとレオンの姉だ。
周りからは、冷酷で無慈悲な王女と言われているが、
二人は、王の謁見の間にいた。
目の前にいるのは、王座に座る暗夜王国の国王ガロン。
彼は頬杖をつき、
「マークス、カミラ。まずは此度の戦果、ご苦労だった。」
「ありがとうございます、父上。」「ありがとうございます、お父様。」
二人は頭を下げる。
顔を上げると、暗夜王ガロンは冷たく二人を見て、
「さて、お前達を直々に呼んだのは他でもない。カムイのことだ。」
「……カムイが、どうかしたのですか?」
「あやつを北の城塞から出す。話によれば剣の実力も、マークス、お前に引けは取らぬと聞く。そろそろあれも、此度の白夜との戦に出す。」
「ですが、父上!カムイは……いえ、あの子はあの城から出せば、病弱なあの子は持ちません。」
「そうですわ、お父様。あの子は城の護りで、身を守っているのですよ。それを戦に出すなんて……」
マークスとカミラは眉を寄せる。
だが、暗夜王ガロンは変わらず冷たい目で、
「構わん。どうせ死ぬ運命なら、戦場で散らしてやるのがせめてもの花よ。」
「ですが、お父様ーー」
さらに、抗議しようとするカミラを止め、
「解りました、父上。早急に、カムイを呼んで参ります。」
マークスは頭を下げる。
そして、カミラを連れて部屋を出て行く。
彼らが出で行くと、横で控えていた暗夜王国の軍師マクベスが、
「どうやらマークス様も、カミラ様も、此度のカムイ様進軍には反対のようですな。なんとも、
「…………我が神は仰った。これは必然だと。」
暗夜王ガロンは小さく呟く。
そして、彼を横目で見て、
「ガンズを呼べ。」
「かしこまりました。」
そう言って、軍師マクベスは下がる。
一人残っている暗夜王ガロンは、笑みを浮かべる。
「そう、全ては必然なのだ……」
ーーマークス達が部屋から出て、廊下を歩いていると、
「マークスお兄ちゃん!カミラお姉ちゃん!」
金色の髪を左右に結い上げた少女が駆けてくる。
二人は笑みを浮かべる。
マークスは彼女の頭を撫で、
「エリーゼ。今日も元気だな。」
「うん!」
少女はとびっきりの笑顔を向ける。
彼女はエリーゼ。
暗夜王国の第三王女である。
暗夜
だが、治癒の能力には長けており、幼いながらにも戦場に赴いている。
エリーゼは二人を見上げ、
「今からカムイお姉ちゃんのところに行くの?私も行っていい?」
「ええ、一緒に行きましょう。お兄様、私はエリーゼと後から行きます。」
「そうか。では、先に行っている。」
マークスは彼らと別れる。
一度、実室に向かう。
扉を開ける前に、剣に手をかけて抜く。
そして扉を開けた。
「久しぶりだ、暗夜の第一王子。」
「貴様!どうやってここに!」
彼の実室の机の上には、フードを深く被った者がいた。
マントから少しだが、体つきが解る。
小柄で、やはり女性のようだ。
そして、腰には一本の長いの剣が見える。
さらに足には、短剣や暗器が付いていた。
フード彼女は、彼の机の上にあった紙を戻し、
「それは言えないな。だが、貴殿のその表情を見る限り、私の言った通りになったのではないか?」
「…………父上には、何か理由があるのだ。あの子は城の外に出たがっていた。理由はどうあれ、外に出れるのだ。」
彼は握る剣に力が込む。
フードの彼女は机から降り、
「だから、戦場で死んでもよいと?」
「そんなことは思っていない!」
「貴殿が思ってなくとも、貴殿の王はそのつもりだ。あの王は、『カムイ』を殺したいのだ。それこそが、あの王が今まで『カムイ』を生かしておいた理由なのだから。」
マークスは眉を寄せて、フードの彼女を睨む。
「貴様は何を知っている!」
「全てだ。」
「全てだと?」
と、フードの彼女は振り下ろされる剣を避ける。
そして、次の突き出される槍をも避ける。
「マークス様、ご無事ですか‼︎」「マークス様の敵!」
マークスの前には、剣を構えた少年と槍を構えた少女が立つ。
マークスは少し驚き、
「ラズワイド、ピエリ……何故、ここに。」
「マークス様への報告に来たところ、何やら怒鳴り声が聞こえたものですから。」
「そしたら、マークス様剣を構えてるの。」
二人は、目の前のフードの彼女を睨む。
