ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

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第七話 悲劇

とある執事は思い出していた。

幼き頃自分は、それなりの金持ちの家の坊ちゃんだった。

だが、両親は自分に興味なかった。

自分は両親の愛情を知らずに育った。

そしてついに自分は両親捨てられた……

いや、売られた。

暗夜城から離れた森の中。

その巨大な高い壁に囲われた城。

そこに自分は押し込まれた。

 

元は坊ちゃんだった自分に取って、ここでの生活は苦でしかなかった。

水拭き、窓拭きといった掃除や野菜を取り、切ったりする食事の支度などやることは沢山ある。

自分は何一つできない。

いや、知らない。

できない自分は怒鳴れ、殴られる。

そんな日々が続いた。

 

外階段の一角で、自分は膝を抱えてうずくまっていた。

何度ここを逃げ出そうと思ったか……

だが、ここを逃げ出しても自分には行く当てはない。

何もできない自分は、ここを逃げ出しても死ぬ自信がある。

情けなかった。

悔しかった。

そう思うと、涙がこみ上げる。

 

「……あの、よかったらこれを使ってください。」

 

自分の目の前に、自分を心配そうに見る赤い瞳。

そして、花柄のレースがかかったハンカチ。

 

「え?」

「頰に汚れが付いています。これで拭いてくださいな。」

「あ、ああ……」

 

自分はそれを受け取り、頰を拭く。

自分にハンカチを渡してきたのは、自分よりも幼い少女。

その少女は自分に微笑みかける。

 

「悪いな。これ、汚しちまった。」

「構いませんよ。それは、もともと差し上げるつもりでしたから。」

「は?」

「時々ですが、お見かけしました。一生懸命働くあなたを。」

「無様の間違いじゃないのか。」

「いいえ。どんなに失敗しても、あなたは何度も繰り返し頑張っていた。それは無様ではありません。」

 

自分はさっきとは違う涙がこみ上げる。

ここに来て……いや、生まれて初めて自分は自分を褒めて貰えた。

自分を見てもらえた。

そう思った。

 

「……お前は、こんな所にいて辛くないのかよ。」

「勿論、ありますよ。でも、私は色んな方に支えられてる。そう思うと、心が楽になります。あなたにも、きっとわかる日がきます。少なくとも、私はあなたのことを見ています。」

「……あっそ。」

 

自分は頰を赤くして、視線をそらす。

少女の笑顔は輝いていた。

自分にはない輝きだ。

自分よりも幼いこの少女が頑張っているのなら、年上の自分も頑張らなくては。

ここで逃げたら、自分は本当にダメな奴だ。

そう思う。

 

「カムイ様、ここにおられたのですか?そろそろ、お勉強のお時間です。」

「ギュンターさん。もうそんな時間ですか……」

 

一人の男性がやって来る。

鎧を着た騎士だ。

それに、この少女を『カムイ』と呼んだ。

 

「……え?カムイってこの城の主人の名じゃ……」

「そうだ。この方は、この城の主カムイ様だ。」

「し、失礼しました!そうとは知らず、とんだ無礼を!」

 

自分は立ち上がり、頭を下げる。

どんな罰を受けるか。

知らなかったとはいえ、自分は何ということを……

 

「いえ、無礼な事なんて、何もしてませんよ。」

「え?」

 

自分は顔を上げる。

少女は変わらず、輝いた笑顔を自分に向けていた。

 

「淋しくて、泣きそうだった私の話し相手になってくれた。あなたは、とても優しい方です。」

「それは……」

「また、私の話し相手になって下さい。お願いしますね。」

 

そう言って、騎士とともに歩いて行った。

自分はその後、あの少女について調べた。

自分が知らなくても当然だった。

あの方は体が弱く、部屋をあまり出ない。

あの場で会ったこと自体が、奇跡だったのだ。

自分はあの方から貰ったハンカチを包み込む。

ここで生きる意味を得られた気がする。

 

「俺を鍛えてくれ!いや、鍛えてください!」

 

