第1話になります。
果たして、これでキャラはあっているのかどうか……ちょっとだけ不安です。
今回の話で、最初の一日目は終わりとなります。
「ん……」
(なんだか変な夢を見ていたようだ)
この僕が使い魔になるというものだ。
どんなに間違っても使い魔になるなどありえないのだ。
そう思って心の中で笑っているが、ぼんやりとした意識が次第に覚醒してくるにつれて、残酷な現状を目の当たりにした。
今いる場所は、僕の記憶にもない西洋風(しかも遠い昔の時代)の部屋だ。
横を見れば小さめのテーブルが置かれており、そこに置かれたランプのようなものがこの部屋を照らしている。
天井には何も見当たらないことから、電気の類はきていないものとみられる。
(うん。全く心当たりがない)
周辺の状況を確認しても、さらに混乱を深めるだけだった。
僕はそこでいったん考えるのをやめた。
これ以上考えても、謎ばかりが増えていくだけだ。
「やっと目が覚めたようね」
「ん?」
一応、落ち着いたところでかけられた声に、僕は横のほうへと顔を向ける。
そこには意識が途切れる前に見た、腰まで伸びたピンク色の髪の少女が腕を組んで立っていた。
「胃に穴が開くほど考えたけど、あんたを使い魔にすることにしたわ。光栄に思いなさい」
「はい?」
やはりあれは夢でも、妄想でもなかったようだ。
いや、それはどうでもいい。
問題は彼女の口にした言葉だ。
「あんた、いったい何様……って何をしているっ」
文句を言ってやろうと、少女が歩いて行ったほうに顔を向けた僕は、今度は別の意味で慌てることになった。
なんと、いきなり服を脱ぎ始めたではないか。
これが、出会って数十秒で口づけまでする謎の場所という認識から、男の前で平然と服を脱ぐ少女がいる世界という認識に変わった瞬間だった。
それは置いとくとして、突然の奇行に慌てる僕をしり目に、シャツを脱いだ少女はキャミソール姿になると、脱いだ服をこちらに放ってきた。
「っと」
「それを洗濯しなさい。言葉が通じなくても、使い魔ならそれぐらいわかるでしょ」
あまりにも当然のごとく言い切る少女に、僕は一瞬頷きかけるがすぐさま頭を振ってその考えを振り払った。
「いやいやいや! 勝手に話を進めているけど、僕は使い魔になった覚えはないし。というよりここはどこだよ!」
次から次に出てくる抗議の言葉だったが、次の少女の一言でそれは再び止められることになる。
「あーもー! ギャーギャー何を言ってるかわからないわよ!!」
「って、通じてないのかよ!」
耳を抑えながらうっとうしげに叫ぶ少女の言葉によって、僕の言葉自体が通じていないことが判明したのだ。
(これは参った)
言葉が通じないというのは、想像以上に問題だ。
意思疎通が行えないこともあるが、情報収集すら難しくさせるからだ。
とりあえず、少女の姿を見ないように背を向けて、いろいろと考察していく。
「こっちは聞き取れているから、たぶんチャンネルが完全に合っていないということか……ムムム」
僕の故郷では、異世界での異言語を即座に母国語として聞き取れる翻訳魔法が存在する。
通常は相手の言葉を聞き取ることだけできる、インサイドモードにさせておくのが正しい使い方だが、今回のように相手とコンタクトをとる必要があるときはアウトサイドに切り替える必要がある。
そうすることで相手の言葉を翻訳できるだけではなく、自分の言葉も相手が理解できる言葉に翻訳させることができるのだ。
翻訳は一度でも行使すれば自動で始まるのも便利なところだ。
それが異世界に行く者であれば、誰もが使える超超基礎魔法である翻訳魔法の特徴だ。
(モード自体は正常に切り替わっているわけだから、外に向ける部分で何らかの問題が発生している?)
