ファイアーエムブレムifでやってみた   作:609

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第九話 透魔王国

歌姫は願い続ける。

やり続ける。

自分にしかできない事を。

今の自分ではない自分。

何度も繰り返される悲劇。

失う大切なモノたち。

家族、仲間、絆……

いつかそれらを乗り越え、またあの日々を取り戻したい。

 

口にしてはいけない。

自分の気持ちを殺して過ごす日々。

想いが溢れ、どんなに辛く悲しかったか。

けれど、自分は泣き言は言えない。

立ち向かう彼女を知っているから。

 

自分は、彼女ともに幾度となく立ち向かった。

自分にかけられた呪いも、残された時間も、恐れずに。

本当は怖かった。

けれど、彼女の成長を見れば怖くない。

それがあれば、自分は進める。

自分の信じる未来を。

彼らと約束した未来を、願いを、想いを。

あの子を守ると、見守り続けると……

 

 

ーーフードの彼女の魔術で、水に飲まれた彼ら。

だが、すぐに感覚が軽くなる。

 

「……私の加護の力だ。」

 

彼らを水の膜が覆う。

そして、水の中を移動していく。

膜が消えて、地面に立つ。

ジョーカーは驚いた。

そこは空中都市のような場所。

青い空と白い雲に覆われている。

そして、空中にも岩のような大陸が浮いていた。

けれど、建物のほとんど破壊され、廃家と化していた。

木々も、あるところは枯れ、岩が丸出しの所もある。

この国は歪だった。

彼女は、近くの洞窟へと入っていく。

彼女が連れてきたアクアも、その後ろに続く。

ジョーカーはカムイを抱えて、後ろに付いてく。

ひとまず、岩場に横にさせる。

彼女が火を焚き、辺りを警戒していた。

アクアは、カムイの側にいるリリスを見て、

 

「大丈夫よ、リリス。カムイは眠ってるだけだから。」

 

それを聞いたジョーカーは、

 

「は?……いえ、失礼しました。あまりにも、聞き慣れた名でしたので。」

「一つ言っておくが、そこの子竜は考えていた人物で間違いない。元は竜の子だからな。」

 

フードの彼女は言う。

ジョーカーは、笑顔を保ったまま、

 

「……私の知るリリスは、人間です。しかも、竜⁉︎そんな馬鹿な……」

《本当ですよ、ジョーカー様。》

「ぐっ!この声は、確かにリリス。カムイ様は知っているのか?」

「むしろ、その姿にならなければ、死んでいたところだ。で、なぜ今になって喋ることにしたのだ?」

《……この地に入ってしまったからです。本来なら、私からは何も言いません。けれど、あなたからはお父様の匂いがするのです。そして、アクア様は歌姫でした。それに、あなただから、です。》

「……そう、か。やはり気づいていたのか。だが、話すな。」

《ええ、わかっています。あなたが私の秘密を知るように、私もあなたの秘密を知る。ふふ、面白い関係ですね。》

「……そうだな。」

 

二人だけの会話が続いた。

と、ジョーカーは彼女を睨んで、

 

「で、ここはどこなんです。」

「……ここは透魔王国よ。」

 

彼の問いに答えたのは彼女でなくアクア。

ジョーカーが眉を寄せ、

 

「……透魔王国?聞いたことないですね。」

 

アクアは燃える火を見つめ、

 

「当然よ。失われし、国の名ですもの。そして、呪われた国。」

「申し訳ありません。言ってる意味が、よくわかりません。」

 

ジョーカーはさらに眉を寄せた。

と、カムイが目を覚ます。

 

「ん?ここは?」

「カムイ様!良かった!」

「ジョーカーさん。えっと……どういう状況ですか?」

「……そうね。詳しく教えてあげる。けれど、それは私より、あなたの口からの方がいいと思うの。」

 

と、アクアはフードの彼女を見る。

フードの彼女は少し黙っていた。

けれど、口を開く。

 

「……知っていて、私が話すのか?」

「ええ。だってあなたは……いえ、だからこそ、私はあなたから聞きたい。私は全てを知るこそ、あなたの知る全てを、あなたから聞きたいの。」

 

