ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

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第五話 姉と妹

幼き白き王女は想い馳せる。

あの日、新しくできた病弱な幼き妹。

そして、もう一人の母。

自分は兄と違い、受け入れられなかった。

けれど、幼き妹は可愛かった。

 

自分と同じものが欲しいと、お揃いの簪をつけて喜ぶ。

自分はこの子にとって、良き姉であろう。

弟も生まれ、自分は姉として一層頑張ろう。

もうじき、もう一人の妹も生まれる。

自分はあの子達に色々してやろう。

そう思った。

 

けれど、突然父と妹を失った。

そのしばらくして後、実母()を失った。

大切なモノが突然失われた。

何もできない自分が悔しい。

兄のように剣を取り、共に戦えぬ歯がゆさ。

自分は変わる。

もう大切なモノが失われぬように。

あの日の自分を忘れぬように。

 

 

ーーカムイは目を覚ます。

側に寝ていたリリスも起きる。

カムイはリリスを見て、

 

「おはようございます、リリスさん。」

《おはようございます、カムイ様。》

「……リリスさん、私決めました。真実が解るまで、私は闇夜も白夜も信じます。さすがに全部を全部、心から信じるのはできないかもしれません。それでも、私は信じます。谷底に落ちたギュンターさんも、私たちを逃がす為に囮になってくれたジョーカーさんも、きっと生きて会えると……私は信じます。お父様も、闇夜の兄弟姉妹(きょうだい)も、ミコト様……お母様も、白夜の兄弟姉妹(きょうだい)も……」

《……カムイ様……私はずっと側にいます。カムイ様をお守りします。だから、カムイ様はカムイ様のしたいようにして下さい。》

「ふふ、ありがとうございます。さ、起きましょうか。」

《はい。》

 

カムイは身支度をし、廊下に出た。

 

「起きたか、カムイ。」

 

と、リョウマが歩いてきた。

カムイは彼を見て、

 

「あ、リョウマ…兄さん。おはようございます。」

「ああ、おはよう。……よかった、夢でなくて。」

「え?」

「……いや、お前が帰ってきたのが夢でなくてよかったという話だ。さ、ご飯にしよう。」

 

リョウマは手を差し出す。

カムイはその手を取り、歩いていく。

 

「カムイ、おはよう。」

「お、おはようございます、ミコト様…お母様。」

「……今日は私も朝食を作りました。沢山食べてくださいね。」

 

ミコトは涙を拭い、席を指す。

カムイは席に着き、食事を取る。

しばらくして、駆け足が聞こえて来る。

そして、一人の兵が膝をつく。

 

「お食事中、失礼致します!報告します!北方の山の村々が敵襲を受けています!」

「なに⁉︎あのあたりには今、ヒノカとサクラが……」

「はっ。ヒノカ王女とサクラ王女は村にとどまり、村人たちを避難させています!」

「……わかった!俺もすぐに向かう!母上、後は頼みます!」

「わかりました。リョウマ、気をつけて。」

 

リョウマは立ち上がる。

カムイはリリスを見て、小声で言う。

 

「ヒノカ王女とサクラ王女……私の白夜の姉妹(きょうだい)でしたね。」

《……はい。どうやら危機が迫っているみたいです。どうなさいますか?》

「……決まっています。」

 

カムイは立ち上がり、

 

「リョウマ兄さん!私も行きます!」

「カムイ……いいのか、相手はおそらく暗夜の放ったノスフェラトゥ。だが、場合によっては暗夜兵もいるやもしれん。お前にとっては、辛い選択になるやもしれんぞ。」

「覚悟の上です。それに私は見極めたい。なにが嘘で、真実か。なにが悪で、正義なのか。」

「……わかった。」

 

カムイの決意の目を見て、リョウマは頷いた。

そこに、もう一人駆けてきた。

 

「リョウマ!ヒノカとサクラが危険と聞いて駆けつけた!あたしもいくよ!」

「リンカ、か。助かる。スズカゼはいるか!」

「……はっ。ここに。」

 

天井から、スズカゼが降りてきた。

そして、膝をつく。

 

「スズカゼ、リンカ。カムイの側にいてやってくれ。」

「あいよ!」「御意のままに。」

 

二人はカムイを見る。

カムイも頷き、

 