自分は、ある騎士に頭を下げた。

 

「……何故だ。」

「あの方の側にいても、恥ずかしくない執事なる為です。あの方をお護りする為には強さがいる。だがら……お願いします!」

「……いいだろう。だが、生半可な心意気では持たんぞ。」

「構いません!」

 

自分は普段の仕事も、今までとは違った。

失敗しても、叱られ殴られても、あの方の笑顔を思い出す。

自分は挫ける事なく、仕事をこなす。

そして騎士に鍛えてもらう。

そんな日々を過ごしていた。

今日も、自分は尻餅をついた。

 

「っ痛!ジジイ!絶対叩き潰す!」

「ジョーカー、お前が私を叩き潰すのに、一体何年後か……」

「うるせー!」

 

自分は騎士を見上げ、睨む。

と、駆け足でやって来る人影があった。

 

「ギュンターさん!」

「カムイ様、どうなされたのです?」

「お化けがいたんです!」

「ああ、また怖い夢を見たのですな。大丈夫ですよ。」

 

騎士は膝をついて、泣く彼女をなだめる。

と、少女は自分に気づいた。

目があう。

でも、自分の事は覚えていないだろう。

そう思った。

 

「こんにちは……えっと、あの時お話ししてくれた方ですよね。ごめんなさい。」

 

と、涙を拭う。

そして、あの時あった笑顔で、

 

「お名前を、聞くのを忘れていました。」

「え……あ、はい。私は、ジョーカーと申します。」

 

と、立ち上がって頭を下げる。

嬉しかった。

自分を覚えてくれていた事に。

 

「ジョーカーさんですね。……あ、また頰に汚れが。」

 

少女はハンカチを取り出し、

 

「これを使ってください。」

「で、ですが、汚れてしまいます。」

「……では、いつかジョーカーさんが返して下さい。」

「え?」

「凄くなって、私の側に来て下さい。そうすれば、淋しくないでしょ?私も、淋しくありません。」

「あ……はい。」

 

自分は涙を流していた。

あの時、見透かされていた。

この少女は自分に、また生きる希望を意味をくれた。

自分はこの方の為に生きよう。

この恩を返す為に……

 

 

ーー翌日、カムイ達は炎の広場にやって来た。

多くの人々が集まっている。

みんな嬉しそうに、カムイを見る。

カムイは、顔を赤くして照れる。

カムイ自身、こんなに多くの人に見られたこともなければ、触れ合ったこともない。

その中に、仮面の者もいた。

 

『……約束は守ろう。あなたの命は救わない。そして、カムイが魔剣を手放せないのも、やはり必然なのだろうな。……救える命と救えぬ命。それでも私は、やり遂げる。』

 

そこに、ミコトとリョウマがやって来る。

ミコトは、民達にカムイを紹介する。

人々は歓声を上げる。

ミコトは、カムイを見て微笑む。

リョウマは見た。

人混みの中、あのあのフードの者(彼女)と同じような者がいたのを。

ただ違うのは、その者は身に纏う禍々しいオーラがあった。

得体の知れない何かを。

その者が、ミコトとカムイの近くそっと近づいて行く。

が、止まる。

その者の首には、短剣が突きつけられたからだ。

 

「そこまでだ。魔剣の暴走はさせない。」

「いや、魔剣の暴走は必然だ。やはり、ミコトを助けたいか?」

「……助ける必要はない。約束したからな。私は、あなたとも約束した。だから、止めるのだ。」

「そう……だったな。だが、私が暴走させるのではない。なぜだか分かるか?それは、傍観者であったお前自身が動いたからだ。そして、あの者も。」

「……まさか……!」

 

フードの彼女は辺りを見渡す。

そこに、もう一人同じような人物を見つけた。

フードの者を離し、カムイとミコトの側に駆け寄る。

 

「魔剣を捨てろ‼︎」

「え……?」

 