いくら考えても結論は出ない。
それもそのはずだ。
結論を出すには、一度自分の状態を調べる必要があるのだ。
しかも、それをするには己の媒介(僕の場合はクリエイト)が必要になる。
どうやらここに強制召喚された影響か、魔力が流れる”魔力回路”がほぼすべてシャットアウトされているようで、これを開放しないといけないのだ。
翻訳魔法が使えているのは現在開いている魔力回路から流れる魔力を使用しているからだと思われる。
もしかしたら外に向ける力が不足している可能性もある。
とはいえ、おいそれと開放することはできないのが現状だ。
なぜならば、魔力回路を強制的にシャットアウトした際に、魔力回路で何らかの異常が発生していることがあるからだ。
もし、異常がある状態で魔力を流そうものなら、最悪死に至ることすらある。
だからこそ、魔力回路の開放は慎重に慎重を期さなければいけないのだ。
それがクリエイトによる体内スキャンという名の魔力回路のチェックということになる。
(今この場で目に見える形での魔法を使うのは命取りだ)
「――えよ」
「は? ぶげらっ!?」
そんな僕の考え事を遮ったのは、少女の声と突然発生した爆発だった。
思いっきり吹き飛ばされて壁に激突しなかったのは、ある意味奇跡であった。
「おのれ……もう我慢できない。一度痛い目を見せて―――」
「わかるわ……あなたの言葉が」
こうなれば力づくで拘束したうえで話を聞こうとした僕に、彼女は頷きながらそう言った。
それは、僕の言葉が彼女に通じたという証であった。
だが、そこで一瞬沈黙が走る。
どうしてかは考えずともわかる。
お互いに何も言わず無言で見つめあっているからだ。
「何か言いなさいよ」
「何かって……何を言えというんだ」
とはいえ、その沈黙も数秒もなかったが。
「あんた、名前は?」
「……人に名を尋ねる際は、まず己が名乗るのが礼儀だと、教わらなかったか?」
言葉が通じるようになった僕は、目の前の少女に対してきっぱりと言い切った。
「あんた、誰に向かって言ってるのよっ!」
「王様であろうが奴隷であろうが、礼儀を守るのは常識だ。それができないのはただの無能なバカだけだ」
言っておいてあれだが、僕はある意味度胸があると思う。
この者と僕は、大変不服ではあるが主従契約が結ばれている。
そして、主に対して異論を唱えるというのはある意味自殺行為にも等しかった。
とはいえ、一度思ったことは言いたくなるのが僕の悪い癖。
今回もその癖が存分に発揮されたようだ。
「一度しか言わないから、よーく覚えておきなさい。私の名前は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
腰に手を当てて上から目線で名前を告げてもらえたのはいいものの、新たな問題が浮上した。
「ルイズ……何?」
「だから、ルイズ・フランソワーズル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」
名前がやたらと長いのだ。
「えっと……ルイズ・フランソワーズ・ラ・プンツルド?」
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ! いったい何回繰り返せば覚えるのよ!」
どうやら彼女は相当な癇癪持ちのようだ。
魔法の呪文クラスの長さの名前など、僕にとっては不要なものといっても過言ではない。
「だったら、間をとってルイズで」
「どことどこの間をとったっていうのよ! というより使い魔の分際でご主人様を呼び捨てとはいい度胸ねっ」
とはいえ、彼女を主などと呼ぶ気は毛頭なく、名前をフルネームで覚える気もさらさらない。
というよりぶっちゃけて言うのであれば
「名前を覚えるの面倒。というより、お前にはそれがお似合いなだけ」
それがすべてであった。
「あんたねぇ――――」
「私に別の呼び方をさせたいのであれば、お得意の魔法で従えさせて見せろ。そうすればなんとでも呼んでやろう」
「う゛っ」
僕の切り返しが意外だったのか、ルイズは顔を引きつらせる。
そして、畳みかけるように簿kは口を開く。
「それで、どうするんだ?」
「……あんたの名前を教えなさいよ」
それは事実上の黙認であった。
「僕の名前はたか……」
ルイズに自分の名を告げようとした僕は、最初の一文字目の単語を口にした瞬間言葉を詰まらせた。
僕が知る世界とは全く異なるため、教えて向こう側がちゃんと理解(主にイントネーションが)できるかどうかが分からなかったため。
そして、もう一つが僕の名前の特徴からだ。
”周りが敵に囲まれているような状況下で、苗字を口にするな”