「お願いします、リンカさん、スズカゼさん。」

 

彼らは馬を走らせた。

 

とある雪に覆われた山奥。

一人の巫女の少女が泣いていた。

 

「ごめんなさい、ヒノカ姉様……。私が足を挫いてしまったせいで……」

「大丈夫だ。民を守る為に頑張ったサクラはとても立派だった。」

 

一人の天馬使いの女性が、彼女の頭を撫でる。

奥の方から唸り声が聞こえて来る。

天馬使いの女性は立ち上がり、天馬に乗る。

 

「村人たちはまだ避難の途中。誰かが残って戦わねばなはない。たとえ劣勢でも、白夜の王女として戦い抜いてみせよう。」

「は、はいっ、姉様……」

 

巫女の少女は杖を握り締める。

 

カムイ達は馬を走らせる。

 

「あ、あのリョウマ兄さん。」

「なんだ?」

「さっきは聞くのを忘れてましたが、ノスフェラトゥとはなんですか?」

「暗夜の邪術師が作り出した意志なき怪物だ。この地は母上が、結界を張って護っておられる。故に、母上が生きている間は暗夜兵は侵攻できない。この結界に入ると、戦意を失うからだ。だからこそ、意志のある人ではなく、暗夜は意志のない怪物を送り込んでくる。」

「そんな……暗夜王国が、怪物を送り込むような真似を……」

「ああ。それにノスフェラトゥは、すでに野生化して自国の民も無差別に襲うと聞いた。暗夜は戦に勝つために、自国の民すらも犠牲にする。」

「そうですか……」

 

カムイは手綱をを握り締める。

そして、カムイ達は山の中腹に来た。

馬を止め、辺りを見渡す。

近くにいた兵に偵察させ、暗夜兵達はまばらに動いている事を知る。

 

「カムイ、敵の数は多く、広範囲に散らばっているようだ。このような時はまず、危険な場所を見極めるといい。俺はあちら側から行く。カムイ、お前はスズカゼ達と共に、反対側からヒノカ達と合流してくれ。」

「はい、リョウマ兄さん!」

 

カムイ達は馬を走らせた。

その背を見て、リョウマは呟く。

 

「……無茶はするなよ、カムイ。」

 

そして、声をあげる。

 

「我らも行くぞ!待っていろ、ヒノカ!サクラ!今助けに行く‼︎」

 

自分も馬を走らせた。

 

カムイはスズカゼ達と共に馬を走らせる。

途中、団体のノスフェラトゥと遭遇し、撃退する。

その中に、暗夜兵がいないことに安堵している自分に気付く。

 

『……いけない。私は覚悟を決めて、ここに来た。私が迷っていては、スズカゼさんとリンカさんが危ない。』

 

カムイ達は、さらに奥へと進む。

そして、少女の悲鳴を聞こえてきた。

 

「キャーー‼︎」

「いけません!急ぎましょう!」

 

カムイ達は急いで、声のする方へ向かう。

 

「サクラ‼︎」

「はああぁぁ‼︎」

 

巫女の少女を襲うノスフェラトゥを、カムイが斬り裂く。

 

「大丈夫ですか⁉︎」

「は、はい……」

 

そして、スズカゼとリンカが残りのノスフェラトゥ達を倒す。

だが、背後からノスフェラトゥの団体が迫り来る。

 

「……私の後ろに!リリスさん、お願いします!」

「は、はい!」

 

リリスは巫女の少女に近づき、「キュウ!」と鳴く。

巫女の少女は後ろに下がった。

 

「私も、共に戦おう!」

「はい、お願いします!」

 

巫女の少女を背に庇い、天馬使いの女性がカムイの隣に立つ。

そして、二人はノスフェラトゥに突っ込んで行く。

スズカゼとリンカが二人をサポートしながら、戦う。

 

「っ痛!」

「だ、大丈夫ですか⁉︎今、治療します!」

 

カムイの怪我を巫女の少女が癒す。

カムイは彼女を見て、

 

「ありがとうございます。えっと……サクラさん。」

「は、はい……」

 

そこに、馬の鳴き声が響き渡る。

 

「無事か!お前たち!」

「「リョウマ兄様‼︎」」

「どうやら無事みたいだな。後は俺に任せろ!」

 

リョウマは次々とノスフェラトゥを切り裂いて行く。

リリスがそっとカムイに語りかける。

 

