ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

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第二話 心

数日が経ち、暗夜の第一王子マークスは暗夜城にいた。

隣には、紫の長い髪をフワッとさせた美しい女性がいる。

 

彼女は、マークスの妹のカミラ。

暗夜の第二王女であり、カムイとレオンの姉だ。

周りからは、冷酷で無慈悲な王女と言われているが、兄妹弟(きょうだい)や臣下には真逆である。

 

二人は、王の謁見の間にいた。

目の前にいるのは、王座に座る暗夜王国の国王ガロン。

彼は頬杖をつき、

 

「マークス、カミラ。まずは此度の戦果、ご苦労だった。」

「ありがとうございます、父上。」「ありがとうございます、お父様。」

 

二人は頭を下げる。

顔を上げると、暗夜王ガロンは冷たく二人を見て、

 

「さて、お前達を直々に呼んだのは他でもない。カムイのことだ。」

「……カムイが、どうかしたのですか?」

「あやつを北の城塞から出す。話によれば剣の実力も、マークス、お前に引けは取らぬと聞く。そろそろあれも、此度の白夜との戦に出す。」

「ですが、父上!カムイは……いえ、あの子はあの城から出せば、病弱なあの子は持ちません。」

「そうですわ、お父様。あの子は城の護りで、身を守っているのですよ。それを戦に出すなんて……」

 

マークスとカミラは眉を寄せる。

だが、暗夜王ガロンは変わらず冷たい目で、

 

「構わん。どうせ死ぬ運命なら、戦場で散らしてやるのがせめてもの花よ。」

「ですが、お父様ーー」

 

さらに、抗議しようとするカミラを止め、

 

「解りました、父上。早急に、カムイを呼んで参ります。」

 

マークスは頭を下げる。

そして、カミラを連れて部屋を出て行く。

彼らが出で行くと、横で控えていた暗夜王国の軍師マクベスが、

 

「どうやらマークス様も、カミラ様も、此度のカムイ様進軍には反対のようですな。なんとも、兄姉妹(きょうだい)想いの事で……。いかがなさいますか?」

「…………我が神は仰った。これは必然だと。」

 

暗夜王ガロンは小さく呟く。

そして、彼を横目で見て、

 

「ガンズを呼べ。」

「かしこまりました。」

 

そう言って、軍師マクベスは下がる。

一人残っている暗夜王ガロンは、笑みを浮かべる。

 

「そう、全ては必然なのだ……」

 

 

ーーマークス達が部屋から出て、廊下を歩いていると、

 

「マークスお兄ちゃん!カミラお姉ちゃん!」

 

金色の髪を左右に結い上げた少女が駆けてくる。

二人は笑みを浮かべる。

マークスは彼女の頭を撫で、

 

「エリーゼ。今日も元気だな。」

「うん!」

 

少女はとびっきりの笑顔を向ける。

 

彼女はエリーゼ。

暗夜王国の第三王女である。

暗夜兄弟姉妹(きょうだい)の末っ子で、甘えん坊だ。

だが、治癒の能力には長けており、幼いながらにも戦場に赴いている。

 

エリーゼは二人を見上げ、

 

「今からカムイお姉ちゃんのところに行くの?私も行っていい?」

「ええ、一緒に行きましょう。お兄様、私はエリーゼと後から行きます。」

「そうか。では、先に行っている。」

 

マークスは彼らと別れる。

一度、実室に向かう。

扉を開ける前に、剣に手をかけて抜く。

そして扉を開けた。

 

「久しぶりだ、暗夜の第一王子。」

「貴様!どうやってここに!」

 

彼の実室の机の上には、フードを深く被った者がいた。

マントから少しだが、体つきが解る。

小柄で、やはり女性のようだ。

そして、腰には一本の長いの剣が見える。

さらに足には、短剣や暗器が付いていた。

フード彼女は、彼の机の上にあった紙を戻し、

 

「それは言えないな。だが、貴殿のその表情を見る限り、私の言った通りになったのではないか?」

「…………父上には、何か理由があるのだ。あの子は城の外に出たがっていた。理由はどうあれ、外に出れるのだ。」

 