剣を構えた少年は、マーシナリーのラズワイド。
マークスの臣下である。
そして、槍を構えた少女はソシアルナイトのピエリ。
彼女もまた、マークスの臣下である。
フードの彼女は身構える。
「やはり、よい臣下に恵まれているな。暗夜の第一王子、全ては必然だ。だからこそ、『カムイ』を使って打ち壊さなければならない。」
フードの彼女は、彼らに向かって駆ける。
ピエリの槍とマークスの剣を避け、足に付いていた短剣を抜く。
ラズワイドの剣を受け流しながら、彼の耳元で囁く。
「そうだろ、召喚されし偽りの住人。」
「……君は⁈」
そのまま、フードの彼女は廊下の窓を破って行った。
ラズワイドがすぐに下を確認しだが、人影はおろか死体もなかった。
剣をしまい、
「申し訳ありません、マークス様。取り逃がしました。」
「いや、仕方ない。」
「悔しいの〜‼︎」
マークスも剣をしまう。
彼の横では頰を膨らませるピエリの姿。
マークスは眉を寄せ、
「お前たち、今回のことは他言無用だ。よいな。」
「わかりました。」「はいですの。」
マークスは二人の報告を聞き、書類を整理する。
と、机の上にあった紙を見つける。
『……水?……竜?』
マークスはその紙を懐にしまい、暗夜城を出た。
ーーカムイは、今日もレオンとお茶をしていた。
「もうじき、マークス兄さんたちも来るんじゃない?」
「そう、ですね。……レオンさん、私はこのままでよいのでしょうか。」
カムイは紅茶を置き、視線を落とす。
レオンも紅茶を置き、
「何が?」
「私だけ、
「でも、カムイ姉さんはこの城からは出られない。この城の加護がなきゃ、カムイ姉さんの体が危ないんだ。」
「それは……わかっています。一度、その禁忌を犯したから、私には幼い頃の記憶がない。本当に、危なかったとギュンターさんが言ってました。」
「そうだよ。僕も詳しくは知らないけど、カムイ姉さんは生と死を彷徨ったって聞いた。だからこそ、姉さんはこの城にいるべきなんだ。」
レオンは眉を寄せる。
だが、後ろから、
「……そうは言っていられなくなった。父上が、カムイをこの城から出すと言っている。」
「「マークス兄さん!」」
そこには、兄マークスがいた。
レオンはマークスに近づき、
「それは本当なの?」
「ああ。今回の白夜進軍に、カムイも参加させると。」
「そんな……」
レオンは拳を握り締める。
カムイも彼らに近づき、
「私は、外に出てもいいのですか?」
「……ああ。だが、条件がある。」
「条件?」
「カムイ、この私から一本取ることだ。」
「マークス兄さんから⁈」
「そうだ。でなければ、お前を出すわけにはいかない。」
カムイはジッとマークスを見上げ、
「わかりました。今、準備します。先に屋上に行っていて下さい。」
カムイはフローラ達の元へ行く。
レオンはマークスを見上げ、
「……兄さん、あれ嘘でしょ。」
「ああ……。だが、こうでもしない限り、あの子を救う手がないのだ。」
「……そうだね。」
二人は先に、屋上へと向かう。
カムイが剣を持って屋上に行くと、マークスはすでに剣を抜いていた。
カムイは覚悟を決めて、剣を抜く。
「マークス兄さん、行きます!」
「来い、カムイ!」
カムイは剣を振るう。
マークスはそれを受け流していく。
どれくらいそうしていただろう。
マークスはカムイの赤い瞳が光るのを見た。
そして、マークスが受け止めたカムイの剣が重くなる。
マークスも、剣に力を込める。
「はぁぁぁああ‼︎」
カムイは渾身の力を込めて、マークスの剣を弾いた。
彼の剣は地面へと落ちる。
「スッゴーイ!カムイお姉ちゃんが、マークスお兄ちゃんに勝った!」
明るい声が響く。
レオンの後ろからエリーゼとカミラが歩いてくる。
「エリーゼに、カミラ姉さん。」
「久しぶりね、レオン。会いたかったわ。」
と、彼にハグをする。
カムイは肩で息をしながら、
「……や、やりました!マークス兄さんから一本取りました!」
「ああ。負けたよ、カムイ。」
マークスが立ち上がり、剣を拾う。
カミラがカムイに抱きつき、
「ああ、カムイ。しばらく見ない間に、強くなって。お姉ちゃんは嬉しいわ。」