《カムイ様、先ほどのお怪我は大丈夫ですか?》

「はい。サクラさんが傷を癒してくれました。エリーゼさんと同じくらいの使い手ですね。」

《申し訳ございません、カムイ様……私が戦えれば……》

「いいえ。リリスさんが、サクラさんの側にいてくれているのが分かっているからこそ、私は思いっきり動けたんです。ありがとうございます、リリスさん。」

《……カムイ様……》

 

と、天馬使いの女性の背後にノスフェラトゥが一体勢いよく襲いかかる。

カムイが瞬時に、それ反応した。

 

「ヒノカさん!」

 

カムイの瞳が光り、いつぞやのように頭に竜の角が生える。

そして、手が槍のように大きな手に変わり、敵を吹き飛ばした。

 

「な⁉︎お、お前は……やはり……」

 

だが、カムイが咳き込んで倒れた。

リリスが側により、鳴く。

 

「カムイ!」「カムイ様!」

 

リョウマとスズカゼが駆け寄る。

リョウマが、カムイを抱き上げる。

熱があるようだ。

スズカゼは側いた馬を連れてくる。

リョウマは馬に乗り、スズカゼからカムイを受け取り、

 

「すぐに城に戻るぞ!ヒノカ、サクラ、休息なしで悪いが行くぞ!」

「カムイ……ああ!では本当に、あのカムイなんですね!」

 

ヒノカは涙を流す。

スズカゼが馬に乗り、サクラに手を伸ばす。

 

「さ、サクラ様。お手を!」

「は、はい!」

「後ろは、あたしが守るよ!」

「頼む!」

 

リョウマ達は馬を走らせた。

 

 

ーーマークス達は沈んでいた。

あのフードの者との一件で、暗夜王ガロンによる罰がどのように出るかを考えていた。

 

「……お兄様、これから私たちはどうなるのかしら。」

「……ただでは済まないだろうね。」

「ごめんなさい……」

「エリーゼのせいではないわ。結局は、何もできなかった私たちにも、非はあるわ……」

「でもね……あの人、私に謝ったの。怪我をさせたって……マークスお兄ちゃん、あの人は本当に悪い人?」

 

エリーゼは泣きそうな顔でマークスを見る。

カミラやレオンも、マークスを見た。

彼は眉を寄せ、腕を組んで黙り込んでいた。

 

「……私は父上を信じたかった。あの頃の優しき()を……だが、いつからだろうな。父上が父上じゃなくなったのは……お前たち、あれはもう我らの父上ではない。父上の姿をした何かだ。私はこの後、あの偽物を討つ。その機会を伺う。」

「……それは、あいつの言うことを信じるってことだよね。でも、あいつの言う見えざる敵って何さ。」

 

レオンはジッとマークスを見つめる。

マークスは眉をさらに寄せ、

 

「……禁忌の国。調べてみたが、その資料だけが失われていた。何者かの手によって……。レオン、あのフードの者が先の白夜との戦争にいたのを気づいていたか?」

「……ああ。一人、異様な奴がいた。白夜も、暗夜も、目もくれず、魔法を打ちまかす奴が。それも、決まって犠牲者なしに。けれど、確実に何かを殺していた。もしあれが、見えざる敵っていうならば……確かに、僕らの目には見えない何かがいるのは間違いない。」

 

レオンは腕を組んで、顎に指を当てる。

カミラは胸に手を当て、

 

「……お兄様、私はお兄様について行きます。お父様は、我が子までも見捨てる。それは、王だからこそだと私は思っておりました。でも違った。お父様にとって、私たちは駒でしかない。私は大切な兄弟姉妹(きょうだい)を、家臣(仲間)を守りたいわ……」

「私も!私も、お兄ちゃんたちと行く!私だって戦う!」

「勿論、僕もね。けど、兄さん。僕らはともかく……カムイ姉さんはどうするのさ。今は白夜にいるだろう。ならやっぱり、このままの方が姉さんにとってはいいのかもしれない。」

 

レオンの言葉に、カミラ視線を落とす。

マークスも、視線を落とした。

だが、意味を知らないエリーゼは首を傾げ、

 

「え?カムイお姉ちゃん、白夜にいるの?なら、助けに行かないと!処刑されちゃうかも!」

「いや、それはない。」

 