だが、遅かった。

カムイの腰にあった魔剣が、暴れ出す。

それが宙に浮き、大きな闇を作り出す。

フードの彼女は地面に手を着き、魔法神を作り出す。

それとは、相反するような力がぶつかり合う。

そして、近くにいた人々を結界のような何かが守る。

宙に浮いた魔剣は爆発する。

その刃の欠片がカムイを襲う。

それを、ミコトが抱きしめて守る。

突き刺さった刃の破片は燃えて消えた。

ミコトは、カムイの腕の中で倒れる。

 

「無事……ですか……カムイ?どこも……怪我は……ありませんか?」

 

ミコトはカムイの顔に手を当てる。

 

「は……い……」

「良かっ……た……」

 

ミコトの腕が地に落ちた。

カムイは見た。

彼女から、血がたくさん流れ出る。

自分の手にも、彼女の血がついている。

瞳を揺らす。

 

「……お母……様……お母様‼︎」

 

カムイは、ミコトを抱きしめた。

ミコトの白夜を護る結界が消え、フードの彼女が作った結界も消えた。

サクラが、怪我をしたミコトに駆け寄ろうとするのを、リョウマが止める。

そして刀を抜き、

 

「貴様、何者だ‼︎」

 

フードの彼女が刃を向けていたものではなく、魔剣の力を暴走させたもう一人のフードの者を斬り裂く。

だが、それを簡単に避け、笑みを浮かべていた。

リョウマの後ろで、フードの彼女は膝を着き、

 

「……ゴフ‼︎」

 

血反吐を吐く。

そして、魔剣の刃の欠片をが腹に刺さったのを抜く。

それも、燃えて消えた。

アクアが彼女に駆け寄り、

 

「……ひどい怪我‼︎」

 

サクラが駆け寄り、治癒をかける。

だが、そのサクラを突き飛ばして、

 

「……私のことはいい。構うな……」

 

そして、腰にあった剣を抜き、リョウマに向けられた剣を受け止める。

 

「……必然を変えるのは、無理なのだよ。」

「それを打ち壊すために、私がいる!」

「お前では無理だ。何故なら、君もまた、私と同じであり……あの方の望む破滅の一部なのだから。」

「黙れ‼︎」

 

フードの彼女は、その者と刃を交える。

だが、再び彼女は血反吐を吐いた。

 

「ゴフ……‼︎」

「……お前は、己を犠牲にし過ぎだ。そして、お前の中の呪いが、お前を殺す。後は、『カムイ』が堕ちるのを待つだけだ。さぁ、あの方のために、その力を見せてみろ。」

 

その者は、突如消えた。

リョウマが、フードの彼女に近づき、

 

「大丈夫か。」

「白夜の第一王子……私を気にかける暇があったら、民を守れ。『カムイ』の……竜の暴走が始まる。」

 

そう言って、胸を押さえていた。

リョウマ達は、カムイを見る。

カムイは震え出し、彼女の周りには禍々しいオーラが囲い出す。

そして、それがカムイを包み込む。

彼女の姿は人から、白銀の……いや、少し黒みがかった角の生えた四つん這いの竜へと変わる。

羽を広げ、角や尾を振り回して、家を、石像を壊す。

タクミは眉を寄せ、

 

「え……⁉︎あ、あれは……⁉︎」

「古の神……竜!」

 

リョウマがハッとした。

カムイの竜の尾が、近くにいた家族に襲いかかる。

それを、フードの彼女が剣で受け止める。

 

「……やはり、理性を完全に失っているか……」

 

だが、力負けしているのはフードの彼女。

カムイの爪に裂かれそうになる彼女を、リョウマが抱えて避ける。

リョウマは気付く。

彼女の余りの軽さに。

そして、彼女に触れて感じる懐かしさと悲しみ。

自分の中にある罪悪感と後悔を。

 

カムイの暴走は続く。

そこに歌声が響き渡る。

 

「ユラリ〜、ユルレリ〜♪」

 

その暴走するカムイに、アクアが手を広げて歌を歌いながら近づく。

彼女の周りを、水が覆う。

リョウマはフードの彼女を下ろし、アクアに駆け寄る。

 