アクアはジッと彼女を見つめた。

フードの彼女は諦めたように、

 

「……分かった。全ては今言えないが、少し話そう。さっきも言われていたが、ここは透魔王国。簡単に言えば、お前達のいた世界とは異なる時空に存在する異界の地。竜の加護がある国だ。いや、こう言えば早いのか。全ての竜の生まれ故郷。そこの子竜も、元はここの出身だ。そして、この国は竜の呪いで滅んだ。この国の王は、加護せし竜とは友であったのだ。けれど、加護せし竜は人が信じられなくなっていった。そして、己の中の竜の血が暴走しだした。加護せし竜は、友であった王を殺し、国を滅ぼし、呪いをかけた。加護せし竜は、精神を操る。民を互いに殺し合わせた。奴の力は、死人ですら操る。だがらこそ、民達は竜を恐れ、従う。この国の大地は恩恵が消え、荒れて……そうやって滅びた。」

 

フードの彼女は拳を握り、

 

「白夜と暗夜の神祖竜も、元はここに居た。この国の加護せし竜とは違い、双竜は人間に己の血を与え、竜の力を与えた。それが子をなし、子孫となりて王となってきた。それが今の白夜と暗夜だ。この国がまだ滅ぶ前、若かりし頃の白夜王スメラギと暗夜王ガロンの時代まで、ずっと交流を持っていた。と言っても、交流があったのは王たちだけだ。白夜と暗夜を結ぶ中心……今は無限渓谷のある場所。あそこにかつてはこの透魔王国に繋がる門があったのだ。けれど、先言っていた事が起こったために、門も破壊され、その交流も絶たれた。私は竜の呪いを考え、白夜と暗夜の元にある透魔の情報は消した。」

「……その呪いとは?」

 

カムイはグッと息を飲む。

フードの彼女はカムイの方を見て、

 

「この国以外で、この国の事を話せば泡となって死ぬ。」

「……え?」

「だから、この国の事は、この国に入らなくては話せないのだ。さらに厄介なのが、この国の事を知らない者には見えないのだ。この国の竜によって支配された兵が。故に、白夜や暗夜はそれに気付けない。」

「……兵の事を教えたくても、見えてる人は呪いで言えない。そういう事ですね。」

「そうだ。だからこそ、私はあえて気づかせるために動いてきた。透魔兵を魔術で潰していく事で、鋭い奴は気づく。そこに、見えない何かがいると。」

「……えっと、この国の竜はそれ程に凄いんですか?加護してたと言うくらいですから。」

「……ああ。この国の加護せし竜の名は、『ハイドラ』。もうほとんど理性は残っていない。あるとすれば、世界の破滅のみだ。それこそが、奴の目的。その為に、この国だけでなく白夜や暗夜に手を出した。全ての裏にあいつがいる……そう、彼らも……」

 

フードの彼女は拳を握り締める。

カムイはその姿を、彼女のこれまでの行動を想い、

 

「教えてください。何故、あなたはそこまでして戦うのですか?確かに、あなたはこの国の出身の方です。けれど、一人で戦い続けるなど……」

「……約束だ。」

「え……?」

「大切な人たちと約束したからだ。その約束を果たす為なら、何を犠牲にしたって、私はやり遂げる。その為の覚悟はとうにしている。だが、お前にはその覚悟がない。」

「……確かに、そうですね。私は中途半端です。でも、私は白夜も暗夜も救いたい。きっと手を取り合って、共に居られる……そう思うんです。」

 

カムイは視線を落として、眉を寄せた。

フードの彼女は立ち上がり、

 

「それは可能だ。だが、大元をなんとかせねば、来るのは破滅だ。だからこそ、お前は覚悟を決めろ。救える命と救えぬ命。それを受け止めるだけの覚悟を。」

 

カムイは俯いたまま黙り込んでいた。

フードの彼女はアクアの耳元で、

 

「……黒き騎士に気をつけろ。あれはすでに飲まれた。その前になんとかしたかったが、間に合わなかった。」

「……そう。分かったわ。あなたはどうするの?」

「待ち人に会いに行く。あの秘密の小屋を知っているか?」

「ええ、知っているわ。」

「……では、そこで再び合流しよう。」

 