彼は握る剣に力が込む。

フードの彼女は机から降り、

 

「だから、戦場で死んでもよいと?」

「そんなことは思っていない!」

「貴殿が思ってなくとも、貴殿の王はそのつもりだ。あの王は、『カムイ』を殺したいのだ。それこそが、あの王が今まで『カムイ』を生かしておいた理由なのだから。」

 

マークスは眉を寄せて、フードの彼女を睨む。

 

「貴様は何を知っている!」

「全てだ。」

「全てだと?」

 

と、フードの彼女は振り下ろされる剣を避ける。

そして、次の突き出される槍をも避ける。

 

「マークス様、ご無事ですか‼︎」「マークス様の敵!」

 

マークスの前には、剣を構えた少年と槍を構えた少女が立つ。

マークスは少し驚き、

 

「ラズワイド、ピエリ……何故、ここに。」

「マークス様への報告に来たところ、何やら怒鳴り声が聞こえたものですから。」

「そしたら、マークス様剣を構えてるの。」

 

二人は、目の前のフードの彼女を睨む。

 

剣を構えた少年は、マーシナリーのラズワイド。

マークスの臣下である。

そして、槍を構えた少女はソシアルナイトのピエリ。

彼女もまた、マークスの臣下である。

 

フードの彼女は身構える。

 

「やはり、よい臣下に恵まれているな。暗夜の第一王子、全ては必然だ。だからこそ、『カムイ』を使って打ち壊さなければならない。」

 

フードの彼女は、彼らに向かって駆ける。

ピエリの槍とマークスの剣を避け、足に付いていた短剣を抜く。

ラズワイドの剣を受け流しながら、彼の耳元で囁く。

 

「そうだろ、召喚されし偽りの住人。」

「……君は⁈」

 

そのまま、フードの彼女は廊下の窓を破って行った。

ラズワイドがすぐに下を確認しだが、人影はおろか死体もなかった。

剣をしまい、

 

「申し訳ありません、マークス様。取り逃がしました。」

「いや、仕方ない。」

「悔しいの〜‼︎」

 

マークスも剣をしまう。

彼の横では頰を膨らませるピエリの姿。

マークスは眉を寄せ、

 

「お前たち、今回のことは他言無用だ。よいな。」

「わかりました。」「はいですの。」

 

マークスは二人の報告を聞き、書類を整理する。

と、机の上にあった紙を見つける。

 

『……水?……竜?』

 

マークスはその紙を懐にしまい、暗夜城を出た。

 

 

ーーカムイは、今日もレオンとお茶をしていた。

 

「もうじき、マークス兄さんたちも来るんじゃない?」

「そう、ですね。……レオンさん、私はこのままでよいのでしょうか。」

 

カムイは紅茶を置き、視線を落とす。

レオンも紅茶を置き、

 

「何が?」

「私だけ、兄弟姉妹(きょうだい)の中で戦場に赴いていません。私も、みんなの役に立ちたい。」

「でも、カムイ姉さんはこの城からは出られない。この城の加護がなきゃ、カムイ姉さんの体が危ないんだ。」

「それは……わかっています。一度、その禁忌を犯したから、私には幼い頃の記憶がない。本当に、危なかったとギュンターさんが言ってました。」

「そうだよ。僕も詳しくは知らないけど、カムイ姉さんは生と死を彷徨ったって聞いた。だからこそ、姉さんはこの城にいるべきなんだ。」

 

レオンは眉を寄せる。

だが、後ろから、

 

「……そうは言っていられなくなった。父上が、カムイをこの城から出すと言っている。」

「「マークス兄さん!」」

 

そこには、兄マークスがいた。

レオンはマークスに近づき、

 

「それは本当なの?」

「ああ。今回の白夜進軍に、カムイも参加させると。」

「そんな……」

 

レオンは拳を握り締める。

カムイも彼らに近づき、

 

「私は、外に出てもいいのですか?」

「……ああ。だが、条件がある。」

「条件?」

「カムイ、この私から一本取ることだ。」

「マークス兄さんから⁈」

「そうだ。でなければ、お前を出すわけにはいかない。」

 

