その輝く君に永遠を誓う   作:ヨーソローはやて

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第44話 ~雨~

 高海達の初ライブ当日。今日は生憎の天気になってしまった。この天気では正直言ってお客は来ないんじゃないか?と思ってしまうほどの強い雨だ。天気予報では強い雨が一日続くらしく雷まで鳴るとの予報だった。

 マリーに、本当に今日やらせるのか?、と連絡をしたら、体育館の使用できる日が今日しかなく、それ以外は他の部活動の練習試合やらなんやらで、次に使えるのは来月になってしまうとのことだった。お客の事についても、『お金をとっているわけではないし、そこは自己判断に任せるしかない』とも言っていた。

 まぁ、その通りだし、中止にするにしても誰が来るのか分からない上に、来る人全員に伝える手段もない。となれば開催しかないわけで・・・。

 

「にしても人少ないなぁ・・・。」

 

「まぁ、この天気なら仕方ありませんわね。」

 

 俺はこんな天気なのに、見届ける義務があると言うダイヤと、単純に見たいルビィとそれに付き添うマルちゃんを、俺も興味があるから見たいと言う体にして3人を迎えに行った。浦女に着いた俺達は体育館に向かったが、もうまもなく開演だと言うのに体育館には数人の生徒しかいなかった。

 

「ほ・本当にやるのかなぁ??」

 

「少なくとも入口には中止とは書いてなかったずら。モグモグ」

 

「そうだよね。」

 

 開催されるか不安なルビィの横でマルちゃんが冷静に応えていたが、ここに着いてからマルちゃんは何かを口にしていた。

 

「マルちゃん、それは??」

 

「のっぽパンずら♪」

 

「うん、それは分かる。」

 

「今日はチョコ味ずら♪」

 

「うん。味の話でも無くてね。なんで今のっぽパンを食べてるの??」

 

「何か変ずら?」

 

「いや、別にいいんだけどね・・・」

 

「まるちゃん、それ大好きだもんね♪」

 

「ずら♪」

 

 のっぽパンを幸せそうに頬張るマルちゃんを見ていたら細かい事はどうでもいいか、と言う気になり、とりあえず辺りを見回してみた。すると入口からマリーが入ってくるのが見え、俺とダイヤを見つけたマリーはこっちに向かってきた。

 

「ハァ~イ☆」

 

「おう。」

 

「おはようございます。」

 

「いや~、凄い天気になっちゃったね~☆」

 

「なに、楽しそうに言ってんだよ・・・。」

 

「だって~、こんな天気の日って不思議とワクワクするじゃない?」

 

 気持ちは分からなくもない。子供の頃から、台風だ、雷だって言っては怖い半面、普段はない非日常的な状況に心躍らせていた記憶はあるからね。とは言え、今はそんな呑気な事を言ってる状況じゃないだろ。これで客が来なかったのら高海達、新生Aqoursは解散になってしまうんだぞ??

 

「お前ねぇ・・・」

 

「大丈夫、大丈夫☆」

 

「2人とももうすぐ始まりますわよ。」

 

ビー

 

 ダイヤが俺達に声をかけると同時に開演のアラームが鳴り、幕が上がった。

 ステージの中央には色鮮やかな衣装に身を包んだ高海達が手を繋いで立っていた。だが、遠目からでもはっきり分かるくらい、高海達は落胆の表情をしていた。当然だ。結局あれから人が増えることなく俺達を含めても十数人程度しかいないんだから。

 僅かな沈黙の後、それでも何とか歯を食いしばり、今ここに居る人たちの為に高海達は挨拶を始めた。

 

「わたし達は・・・せーの!」

 

「「「スクールアイドル、Aqoursです!」」」

 

「今日はこのような天気の中ありがとうございます。」

 

「私達はその輝きと」

 

「諦めない気持ちと」

 

「信じる力に憧れスクールアイドルを始めました。そして、私達の目標は偉大な先輩であるμ’sです!」

 

「「「聞いてください。わたし達の初めての曲で『ダイスキだったらダイジョウブ!』」」」

 

 高海達が曲名を言うと、一度暗転して、曲の歌いだしと同時にライトを当てられ踊りだした。練習の成果か、表情は笑顔なのにどこか不安なような自信のなさそうな感じではあるが、三人は息の合ったキレのあるダンスと聞いていて気持ちのいい歌を歌っていた。