フードの彼女は立ち去った。

アクアはカムイを見て、

 

「……そろそろ移動しましょう。ここも長居はできないから。」

「わかりました。」

 

カムイ達は移動を開始した。

フードの彼女は道無き道を進む。

岩陰に隠れながら移動していく。

そして、小さな穴へと入る。

 

「……やあ、おかえり。」

 

彼女の前にはフードを被った男性がいる。

彼のフードからは、髪が少し出ている。

その髪の色は青。

声でもわかる優しき男性。

 

「お前の子供が、こちらに来ている。会いたいか?」

「……会いたいけど、今はやめておくよ。君のおかげで、私はここにいる。私のなすべき事を見定めてからでも、遅くはない。」

「そうか……。だが、移動するぞ。奴にここが見つかった。」

「わかった。」

 

フードの彼女は彼を連れて移動する。

その数分後、彼らが先ほどいた所には、透魔兵達が押し寄せて来たのだった。

 

カムイ達は洞窟内を歩いていた。

アクアはカムイを見て、

 

「カムイ、さっきの彼女の話は本当よ。実を言うとね、私も、私の母も、私の父も、この透魔王国の出身なの。」

「……え?でも、アクアさんは……」

「私は暗夜の人間でも、王族でもないわ。彼女の言ったこの国の王にして、加護せし竜の友だったのは……私のお父様。私は、この透魔王国の王女だったの。」

「……じゃあ、アクアさんは国を追われて……」

「そうなるわね……。誰にも話せないのは、辛かったわ。この国を誰かに言って、助けを求めたかった。けれど、呪いのせいでそれもできない。いくら両親が恋しくても、故郷が気ががりでも、この国の民達を想っても、口にすることは許されない。自分の気持ちに蓋をして生きる日々。今までずっと……それは、きっと彼女も同じ。」

「アクアさん……」

「だからこそ、彼女の意志は強い。その想いも半端なく強い。カムイ、あなたもまた選ばなくてはいけない。これから先の未来を。あなた自身の答えを。」

「……はい。私も、覚悟を決めます。私は白夜も、暗夜も、救いたい。そして、この透魔も救いたい。」

「なら、なおのこと覚悟が必要よ。カムイ、私はあなたと共に未来を掴むわ。」

 

アクアは小さく笑う。

今まで黙って聞いていたジョーカーとリリスも、

 

「カムイ様、私は何があってもあなたと共に。この命はあなたの為に。」

《私も、です。カムイ様、私もこの故郷を救いたい。父の想いに応えたい。その為にも、私はあなたと共に行きます。》

 

カムイは拳を握り、

 

「はい。みんなで、頑張りましょう!私も、みんなを守れるように強くなります!」

「……ふふ。そうね、みんなで頑張りましょう。」

 

笑顔だったアクアの表情が変わる。

 

「……いけない。敵が近くにいるわ。気をつけて!」

 

アクアが薙刀を構える。

彼女の前からは、兵達が数人やって来る。

カムイも剣を抜き、ジョーカーも短剣を抜く。

 

《カムイ様、彼らは死人です。気をつけてください!》

「わかりました!」

 

カムイ達は戦闘を始める。

カムイ、アクア、ジョーカーは敵を斬り裂きながら進む。

そして、走り出す。

 

「この人数でまともに殺りあっていたら、こちらが不利なるわ。ここは、ひたすら走って!戦闘は最小限に!」

「は、はい!」

 

カムイ達は、前にいる兵達をなぎ倒して行く。

少し広い所に出ると、彼らは囲まれた。

 

「くっ!カムイ様、どうしますか。」

「……アクアさん、投降するのはマズいですよね。」

「そうね。彼らにしてみれば、生死は関係ないもの。でも、ここを抜ければ目的の場所まですぐなのだけれど……」

 

彼らは背中合わせで、身を守る。

カムイが竜石を取り出し、

 

「……私が竜になってなぎ払ってーー」

「それはダメよ。あなたもよ、リリス。ここで竜の力を使えば、ハイドラにバレてしまう。こいつらは、あくまでこの場所に迷い込んだ者を排除する為にいるだけ。まだ、ハイドラには完全にはバレていないわ!」

