ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

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第二十一話 動き出す運命

白き巫女は覚悟していた。

愛しき人、愛しき子ら……

彼らと合間見える事を。

武器を構え、彼らを攻撃する事を。

何故なら自分はもう、眷属となったのだから。

かつての自分は眷属なった後、彼らと共に入るためなら彼らも眷属になれば良いと考えていた。

けれど、その度にあの子の姿を見る。

闘う姿、覚悟を決める姿、失っても立ち上がる姿を。

 

ある時、自分を討ったあの子達は平和を手にした。

けれど、世界の崩壊は起きてしまった。

その理由を自分は知っている。

だからこそ、あの子の苦しみが伝わって来る。

初めてあの子が、自分たちの元に来た時のことは今でも忘れられない。

顔を隠し、名を捨て、己自身さえも捨てたあの子。

けれど、少しだけ見えた赤い瞳からは強い意志が込められていた。

禁忌を犯してまでやり遂げようとするあの子の姿を見た時、自分も決意した。

決意したあの日に、自分は全てを知ったのだ。

自分の故郷より持って来た神器が教えてくれた。

今までの事を。

哀しかった。

辛かった。

けれど、嬉しかった。

だから自分は為さねばならない。

 

自分の死を迎え、召喚されて驚いた。

あの軍師の正体に。

おそらく、誰も気付いていない。

あの騎士でさえも。

自分は言えない。

けれど、支えたい。

どんなに忌むがられても。

どんなに冷たい瞳で見られても。

どんなに彼女の言葉に想いがなくとも……

 

彼らの進むべき道を導くために。

彼らの描く未来のために。

彼らの生きる世界のために。

だから自分は事を成そう。

自分の愛しき彼らのために……

 

 

ーーカムイ達は透魔王国に戻って来た。

魔法陣が壊れる。

イムカは何かの気配を感じ、ハイドラの前に立って長剣を抜く。

そこには透魔兵達が待ち伏せしていた。

 

「アベルの仕業か……」

 

イムカが動く前に、透魔兵達の背後より矢が放たれた。

それは彼らを的確に討ち、彼らは炎に包まれて消えた。

カムイはその矢を放った相手を見て、

 

「え?……どうして……どうしてここに……お母様が……⁉︎」

 

そう、透魔兵達に矢を放ったのはカムイの母ミコトだった。

ミコトは優しく微笑み、

 

「お帰りなさい、カムイ。それに、リョウマ達も無事に戻って来たのですね。良かったですわ。」

「母上……やはり、そうなのですね。」

「ええ、あの時のあなたにはこの意味は解らなかったでしょうが、これが私の選択です。」

 

ミコトは矢をカムイ達に向ける。

カムイは困惑し、

 

「リョウマ兄さん、どういうことなんですか?」

「そうです、兄様!何故、ミコト母上が⁉」

 

ヒノカも困惑していた。

無論、タクミもサクラも困惑している。

ハイドラが、カムイを守るように前に立つ。

 

「ミコト……」

「……ハイドラ様。もう一度だけ、あなたに会えたことを心から嬉しく思いますわ。そして、私の愛しき子たちを護ってくださったこと、ありがとうございます。ですが……」

 

ミコトはさらに弦を引き、

 

「今の私は、透魔王ハイドラ様の眷属。暗夜王ガロンと同じく、我が神にして王の為に動く者。だからどうか……愛しきあなた達の手で、私を送って。」

 

ミコトは矢を放つ。

イムカがそれを落とし、

 

「……白き巫女、ここは引いてもらおう。あなたは、ここではカムイを殺せないはずだ。透魔王や、あなたのところの軍師がそれを許さないだろう。」

「そうね……けれど、私はその軍師殿から言われてここに来た。向こうに行ったあなた達が、ちゃんと戻って来たかを確かめる為に。そして、私は会ってしまった。会ってしまえば、私は闘わなくてはいけないわ。」

「白き巫女、あなたはその瞳に何を視る。未来を見通すその瞳は、今どこに居る。」

「今も昔も、私はここに居るわ。あの時と同じ……ねぇ、カムイ。今のあなたは誇れる自分になれたかしら?」

 

そう言って、イムカを優しく、それでいて悲しそうに微笑んだ。

それを聞いたイムカは瞳を揺らし、

 

「……なぜ……それを……」

 

イムカは構えていた剣が下に下がる。

カムイはさらに困惑する。

アクアがイムカの横に立つ。

 