「よせ!危険だ‼︎」

 

だが、彼女の周りの水が彼を弾く。

彼女は歌い続け、カムイに近く。

 

「ユラリ〜♪ユルレリ〜♪」

 

彼女の胸元にあるペンダントが、光を放つ。

カムイはそれに反応し、恐るように後退する。

アクアは優しく微笑み、彼女に近く。

カムイは咆哮をあげて、アクアを切り裂く。

 

「きゃあ‼︎」

 

サクラの悲鳴が響く。

アクアの歌が止まり、倒れこむ。

しかし、再び彼女の歌が辺りを覆う。

そして、彼女とカムイを水が覆う。

カムイが、アクアの首を抑え込む。

アクアは、カムイの竜の手を優しく包み、

 

「殺してもいい……だから戻ってきて……」

 

カムイは震え出し、アクアを離す。

水がカムイを包み込み、彼女は人の姿へと戻る。

 

「記憶の封印は……もういらない。」

 

フードの彼女は小さく呟き、その場から立ち去る。

カムイが人の姿になり、頭を抱える。

カムイは思い出す。

あの日、何があったのか……

 

ーーシュヴァルツトゥ公国に、父スメラギと兄リョウマと共に出かけた。

カムイ(自分)は、広場で噴水を見ていた。

すると、噴水の水がカムイ(自分)に向かって襲いかかる。

そう、まるで何かの意志があるように。

 

「カムイ‼︎」

 

それを兄リョウマが、カムイ(自分)を抱えてた。

そして、父スメラギが水を斬り裂いたのだ。

父スメラギはカムイ(自分)を抱きしめた。

 

「カムイ……良かった……無事で!」

「父上様?」

 

その時だ。

父スメラギの後ろから、声が聞こえたのは。

 

「放て。」

 

そして、父スメラギの背の向こうから無数の矢が飛んできた。

父スメラギは、リョウマを突き飛ばす。

 

「父上‼︎」

 

だが、それと同時にカムイ(自分)は、水の中に引っ張られた。

 

「くそっ!カムイ‼︎絶対に渡しはせぬ!我が愛しき子らを‼︎」

 

それを、父スメラギが広い上げ、カムイ(自分)を庇うように矢を受け止めた。

 

「愚かだな、白夜王スメラギよ。これは必然。全ては神の意志だ。」

 

父スメラギは、カムイ(自分)の前で倒れ込む。

兄リョウマが近寄ろうとするのを、フードを深く被った者が止めた。

 

「離せ!父上!カムイ‼︎」

「お前を、死なせるわけにはいかない。」

 

そして、兄リョウマの腹を殴った。

彼は膝を着き、お腹を押さえながらカムイ(自分)を見る。

 

カムイ(自分)は父スメラギを揺らす。

だが、彼は動かず、血だけがたくさん流れ出る。

そして、カムイ(自分)の側に暗夜王ガロン(お父様)が居た。

カムイ(自分)の髪を掴み、

 

「お前だ。お前がカムイだな。お前は生かしてやろう。我が子としてな。くはははは!」

「兄さん!リョウマ兄さん!助けて!父上様‼︎」

 

カムイ(自分)は泣き叫びながら、二人を呼んだ。

けれど、それは虚しく散ったのだ。

 

カムイは地面に手をついて泣いていた。

 

「お父様……父上様‼︎」

「……カムイ、大丈夫?」

 

アクアが彼女を抱きしめる。

カムイもアクアを抱きしめ、

 

「すみません、アクアさん……私のせいで……怪我を。」

「気にしないで。私は、私にしかできないことをしただけよ。それに、私を傷付けたのは、あなたの中にある……神祖竜の血よ。」

「……え?でも、神祖竜は暗夜王族の……ですか?でも、私は白夜の生まれのはず……」

 

カムイが顔を上げる。

リョウマが膝を着き、

 

