ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

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第八話 選択のとき

黒き国の王子は想い馳せる。

懐かしき、少年時代を。

自分の憧れた()の姿を。

幼き頃、自分には沢山の異母兄弟姉妹(きょうだい)がいた。

そして父には多くの妻がいた。

父は優しかった。

自分の母エカテリーナ以外の妻は、無理やり父に嫁がされた。

名のある貴族の娘たち。

父が彼らを拒めば、国は落ちる。

父は全てを愛していた。

子も、妻も。

 

自分は、そんな中生まれた。

正妻の子として、真の跡継ぎとして、第一王子として。

自分は、周りの大人達の望む姿でなくてはいけない。

けれど、自分はそれが苦手だった。

剣も、王族としての振る舞いも。

そんな時、父が自分の頭に手をやって撫でた。

 

「よいか、マークス。お前は皆の為に頑張ねばならぬ。」

「ですが、父上……私には……」

「お前しかおらぬのだ。お前が兄弟姉妹(きょうだい)を守らねばならぬ。お前のやりたいように、お前の想うがままに進めばよい。」

 

そう言って、腰にあった剣をくれた。

神器『ジークフリート』、父が王位を継がれた時に先代から受け継いだモノ。

それを自分にくれたのだ。

それを大切に握りしめ、

 

「……父上……わかりました。私は努力します!」

 

この日、自分は決めた。

この()のようになりたいと。

けれど、周りの大人達の醜い争いは続く。

自分は異母兄弟姉妹(きょうだい)達との交流を試みても、周りが許さなかった。

異母兄弟姉妹(きょうだい)達の母による父へのアプローチ。

彼らは、自身の子を使う。

次第に、母の様子がおかしくなった。

まるで何かに囚われるかのように、魘された。

そして、あっという間に死んだ。

父は悲しみに溢れ、王城からよく抜け出しては湖で泣いていた。

 

ある日、父がシュンメイと言う女性を連れて来た。

()の第二の正妻として。

彼女を愛し、けれど、どこか儚げに接する。

彼女には子がいた。

()の子だと。

彼女の子は、酷い仕打ちをされた。

多くの大人に、異母兄弟姉妹(きょうだい)達に。

何もできない自分が悔しかった。

 

そして父はあの日から、おかしくなったのかもしれない。

新しく入ってきたあの女性が、亡くなった。

遺体はなく、父はまたしても悲しみにくれた。

その日から、暗夜の王の周りは災厄が襲う。

他の妻達が次々と亡くなり、子らは王位争いを始めた。

自分も、それに巻き込まれていった。

 

争いが終わり、残った異母兄弟姉妹(きょうだい)と共に、自分は歩んだ。

すぐには仲良くはなれなかった。

けれど、兄弟姉妹(きょうだい)なのだ。

自分は諦めず、父の言葉を信じて歩む。

 

妹は愛情深い子で、他の兄弟姉妹(きょうだい)も大切にしている。

弟は聡明だった。

自分にはない、才能に溢れていた。

その実力故に、暗夜のもう一つの神器『ブリュンヒルデ』を継承した。

末の妹は元気だった。

王位争いをしていた頃、彼女は赤子だった。

だがらこそ、彼女の笑顔はこの暗き国の光だった。

 

そしてあの事件が起きた。

シュヴァルツトゥ公国で父は白夜王を殺し、白夜王国の王女を誘拐した。

彼女の恐怖と悲しみに満ちた、あの顔が忘れられない。

自分は彼女の元へ何度か様子を見に行っていた。

彼女には記憶の混乱があり、自分を白夜王国にいる兄と間違えていた。

次第に、妹達も遊びに来るようになった。

当時、彼女の遊び相手としていた少年が彼女を外に連れ出した。

それが悲劇を生んだ。

彼女は白夜の忍びと出会い、記憶を思い出す。

自分を見る彼女の目が変わった。

恐怖や悲しみに満ちたあの瞳。

そして、帰りたいと望む彼女への想い。

私は躊躇してしまった。

白夜の忍びが彼女を連れ出す。

けれど、それは罠だった。

自分がそれを知り、駆けつけた時にはもう遅かった。

彼女の記憶と心は完全に壊れ、放心状態が続いた。

自分は決めた。

この子の兄になる事を。

 