カムイはジッとマークスを見上げ、

 

「わかりました。今、準備します。先に屋上に行っていて下さい。」

 

カムイはフローラ達の元へ行く。

レオンはマークスを見上げ、

 

「……兄さん、あれ嘘でしょ。」

「ああ……。だが、こうでもしない限り、あの子を救う手がないのだ。」

「……そうだね。」

 

二人は先に、屋上へと向かう。

カムイが剣を持って屋上に行くと、マークスはすでに剣を抜いていた。

カムイは覚悟を決めて、剣を抜く。

 

「マークス兄さん、行きます!」

「来い、カムイ!」

 

カムイは剣を振るう。

マークスはそれを受け流していく。

どれくらいそうしていただろう。

マークスはカムイの赤い瞳が光るのを見た。

そして、マークスが受け止めたカムイの剣が重くなる。

マークスも、剣に力を込める。

 

「はぁぁぁああ‼︎」

 

カムイは渾身の力を込めて、マークスの剣を弾いた。

彼の剣は地面へと落ちる。

 

「スッゴーイ!カムイお姉ちゃんが、マークスお兄ちゃんに勝った!」

 

明るい声が響く。

レオンの後ろからエリーゼとカミラが歩いてくる。

 

「エリーゼに、カミラ姉さん。」

「久しぶりね、レオン。会いたかったわ。」

 

と、彼にハグをする。

カムイは肩で息をしながら、

 

「……や、やりました!マークス兄さんから一本取りました!」

「ああ。負けたよ、カムイ。」

 

マークスが立ち上がり、剣を拾う。

カミラがカムイに抱きつき、

 

「ああ、カムイ。しばらく見ない間に、強くなって。お姉ちゃんは嬉しいわ。」

「カミラ姉さん、来てくれたんですね。」

 

カムイも抱き返す。

と、側に来たエリーゼが、

 

「あー、カミラお姉ちゃんばっかりスルーい!私も!」

「はい。エリーゼさんも来てくれて、ありがとうございます。」

 

と、少ししゃがんで抱き合う。

マークスは拳を握り閉めた後、平静さを取り戻し、

 

「カムイ、さっき言った通りだ。明日、ここを立つ。」

「はい、マークス兄さん!私、準備してきますね。」

「お姉ちゃん、私も手伝う。」

「お願いしますね、エリーゼさん。」

 

カムイとエリーゼは部屋に向かって行く。

カミラはマークスを見て、

 

「お兄様、カムイに手加減はしてなかったですわよね?」

「ああ。カムイの実力だ。あの子は竜の血が濃い。」

「あの子の髪や瞳、耳の形のことね。」

「……竜の血が濃いと、瞳が赤く耳の形がとんがったりする。でも、ここは暗夜だ。姉さんの竜の力はおそらく……」

 

レオンは視線を落とす。

カミラも、視線を落として、

 

「だから、ここに連れて来られたのかもしれないわね。」

「……そうだな。」

 

マークスは拳を握り閉めた。

 

 

ーー翌朝、日の登らない暗夜。

暗闇の中、月夜の光を目印に出立する。

カムイのお供として、ギュンター・ジョーカー・リリスがお供をすることとなった。

城の留守を、フローラとフェリシアに任せて出てきたのだ。

ジョーカーはカムイに近づき、

 

「カムイ様、大丈夫ですか?お身体に、何か変化は見られますか?」

「いえ、大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます。ジョーカーさん。」

「当然のことですので、お気になさらずに。それよりも、何か変化があった際にはすぐに仰って下さい。」

「はい。わかりました。」

 

カムイは小さく微笑む。

と、しばらく進んで行くと、城が見えてきた。

 

「カムイお姉ちゃん、あのおっきな城が暗夜城だよ!」

「はい、初めて見ました。凄いですね!」

 

カムイは瞳を輝かせる。

城下も見て回りたいが、ここは急いで黒き王城(クラーケンシュタイン城)へと向かう。

初めて見る暗夜城の中を、色々目で追いながら謁見の間に行く。

扉を開けて中に入ると、暗夜王ガロンが座っていた。

 