「カミラ姉さん、来てくれたんですね。」
カムイも抱き返す。
と、側に来たエリーゼが、
「あー、カミラお姉ちゃんばっかりスルーい!私も!」
「はい。エリーゼさんも来てくれて、ありがとうございます。」
と、少ししゃがんで抱き合う。
マークスは拳を握り閉めた後、平静さを取り戻し、
「カムイ、さっき言った通りだ。明日、ここを立つ。」
「はい、マークス兄さん!私、準備してきますね。」
「お姉ちゃん、私も手伝う。」
「お願いしますね、エリーゼさん。」
カムイとエリーゼは部屋に向かって行く。
カミラはマークスを見て、
「お兄様、カムイに手加減はしてなかったですわよね?」
「ああ。カムイの実力だ。あの子は竜の血が濃い。」
「あの子の髪や瞳、耳の形のことね。」
「……竜の血が濃いと、瞳が赤く耳の形がとんがったりする。でも、ここは暗夜だ。姉さんの竜の力はおそらく……」
レオンは視線を落とす。
カミラも、視線を落として、
「だから、ここに連れて来られたのかもしれないわね。」
「……そうだな。」
マークスは拳を握り閉めた。
ーー翌朝、日の登らない暗夜。
暗闇の中、月夜の光を目印に出立する。
カムイのお供として、ギュンター・ジョーカー・リリスがお供をすることとなった。
城の留守を、フローラとフェリシアに任せて出てきたのだ。
ジョーカーはカムイに近づき、
「カムイ様、大丈夫ですか?お身体に、何か変化は見られますか?」
「いえ、大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます。ジョーカーさん。」
「当然のことですので、お気になさらずに。それよりも、何か変化があった際にはすぐに仰って下さい。」
「はい。わかりました。」
カムイは小さく微笑む。
と、しばらく進んで行くと、城が見えてきた。
「カムイお姉ちゃん、あのおっきな城が暗夜城だよ!」
「はい、初めて見ました。凄いですね!」
カムイは瞳を輝かせる。
城下も見て回りたいが、ここは急いで
初めて見る暗夜城の中を、色々目で追いながら謁見の間に行く。
扉を開けて中に入ると、暗夜王ガロンが座っていた。
「よく来たな、カムイ。」
「はい、お父様。御目通りが叶い、嬉しく思います。」
カムイは緊張しながら言う。
彼は目を細めて、
「いや……これもお前の日々の精進ゆえだ。聞けば、マークスに引けをとらぬ強さと聞く。ようやく、暗夜の王族にふさわしくなったのだ。故に、お前を此度の白夜進軍に加える。」
「お父様、でも大丈夫なんですか?カムイお姉ちゃんは……」
「そうです、お父様。やっぱりカムイをあの城から出すなど……」
エリーゼとカミラが、ジッと暗夜王ガロンを見つめる。
暗夜王ガロンはカムイを見据え、
「カムイよ、身体の調子はどうだ。」
「それが不思議と大丈夫です。皆さんから聞いた話では、前の時は危なかったととお聞きしてましたが……」
「それはお前が先も言ったように、暗夜の王族にふさわしくなったのだ。お前は暗夜の竜の加護を受けておる。さて、カムイよ。我が暗夜王国は、東方の白夜王国と今も戦争の最中にある。我ら王族は、古えの神『神祖竜』の血を継ぎし神の末裔。神の力を持つ我らにとって、雑兵との戦いなど草刈りの如きもの。王族が戦場に出れば、単騎にて一隊を滅ぼすことさえ容易い。マークスたちもそれだけの力をを持つ。故にカムイよ、もう一度言う。此度の白夜進軍に参加せよ。」
「はい、お父様!」
カムイは頷く。
暗夜王ガロンは冷たく微笑み、
「頼もしいものだ。では、お前にこの魔剣を授けよう。」
暗夜王ガロンが手をかざすと、カムイの目の前に剣が現れる。
中に浮く禍々しいオーラを持つ黒き剣を手に取る。
「それは魔剣ガングレリ。異界の魔力を秘めた剣よ。それを持って白夜を落とせ。だが、すぐに戦場では体に酷だろう。闘技場にて、その剣を試してみよ。相手は用意してあるからな。」
「ありがとうございます、お父様。」
カムイ達は闘技場へと向かう。
そしてカムイは、ギュンターとジョーカーと共に武器を構える。
上の方から、暗夜王ガロンの声が響く。
「カムイよ、お前の力を見せてみよ。捕虜どもをこれへ!」
「は!」