 

リリスが竜の力を使おうと考えていた。

だからこそ、アクアが先に止めた。

ジョーカーが、視線だけをアクアに向け、

 

「では、どうするのです。この敵を全て薙ぎ払うのは無理ですね。あともう一人、強いお方がいれば……!」

 

ジョーカーは襲い掛かる兵を斬り裂く。

と、奥の方から馬の鳴き声が響き渡る。

そして、敵に槍が突きつけられて、吹き飛んだ。

その姿を見たカムイ、ジョーカー、リリスは、

 

「ギュンターさん⁈」「ジジイ⁉︎」《ギュンター様‼︎》

「カムイ様、ご無事で何よりです。」

 

槍を構え直したギュンターが、カムイを見る。

 

「ど、どうしてここに?いえ、それよりも無事でよかったです!」

「いやはや、自分も、もうダメかと思いましたよ。この洞窟内で迷っていたところ、聞き慣れた声が聞こえてきたもので。馳せ参じました。さて、私が先陣を切りましょう。いけるな、ジョーカー。」

「誰に言ってやがる!」

 

彼らは武器を構え直す。

そしてギュンターを先頭に、この場を駆け抜ける。

外に出て、アクアに案内された小屋で一行は落ち着く。

 

「でも、本当に無事でよかったです、ギュンターさん。」

「それはこちらもですよ、カムイ様。しばらく見ない内に、ずいぶんとお強くなって……。さて、ここはどこで、どういった状況でしょうか?」

「はい。ここは、透魔王国という見えない異界の国です。この国を今支配しているのは、ハイドラという竜だそうです。そして、この国のことはここ以外では言えません。言うと、竜の呪いによって泡となって消えてしまいます。私たちを襲っていたのは透魔兵で、リリスさんが言うには、死人らしいのです。ハイドラは、心を操るそうなんです。しかも、死人ですら操れる。そのハイドラという竜を倒さない限り、白夜と暗夜に平和は訪れません。」

「……成る程。そちらのお嬢さんが、アクアさんですね。もしや、暗夜王国の王女ではございませんか?以前、お会いしたことがあります。ですが、リリスはどこに?」

「あ、はい。この子ですよ。」

 

と、カムイは抱いていた子竜を見せる。

ギュンターは沈黙ののち、

 

「…………申し訳ございません、私の知るリリスとは違ったみたいですね。」

《いえ。あってますよ、ギュンター様。私は人間ではなく、竜の子なのです。》

「……むう、この声は確かにリリス。なんとも、色々なことがありますな。」

 

ギュンターは頭を抱えた。

アクアは一歩前に出て、

 

「……初めまして。いえ、お久しぶりと言うべきなのかしら……。でも、私は一応、暗夜王国の王女ということになっているけれど、私はこの透魔王国の王女よ。残念ながらね。」

「それは申し訳ございません、アクア様。言葉が過ぎました。そして暗夜にいた頃はお守りできず、誠に申し訳ございませんでした。」

「気にしてないわ。」

 

頭を下げる彼に、アクアは小さく笑う。

ジョーカーがギュンターを見て、

 

「チッ。ジジイ、カムイ様から少しだが聞いていた。心配していた、この俺の時間を返せ。」

「……ふん。その減らず口は、相変わらずだな。もう少し、ましな言葉はかけられんのか。」

「は。いいか、ジジイ。色々と危険な国だ。くれぐれも、気をつけろよ。」

「言われなくとも、わかっておるわい。」

「すみません、ギュンターさん。おそらく、辛く苦しい戦いになります。白夜と暗夜の協力も得なければなりません。それでも、私たちについて来てくれますか?」

「はい。お供します。このギュンター、いつまでも貴女様と共に……」

「ありがとうございます、ギュンターさん。」

「いいえ、お礼は不要です。これで、ここで彷徨い生き延びた甲斐があるというもの。それにしても、あのガンズも大したことはありませんでしたな。落とされはしましたが、この通り私はピンピンしております。」

「あ、そういえば……ガンズさんは言ってました。ギュンターさんを急襲したのは、ガロン王の命令だったと。でも、どうして……」

 