「ミコト様……どうかここは引いてください。そして……あの人とカインに伝えてください。必ず救い出すと。それに、あの軍師さんは『戦いをしろ』とは言わなかったのでは?」

「そうね……確かに、確認をするだけで、戦えとは言われてないわ。ええ、分かったわ。ここは退きましょう。待っているわ、ちゃんとあの城に来るのですよ。そして止めてください……あの子を。そして救ってあげてください……あの子達を。お願いね。」

 

ミコトは弓を下ろす。

背を向けて歩き出すミコトに、ハイドラは叫ぶ。

 

「……ミコト、君の残したモノはとても大きい。とても輝いている。私は今度こそ守ろう。愛しき人間を。君の残した宝を。君たちが紡いでくれた想いを。」

 

ミコトは一度立ち止まり、笑顔を向けた。

そして歩いて行った。

 

カムイ達はアジトに戻って来た。

戻るなり、カムイはハイドラに詰め寄った。

 

「あの、ハイドラ様!ミ、ミコトお母様とはどう言ったご関係で?」

「え……あ、えっと……」

 

ハイドラは隣に座る人型に戻ったリリスを見る。

リリスは困惑した、けれど笑顔で『え?私が、言うんですか?』と言う顔をしていた。

続いてアクアを見ると、真顔で『自分で言ってください。』と言う顔をしている。

その横に居るイムカに関しては、冷めた目で『自分から絶対に言わない。』と言う視線を向けていた。

自分の後ろに居るリョウマ王子とマークス王子は熱い視線で、『頑張ってください!』と言う熱意が伝わってくる。

自分が召喚した三人もまた、真顔でこちらを見ていた。

ハイドラは覚悟を決めて、カムイの肩に手を置いた。

 

「カムイ……実は……私にはリリスの他に子供がいる。」

「え?そうなんですか?」

「ああ……私は本体から斬り離れた後、さ迷い続けた。さ迷い続け、自分がわからない状態である女性に会った。それが、ミコトだ。彼女はおそらく、自分の正体に気付いていただろう。それでも、彼女は私を受け入れてくれた。側に居てくれた。彼女のおかげで、己の過ちに気付けた。アクアの父を殺してしまった自分。この罪は重い。人を信じられなくなった狂った神竜。けれど、彼女はこれから償っていけばいいと、それを共に支え、歩むと言ってくれた。」

「……え?も、もしかして……」

「ああ。その後、私はミコトととの間に子供を授かった。その子の名はカムイ。」

「え……えぇ⁉」

 

カムイはリョウマを見る。

リョウマは真剣な表情で頷いていた。

 

「今更、こんな事を言える立場ではないことはわかっている。私は……お前の父親だ。」

「えっと……でも……え……⁉︎」

「本当なら、ずっとミコトとカムイと共に居たかった。だが、私と言う存在を透魔王ハイドラに気付かれてしまった。あいつは私を取り込むことで、力の増幅を狙ったのだ。ミコトが会ったことのある白夜王スメラギに助けを求めると言った。だから私は、ミコトとお前を白夜王国に送った。その後、ミコトからアクアとアクアの母が生きている事を聞いていた。だから、彼らも狙われると思った。案の定、歌姫を狙っていた。私は二人を暗夜王国へと送った。本当なら、ミコトと同じ場所に送りたかったのだが、同じ場所では気付かれるとシュンメイ……アクアの母が気を使ったのだ。いくら風神弓の使い手であるミコトでも、赤子を守りながらでは厳しいだろうと。」

「…………」

 

カムイは黙って聞き続けた。

ハイドラは続ける。

 

「その後、私は何とか透魔王ハイドラの目を盗んで透魔王国を逃げ回っていた。そうする事で、向こう側に行った彼らから目を反らすために。頃合いを見て、三人をこの世界に呼び、現状を伝え、カムイが居ると言われた暗夜王国へと送ったのだ。」

「リリスさんは?」

「リリスとは、その時に出会ったのだ。まさか、本体が子供をなしていたとは思わなかった。けれど、リリスは大切な私の娘に変わりはない。」

 

ハイドラはカムイの肩から手を放す。

カムイはイムカを見て、

 

「あなたはこの事を知っていたのですか?」

「……ハイドラ様が父だと言うことは元から知っていた。私の最初の父の親だからな。それに、昔は祖父として側にいたんだ。知らないわけないだろう。だが、リリスが妹だったとは知らなかった。私も、今回やっとわかった……と言うところだ。それでも、お前は薄々何かに気付いていたのではないか。ハイドラ様の事も、リリスの事も。」