僕の名前”高月”という単語にはかなり特別な意味があるらしく、それを敵に知られるということは、おのれの体質を知られることを意味するために、おいそれと名字を口にするのは忌み嫌われているのだ。
「たか……なによ?」
「浩介だ」
ルイズの怪訝そうな顔で先を促してくるルイズに、僕は苗字を抜くことで答えた。
「浩介ね。まったく、これじゃ先が思いやられるわ」
ものすごく深いため息をつかれてしまった。
……まあ、言いたいことは分かるけど。
「一つだけ聞きたいことがあるんだけど」
「何よ」
とりあえず、服を着てルイズが落ち着いたところで、僕は一つだけ疑問を投げかけることにした。
いろいろと聞きたいことはあったが、今一番聞きたいこととといえば
「本当に、僕はルイズの使い魔なのか?」
「はぁ?」
呆れたような表情と声色で、信じられないといわんばかりの言葉が返ってきた。
「失礼。いまだにルイズの使い魔だっていう実感がわかないものでつい」
「あんたねぇ……」
フォローしようとしたが何がいけなかったのか、怒りからかこめかみを引くつかせ始めた。
「あんたは私の使い魔なの! その左手のルーンがその証よっ」
「これか……」
こちらを指さしながら矢継ぎ早に言われた言葉に、僕は自分の左手を見る。
そこには確かに、象形文字のような何かが刻まれていた。
おそらくこれが、使い魔契約を交わしている”証”なのだろう。
つまり、僕が正真正銘ルイズの使い魔であるということを意味していた。
「確かにこれがあるということはそういうことなんだろう。でも、僕は認めない。使い魔であるという実感がわかない時点でそっちにマスターとしての資格があるのかなんて、一目瞭然のはずだよ」
「むぐぐぐ……」
使い魔とは、一度契約をすればどんな者でさえ己が使い魔であるという自覚が芽生えるらしい。
前に一度、人の言葉を離せる使い魔に聞いたことがあるので確かだ。
だが、僕にはその自覚が芽生えていない。
それこそが僕が彼女がマスターとしてみていない根拠でもある。
だからと言ってこのまま自を貫くのは得策ではない。
何せ勝手のわからない異世界だ。
現状のちょっとした理不尽さと折り合いをつけられれば、拠点を手にすることができる。
だが、このまま自を貫けば拠点を探すところからやらなければならない。
勝手のわからない異世界で生き残るには、拠点が非常に重要になるのだ。
そういった点では、彼女のそばにいるのは安全だ。
彼女は、いろいろ(性格という意味で)と損をしている面があるが、悪人ではない。
それが、僕の彼女のそばにいるのが安全だとする根拠だ。
だからこそ、僕は一つの譲歩をすることにしたのだ。
「ならば、こうしよう。お前は何か一つ、自分の得意分野にてその才を僕に見せる。そうすれば僕はあんたを主人であると認めよう」
「なんですって……?」
一体何が気に食わなかったのか、僕の口にした”条件”に、ルイズから発せられる怒気がさらに増したような気がした。
「とりあえずは現状は仮契約。人前ではちゃんと恥をかかない程度にふるまおう。それができなければそれはそれで結構。でも」
「でも……何よ」
一応ではあるが、彼女の性格が分かってきたような気がする。
少なくとも、どうすれば彼女をたきつけることができるか……程度は。
「尻尾を巻いて逃げるという滑稽な姿を、披露することになるけど」
「誰が逃げるのよ! いいわよ、そこまで言うんなら受けてたとうじゃない!」
思った通り、彼女は僕の提案をしっかりと聞き入れた。
「あんたがびっくりするものを見せてやるんだから、待ってなさいよ!」
「はいはい」
とりあえず、その光景を見るのがいつになるのやらと思いたくなる気持ちを抑えて、僕は重要なことを聞くことにした。
「ところで、この後僕はどうすれば?」
「あんたはそこで寝る。それで朝になったら起こして」
そういうや否や、指をパチンと鳴らして明かりを消すと、そのままベッドに入ってしまった。
「……ほし草かよ」
彼女が冗談を言っているのでなければ、僕の寝床はほし草の上らしい。
「ちゃんと言うことを聞いていれば……ご飯は与えるわ」
「与えるって……」
半分眠りかかっているのかうつらうつらとした声色で言われた言葉に、僕は怒ればいいのか、それとも呆れればいいのかが分からなくなってしまった。
ただ言えるのは
(絶対に、僕ペット扱いだよな)
ということだけだった。
「とりあえず、雨風しのげるだけでも儲けものと思ったほうがいいか」
いろいろと考えなければいけないことは山積みだが、僕はほし草の上に腰かけると、壁によっかかって寝ることにした。
こうして、僕にとって激動の一日は、終わりを告げるのであった。
感想やアドバイスなどお願い致します。