「よく来たな、カムイ。」

「はい、お父様。御目通りが叶い、嬉しく思います。」

 

カムイは緊張しながら言う。

彼は目を細めて、

 

「いや……これもお前の日々の精進ゆえだ。聞けば、マークスに引けをとらぬ強さと聞く。ようやく、暗夜の王族にふさわしくなったのだ。故に、お前を此度の白夜進軍に加える。」

「お父様、でも大丈夫なんですか?カムイお姉ちゃんは……」

「そうです、お父様。やっぱりカムイをあの城から出すなど……」

 

エリーゼとカミラが、ジッと暗夜王ガロンを見つめる。

暗夜王ガロンはカムイを見据え、

 

「カムイよ、身体の調子はどうだ。」

「それが不思議と大丈夫です。皆さんから聞いた話では、前の時は危なかったととお聞きしてましたが……」

「それはお前が先も言ったように、暗夜の王族にふさわしくなったのだ。お前は暗夜の竜の加護を受けておる。さて、カムイよ。我が暗夜王国は、東方の白夜王国と今も戦争の最中にある。我ら王族は、古えの神『神祖竜』の血を継ぎし神の末裔。神の力を持つ我らにとって、雑兵との戦いなど草刈りの如きもの。王族が戦場に出れば、単騎にて一隊を滅ぼすことさえ容易い。マークスたちもそれだけの力をを持つ。故にカムイよ、もう一度言う。此度の白夜進軍に参加せよ。」

「はい、お父様!」

 

カムイは頷く。

暗夜王ガロンは冷たく微笑み、

 

「頼もしいものだ。では、お前にこの魔剣を授けよう。」

 

暗夜王ガロンが手をかざすと、カムイの目の前に剣が現れる。

中に浮く禍々しいオーラを持つ黒き剣を手に取る。

 

「それは魔剣ガングレリ。異界の魔力を秘めた剣よ。それを持って白夜を落とせ。だが、すぐに戦場では体に酷だろう。闘技場にて、その剣を試してみよ。相手は用意してあるからな。」

「ありがとうございます、お父様。」

 

カムイ達は闘技場へと向かう。

そしてカムイは、ギュンターとジョーカーと共に武器を構える。

上の方から、暗夜王ガロンの声が響く。

 

「カムイよ、お前の力を見せてみよ。捕虜どもをこれへ!」

「は!」

 

と、暗夜兵達が動く。

カムイは眉を寄せ、

 

「え?捕虜……?」

 

と、向かいの入り口から白夜兵達が出て来る。

暗夜王ガロンはカムイを見下ろし、

 

「さあ、カムイ。そやつらを殺せ。」

 

カムイは視線を落とす。

ギュンターが隣に立ち、

 

「大丈夫です、カムイ様。我らが共にいます。いけるな、ジョーカー。」

「はあ?当たり前だろジジイ。カムイ様に怪我をさせてたまるか。」

 

ジョーカーはギュンターに舌打ちした後、カムイに笑顔を向ける。

 

「……カムイ様。この程度の相手、カムイ様が出るまでもありません。戦いは我々に任せ、休んでいて下さい。後で良い紅茶をお淹れしますので。」

「いえ、私も戦います。お父様が見ているのですから。でも……」

 

カムイは視線を落とす。

が、剣を強く握りしめ、敵に向かって行く。

顔に刺青をいれ、部族らしい飾りをつけた女性が斧で、カムイの剣を受け止めた。

 

「あたしはリンカ!炎の部族の族長の娘だ!お前が暗夜王国の王女か。名は?」

「私はカムイです!」

 

カムイは距離を置いて名を言う。

彼女の隣に居た忍びの男性が、深刻そうな顔になる。

 

「‼︎カムイ……?」

「え?なんですか?」

「……いえ、何でもありません。私はスズカゼ。偉大なる白夜王国に仕える忍びの者です。私も参ります!」

 

彼は暗器を構える。

カムイは彼の投げる手裏剣を避けていく。

彼ら二人の攻撃を避け、攻撃していく。

が、石の柱まで追い込まれたのはカムイだった。

炎の部族リンカが斧を横に振るう。

それを屈んで避けて、転がる。

 