「ああ。俺たち白夜王族も、暗夜王族と同じく神祖竜の血を引いている。暗夜の闇竜と対を成す、白夜の光竜の血だ。だが、竜の……神の姿になれる者など、神話の世界だけだと思っていた。」

「そうね……神祖竜の血を引く王族、中でも特に血を強く継ぐ者だけが、その姿を竜に変えられるというわ。」

 

アクアも付け足した。

カムイはハッとして、

 

「そうです!町の人たちは⁉︎」

 

辺りを見渡す。

家や広場はメチャクチャになり、倒れこんでいる人もいる。

 

「そんな……町が……‼︎」

「……いいか、カムイ。これが暗夜王国のやり方だ。おそらく、あの魔剣を持たせたのは、暗夜王ガロンだろう。」

「はい……」

「罠だったのだ。全て……お前が危機を乗り越え、白夜に救われて城に着くことまでも……全ては奴の計画だったに違いない。そうやって、お前を送り込み……魔剣をもって、この国を……母を……」

「どうして……どうしてここまで!私は……私はどうやって詫びたら……いいんですか……あの人に教えられていたのに……それでも、お父様から頂いた物だからと……手放せずに……私のせいで……」

「詫びて済むような話じゃないだろう‼︎お前のせいだ……‼︎やっぱりお前は、スパイだったんだ!お前が来たから、こんなことになったんだ!お前さえ現れなければ、母上も……町のみんなも……‼︎」

 

タクミはカムイを怒鳴りつける。

リョウマは立ち上がり、

 

「おい、タクミ。よせ。」

「それは、今言っても仕方のないことよ。」

 

アクアはタクミを見る。

だが、タクミはアクアを睨み、

 

「うるさい!お前だって、同類だ!アクア‼︎あんたも、カムイも、出て行け!この疫病神‼︎」

「タクミ‼︎」

 

リョウマは、タクミの頰を叩いた。

リョウマは拳を握りしめ、

 

「よく聞け、タクミ。カムイも、アクアも、俺たちの大切な兄弟姉妹(きょうだい)だ。それに周りをよく見ろ。死者は……母上だけだ。町の者たちは、怪我こそしたが命には別状ない。あのフードの者が、護ったおかげだ。それに……母上も知っていたのだ。今日、この場で死ぬことを。そして、この俺も。」

「リョウマ様の言う通りです。タクミ様。ミコト様は仰っていた。これは避けられない運命……必然なのだと。全ては、暗夜王ガロンの……いえ、もっと恐ろしい悪魔のなせる業と……」

 

こちらに歩いてきた軍師ユキムラが歩いてきた。

タクミは眉を寄せ、

 

「……なん……だって⁉︎……なら、どうして、止めなかった!どんな理由があろうと、止めるべきだったんだ!」

「だが、これは母上の意志だ。タクミ、お前の気持ちは痛いほど分かる。だが、母上の気持ちを察すれば……お前だって分かるはずだ。」

「……くっ!けど‼︎」

 

そこに、スズカゼが駆け込んできた。

膝を着き、

 

「失礼いたします!たった今知らせが……!」

「何にがあった!」

 

リョウマはスズカゼを見る。

スズカゼは顔を上げ、

 

「国境より、暗夜王国の大軍勢が、白夜王国に攻め込んで参りました!」

「おのれ暗夜軍‼︎」

 

リョウマは刀に手をかけ、軍師ユキムラを見る。

 

「すぐに兵を率いて迎え討つ!準備せよ‼︎」

「すぐに!」

 

軍師ユキムラは近くにいた兵に命じ始める。

カムイは拳を握りしめ、覚悟する。

彼女は立ち上がり、

 

「……私も行きます!行かせてください、リョウマ兄さん!私は、確かめたいんです!今度こそ、自分の成すべき事を‼︎」

「だが、カムイ。お前は武器を持たない。そんな状態で行けば、命に関わる!」

 

リョウマは腕を組んで、カムイに怒鳴る。

それでも、カムイはジッとリョウマを見続けた。

すると、破壊された中央の石像が光り出す。

否、その中央に刺さっている剣が光っていた。

カムイはそれを見て、

 