カムイが眉を寄せる。

と、そこに扉をコンコンと叩く音が聞こえた。

ギュンターとジョーカーが武器を構える。

 

「……私は、この世の闇を知る者。真実を知る一人。」

「……いいわ、入って。」

 

アクアがそう言うと、フードを深く被った少女が入ってくる。

カムイがパッと明るくなって、

「良かった、無事ですね。」

「……何かあったか?」

「……敵襲があったわ。」

「そうか。」

 

そう言って、フードの彼女はギュンターの方を向く。

 

「…………」

「私は、ギュンターと申します。カムイ様の従者をしております。以後、お見知りおきを。」

「……カムイと復讐、どちらを選ぶ。」

「……え?」

 

カムイは、フードの彼女の言葉に反応した。

ギュンターは苦笑して、

 

「……ふう。カムイ様、先程のお話ですが、恥ずかしながら……私は、ガロン王に恨まれているのですよ。」

「恨ま……れている?」

「はい。かつて戦場で、幾多の武勲を立てた私は、ガロン王に謁見を許されました。そして、王から竜の血を賜る機会を授けられたのです。それは大変な栄誉でした。王を守る最高位の騎士となれるのですからな。……ですが、私は固辞しました。故郷の街に妻と子がいたからです。私がその役目につけば、家族とは今まで通りには暮らせない。私は平凡な一生を送りたい……ですから、お許しくださいと申しました。あの時のガロン王の憤怒は、今でも忘れません。」

「……そんなことが……」

「……ですが、私はカムイ様にお仕えすると決めた。あなたの為なら、復讐は後回しです。」

「ギュンターさん……」

 

カムイは視線を落とす。

フードの彼女はハッとして、

 

「移動するぞ。敵が近い。」

「……え?」

 

カムイ達も気を引き締め、彼女に従う。

カムイ達は彼女の誘導の元、外に出る。

しばらくして、先頭を歩いていた彼女が立ち止まる。

アクアを見て、

 

「……少し離れる。物陰に隠れて、やり過ごせ。」

「……わかったわ。」

 

アクア達は物陰に隠れる。

そして、彼女はどこかに走っていく。

すると、突如女性魔導師と数人の兵が現れた。

だが、何かに包まれており、顔は解らない。

女性魔導師は辺りを見て、

 

「あそこね……」

 

アクア達が隠れていたところに、魔術を放つ。

それを避け、彼らの前に出たカムイ達。

そして、武器を構える。

カムイ達を見て、

 

「去りなさい……。ここは、あなた達のいるべき場所まではありません。」

「何者ですか⁉︎」

「私は透魔王国の魔導士。透魔兵よ、この者たちを排除さなさい。」

「まずいわ……今の私たちでは、こいつらには勝てない!」

 

アクアは眉を寄せ、冷や汗が出てきた。

透魔兵達が襲いかかる。

 

「くっ!カムイ様、アクア様、お退りを!ジョーカー、いけるな!」

「はっ、誰に言ってやがる、ジジイ!カムイ様の為なら、このジョーカー、何があってもやりますとも!」

「ギュンターさん!ジョーカーさん!」

 

ギュンターとジョーカーは、近づいてきた兵を斬り裂いていく。

だが、数からしてもこちらが不利なのは変わらない。

と、戦う彼らと透魔兵の間に魔術が飛んできた。

カムイ達や透魔兵達はそこを見る。

高い岩に乗った一人の女性がいた。

銀髪を左右に結い上げた黄金の瞳を持ったフードの付いたマントを着た魔導師の姿。

女性魔導師がその彼女を見て、

 

「ルフレ卿、どういうつもりです。」

「いえ、ここで彼らを殺すのは得策ではないと思ったのです。ですので、兵をひいてください。」

 

岩からおり、こちらに歩いてくる女性。

だが、女性魔導師は彼女に敵意を向ける。

 

「……あなたは、怪しいわ。突然現れ、ハイドラ様の信頼をすぐに取った。だいたい、これはハイドラ様の命なのよ。それを……あなたはあの方の逆鱗に触れるきですか!」

「……いいえ。私は、ハイドラ様を思っての行動です。先も言った通り、ハイドラ様の願いを叶えるのであれば、彼らは今は逃すのがいい。これは、私が考えるいくつもの作戦の一つです。確実に、あの方の望み通りになるように、のね。だから、兵を引いてください。さもないと……」

