自分には罪がある。
この罪は決して消えることなく、自分の胸の中に残るだろう。
たとえ、あの方の笑顔があったとしても……
自分はあの方にとって、取り返しのつかない事をした。
自分はあの方の大切な父君を奪った。
それだけではない。
自分はあの方の人生を狂わせた。
あれは幼い自分は知らなかったのだ。
気付けなかったのだ。
あの日、シュヴァリエ公国で自分は密かに進軍してくる暗夜軍を見た。
けれど、自分はそれを父に報告しなかった。
暗夜軍から突然受けた攻撃。
味方の白夜軍は、多大な犠牲を受けた。
白夜王スメラギを失い、白夜の姫君カムイを攫われた。
全て自分が起こしてしまった。
あの日、見たことを父に話していれば……
自分はあの方にとって、取り返しのつかない事をした。
自分はあの方の大切だったか解らないが、強引に誘拐した。
自分は、自分の仕えるコウガ公国を滅ぼしたフウマ公国に復讐する。
その為に、自分はここまで来ていたのだ。
あの日、白夜王国の姫が誘拐されたと聞かされた。
その対となるように、今度は暗夜王国の王族を誘拐する。
そう、交換対象とするために。
そして、侵入した先で見つけた姫。
彼女の瞳は暗かった。
けれど、強い芯のある瞳だった。
時折見える体の傷。
それが何を意味しているのか、自分には真意は解らない。
だが、誘拐するのならこの姫だと決めた。
あの日の選択が、自分にとって正しかったのかは解らない。
だから自分は救いを求めているのだろうか。
いや、違う。
自分はこの罪を背負っていかなくてはならないのだ。
あの方の為に。
なにより、許せない自分の為に。
忘れてはいけない。
そして、自分はあの方の為に罪と共に背負う。
あの方の笑顔の為に
あの方の居場所を守るために……
自分は、ずっとずっと許せない。
だが、俺の復讐相手はあの方達がとってくれた。
自分はあの方の為に、力を尽くす。
あの日、あの方を連れだしたことを忘れることはない。
あの方のあの瞳を忘れることはない。
奪う自分が、守る自分へとなる。
あの方達の笑顔を。
あの方達の居場所を。
――カムイ達は悲しみを乗り越え、城内へと入った。
カムイは辺りを見渡し、
「……暗夜のお城と少し似ていますね。」
「そうね。透魔王国は暗夜の文化と少し似ているから。でも、白夜の文化に近いものもあるわ。」
「そうなんですか。」
「ええ。だって、白夜も暗夜の始祖竜もまた、最初の生まれはここだったもの。」
「そう言えば、そうでしたね……」
カムイ達は辺りを警戒しながら進んでいく。
しばらくして、ある一室で休息を取る。
アクアは部屋の背景を見て、
「ここは透魔王がいる玉座から一番離れた場所よ。ここから、玉座に向かうには3ルートあるわ。けど、どのルートを使っても、どうしても通らなくてはならない場所があるの。」
「その場所とは?」
カムイは眉を寄せる。
それに答えたのはアクアではなく、
「……大広間だ。」
「そうでした!イムカさんは、すでにこの城を知っているのでしたね。」
「ああ。だが、私の知る城内とは異なることはある。」
「では……」
「だが、この
「え?いつの間に……すごいですね。」
「……当然だ。今回しか、もうチャンスはないからな。やれる事はすべてやる。それだけの話だ。」
イムカは素っ気なくカムイに答える。
カムイは顎に手を当てて、
「では、どうしましょうか。どのルートを使っても、その大広間についてしまうのなら………敵はそこに待ち伏せをしているのでしょうね。なら、全員で一つの道を通りますか?」
と、イムカを見る。
イムカは首を振り、
「いや。あえて、その3ルート全部を使う。」
「え?」
「どのルートを使っても、大広間に行く。そして敵も、そこに待ち伏せしているのは必須。だが、どのルートを使っても、敵は待ち伏せしているだろう。なら、その敵を倒して戦力を減らす。さて、三チームを編成する。白夜と暗夜。これで各一チームずつ作る。」
「最後の一チームは?」
「お前だ。」
「……私ですか。」
「ああ。私はハイドラ様を守りながら、お前についていく。道案内は私がする。白夜は歌姫に頼む。そちらは、あなたでも知る道だ。暗夜はリリスだ。あっちは、あなたでも知らない所がいくつか存在した。」
「解ったわ。」「お任せください、イムカ様。」
二人は頷く。
カムイはリョウマとマークスの元へ行き、
「兄さん。どうか、気をつけて。」
「ああ。カムイを気を付けるのだぞ。」
「それと、イムカの事を頼んだ。」
「はい。」
カムイ達は各メンバーで別れた。
先を進んでいく。
カムイは進みながら、
「イムカさん。この長い廊下………所々部屋がありますが、部屋の中に透魔兵が待ち伏せしていることはありませんか?」
「それはない。」
「どうしてですか?」
「もし仮に、待ち伏せしているのなら気配がするはずだ。いくら操られているとしても、殺気は隠せない。だが、その殺気は感じ取れない。それに、待ち伏せするのならこの先の部屋と、大広間に通ずる道の一つ前の道だ。」
「へぇ。流石ですね。」