彼女は時折、思い出す。

あの日の悲劇を。

怖いと言って恐怖し、泣き出す。

けれど、夢は覚えていない。

彼女の頭を撫で、

 

「……大丈夫だ、カムイ。お前の怖がるお化けは、私が退治しよう。側にいて、お前を守ってやる。」

 

自分は彼女のそれを打ち切るため、彼女の部屋の下で鍛錬するようにした。

それが彼女の心を安心へと導いたかはわからない。

けれど、これは自分にとっての事でもあった。

父の変貌ぶり。

あの優しき父が、国を、民を平気で犠牲にするようになった。

恐ろしかった。

認めたくはなかった。

いつか、元に戻ると信じて……

 

彼女が剣を持って、鍛錬を共にやるのは楽しかった。

嬉しかった。

けれど、それと同時に恐れた。

彼女の体を。

まるで呪いであるかのように、時折体が弱くなる。

熱を出せば、そのままどこかへ連れて行かれてしまう。

もう会えなくなるのではないかという恐怖。

それくらい、彼女は脆く、病弱であった。

 

父が白夜王国への進軍を本格的に決めた。

あの子の故郷。

そして父は、あの子も使うと言った。

あの子に、自身の故郷を襲わせると……

あの子を守りたい。

けれど、自分は父を信じた。

いや、信じたかった。

 

あの子が父から魔剣をもらった日、夢を見た。

あの子が、これから行く国境の偵察。

白夜王国の兵が待ち伏せしているのを。

不安に駆られた。

そして、本当に白夜王国の兵がいると知らせが入った。

 

夢は続いた。

これからのあの子の選択。

白夜王国の手を取れば、あの子は暗夜の敵となり自分の前に現れる。

自分と末の妹の命、そして父の命を元に、彼女は平和をもたらす。

 

暗夜王国である自分達の手を取れば、あの子は故郷である白夜の敵となる。

愛しき兄弟姉妹(きょうだい)達に剣を向け、兄と弟の命を奪った。

多くの白夜の者達の命を奪った。

そして、教えてくれた。

あの父が偽物だと。

そして彼女は平和をもたらした。

 

自分たちの手もとらず、白夜の手もとらないあの子の姿があった。

見えない敵、それらと立ち向かう。

両国の手を借りて。

けれど、この夢は曖昧だった。

だが、覚えている。

暗夜と白夜が手を取り合い、共に戦い、平和をもたらす。

あの夢のような時間。

 

けれど、その未来の先は破滅へと続いていた。

本当の敵を倒さねば、平和への道はこない。

滅びゆく世界で、彼女の悲しみの顔を覚えている。

泣きながら、謝る彼女の姿。

約束を守れなかったと、泣くあの子の姿を……

 

 

ーーカムイはヒノカ達と共に、国境前の平地へ向かっていた。

と、横の方から暗夜兵が襲って来た。

カムイ達はそれを撃退する。

が、カムイの背後に敵が迫る。

 

「カムイ!」

 

ヒノカが叫ぶと共に、カムイの前に一人の男性が立つ。

そして、カムイを襲いかかる暗夜兵を短剣で斬り裂いた。

 

「カムイ様!ご無事ですか!」

「ジョーカーさん⁉︎」

「合流が遅くなり、申し訳ありません。このジョーカー、只今よりカムイ様に従います!」

 

カムイは目の前に現れた彼を見る。

それは、ジョーカーだった。

ヒノカが薙刀を彼に向け、

 

「貴様、暗夜の者だな!」

「ま、待ってください、ヒノカ姉さん!彼は、大切な仲間です!」

「な、なに⁈だが、カムイ!」

「私は、ジョーカーと申します。我が主人、カムイ様の姉君であるヒノカ王女ですね。私は、カムイ様が暗夜の城にいた頃に使えていたものです。カムイ様が暗夜の王族ではなく、白夜の王族と言うのは先ほど聞きました。この私が怪しいと思うのであれば……どうぞ、殺して下さい。この命は、カムイ様のために捧げています。」

 

ジョーカーは、ヒノカの前で頭を下げる。

ヒノカは薙刀を引き、

 

「わかった。お前を信じよう。だが、もしもカムイを裏切るような真似をすれば、躊躇いなく斬る!」

「はい。それで構いません。」

 