マークスは即答だった。

エリーゼは眉を寄せて、

 

「どうして?」

「カムイは元々、白夜の人間だからだ。」

「……え……?」

「カムイは白夜王国の王女だ。あれは父上……いや、あの偽物が、シュヴァリエ公国に兵を連れて赴いた日だ。あの日、私も共に行っていた。あの偽物は、白夜王を騙し討ち……白夜王が守ったカムイを無理やり連れ去った。あの時、白夜王の側に駆け寄る人影を見た。おそらくあれは、フードの者だったのだろうな。」

「その白夜王国にしてみれば、カムイ姉さんはやっと帰ってきた家族。おそらく、暖かく迎え入れられてるんじゃない。」

 

レオンは肩を上げる。

そして、真剣な顔つきになり、

 

「けど、カムイ姉さんが白夜王国の人間というのは、内緒にしといた方がいい。それに、おそらくあの城ではギュンターしか知らないんだろ、兄さん。」

「……ああ。だが、まさかお前とカミラも知っていた時は驚いた。」

「私は……半信半疑だったわ。けれど、あの子の置かれている状況を知ってからは……」

 

そう言って、カミラもレオンも視線を落とす。

エリーゼは頰を膨らませ、

 

「どうして、私には教えてくれなかったの!私だって知ってたらーー」

「エリーゼが知ったら、お前は耐えられないだろ。顔に出やすいんだから。それに、抱えきれなくなって、カムイ姉さんに話していたかも。それを知ったら、姉さんはおそらく殺されてた。」

「レオンの言う通りだ。カムイは誘拐されたショックで、記憶を失っていた。だが、カムイが誘拐され、しばらく経った頃だ。白夜の忍びが、カムイを取り戻しに来たのだ。その時、カムイは記憶を思い出した。私を見て怯え、白夜に返してくれと懇願した。けれど、それはできなかった。私は躊躇してしまった。その私の甘さのせいで……カムイは暗夜兵と白夜の忍びの亡骸の前で、返り血を浴びて倒れていた。記憶と心が完全に壊れ、放心状態のあの子をあれ以上苦しませるわけにはいかなかったのだ。もし、自分が暗夜の人間ではなく、白夜の人間だと知れば、あの子はまた同じになってしまう。そう思ったのだ。」

「……マークスお兄ちゃん、ごめんなさい。きっと私、レオンお兄ちゃんの言う通りになってたと思う。でも、私はカムイお姉ちゃんを、本当のお姉ちゃんだと今も思ってる。たとえ、カムイお姉ちゃんが私のことを嫌いになっても……私は……」

 

エリーゼは泣き出した。

カミラはエリーゼを抱きしめ、

 

「ああ、エリーゼ……泣かないで。私も同じよ。」

「ああ……みんな、その覚悟さ。いつかは、こうなるかもしれないって思ってたからね。」

「……エリーゼ、きっとカムイとも分かり合える。そんな日が来るはずだ。それまで、兄弟姉妹(きょうだい)皆で頑張っていこう。」

「うん!」

 

エリーゼは涙を拭う。

マークスは真剣な顔つきに戻り、

 

「……私たちの目的は、あの偽物を討つ。が、機会を得られなければ無理だ。あの偽物は、私達が敵になる事を知っている。故に、当面は ……奴を父上として、見て従う。」

「敵の油断を作るんだね。でも、このあと死刑とかきたらどうする?」

「その時は、相打ち覚悟で私が出よう。」

「……それは僕の方が……」

「いや、私にもしもの事があれば、レオン、お前が兄弟姉妹(きょうだい)を守るんだ。」

「……わかったよ、兄さん。でも、それがない事を祈るよ。」

 

そして、マークス達は暗夜王ガロンに呼ばれた。

 

 

ーーカムイ達は白夜城に戻り、カムイを部屋に寝かせた。

そして、ミコトとリリスが彼女の側についていた。

 

「……母上、いま大丈夫ですか?」

「ええ。大丈夫ですよ。」

 

リョウマが中に入り、ミコトの横に座る。

眠っているカムイを見て、

 

「申し訳ございません、母上。自分が付いていながら、このようなことに……」

「謝る必要はありませんよ、リョウマ。カムイは、竜の力を使ったのです。体の弱いこの子が……いえ、この竜の力を使えば、こうなる事は知っていました。そして安心してください。カムイは、今はぐっすり眠っているだけですから。」