 こんな天気でもなければもっと人が来てとても盛り上がっただろうにもったいない・・・。

 俺はそう思いながら高海達のパフォーマンスを見ていた。そして、サビに入るといった瞬間、強烈な閃光と共に轟音が鳴り響いた。そう雷が落ちたのだ。それもかなり近くに。

 雷のせいで停電した為、音は消え静寂が訪れた。暗幕のせいでほとんど光のない体育館で恐怖や驚きで全員が動けずにいた。ただ一人を除いて。

 

「悠さん、私と一緒に着てください。」

 

「ちょ、ダイヤ!?どこ行くんだよ?」

 

 それはダイヤだった。俺の手を引いて、ダイヤは体育館を出て校庭に向かっていた。どこに行くのかダイヤに聞いても返答は返ってこず、ただダイヤの後をついて行くしかなかった。

 やがて、校庭の隅にある用具小屋らしき場所でダイヤの足が止まった。

 

「少し待っていてください。」

 

「あ、あぁ。」

 

 そう言うとダイヤは小屋の中に入っていき、数分で何かを持って出てきた。

 

「小型発電機??」

 

「はい。それで申し訳ないのですが、これ結構重いので持っていただいてもいいですか?」

 

「なるほどね。了解だ。」

 

 俺はダイヤがなにをしようとしているのかやっと理解できた。しかし、それならそうと言ってくれればいいのに、本当にダイヤは素直じゃないなぁ。

 

「そんで、これをどこに持って行ったらいいんだ?」

 

「こっちです。」

 

 俺が発電機を持つとダイヤの後をついて行き体育館の配電盤のあるところまで案内してくれた。だが、ここで問題が起きた。

 

「それで、ですね・・・。私、こういったの苦手でして・・・」

 

 そう言えばそうだった・・・。ダイヤは人より若干だけど機械の扱いが苦手だった。その証拠にスマホが主流のこのご時世に未だにガラケーだし。PCは必要最低限には使えるみたいだけど、少しでも踏み込んだ話になるとチンプンカンプンになっていた。

 とは言え、これを機械操作と言っていいのかは分かんないけど、配線やらそう言ったのは余ほど詳しくなければ女の人には難しいかもしれないな。

 

「まぁ、そんな難しいもんじゃないし、任せておけ♪」

 

「すみません・・・。」

 

 しかしダイヤも慌てん坊だなぁ。俺がもし出来なかったらどうしてたんだろか??

 

「で、ここと・・・ここを繋いでっと・・・。よし出来た♪後はスタータを思いっきり引いたら・・・」

 

 俺が配線を終えて、発電機のスタータを思いっきり引くと、発電機のエンジンがかかり、体育館に明かりが戻った。

 

「ふぅ、これでとりあえずはOKだな♪」

 

「お疲れ様です♪」

 

「おう♪それじゃ戻ろうか?」

 

「そうですね。」

 

「ん?なんか外が騒がしくないか?」

 

「そう言えば、少し前からそんな感じですわね?」

 

 外が騒がしことを気にしつつ、俺とダイヤが体育館に戻ると、そこにはつい先ほどまでの光景は無く体育館が満員になるほどの人が押し寄せていた。

 

「おぉ!?なんか凄い事になってる・・・。」

 

「これはいったい・・・。」

 

「どうやらこの天気のせいで皆来るのが少し遅くなってたミタイネ☆」

 

「おぉ、マリー。なんか凄い事になってるな。」

 

「でしょ。電気が付いたら人がいっぱいになっててビックリしたわよ☆」

 

「へぇ~。」

 

 俺はそう返事をしながらステージへと目をやると、先ほどと変わらず見事なパフォーマンスを見せていたが、停電前とは違い心の底から楽しんでて、見ていて引きつけられるようないい笑顔をしていた。

 たった1曲だけだが、歌い終えた高海達はとても満足したような顔をしていた。そして、会場に来てくれたお客に向かって挨拶をしようとした時、ダイヤがステージに向かって歩いて行ってしまった。

 

「ちょっとダイヤっ!?」

 

「マリー、ダイヤのやりたいようにやらせてやってくれ。」

 

 俺はダイヤを引き止めようとするマリーを引き止めた。まぁ、ダイヤが何をしようとしているか、なんとなく分かるからね。

 以前、高海達が大きな壁にぶつかっても挫けないくらい強くなるまで、自分が壁となって立ちはだかると言っていたダイヤだ、おそらく今回は成功したが調子に乗るなよ、と発破をかけに行ったんだろ。こんな大勢の前で悪役を買って出るんだから、律義と言うか、損な性分と言うか・・・。

 

「なんかムカつく。」

 