「黄金の刀……?」

「……あれは……まさか、伝説の……神刀『夜刀神』か!本当に、この白夜王国に祀られていたのか!」

 

リョウマは、驚きながら見た。

軍師ユキムラも、再びやってきて付け足す。

 

「リョウマ様が、スメラギ王から受け継いだ『雷神刀』。タクミ様が、ミコト様から受け継いだ『風神弓』。この二つが闘いの神を宿す武具だとすれば、その『夜刀神』は資格持つ者だけが手にできる、この世に救いをもたらす唯一無二の刀。それが、あそこにあったなんて……」

「救いをもたらす刀……やとの……かみ……」

 

カムイはそれを見て、呟く。

そして、自分の中にどこか懐かしく、辛い感情が芽生える。

けれど、自分はそれと同じくらいこの神刀と共に、何かをしなければならない。

そう思った。

その気持ちに応えるかのように、剣が岩から外れて宙に浮く。

そして、カムイの前に来たのだ。

カムイはそれを握ると、光は収束された。

 

「……『夜刀神』が、カムイを選んだ……⁉︎」

「まさか、カムイが……世界を救う英雄……?」

 

リョウマとタクミは、夜刀神を握るカムイを見る。

ヒノカとサクラも、カムイを見つめていた。

 

「カムイ……」「カムイ姉様……」

「…………」

 

そんな中、アクアだけはカムイを悲しく見守っていた。

 

 

ーーマークス達は三団体で動いていた。

その中で、自分達は兄弟姉妹(きょうだい)は、馬を懸命に走らせていた。

カミラは飛龍だが、彼女も彼らと共に急ぐ。

 

「急ぐんだ、お前たち!このままでは、カムイが実の母を失う。そうなれば、カムイの竜の暴走が始まり、白夜王国は滅びる!」

「……マークス兄さん、気持ちは分かる。けど、兄さんらしくない。どうしたのさ。」

「そうだよ、マークスお兄ちゃん!カムイお姉ちゃんのお母さんが、危ないのはわかってよ。それに、お姉ちゃんの竜の暴走って?」

「それも、白夜王国が滅びるなんて……そう簡単には……」

 

レオン、エリーゼ、カミラがマークスを心配そうに見ている。

マークスは手綱を握りしめ、

 

「……今ならば、あの者のいう必然が何なのか分かる。私は見たのだ。カムイは……自らの意志とは関係なく、白夜王国を破壊する。そして、母親を失う。あの魔剣によって……これから先、あの子は我らの手を取れば白夜の兄弟姉妹(きょうだい)を失う。」

 

と、斜め前の方で、暗夜軍と白夜軍が戦闘しているのが見える。

 

「……暗夜軍が戦闘を行っているということは、白夜王国の王妃が死んだということ。すまぬ、カムイ!だが、これ以上失わせぬはしない!カミラ、レオン、エリーゼ!お前たちはこのまま進め!そして、カムイと合流するんだ!」

「兄さんは?」

「私は……白夜王国の第一王子リョウマに会ってくる!」

 

マークスは馬を横に走らせて、戦場の方に行く。

 

ーーカムイを逃がすため、囮となったジョーカー。

彼は、白夜兵を巻いてからはカムイの後を追っていた。

そして、カムイが白夜王国にいると聞き、白夜王国に入っていた。

フードで顔を隠し、カムイの居所をを探る。

すると、話し声が聞こえて来る。

 

「ねえ、聞いた。」

「知ってるわよ!闇夜に攫われていた王女様が、帰ってきたのでしょう。」

「私は見たわよ。さっき、家族で買い物をしてらしたわよ。」

「ウソ⁉︎あたし、見に行こうかしら?」

「やめなさいよ。やっと家族で過ごせるんだから!」

「そうね、そっと見守りましょう。」

 

ジョーカーは建物に隠れ、聞いていた。

 