 

彼女は腰にあった剣を抜き、近くにいた兵を斬った。

兵は燃えて消える。

 

「味方を⁉︎」

 

カムイは目を見開く。

女性は笑みを浮かべ、

 

「あなたも、こうなりますよ。私としては、ここであなたを失うのは得策ではない。ですから……ね?」

「くっ!わかりました、ここは引きましょう。けれど、私はあなたを信用していない事をお忘れなく。」

「ええ、それで構いませんよ。私は、私のやり方をするだけですので。」

 

兵達と共に消える女性魔導師を、彼女はなおも笑顔のまま見送った。

彼らが消えると、彼女はカムイ達を見て、

 

「……あの方の為にも、あなたがたにも頑張って貰わねばなりません。簡単には、死なないでください。」

 

彼女はスッと消えた。

アクアは腰を落として、拳を握り締める。

 

「……なんとかなったみたいね。けど、安心はできないわ。」

「だろうな。」

 

フードの彼女が、後ろから現れた。

アクアに手を伸ばし、彼女を立たせる。

ジョーカーが、フードの彼女を見て、

 

「あなたがいない間、大変でしたよ。敵の奇襲にあったのですから。」

「……だからこそ、私は向こうに戻る手配をしてきた。この人数では、危険だからな。向こうに戻って、白夜と暗夜を味方につける。」

「……協力してくれるでしょうか……」

「してくれる、のではない。させるのだ、お前がな。」

 

そして、歩き出す。

カムイ達も、それに続く。

カムイは拳を握り締め、

 

「……私頑張ります。きっと兄さん達はわかってくれると思います。私は信じる。」

「……そうね。私も手伝うわ。」

「勿論、この私もです。」

「そうですな、共に行きますぞ。」

「はい。ありがとうございます。」

 

カムイは彼らに笑顔を向ける。

そして、拳を握り締める。

 

「……ですが、あのルフレという方、仲間を斬り捨てるなんて!」

《私も、アクア様よりここに長くいましたが、『ルフレ』という方を聞いたことはありません。》

「……あなたは、何か知ってるかしら?」

 

アクアはフードの彼女を見ていた。

彼女は歩みを緩めず、

 

「……『ルフレ』は、あるとき突然現れたハイドラの軍師らしい。だが、軍師としての策だけなく、戦闘も行える。故に、ハイドラは駒として仲間にしているらしい。しかし、ルフレはほとんど表には出ないと聞いている。あいつまでもが動き出したのなら、こちらはその倍は急がねばいけない。」

「……そうですか。色々とやることが山積みですね。」

「ああ。」

 

と、ギュンターが馬を引きながら、

 

「……それよりも、カムイ様。お体の方は大丈夫なのですかな?ほとんど休まずに進んでおりますゆえ。」

「大丈夫ですよ、ギュンターさん。何というか、とても体が軽いんです。」

「ですが……」

「ここは竜の波動が強い。竜の血が濃いそいつには、ちょうどいいのだろう。それに、そいつの体の不調は、特異体質なだけだ。色々なモノの、な。」

「……あなたは、カムイ様のお体について何かご存知なのですか。」

「さてな。」

「……あなたは、何者なのです。私はまだ、あなたの名をお聞きしていません。」

 

ギュンターはフードの彼女を睨む。

それを、彼女は簡単に受け流す。

カムイが思い出すように、

 

「そういえば、私もお聞きしてませんでした。」

「そうですね、私もです。」

《……それは、私もです。ですがーー》

「そうね。私も、これからあなたを呼ぶのに困るわ。」

 

それに、ジョーカー、リリス、アクアが続いた。

フードの彼女は歩みを止め、

 

「生憎、自分の名はもうない。……私の事は好きに呼べ。」

 

そして、フードの彼女の足元に魔方陣が浮かぶ。

そこから水が溢れ出る。

それによって、彼らは来た時のようにして包まれた。

彼らは、元いた世界へと戻る。

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