「……母上、カムイは竜の血が濃いんですよね。それは誰に似たのですか?」

「……父親ですよ。私は竜の血を継いでません。あくまで、巫女ですから。」

「それは……カムイの本当の父君ですか。」

「……リョウマ……あなた⁈」

 

ミコトは口に手を当てる。

リョウマはミコトの方を向き、

 

「俺は、父上から聞いています。カムイとは血の繋がらない兄妹(きょうだい)だと。けれど、俺はカムイを本当の妹だと思っております。兄として、カムイを護りたい。母上、俺はあなたの事も護りたい。父上のようにはしたくないのです。」

「……そう。リョウマは知っているのですね……。スメラギ様の事も、この後起こる、私の身の事も。」

「はい……。ミコト母上とカムイがこの城で落ち着いた頃、父上に呼ばれ、カムイとの関係をお聞きしました。そして俺は、シュヴァリエ公国に行く少し前に、あのフードの者に会っています。当時と変わらぬあの者に。その者から聞かされていました。あの日、何が起こるのかを。でも俺は、それを信じられず、父上にも話さなかった。話していれば……」

 

リョウマは拳を握り締める。

その手を、ミコトは優しく包む。

 

「……スメラギ様は知っていました。あの日、自分が死ぬ事を。だからこそ、私に子供達を託したのです。そして、リョウマとカムイを守って下さったのです。でなければ、カムイはあの場で……本当の敵に奪われていた。リョウマにも、身の危険があった。それから守って下さったのです。イコナ様も、ご自分の死期を悟り、私に子供達を託した。私はお二人から託され、お二人の忘れ形見である子供達(あなた達)を、お二人の分まで愛し、成長を見守ってきた。勿論、あなた達は私の大切なもう一人の子ら。それに変わりはありません。」

 

ミコトはリョウマを見つめ、

 

「リョウマ……私は時期に、スメラギ様の元へ行きます。きっと、あなた達に迷惑をかける。あなた達に、辛い選択をさせてしまう。けれど、どうかお願い……皆を護って。貴方だけに、責任を押し付けてしまってごめんなさい。けれど、どうか私を助けないで。私は、私の目的のために、この道を選びます。これから先、起こる出来事から、あなた達を守るために。」

「母上……」

「私は嬉しかったのですよ、リョウマ。あなた達に、母と呼ばれて。家族として過ごせて……。リョウマ、あのフードの者の全てを信じてとは言いません。けれど、耳は傾けてあげて。それができるのは……『カムイ』を知る者だけなのです。」

「……わかりました。母上、どうかご武運を。」

 

リョウマは頭を下げる。

そして顔を上げ、

 

「最後に、お聞かせ下さい。なぜ、タクミとアクアを共に行かせたのですか?タクミは、アクアをよく思っていない。未だに、アクアを退けもにしてしまう。」

「ええ。けれど、タクミはアクアの優しさを知っています。あの子は、抱え込むタイプだから余計意地を張ってしまう。けれど、いつか二人が姉弟(きょうだい)として、共に居てくれると信じています。リョウマ、私はアクアに……カムイを見たのです。一部の者が、カムイを攫われ、責任を感じて取り戻そうとしてくれた。けれど、それは叶わず、代わりにあの子(アクア)を連れて来た。私は、あの子の心を閉ざした姿を見て、もしかしたらアクアのようになっているカムイがいるのではないか、そう思ったのです。けれど、あの子はそれ以上に辛く悲しい想いをしていた。母を失い、年端もいかぬあの子が、どんな想いで生きていたか……あの体の傷を見ればわかります。私はあの子(アクア)の心を癒してあげたい。だからこそ、この白夜へ受け入れた。あなた達の兄弟姉妹(きょうだい)として、家族へとした。アクアは、私にとって大切な子なのです。」

「安心して下さい、母上。アクアも、大切な俺の妹。必ずや、護ってみせます。」

「本当にごめんなさい、リョウマ……。あなたに、重荷ばかり背をわせて。」

「いえ、母上。俺は嬉しいのです。俺を頼ってくれる事を。」

「ありがとう……リョウマ。」

 