『暗夜に攫われていた王女……?まさか、カムイ様か?だとしても、俺の心は決まっている。』

 

ジョーカーは、その買い物をしているという白夜の王族を捜していた。

そして見つけた。

楽しそうに、けれど少しぎこちない姿で買い物をしていたカムイの姿。

そこには、闇夜の兄弟姉妹(きょうだい)とは違う兄弟姉妹(きょうだい)の姿。

そして、母親らしい女性との触れ合い。

ジョーカーは、それをそっと見守った。

たとえカムイが暗夜の王族でなくても、自分はあの方に仕える。

そう彼は、あのとき決めた。

闇夜ではなく、カムイ自身に仕えることを。

たとえ、この手が汚れても、どんなに蔑まれても、あの方の為に生きると……

 

その翌日だった。

カムイの持っていた魔剣が爆発し、彼女の母の命を奪った。

彼女はその悲しみに飲まれ、その姿を竜とかした。

ジョーカーは瞳を揺らし、駆け寄ろうとした。

けれど、あの優しきカムイがこれ以上誰かの命を、己のせいで失ったと知ったらどれだけ悲しむか。

ジョーカーは、白夜の人間を助けることにした。

そして、カムイを止めてた歌姫の少女に感謝した。

だが、悲しみに包まれていた中、彼らは動く。

攻めてきた暗夜から、この白夜(自国)を守るために。

ジョーカーも動く。

カムイを守るために。

彼女がこれ以上、大切なモノを失わぬように。

 

 

リリスは亡くなったミコトの側により、

 

《ミコト様……約束は守ります。何があっても、カムイ様の側に……》

 

リリスは涙を拭い、カムイの側による。

アクアはカムイにあるひし形の宝石の球を渡す。

 

「カムイ、これを。」

「これは?」

「それは竜石。あなたの中の、竜の血を抑えるもの。使い方に慣れれば、竜化もできるようになると思うわ。」

「そう、ですか……。これは、リリスさんのとは少し違うんですね。」

 

カムイは、近付いてきたリリスの抱える竜石を見る。

アクアもそれを見て、

 

「……そうね。その子のそれは、その子の為だけの竜石。それは誰から?」

 

カムイはリリスをジッと見てると、リリスは頷く。

カムイはアクアを見て、

 

「これは、フードの者です……えっと、女の方の方です。色々言ってくる人の方です。見た目的には強そうだはないですが、物凄く強い方なんですけど。」

「…………そうね。その人が誰かは分かったわ。そう、彼女が……」

 

アクアら少し間をあけてから言った。

アクアの中では少しだけ、彼女を同情していた。

無論、それはリリスも、である。

リョウマが馬に乗ってやって来た。

 

「カムイ、お前はヒノカたちと共にいるんだ。俺は馬で先に行く。」

「は、はい!リョウマ兄さん!」

 

リョウマは馬を走らせる。

カムイ達も、国境に向かって動き出す。

 

 

ーーフードを深く被った少女は、白夜軍と暗夜軍の戦闘を見ていた。

それは探していたからだ。

白夜王国の第一王子リョウマと暗夜王国の第一王子マークスを。

彼らが刃を交えるのを待っていた。

あの白夜王国の炎の広場で、受けた腹の傷を抑える。

そして、見つけた。

二人は刃を交えていた。

彼女は動き出す。

 

リョウマとマークスは迎えあっていた。

 

「俺の名は、白夜王国第一王子リョウマ!」

「……私の名は、暗夜王国第一王子マークス!」

「俺は、貴殿に一騎打ちを望む!」

「ああ……受けよう!」

 

二人は剣を構え、幾度と刃を交える。

マークスの後ろでは、暗夜軍が白夜軍と戦っている。

彼と話せる絶好のチャンス。

だが、これではマークスは彼と話せない。

その二人の間に、フードを深く被った少女が左手に長い剣と右手に短剣を持っていた。

それで、マークスの剣を長剣で受け止め、短剣でリョウマの刀を受け止めた。

 