「カムイ様!」

「大丈夫ですか、カムイ様!」

 

他の白夜兵を倒したギュンターとジョーカーがカムイの前に出る。

カムイは態勢を整え、

 

「だ、大丈夫です。」

 

立ち上がろうと、地面を触る。

 

「……何だろう、この感覚……」

 

カムイは大地の波動を感じる。

瞳を閉じ、それを探る。

カムイの髪がフワッと少し上がり、瞳を開ける。

大地が揺れ動き、新たに増援された敵ごと吹き飛ばす。

そして、敵は壁に叩きつけられた。

 

「こ、これは凄いお力ですね、カムイ様。」

「王家だけが使えるという竜の力か……」

 

ジョーカーとギュンターがカムイを見る。

カムイは首を傾げ、

 

「竜の力?これがお父様が言っていた力ですか?」

「はい。カムイ様を含めた始祖竜の血を引く王家方だけが使えるお力です。カムイ様は大地に流れる竜脈を使って、敵を吹き飛ばしたのです。」

 

ギュンターがカムイに説明する。

カムイは立ち上がり、そして咳き込んだ。

ジョーカーが彼女の背を摩り、

 

「ですが、カムイ様には少し強すぎるようですね。あまりお使いにならない方が良いかと。」

「はい。この力は必要な時だけにしますね。」

 

落ち着いたカムイは頷く。

そして炎の部族リンカと白夜の忍びスズカゼの元に歩いて行く。

スズカゼが片膝をつき、

 

「……もはや、これまでですね。」

「とても手強い相手でした。これが白夜王国の力ですか……凄いですね。」

 

カムイも、膝をついて彼らに言った。

だが、暗夜王ガロンの声が響く。

 

「何をしている、カムイ。とどめを刺さぬか。」

 

カムイは立ち上がり、上を見上げる。

 

「お父様……ですが、彼らはもう戦えません!」

「なんだと……?わしはそやつら殺せと言ったはずだ。」

「そんな……でもお父様!なにも殺さなくても……」

 

カムイは眉を寄せる。

だが、暗夜王ガロンは冷たくカムイを見下ろし、

 

「愚かな……」

 

そう言うと、手をかざす。

彼は魔術を放ち、何人かの白夜兵を焼き殺す。

カムイは口に手を当てて、蒼白する。

そして、暗夜王ガロンご再び魔術を放つ。

それは炎の部族リンカと白夜の忍びスズカゼを襲う。

カムイは暗夜王ガロンの放つ炎の球から二人を守る。

 

「……え?」

 

白夜の忍びスズカゼはカムイを見て、驚く。

それは暗夜の兄弟姉妹(きょうだい)もだった。

エリーゼが口に手を当てて、

 

「カムイお姉ちゃん……⁉︎」

「なんてことを……」

 

マークスは眉を寄せる。

暗夜王ガロンは怒り出す。

 

「カムイ……貴様……」

「父上、お許し下さい!カムイは何もわからぬ身ゆえの……」

 

マークスが怒る暗夜王ガロンの一段下の前に立つ。

暗夜王ガロンはマークスを冷たく見て、

 

「よいか、マークス。白夜兵どもを殺せ。逆らう者がおればもろともに殺せ。」

「し、しかし……!」

「やれ。」

「……っ!」

 

マークスは闘技場に降りる。

剣を抜き、

 

「退がれ、カムイ。さもなくば……」

「マークス兄さん……!」

 

本気のマークスを見て、カムイの瞳は揺れる。

だが、カムイは彼らの前から離れない。

マークスは眉を寄せ、

 

「カムイ……なぜ殺さない?白夜は我らの敵なのだぞ。」

「敵ですか……でも、私には彼らが敵とは思えない……んです。」

 

カムイは眉を寄せて、視線を落とす。

マークスの脳裏には、フードの彼女の言葉がちらつく。

 

ーーあの王は、『カムイ』を殺したいのだ。

 

マークスは眉をさらに寄せる。

カミラが蒼白な表情で、

 

