私だけの星 ずっと輝いてるよ 作:ヴァイロンオメガファントム
葉山side
俺は特別席で舞台の上で踊っている陽乃さんと比企谷を見ている。確かそろそろ愛し合う表現の振り付けだったかな。あそこはとても難しい。1つ間違えれば台無しだ。まぁ、陽乃さんに限ってそんなミスはしないだろう。まぁ問題があるとすれば比企谷だ。
だけど、比企谷も練習の疲れなんて嘘のようにキレッキレで踊っていた。心配しすぎなのかな?
練習の最初の頃なんて、キレなんて全然なく、動きはガタガタで全く見せられる物ではなかったのにな。
だけど比企谷は意外に飲み込みが早く、次から次へと振り付けを覚えてくれるから不覚にも俺も教えるのが楽しくなってしまった。
そして最終的には陽乃さんが教えたり修正したりしてどんどん完成度が上がっていった。そしてあそこまで見せれるものを作り上げた。
正直凄いよ…君は。
このままミスなく踊りきってくれたらそれでいい。
「あれ?」
そして俺は比企谷が練習の時とは違うことに気づいた。
比企谷のやつ…練習の時とは違い結構ガンガンいくな。なんか…勢いが違う…
俺は周りを見た。さっきまで歓声があったのに今じゃ誰一人声を発しない。
あはは…この会場の皆比企谷たちの踊りに釘付けなのだ。特に女子がね…
そのぐらい比企谷の踊りは凄く華麗だった。陽乃さんに全く劣っていなかった。むしろ陽乃さんより輝いて見える。
練習の時とは全く違う比企谷に驚きつつ、俺は1つ疑問に思ったことがあった。
陽乃さんだ。いつもの顔じゃない。遠くからであまりはっきりとは見えないが、いつも仮面をつけている陽乃さんの顔じゃないという事は分かった。その顔はまるで…
いや、もしかしたらあれも陽乃さんの演技か?それとも見間違い?
そう思っているとあっという間に最後の振りだ。
比企谷たちがキスをする。そして場が真っ暗になった。
拍手が飛び交う。舞台が暗転、陽乃さん達は礼をし、舞台を降りていった。
先程のは陽乃さんの演技なのか?
その真意が気になるため、このイベントが終わったら陽乃さんに聞いてみるとしよう。
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そしてイベントも終わり時刻は22時。イスなどの片付けを手伝っていると比企谷の姿が見えた。比企谷も片付けの手伝いをしているらしい。いろはあたりがやらせているのだろう。まぁ挨拶くらいしとくか。
「やぁ比企谷」
「げっ…」
「げっとは酷いな。俺はただお疲れ様と言いに来ただけだよ」
「おう…まぁ…お疲れ…」
「体大丈夫か?」
「おう、もう足と腰が限界だ」
「そうか、…陽乃さんのわがままに付き合ってくれてありがとう。帰って家でゆっくり休んでくれ」
「っ……そうするわ…」
ん?今陽乃さんの名前出したら一瞬比企谷が困惑したように見えた…気のせいか?若干顔が赤い気がするが─
まぁいい、きっと疲れているのだろう。早く比企谷には休んで貰おう。
「比企谷、ここらへんの片付けは生徒会も含め俺達に任せて比企谷は家に帰って休んだらどうだ?」
「そうしたいのは山々だが……一色がな…」
「いろはか…いろはには話しておくから先に帰れよ、疲れてるだろ?」
「……いいのか?」
「あぁ、任せてくれ」
「悪い、そのお言葉に甘えるわ」
「あぁ、また明日」
「おう」
そう言いながら、比企谷は疲れた表情で帰っていった。本当に疲れてるみたいだ。まぁ今日1日中踊ってるしな、無理もないか。
……さて、片付けるか。
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イスを手に取り、収納場所を行ったり来たりしながら片付けをしていると、
「あら、隼人」
「陽乃さん?」
後ろを見ると普段着に着替えている陽乃さんの姿がそこにはあった。
だけど…
「挨拶回りはもういいのかい?」
「まぁね、あとはお母さんに任せちゃった」
「珍しいな、陽乃さんが最後まで回らないなんて」
「私だってたまにはそういう時もあるんだよ」
陽乃さんが最後まで挨拶回りをしないのは本当に珍しい。そして良く顔を見ると凄く眠そうな顔をしていた。
「陽乃さん、眠いのかい?」
「うーん?眠いのかな?眠そうに見える?」
これもまた珍しい。いつもは冷たい仮面を被っていてそんな表情なんて一切見せないのに。
…………久しぶり…かな?そんな表情を見たのは。
「ははっそんな表情見たのは久しぶりだよ」
「え、私、そんなに顔に出てる?」
「あぁ、出てる出てる。」
もうウトウトじゃないか……逆に自分で気づいてないのか?それはまた凄いけどな。
「あ、そうだ隼人、比企谷くん見てない?」
「比企谷?比企谷だったら…疲れてそうだったから先に帰らせたけど…」
「あー比企谷くん帰っちゃったのかー」
「比企谷に何か用事でもあったのかい?」
「ううん、別に。ただお礼でも言っとこうかなと思って」
なるほどお礼か。