「ムカつくってなんでだよ!?」

 

「ユウってば『全部知ってます』みたいな顔してさ。」

 

「んな顔してないだろ?」

 

「ぶ~。」

 

「あのなぁ。・・・ん?」

 

 なんだかよく分からないけどマリーに因縁をつけられた困っていると、俺の視界の端に見なれた奴が見えた気がして扉の先を見ると果南が帰ろうとする姿が見えた。

 

「なによ?」

 

「え?あ・あぁ・・・すまんマリー、俺トイレに行ってくる!」

 

「え!?ちょっとユウ!?・・・行っちゃた。ユウってばここが女子高だってこと分かってるのかしら?男子トイレなんて一か所しかないんだけど・・・。」

 

 後ろから聞こえてきたマリーのセリフに苦しい誤魔化しかたしたと思いながら俺は果南の後を追った。

 

「帰るのか?」

 

「まぁね。」

 

 果南に追いついた俺は果南に声をかけたが、果南は俺が来る事が分かっていたのか、いきなり声をかけられても振り返ることなく、淡々と返事を返してきた。

 

「そっか。どうだった?」

 

「良かったと思うよ。まだまだ頑張らないといけないところは沢山あるけど、初ライブにしたら上出来でしょ?」

 

「それを聞いたら高海達喜ぶだろうな。」

 

「なら、悠君から伝えておいて。」

 

「折角来たんだから自分で言えばいいだろ?」

 

「わたしも忙しいの。店だってあるし・・・。」

 

「こんな天気の日に海に潜るモノ好きはいないだろ・・・。」

 

「・・・」

 

「あぁ、はいはい。もうこれ以上は何も言わないよ。・・・果南。この間はお前の気持ちも考えないで無責任なこと言って悪かった。」

 

「うん・・・。用はそれだけ?」

 

「え?あ・あぁ・・・。」

 

「なら帰るね。」

 

 結局果南は一度も振り返ることなく帰ってしまった。俺はそんな果南をただ見送ることしかできなかった。

 

「・・・」

 

「悠さん??こんなところでどうしたんですの?」

 

「え??あぁ、ダイヤか・・・。」

 

「ダイヤか・・・。じゃありませんわ!体育館に居ないからビックリしたじゃないですか!!」

 

「悪い悪い。」

 

「・・・それで、空なんか見上げてどうしたんですか?」

 

「ん?いやぁ、一体いつになったら雨は上がるのかなぁって思ってさ。」

 

「たしか予報では、今日の夜にはあがると言ってましたが?」

 

「そっか・・・。」

 

「??」

 

 ダイヤは今更天気なんか気にしてる俺に不思議そうに答えてきた。俺は苦笑いしながらダイヤの頭を撫でると、ダイヤはさらに不思議そうな顔をしていた。

 まぁ、当然だよな。俺はそういった意味で言ったわけじゃないから伝わるわけがない。仮に正しく伝わったとしても、俺の求める答えは返っては来ないだろうけど・・・。

 

 この後、俺はダイヤ達を送って家に帰った。課題をやりながら色々これまでの事、これからの事なんかを考えたけど答えは出ず、気付けば寝落ちをしてた。

 目が覚めた俺は時間を確認しようとスマホの画面を見るとマリーからメールが入っており、内容は、

 

『今日のライブは成功と言うわけで、新生Aqoursの活動を、学校側として正式に許可することになるんだけど、部活動である以上、顧問や責任者と言った物が必要になるんで、顧問は形だけだけど用意するから、保護者兼、責任者兼、コーチ兼、アドバイザー兼、マネージャー兼、編曲担当をよろしく☆』

 

 といった内容のメールだった。俺の肩書長くない??

 まぁ、いろいろ、突っ込みたい事はあるけど、どうやら俺にも編曲以外でも出来る事はあるみたいだ。昨日まで色々悩んでたけど、悩んだって答えなんかでないし、これからどうなるかなんて分かるわけないんだったら、全力で出来る事をするしかないよな♪

 マリーに乗せられているみたいで少し癪だが、了解と返信をして俺は2度目の眠りに着いたのだった。




いかがだったでしょうか?

アニメで感じた時間を間違えていたと言う辺りは自分の中で少し引っかかりがあったので独自の解釈で変更してみました。とはいっても、そこにはあまり触れてませんがww

次回は本格的にルビィちゃんとマルちゃんが参戦して来ますよ♪
ちゃんと可愛く書けるか不安でもありますが、よろしければ次も読んでやってください♪
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