「ああ、カムイ……もうやめて……」

「そんな⁉︎カムイお姉ちゃん……どうしよう、どうしよう……」

 

エリーゼは泣きそうになっていた。

カミラとエリーゼの隣に居たレオンは、

 

「まったく……仕方ないな。」

 

レオンは魔術を放つ。

そしてカムイの後ろにいた白夜の者達を殺す。

レオンは暗夜王ガロンを見上げ、

 

「父上。不出来な姉の代わりに、僕が止めを。」

「……レオンか。」

「ですからどうか、カムイ姉さんのことは……」

「……もうよい。追って、沙汰をくだす!」

 

暗夜王ガロンは兵を連れてこの場を去る。

カムイは座り込み、

 

「レオンさん……なんてことを!いくら敵でも、動けなかったんですよ……それに、戦意だってなかったのに……殺すなんて……」

「しっ。」

 

カムイの側に来たレオンは、彼女の口にそっと指を当てる。

カムイはレオンを見上げ、

 

「……まさか、レオンさん……」

 

レオンは小さく微笑み、彼女を立たせる。

マークスはカムイを見て、

 

「……カムイ。お前のその優しさは、いつか仇になるかもしれないぞ。」

「構いません。それで討たれるなら、それまでです。むしろ私は、その方が良いです。悔いのないように、私はしたい。」

「……そうか。」

 

マークスは彼女を見つめた。

そして、近くにいた兵に、

 

「捕虜どもの持ち物を調べたい。よって、お前達はもう下がってよい。」

 

他の兵達を下がらせる。

兵達は、敬礼して去っていく。

この場に、暗夜の兄弟姉妹(きょうだい)だけが残ると、

 

「レオンさん、ありがとうございました。」

「別に構わないさ。父上の言う通り、殺しても構わなかったけど、カムイ姉さんが落ち込むと、エリーゼやカミラ姉さんまで悲しむからね。」

「でも、このままでは済まないわ……きっと。お父様が、このままで終わるはずないもの……」

 

カミラが頰に手を当てて言う。

 

しばらくして、マークスとカムイは捕虜になっていた者達を連れて、街の外れに来た。

マークスは捕虜達を見て、

 

「よいか、カムイの優しさに免じて、今回だけは解放しよう。消えるがよい。我が王の目に触れぬうちにな。」

 

白夜の忍びスズカゼは、カムイをジッと見つめた後去った。

炎の部族リンカは、

 

「くっ!どこまでもコケにしやがって!カムイと言ったな、次会った時は後悔させてやる!」

「いえ、次会った時は仲良くしたいです。じゃなくて、仲良くして下さい。」

「なに?お前、わかっているのか?私は白夜の戦士……お前は敵だぞ。」

「はい……確かに、暗夜と白夜は戦争をしている敵同士です。それでも、私はあなたたち(白夜)と殺し合いなんてしたくないんです。戦争が早く終わり、平和な世の中になって共に過ごしたい。きっと……暗夜も、白夜も、分かり合えるはずです。いいえ、分かり合えるはずなんです。」

 

それを聞いた炎の部族リンカは笑みを浮かべ、

 

「暗夜に、世間知らずの王女様か。次会った時にも、それが続くかどうか見ものだな。」

 

そう言って、彼女も去っていった。

マークスはそんな彼女を、どこか悲しくも嬉しそうに見ていた。

 

 

白夜の忍びスズカゼは、走っていた。

白夜に情報を届けるために。

その前に、人影が現れる。

彼は急ブレーキをかけ、武器を構える。

彼の前には、フードを深く被った者がいた。

 

「……私は敵でない。白夜の忍びよ、白夜の王家に伝えよ。『選択の時は、すぐ側まで来ている。全ては必然である。気をつけよ、見えざる者が忍び寄っている。』とな。」

「……あなたを信じろと?」

「伝える伝えないは、自由にしろ。だが、後悔はするな。己の失態で、失ったあの姫のようにな。」

「……あなたは何者です。」

「全てを知り、打ち壊す者だ。」

 

そう言って、フードの彼女は闇夜に消えた。

白夜の忍びスズカゼは覚悟を決めて、走り出す。

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