「……はい。お二人とも、とても懐かしくて、他人とは思えなかったんです。でも……何というか、解らない事だらけです。」

「……お前はそうだろうな。」

「でも……嬉しいです!リリスさんが妹なのも。ハイドラ様がお父様だった事も。だって、新しい家族が増えたみたいで、とっても嬉しいです。」

 

カムイは笑顔だった。

リリスは涙を流していた。

ハイドラもどこか嬉しそうに微笑んでいた。

イムカはそれを見ると、部屋を出て行く。

近くの木の下に座っていると、アクアが隣に座った。

 

「……良かったわね。」

「何がです。」

「心配だったのでしょ。ハイドラ様を、何も知らないカムイが受け入れてくれるかどうか。」

「……さてな。」

 

イムカはそっぽ向いていた。

アクアは苦笑して、

 

「そう言えば、こちらに戻って来たのに、仮面を外さないのね。」

「この方が、困惑しないだろう。それに、この顔を見てカムイだと思われる事の方が嫌なのだ。」

「自分はもうカムイではないから?」

「それもあるが、私は仲間ではないからな。変に期待されても、想いを寄せられても、寄り添われても、何も貸すことはないし、返せないからな。」

「そんなのいらないわ。だって、仲間とは互いに利益があるからなるだけではないのよ。認めたから、認められたからできる絆もある。私はそう思うわ。」

「あなたはそうでも、他の者達は違うだろうさ。さて、明日はやっと透魔王城へと乗り込む。早く休むことだ。」

「あなたもね。」

 

立ち上がり、歩いて行く彼女にアクアは小さく微笑んで言った。

 

ーー透魔王国、透魔軍師ルフレの部屋

透魔軍師ルフレはベッドの上で天井を見ていた。

 

『……アベル殿にも困ったものだ。いくらこちらに、カムイ達の情報が来ていなかったとはいえ……相変わらずの単独行動。全く、少しくらい私の策戦通り動いてほしいものだ。』

 

彼女は目を閉じ、

 

『巫女殿の報告によれば、カムイ達は間違いなくここにやってくる。彼女の限界も近い。透魔王ハイドラ様の勝利は目に見えている、が……さて、どのように仕掛けて来るか……彼女はきっと、真の敵(・・・)を狙って無茶をする。』

 

彼女は小さく笑みを浮かべ、

 

「……ま、何が来ても、私はそれを超えればいいだけ……そう、それだけのこと。」

 

彼女は身を起こし、ベッドから起き上がって行った。

 

 

カムイ達は、イムカとアクアの先頭の元、透魔王国の城に向かって歩いていた。

朝、王城攻略について策戦を聞いていた。

その時、透魔王ハイドラについてもより詳しく聞いていた。

『透魔の眷属』……

ミコトがそのようなことを言っていた。

『ハイドラ様の眷属』だと。

その眷属は死人。

透魔王ハイドラの操り人形として、世界が滅びるまで戦争を続けるための駒。

暗夜王ガロン、アクアの知る白い騎士カイン。

そして兵達や民達もまたその眷属だと言った。

そして、カムイ達が初めてこの透魔王国に来たときに居た女魔導士もそうだと、アクアは言った。

その眷属たちを救う方法は、暗夜王ガロンの時と同じ。

彼らを殺すこと。

そう、この透魔王国の者達を救うには、彼らを殺さなくてはいけない。

死を理解していないこの国の人達も殺さねばならない。

透魔王ハイドラの力によって復活した傀儡の兵。

彼の目的の為の駒として、彼らは闘い続ける。

己の存在も理解できぬまま。

覚める事のない悪夢を見続け、いつか解放される事だけを願って……

イムカは言っていた。

そして知るだろう、と。

この国の秘密を。

哀しき連鎖を。

この先に待つ運命を。

 

彼らはそんな緊張感を持ちながら、先へと進んで行く。

当然、堂々と正面を歩くわけにもいかない。

来い、とは言われているものの、罠がないとも限らない。

だから、物陰に隠れながら先を進んでいたのだが……

 

「お久しぶりです。そして、初めまして皆さん。私は透魔王国の軍師、ルフレと申します。皆さんの事は、色々聞いていますよ。それに、欠片のハイドラ様とも会えましたし。」

 

