炎が肌を焼く。
熱い。だが、それを不快に思う程の欠片も残さず、鎚を振り下ろす。
灼熱した鉄の塊を剣へと、刀へと徐々に、徐々に変えていくその様は、素人ならば圧倒され、並の職人であっても、その鬼気とした気迫に息を呑むだろう。
己が血肉を注ぎ込むような、妖刀でも打っているようなその光景。しかして、それは間違いでもない。
何故ならば、俺は俺の
理由としては、それが俺の能力の一つであり、俺が生まれた家系における男児の必須スキルでもあるからだ。
ちなみに、能力名は『
この鍛冶技術必須の能力になったのは、俺の家系がジャポンの巫女の総本山たるイズモの大社で代々儀式に使うための刀を奉納する家系だからであり、幼少より、非常識な親父殿から鍛冶技術を叩き込まれて来たのを生かそうと思った結果だ。
完成した刀身に付いた水滴を拭い、研ぎに移ろうとした俺は、扉が開かれ屋内の熱気が逃げるのを感じて入り口へと振り返った。
「相変わらず熱いです。エンもよくこんな場所に篭れますね」
「カグラ。嫌なら来なければいいだろう。お嬢様なんだから、わざわざ会いに来なくても、呼び出されればこちらから出向く」
「私以外の誰かを向ければ、剣の完成を待たずに戸を開けるでしょう。そうなって困るのはあなただと思いますが?」
「………つくづく可愛くないな、おい」
「生憎と、愛想を売るような育てられ方はしていませんから」
ほとんど表情の浮かばないその顔に若干の呆れを浮かべ、その少女――カグラは俺を見て言ってきたが、すぐに無表情に戻って毒を吐く。幼いながらも美人に育つと断言できる端正な顔故に、無表情に毒を吐く姿はまさしく人形のようだ。
つくづく、本当に俺より一つ下の九歳児なのかと疑いたくなるが、実際に九歳児なのだから仕方が無い。
無論、転生者の可能性も考慮して遠回しに鎌をかけてみたが、全く反応しなかった事から、相当な演者でも無ければ違うと考えていいだろう。
となると、血の成せる業かとも思う。
「はぁ。まあいい。で、用件は何だ?」
「分かっているでしょう。例の件です。そろそろ結果が返ってくる頃かと思い、来ました」
「………一応、念のためにもう一度だけ聞いておくが、事を実行に移せばもうやめる事なんて出来なくなるが、引き返す気は無いんだよな?」
はっきり言って彼女らしくない“問題行動”故に、戻れなくなくなる前に最後通牒を突き付ける。もしかしたらでは無く、確実に死の危険が山と迫ってくるからだ。俺はそのために準備してきたが、カグラはそれを聞き付けて便乗して来ただけに、甘く見ている可能性は否定できない。
だが、そんな俺の心配を余所に、カグラは薄らと笑みさえ浮かべてみせる。
「ここで止めるのならば、初めからしていません。私は私の価値観に基いて、必要だと判断したからこそ、ここにいるのです。それで、来ているのですか?」
「そんなにそわそわするな。登録完了の通知はちゃんと来た。場所は暗記したし、暗号文でメモもしてあるから、万一忘れても大丈夫だ。時期も計画通り。知られても突破できるように計画してあるが、少なくとも見える範囲で妨害されているような動きは無い」
「エンのお父様がこちら側ですからね。どうやって引き込んだのかは知りませんが、刀剣馬鹿のエンが珍しく役に立って助かりました。では、現時点で変更は無しという事で、計画通りに行きましょう」
「ああ。だからそんなにソワソワするな。心躍るのは理解できるがな」
他の連中には分からないだろうが、珍しく興奮気味のカグラに注意する。そもそも、わざわざこんな確認のために足を運ぶ時点で浮ついている証拠だ。
しかし、それを注意できる程、俺も落ち着いてはいない、か。
「楽しみだな」
「はい。とても」
ひと月後。俺とカグラはイズモ大社から姿を消す。