ジョーカーは顔を上げる。

そして、彼らは国境前の平地へとやって来た。

遠くから、暗夜軍が見える。

沢山の兵を率いて。

その中に、暗夜の兄弟姉妹(きょうだい)の姿があった。

彼らの到着と同時に、マークスとリョウマも到着する。

マークスはリョウマを少し見た後、カムイを見る。

 

「無事か、カムイ。よく生きていてくれた。」

「マークス兄さん!どうしてこんな戦争を‼︎」

 

カムイは拳を握りしめて、マークスを見ていた。

その瞳は怒り。

けれど、まだ信じたいと言う気持ちが見える。

マークスは、その目を受け止める。

手綱を握りしめ、

 

「……さあ、行くぞ、カムイ。父上が、お前の帰りをお待ちだ。我らに加わり、白夜を討つ。お前が加われば、戦いなどすぐ終わる。無駄な犠牲を出さずに、白夜王国を征服できるだろう。」

「マークス兄さん……私は……」

 

カムイは視線を落とす。

リョウマは馬から降り、カムイの前に立つ。

 

「……気をつけろ、カムイ。この男は暗夜王国の王子だ。」

「リョウマ兄さん……」

 

カムイは顔を上げる。

カミラがカムイを見て、

 

「ああ、カムイ……あなたが無事で良かったわ。だからお願いよ。私たちと共に来て。」

「本当だよ、カムイ姉さん。無事で良かったよ。やっぱり、悪運が強いね。」

「お願い、カムイお姉ちゃん!私たちと共に行こう、ね?」

 

カムイは泣きそうな顔で、彼らを見る。

ヒノカが怒りながら、

 

「何を言う!妹をさらった暗夜の者め!カムイは、私の妹だ‼︎」

「……けれど、私の妹でもあるのよ。何があっても。だから、誰にも渡さないわ。」

 

カミラはジッとヒノカを見据えた。

二人は睨み合う。

リョウマは刀を抜き、

 

「……騙されるな、カムイ。お前は、俺たちの家族だ。」

「戻ってこい、カムイ!また兄弟姉妹(きょうだい)一緒に暮らそう。」

 

そう言って、二人はカムイを見る。

そして叫ぶ。

 

「「カムイ‼︎」」

 

カムイは周りを見る。

白夜軍と暗夜軍に囲まれた中央。

白夜の兄弟姉妹(きょうだい)と暗夜の兄弟姉妹(きょうだい)が自分を見つめる。

兄二人が自分に手を差し出す。

カムイはさらに手を握りしめる。

 

「私は……私は……決められません。だって……私は……」

「それでいい。」

 

突如、フードを深く被った少女が目の前に現れる。

 

「……高位魔術!姿を消して、ずっとそこにいたのか⁈」

 

レオンが驚いて、彼女を見ていた。

そのフードの彼女は、カムイの腹を肘で打つ。

 

「うっ⁈」

「カムイ様!」

 

ジョーカーが武器を構えるが、

 

「……ちょうどいい。お前が運べ。」

「は⁈ふざけるな!」

「ふざけてない。」

 

フードの彼女はカムイをジョーカーが突き飛ばし、腰の長剣を抜く。

ヒノカの薙刀を防ぐ。

 

「貴様!」

「……白夜の第一王女。あの貴殿が、何を持ってその武器を持つのか知っている。だが、貴殿が自分を責める必要はない。」

 

そう言って、薙刀を押しやり、蹴り飛ばす。

 

「くっ!」

「ヒノカ!」

 

リョウマが受け止める。

フードの彼女は、タクミの矢とレオンの魔術を斬り裂き、ジョーカーの横に立つ。

側にいたアクアの手を引き、

 

「……ついでにあなたも、もらって行く。」

 

彼女は魔術を練る。

そして、それを川に向かって放つ。

 

「くっ!全員後退!」

 

マークスは後ろの兵達に命じる。

そして、馬を走らせる。

リョウマも、兵達を見て、

 

「我らも後退!高台へ行け!」

 

ヒノカを抱えて、リョウマは走り出す。

フードの彼女はカムイを抱えるジョーカーを掴む。

 

「……さて、禁忌の国へ行くぞ。」

 

川の水が、彼らを飲み込む。

ジョーカーは、カムイを抱きしめた。

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