そして、リョウマは部屋を出て行く。

リリスはミコトを見上げ、

 

《……ミコト様……先ほどのお話、もしかしてあなたは……》

「リリスさん、カムイをお願いします。」

《……はい、ミコト様。私はいつだって、カムイ様の味方です。》

 

リリスは眠るカムイの側による。

翌朝、カムイは目を覚める。

 

「起きたか、カムイ!」

 

側には、天馬使いの女性と巫女の少女がいた。

カムイが身を起こすと、天馬使いの女性が抱きしめる。

 

「よかった……本当によかった……」

 

カムイは彼女を抱きしめる。

そして、カムイを見て、

 

「覚えているか?私はヒノカだ。お前の姉だよ。」

「……ごめんなさい……私、白夜での記憶は……」

「そうか……いや、すまない。お前が戻ってきてくれただけでも、本当によかった。」

「……あ、あの、助けて下さってありがとうございます。カ、カムイ姉様……私は、姉様の妹のサクラと言います。」

 

天馬使いだった彼女は、白夜王国の第一王女ヒノカ。

彼女は元気満々で、男勝りなところがありそうだった。

そして、巫女の少女は白夜王国の第三王女サクラ。

彼女はヒノカとは違って大人しい子だった。

 

カムイは頷き、

 

「はい……聞いています。お二人を助けに行ったのに、私が助けられてしまったみたいですね。ありがとうございます……ヒノカ…姉さん、サクラさん。」

 

カムイは二人を見る。

ヒノカは手を握り締め、

 

「カムイ……これだけは言っておく。私は、暗夜のやり方は気にくわない。自国の民すらも、犠牲にすると聞く暗夜王国の戦術……そのようなところに、お前を奪われて!どんなに、お前が辛く悲しい想いをしたか!」

「ヒノカ…姉さん……確かに、そうだったかもしれません。ですが、それだけではありません。それだけは、分かってください……」

「カムイ……」

 

視線を落とすカムイに、ヒノカはさらに拳を握り締める。

サクラは胸に手を当て、

 

「カムイ姉様……時期に、タクミ兄様とアクア姉様が帰って来られます。お二人にも、お会いになってみてはどうてますか?」

「アクア…姉様?」

「そうか、カムイは白夜の兄弟姉妹(きょうだい)は聞いても、アクアの事は聞いてないのだったな。アクアは、お前と同じ者だ。」

「同じ?」

「ああ。アクアは、お前が誘拐された後、白夜に誘拐された暗夜の王族だ。」

「え⁉︎暗夜の⁈」

「……安心しろ。酷い事はしてない。あの子は、私たちの大切な姉妹(きょうだい)だからな。歳は多分、お前より上だ。だから、姉になる。」

「……そうですか。」

 

カムイは、暗夜の兄弟姉妹(きょうだい)を思い出す。

彼らの、本当の兄弟姉妹(きょうだい)だと思われる彼女。

カムイは顔を上げ、

 

「……会いに行ってきます!」

 

と、床を出て、歩いて行った。

それを、リリス、ヒノカ、サクラは追いかける。

 

 

弓を携えた少年と歌姫の少女は歩いていた。

少女は立ち止まり、木の陰を見る。

 

「何か……ご用かしら?」

 

そう言うと、木の陰からフードを深く被った者が現れる。

弓を携えた少年は弓を構え、

 

「何者だ!」

「……私は敵ではない、白夜の第二王子。だが、時期に敵になるやもしれん。」

「は?言ってることが、矛盾してるんだけど。」

「……白夜の第二王子、貴殿はもう少し素直になってはどうか。貴殿は知らないだけで、皆に想われ、愛されている。それは、今は亡きイコナ王妃も、スメラギ王も。」

「お前、本当に何者だよ!」

 

そう言って、矢を放つ。

それをフードの者は避けない。

矢はその者の横を通り、木をなぎ倒す。

 

「……あなたは、どうする。」

「……私は、運命を受け入れるわ。そして共に……」

「そうか……」

 

フードの者は背を向ける。

そして、走り去っていった。

弓を構えた少年は、歌姫の少女を見て、

 

「お前、あいつと知り合いか?まさか、白夜をーー」

「安心して、タクミ。私は白夜を護るわ。」

「あっそ。」

 

二人は、白夜城に向かって歩く。

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