…そういえば1つ、聞こうと思っていたことがあったんだった。
「陽乃さん、1つ聞いていいか?」
「うん?何?」
「後半のダンスの時の表情…あれは演技かい?」
これは聞いとかないとな。
「………………隼人はどっちだと思う?」
眠そうでウトウトな陽乃さんだったら聞き出せると思ったのに、そう簡単にはいかなかった。
「俺は…演技じゃないって思いたいな」
「あら、そう。まぁ比企谷くん、練習の時よりもガッツリ来たからちょっとドキってしちゃったかな!」
「そうだね。傍から見ててもわかったよ。」
「でしょーまったく本番の時にあんなにくるんなら練習の時もあんだけきてほしかった。…まぁそのおかけでドキドキしたわけで…」
後半何を言ってるか分からなかったが、まぁ陽乃さんも驚いていたらしい。
「…んじゃー比企谷くん居ないし、私そろそろ帰るね〜またねー隼人」
「あぁ、また」
凄く眠そうな顔をしながら陽乃さんはその場を去っていった。
さて、残りの片付けもやってしまうか…
……あ……いろはにはなんて言おうか……
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次の日 朝
「ハヤトく〜ん、昨日踊ってたのヒキタニくんだよね!?」
「あぁ、そうだな」
「まじで凄かったよな!比企谷の奴!」
「ヒキタニく〜ん普段運動できないフリして実は結構出来るやつ!?」
「あいつ面倒くさがりだからな!くそー!あいつ隠してやがったな〜!」
そう比企谷を絶賛している、戸部と大和と大岡。確かに普段の体育の授業では比企谷はあまり目立ってはいない。まぁ本人の性格上目立ちたくないのだろう。
そんな比企谷はさっき登校して来て…うんイヤホンして伏せて寝ていた。
すると、
「あーし、ヒキオがあそこまでできるやつとは思わなかったし」
「そうだね、ヒキタニくんがあそこまでやるなんて……これはこれは脳内BLプロフィールを大きく訂正しなければ〜ガハァ!」
「ちょっと!?海老名落ち着いて!」
と優美子と姫菜も昨日の比企谷を絶賛していた。まぁ無理もない、あんな格好いい比企谷を見たら誰だって凄いと思ってしまう。
周りを見るとほとんど比企谷の話ばかりだった。まぁ当の本人は聞こえないようにして寝てるけど。
まぁ少し比企谷の評判上げとくかな。
「ヒキタニくん、あの振り付け昨日の1日でマスターしたんだぞ」
「まじかっぺ!?ヒキタニく〜んパネェわ〜超パネェわ〜」
「隼人、なんで知ってるし?」
「昨日、比企谷の練習してる時、俺もいたんだよ。最初はガタガタでとても見せれる物じゃなかったけどね」
「ふーん、ヒキオ頑張ったんだ」
昨日の練習を思い出す。あんなガタガタだったのにあそこまでの完成度にした比企谷はやっぱり凄いとしか思えない。だけどウェーブのところなんて……ふっやばい笑えてきた。
「隼人、なんかニヤけてない?どーしたの?」
「あ、いやぁ、別になんでもないよ」
危ない危ない、いつもの葉山隼人でいないとな。まったく…ヒキタニくんのせいで崩れるところだった。
「それにしてももう一人の女性のほうも凄かったよね!」
「海老名それあーしも思った!凄い綺麗だったし」
と、いつもの自分を出すために落ちつこうとしていたら陽乃さんの話しになっていった。
「あの人凄かったよな〜なぁ戸部」
「あの人は美しさを超えて神だったっぺな…」
「ははっ陽乃さんが神か…まぁある意味そうかもな」
陽乃さんが神だったらどんな神になるのだろう。……まぁ確かに陽乃さんの本性を知らない人からみたら女神なのだろう。でも陽乃さんの本性を知ってる俺や比企谷、雪乃ちゃんから見たら、あの人は絶望神陽乃かもしれない…
なんだろう…絶望神って…我ながらよく分からないことを考えてしまった。
「いや〜昨日イベント見て良かったわ〜」
「そうだな大和〜俺まだあの興奮を忘れてないぜ」
「そうだね!私の脳内はあの格好いいヒキタニくんでいっぱいだよ〜これであとは隼人くんとリンクさせれば〜えへへへぁ」
「ちょっと海老名!鼻血!鼻血でてるし!!」
「うわぁ!それ結構でてなーい?まじぱなくなーい?」
「戸部!驚いてないでティッシュ!」
「Σ(゚Д゚)はい〜っ!」
「あはは…」
まぁ何はともあれイベントは成功でいいのかな。陽乃さんと比企谷の最初のダンスのおかげで盛り上がり、それからはスムーズにイベントが進み無事に終了。これで結構比企谷のイメージもあがるんじゃないかな?
そして時刻は朝のチャイムが鳴る5分前。
お、そろそろ結衣もくるころかな?
「皆〜!やっはろ〜!!」
結衣の声が教室中に響く。
結衣と少し昨日の話をした。
朝休みの終わりを告げるチャイムがなる。さぁ今日1日も授業を頑張ろう。廊下では遅刻しそうな生徒たちが走っていく。
俺はそんな生徒達を横目で見ながら、視界に入る比企谷をみてこう思っていた。
比企谷無理はするなよ、と。
次は雪ノ下陽乃の朝を書こう(゜゜)