と、暗夜兵達が動く。
カムイは眉を寄せ、
「え?捕虜……?」
と、向かいの入り口から白夜兵達が出て来る。
暗夜王ガロンはカムイを見下ろし、
「さあ、カムイ。そやつらを殺せ。」
カムイは視線を落とす。
ギュンターが隣に立ち、
「大丈夫です、カムイ様。我らが共にいます。いけるな、ジョーカー。」
「はあ?当たり前だろジジイ。カムイ様に怪我をさせてたまるか。」
ジョーカーはギュンターに舌打ちした後、カムイに笑顔を向ける。
「……カムイ様。この程度の相手、カムイ様が出るまでもありません。戦いは我々に任せ、休んでいて下さい。後で良い紅茶をお淹れしますので。」
「いえ、私も戦います。お父様が見ているのですから。でも……」
カムイは視線を落とす。
が、剣を強く握りしめ、敵に向かって行く。
顔に刺青をいれ、部族らしい飾りをつけた女性が斧で、カムイの剣を受け止めた。
「あたしはリンカ!炎の部族の族長の娘だ!お前が暗夜王国の王女か。名は?」
「私はカムイです!」
カムイは距離を置いて名を言う。
彼女の隣に居た忍びの男性が、深刻そうな顔になる。
「‼︎カムイ……?」
「え?なんですか?」
「……いえ、何でもありません。私はスズカゼ。偉大なる白夜王国に仕える忍びの者です。私も参ります!」
彼は暗器を構える。
カムイは彼の投げる手裏剣を避けていく。
彼ら二人の攻撃を避け、攻撃していく。
が、石の柱まで追い込まれたのはカムイだった。
炎の部族リンカが斧を横に振るう。
それを屈んで避けて、転がる。
「カムイ様!」
「大丈夫ですか、カムイ様!」
他の白夜兵を倒したギュンターとジョーカーがカムイの前に出る。
カムイは態勢を整え、
「だ、大丈夫です。」
立ち上がろうと、地面を触る。
「……何だろう、この感覚……」
カムイは大地の波動を感じる。
瞳を閉じ、それを探る。
カムイの髪がフワッと少し上がり、瞳を開ける。
大地が揺れ動き、新たに増援された敵ごと吹き飛ばす。
そして、敵は壁に叩きつけられた。
「こ、これは凄いお力ですね、カムイ様。」
「王家だけが使えるという竜の力か……」
ジョーカーとギュンターがカムイを見る。
カムイは首を傾げ、
「竜の力?これがお父様が言っていた力ですか?」
「はい。カムイ様を含めた始祖竜の血を引く王家方だけが使えるお力です。カムイ様は大地に流れる竜脈を使って、敵を吹き飛ばしたのです。」
ギュンターがカムイに説明する。
カムイは立ち上がり、そして咳き込んだ。
ジョーカーが彼女の背を摩り、
「ですが、カムイ様には少し強すぎるようですね。あまりお使いにならない方が良いかと。」
「はい。この力は必要な時だけにしますね。」
落ち着いたカムイは頷く。
そして炎の部族リンカと白夜の忍びスズカゼの元に歩いて行く。
スズカゼが片膝をつき、
「……もはや、これまでですね。」
「とても手強い相手でした。これが白夜王国の力ですか……凄いですね。」
カムイも、膝をついて彼らに言った。
だが、暗夜王ガロンの声が響く。
「何をしている、カムイ。とどめを刺さぬか。」
カムイは立ち上がり、上を見上げる。
「お父様……ですが、彼らはもう戦えません!」
「なんだと……?わしはそやつら殺せと言ったはずだ。」
「そんな……でもお父様!なにも殺さなくても……」
カムイは眉を寄せる。
だが、暗夜王ガロンは冷たくカムイを見下ろし、
「愚かな……」
そう言うと、手をかざす。
彼は魔術を放ち、何人かの白夜兵を焼き殺す。
カムイは口に手を当てて、蒼白する。
そして、暗夜王ガロンご再び魔術を放つ。
それは炎の部族リンカと白夜の忍びスズカゼを襲う。
カムイは暗夜王ガロンの放つ炎の球から二人を守る。
「……え?」
白夜の忍びスズカゼはカムイを見て、驚く。
それは暗夜の
エリーゼが口に手を当てて、
「カムイお姉ちゃん……⁉︎」
「なんてことを……」
マークスは眉を寄せる。
暗夜王ガロンは怒り出す。
「カムイ……貴様……」
「父上、お許し下さい!カムイは何もわからぬ身ゆえの……」
マークスが怒る暗夜王ガロンの一段下の前に立つ。
暗夜王ガロンはマークスを冷たく見て、
「よいか、マークス。白夜兵どもを殺せ。逆らう者がおればもろともに殺せ。」