銀髪を左右に結い上げた少女が、多くの兵を率いて立ちはだかる。

カムイ達は武器を構えて戦闘態勢に入る。

イムカはカムイの横に立ち、

 

「あいつの相手は私がしよう。お前たちは、他の敵を蹴散らせ。」

「で、ですが……」

「相手は軍師だ。押さえておけば、兵の乱れが生まれる。そこを突けと言っているんだ。」

「わ、解りました!」

 

イムカは魔術を放ち、透魔軍師ルフレを兵達から遠ざける。

彼女はそれを交わし、腰に付いていた剣を抜く。

そして、イムカが振り上げた剣を受け流し、さらに距離を取る。

彼女は剣先をイムカに向け、

 

「こうして、あなたと武器を交えるのは初めてですね。」

「そうだな……」

 

互いに地面を蹴って、剣を交え始める。

だが、互いにその視線は時折、闘うカムイ達を見ていた。

 

カムイ達は兵の統括が乱れた所を狙っていた。

傷を負っても、顔色一つ変わらない兵。

瞳に光のない兵。

ただ、ただ、闘うために存在する彼ら。

そんな彼らを救う方法は、死しかない。

カムイは想う。

彼らにもきっと守りたいモノがあっただろう。

帰りたい場所があっただろう。

それが突然奪われ、今の自分すらも解らない……

彼らの苦しみが、痛みがわからない。

自分はきっと、彼らを本当の意味では救えないだろう。

けれど、この悪夢を終わらせる事はできる。

カムイは剣の柄を強く握る。

一人でも多く、解放する為に。

 

イムカと透魔軍師ルフレは剣を、魔術をぶつけ合う。

透魔兵の数が減っていくと、

 

「おや、流石ですね。いくら、指揮官を失った兵とはいえ……あれだけの数をここまで減らすとは。それに、いがみ合っていた両国の人間同士、あんなに連携を取れるとは……」

「ああ。本質では両国似た者同士が多いからな。」

「ところで、あなたはいつまで、その仮面をつけているおつもりですか。我々は、あなたの正体を知っていると言うのに。」

「……随分と、達者な口を叩くものだな……そちらの軍師殿は‼」

 

二人は剣をギリギリと音を立てて、互いに剣を抑え込む。

カムイは透魔兵達を討ち、

 

「こ、これで大分終わった――」

「カムイ‼」

 

リョウマが、カムイに振り下ろされる剣を受け止める。

剣を振るったのは、白い鎧を着た騎士。

アクアがカムイの横に立ち、

 

「カイン‼」

「アクア様……申し訳ありません。ですが、私は軍師殿からの命を全うせねばならないのです。」

「カイン……私も、ここで退くわけにはいかないの。」

「ご安心を……あなたはここでは死にません。私がそうはさせません。勿論、あなたのお仲間も。」

 

白騎士カインは本気だった。

これには困惑した。

だからアクアは眉を寄せて、

 

「あなたが命じられた命とは何なの⁉」

「……足止めですよ。」

「え?」

 

アクアはイムカの方を見る。

 

イムカは透魔軍師ルフレと、剣を交えていた。

二人は肩で息をし始めていた。

 

「透魔兵たちはどうやら、ある程度殺られたみたいだな。」

「そうですね。ですが……ここからが本番です。」

 

透魔軍師ルフレは手を前に出す。

彼女の放つ魔術を避けながら、自分も放つ。

互いに距離が近付き、離れを繰り返す。

だが、イムカは背後から気配を感じた。

短剣を抜き、その剣を受けとめた。

 

「……アベル!」

 

透魔軍師ルフレは剣をしまい、

 

「さて、おぜん立てはここまで。後は、アベル殿のお好きなように。けれど、当初の目的をお忘れなく。」

「解っていますよ。」

 

黒騎士アベルは笑みを浮かべる。

イムカは押されていく。

 

「イムカ‼」

 

アクアが叫ぶ。

だが、アクアは白騎士カインに阻まれる。

それは他の者たちもだ。

黒騎士アベルは剣で彼女を抑え込みながら、

 

「そう言えば……名を与えられたのかい。イムカ……逆から読むとカムイになるね。」

「……アクア姉様(・・・・・)いわく、簡単な方がいいそうだ。それに、私とあいつは色々と逆だからな。」

「なるほどね。確かにそうだね。では、私もそう呼ばせてもらうよ、イムカ様。」

 