「………いや。私は、以前こう言った作戦の作り方を教えてくれた者がいてな。私はその時の経験をもとに、幾つもの作戦を作っているだけだ。」
「その人は?」
「………今は内緒だ。」
「そうですか……」
と、歩いていく。
戦闘を歩いていたジョーカーとスズカゼが立ち止まえり、武器に手をかける。
「カムイ様、ご注意を。」
「敵の気配を感じます。」
「っ!イムカさんの言った通りでしたね。では、皆さん。部屋に突入と共に攻め入ります。武器の準備を。」
「はい!」
扉をフローラとフェリシアが勢いよく開ける。
ジョーカーとスズカゼが先陣をきって突入する。
それに、カムイ達も続く。
――白夜組
リョウマ達はある部屋に入っていた。
その場に待ち伏せしていた透魔兵を倒し、
「皆、無事のようだな。」
「ええ。」
「………どうした、アクア。何か、気になることでもあるのか?」
「いいえ。ただ……」
「ただ?」
リョウマは武器をしまいながら、アクアを見る。
アクアは部屋を見渡し、
「ここは、私が最初のカムイ……私の夫だったカムイが、私にプロポーズしてくれた場所なの。と言っても、私達の結婚は最初から両親同士が決めていた事だったけれど、とても嬉しかった。弟のようにも見ていた彼が、とても凛々しく見えて。けど、やっぱり子供みたいな顔をして……」
「アクア……」
「それは、私ではないけれど、それでも私の中に残る『あのアクア』の気持ちが流れ込んでくる。ふふ、とても不思議ね。」
と、アクアは嬉しそうに、そして悲しそうに微笑む。
だが、アクアに詰め寄るサクラ。
「あ、あの!」
「何、サクラ?」
「さ、差支えがなければ、その……」
サクラはアクアの前で顔を赤くしてもじもじする。
と、カザハナとオボロがサクラの方を掴み、
「その話、じっくりと聞きたいですわ!」
「恋バナです、恋バナ!」
「え?えっと、そうね……ええ。この戦いが終わって、平和になったらたくさん話したいわ。私の知る彼の事を。もちろん、イムカがカムイの時だった時の事とか。」
「は、はい!お願いします!アクア姉様!」
三人は盛り上がっていた。
リョウマは苦笑した後、真剣な顔になる。
「さて、話はここまでだ。気持ちを切り替えて行くぞ。」
「ええ。」
リョウマ達も進みだす。
――暗夜組
マークス達はある部屋に入った。
そこは会談を行うであろう場所。
リリスは奥の扉を見て、
「あの扉の先に、大広間に向かう通路があります。」
「解った。」
マークス達は奥の扉を開けて通路を進む。
と、少し空いている扉があった。
マークスは警戒しながらも、その部屋に踏み込んだ。
そこには敵はいない。
だが、そこは誰かの部屋だったのは解る。
カミラが、部屋に飾られていた一枚の写真立てを見つけた。
「お兄様。」
「どうした、カミラ。」
「どうやらここは、アクアの部屋だったみたいですわ。」
「なに?」
マークスは眉を寄せる。
カミラはマークスに写真立てを持っていく。
その写真を見て、
「確かにこれは、幼いアクアのようだ。」
その写真には、幼いアクアと彼女の母シュンメイ。
そして、父親だろう男性が映っている。
マークスはもう一度部屋を見渡す。
「そうか……ここは、アクアが透魔の姫だった頃の部屋か。」
「お兄様。この写真、アクアに持っていくのはどうかしら。」
「そうだな。形はどうあれ、家族と共に過ごした思い出の品だからな。大切に持っていこう。」
「ええ。そうね。」
マークス達は静かに戸を閉めて、長い廊下を進む。
透魔軍師ルフレは、地下牢にきていた。
牢の中には透魔国民たちがいる。
「………ごきげんよう、皆さん。さて、あなた方に二つの選択肢をあげます。一つは、ここで一生を過ごすか。そして最後は、ハイドラ様の敵を倒すか。さぁ、どちらになさいますか?」
そう言って、透魔軍師ルフレは牢の鍵を開ける。
そして、去っていく。
が、途中で立ち止まり、笑顔で振り返る。
「そうそう。どちらも選ばず、逃げ出した時は…………私が、直接手をくだします。どうせ死ぬなら、後悔のない選択を選んだらどうですか?」
そう言って、再び歩いていく。
透魔国民は選んだ。
逃げ出す者、戦う者と。
この牢に残るという選択を選んだ者はいなかった。
とある一室。
一人の女性が膝をついていた。
ある巫女は手を握り合わせて祈っていた。
「………そう。あなたは逝けたのですね。待っていてください。私たちも、すぐに……」
巫女は立ち上がり、
「私は、私のケジメを。そして、愛しの子供たちの為に。私は、彼らの為の道標を示しましょう。」
巫女は歩き出す。
その後ろを見つめていた男性。
男性は腰になる刀を触り、
「待っているぞ。お前たちが現れるのを。示してくれ。お前たちの選んだ未来を。」
男性も歩き出す。
その決意に満ちた瞳が、燃え上がる。
それは信じているからだ。
己が信じる者達を。
己が信じる者達の選び取る未來を。
彼らは各々進む。
己の信じる未来と仲間の為に。
この先に待ち構えている何かが、己の大切な人でも。
そう。
この戦いには、皆想い入れがある。
敵だろうと。
それはその者にしか解らない。
だが、その想いはいつだって誰かの為。
生きる為のものだった。