「お前は‼︎」「貴様‼︎」

 

二人は、そのまま彼女を見た。

彼女はその状態で、

 

「この状態で話を聞け。白夜の第一王子、暗夜の第一王子には監視が付いている。故に、私を通して話せ。」

 

マークスはジッと、リョウマを見る。

 

「そういう事か。感謝する……リョウマ王子、私は暗夜王ガロンを討つ。」

「な……に?」

「我が父は、もうこの世にはいない。今、暗夜にいるあの王は……父の姿をした何かだ。だが、あの偽物を打ち倒しただけでは意味がないのだ。暗夜と白夜、双方が力を合わせぬ限り。」

「……それを、信じろと言うのか。」

「私は、知っている。暗夜と白夜が手を取り合っていける未来を。共に戦える未来を。」

 

マークスは目をそらさない。

リョウマも、この意味がわかる。

彼の目に、嘘はない。

 

「……すぐに信用してくれとは言わない。だが、どうか頼む。」

 

と、フードの少女が血を吐く。

リョウマは彼女を見て、

 

「やはり、あの時の傷が!」

「……気にするな。ここまで来たのなら、教えておく。貴殿らの仲間の中に、敵はいる。だが、その者は気付いていない。その者の目や耳を使って、奴は貴殿らの情報を得ている。あいつは心に宿る。心の闇に。だがらこそ、お前達ならば気づけるはずだ。守り通してみせろ。国も、民も、兄弟姉妹(きょうだい)も、家臣(仲間)も……。その為に、私はカムイを拐う。」

「なんだと⁈」

「どういうつもりだ!」

「……真の敵は、カムイという名の器が欲しいのだ。生きていようが、死んでようが関係ない。本人に自覚させる為にも、一度見えない敵を目視させる必要がある。そして、貴殿らに意志があるのであれば、汝らにもそれを見せれるようにする。だが、今は危険だ。だからこそ、敵同士であるフリをしろ。白夜の第一王子、カムイをこの場で救いたいのなら、私に従え。そして見極めろ。真の敵を。暗夜の第一王子、機会を見誤るな。忘れるな、敵の目と耳はすぐ側にある。そして拐う合図は、カムイの選択のとき。」

 

そして二人の剣を弾く。

距離を開け、

 

「聞け!白夜王国の兵よ!暗夜王国の兵よ!汝らの敵を見誤るな!汝らの選択が、世界の破滅を呼び寄せる!見極めろ、汝らの大切なモノの為に‼︎」

 

彼女は地面に手をつき、白夜と暗夜を岩で別ける。

それは大きな壁へと変わっていく。

マークスはリョウマが見えなくなる前に、

 

「リョウマ王子、もし我が話を信じてくれる時はカムイを使ってくれ。私たちにとっても、カムイは大事な兄弟姉妹(きょうだい)。それは、貴殿らも同じだろう。たとえ……血が繋がっていなくても。」

「……貴殿は何を知っている。」

「私は夢を見たのだ。そして知った。彼女のいう必然を。彼女のいう私の大切なモノたちのことを。貴殿もまた、私と同じ。私は、あの子にかけてしまった鎖を解き放ちたい。あの子の……笑顔を取り戻したいのだ。そして、あの夢のような未来を、時間を取り戻したいのだ。きっと、貴殿にも分かる。貴殿は、そういう男だ。」

 

そう言って、マークスはリョウマからは見えなくなる。

マークスは後ろを振り返り、叫ぶ。

 

「一旦引くぞ!態勢を整える!」

 

そして、馬を走らせる。

リョウマは、マークスの言葉の意味を考える。

もしかしたら、自分が見た夢と近いものを見たのかもしれないと。

リョウマは振り返り、叫ぶ。

 

「一旦引くぞ!態勢を整える!」

 

リョウマは馬に乗り、駆ける。

 

彼らはカムイの元へ集う。

運命の選択が近付いていた。

それと同じだけ、破滅への道が進む。

彼らが、選び取るのはどちらか。

救世か、破滅か……

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