黒騎士アベルは剣を上げて、イムカの腹を蹴り上げた。

 

「がはっ‼」

 

イムカは透魔軍師ルフレの横に転がり、膝を着いて咳こむ。

透魔軍師ルフレはため息をつき、

 

「やれやれ、アベル殿。今殺しては意味がないですよ。」

「ええ、少し強すぎました。」

 

イムカは肩で大きく息をしていた。

瞳を閉じ、開く。

黒騎士アベルを睨むと、竜化する。

黒い翼を広げ、腕を振り下ろす。

彼はそれを避け、

 

「おっと。危ない、危ない。」

 

イムカの手や尾を避け続けた。

だが、イムカの方が限界だった。

動きが鈍くなり、頭を左右に揺らして唸っていた。

透魔軍師ルフレはそれをじっと見て、

 

「……限界のようですね。気持ちとはやっぱり厄介なモノですね。」

 

そして黒騎士アベルを横目で見る。

彼は笑みを浮かべたまま、

 

「うーん、どうやって連れて行こうか。」

「……仕方ありませんね。私がやりましょう。」

「ん?ルフレ卿に、そんな力がおありで?」

「……私は、そういう存在なんですよ。」

 

透魔軍師ルフレは唸りを上げているイムカに近付く。

そして彼女の頭に右手を当てると、

 

「さ、人型に(・・・)戻ってください。」

 

彼女の右手から光が溢れて、イムカを包み込む。

そして人型に戻った。

彼女は倒れ込み、気絶していた。

 

「あなたは、軍師に向いていない。こういう無茶をするから、こうなってしまったのだから。ね、イムカさん(・・・・・)。」

 

透魔軍師ルフレは冷たい視線で彼女を見下ろした。

黒騎士アベルは倒れ込んだイムカを抱え、

 

「……ルフレ卿、随分と不思議な力をお持ちのようだ。」

「ええ、言ったでしょう。これが、私の存在意義なんですよ。」

 

透魔軍師ルフレは笑顔だった。

そして、手を叩く。

 

「カイン殿。御役目ご苦労様です。こちらの目的は済んだので、戻りますよ。」

「……解りました。」

 

白騎士カインは剣をしまい、黒い炎と共に消えた。

透魔軍師ルフレはカムイ達を見て、

 

「では、彼女は貰っていきます。彼女を返してほしければ、希望(カムイ)を連れて王の間まで来てください。運が良ければ、それまでは生かしておきます。なので、早く城まで来てくださいね。」

 

横に居た黒騎士アベルは黒い炎に包まれて、イムカごと消える。

 

「「「イムカ‼」」」

 

アクア、リョウマ、ハイドラが叫ぶ。

マークスは走り出しそうになったカムイの腕を引く。

透魔軍師ルフレはハイドラを見て、

 

「では、お待ちしておりますよ。」

 

消えそうになる彼女に、

 

「待て!ルフレ‼」

「?」

 

透魔軍師ルフレは彼らを見る。

そう、彼女を呼び止めたのはラズワルド、ルーナ、オーディンだった。

透魔軍師ルフレは小首を傾げ、

 

「なんです?」

「……君は、本当にルフレさんなのか。それとも、彼の娘のマークなのか。」

 

ラズワルドは眉を寄せる。

そして続ける。

 

「もし、君が僕らの知るマークなら、解るはずだ。僕はアズール。それに、こっちはセレナ。そして彼はウード。仮に君が、本当に別の世界のルフレさんなら、こっちの方が解るはずだ。ウードは、君の友であったクロムさんの妹、リズさんの息子だ。」

「……残念ですが、私はあなた方の知るルフレ(・・・)でも、異世界のルフレ(・・・)でも、マーク(・・・)でもありません。私は、ただ『透魔軍師ルフレ』としているだけです。」

「……それは、どういう意味だ。」

「私は私、と言うことですよ。異世界より、召喚された客人……いえ、勇者ですか?」

「僕らは――」

「ふふ。それとも、己の欲した対価の為に闘う傭兵の方がいいですか?故郷を救いたいのでしょう。」

「――⁉なぜそれを⁈」

「では、今度こそ退かせて貰います。でも、本当に早く来ないと……アベル殿がイムカさんを殺してしまうかもしれませんよ。」

 

透魔軍師ルフレが消えると、辺りがシンとする。

カムイは両頬を叩き、

 

「行きましょう!イムカさんを助けるために!」

「ああ!」

 

カムイ達は走り出す。

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