「し、しかし……!」
「やれ。」
「……っ!」
マークスは闘技場に降りる。
剣を抜き、
「退がれ、カムイ。さもなくば……」
「マークス兄さん……!」
本気のマークスを見て、カムイの瞳は揺れる。
だが、カムイは彼らの前から離れない。
マークスは眉を寄せ、
「カムイ……なぜ殺さない?白夜は我らの敵なのだぞ。」
「敵ですか……でも、私には彼らが敵とは思えない……んです。」
カムイは眉を寄せて、視線を落とす。
マークスの脳裏には、フードの彼女の言葉がちらつく。
ーーあの王は、『カムイ』を殺したいのだ。
マークスは眉をさらに寄せる。
カミラが蒼白な表情で、
「ああ、カムイ……もうやめて……」
「そんな⁉︎カムイお姉ちゃん……どうしよう、どうしよう……」
エリーゼは泣きそうになっていた。
カミラとエリーゼの隣に居たレオンは、
「まったく……仕方ないな。」
レオンは魔術を放つ。
そしてカムイの後ろにいた白夜の者達を殺す。
レオンは暗夜王ガロンを見上げ、
「父上。不出来な姉の代わりに、僕が止めを。」
「……レオンか。」
「ですからどうか、カムイ姉さんのことは……」
「……もうよい。追って、沙汰をくだす!」
暗夜王ガロンは兵を連れてこの場を去る。
カムイは座り込み、
「レオンさん……なんてことを!いくら敵でも、動けなかったんですよ……それに、戦意だってなかったのに……殺すなんて……」
「しっ。」
カムイの側に来たレオンは、彼女の口にそっと指を当てる。
カムイはレオンを見上げ、
「……まさか、レオンさん……」
レオンは小さく微笑み、彼女を立たせる。
マークスはカムイを見て、
「……カムイ。お前のその優しさは、いつか仇になるかもしれないぞ。」
「構いません。それで討たれるなら、それまでです。むしろ私は、その方が良いです。悔いのないように、私はしたい。」
「……そうか。」
マークスは彼女を見つめた。
そして、近くにいた兵に、
「捕虜どもの持ち物を調べたい。よって、お前達はもう下がってよい。」
他の兵達を下がらせる。
兵達は、敬礼して去っていく。
この場に、暗夜の
「レオンさん、ありがとうございました。」
「別に構わないさ。父上の言う通り、殺しても構わなかったけど、カムイ姉さんが落ち込むと、エリーゼやカミラ姉さんまで悲しむからね。」
「でも、このままでは済まないわ……きっと。お父様が、このままで終わるはずないもの……」
カミラが頰に手を当てて言う。
しばらくして、マークスとカムイは捕虜になっていた者達を連れて、街の外れに来た。
マークスは捕虜達を見て、
「よいか、カムイの優しさに免じて、今回だけは解放しよう。消えるがよい。我が王の目に触れぬうちにな。」
白夜の忍びスズカゼは、カムイをジッと見つめた後去った。
炎の部族リンカは、
「くっ!どこまでもコケにしやがって!カムイと言ったな、次会った時は後悔させてやる!」
「いえ、次会った時は仲良くしたいです。じゃなくて、仲良くして下さい。」
「なに?お前、わかっているのか?私は白夜の戦士……お前は敵だぞ。」
「はい……確かに、暗夜と白夜は戦争をしている敵同士です。それでも、私は
それを聞いた炎の部族リンカは笑みを浮かべ、
「暗夜に、世間知らずの王女様か。次会った時にも、それが続くかどうか見ものだな。」
そう言って、彼女も去っていった。
マークスはそんな彼女を、どこか悲しくも嬉しそうに見ていた。
白夜の忍びスズカゼは、走っていた。
白夜に情報を届けるために。
その前に、人影が現れる。
彼は急ブレーキをかけ、武器を構える。
彼の前には、フードを深く被った者がいた。
「……私は敵でない。白夜の忍びよ、白夜の王家に伝えよ。『選択の時は、すぐ側まで来ている。全ては必然である。気をつけよ、見えざる者が忍び寄っている。』とな。」
「……あなたを信じろと?」
「伝える伝えないは、自由にしろ。だが、後悔はするな。己の失態で、失ったあの姫のようにな。」
「……あなたは何者です。」
「全てを知り、打ち壊す者だ。」
そう言って、フードの彼女は闇夜に消えた。
白夜の忍びスズカゼは覚悟を決めて、走り出す。