そんなこんなで出来たのがこの作品です。一発ネタに近い。
正直無茶苦茶だけど許して。
※オリ主≠吉良吉影。静かに暮らしたいと思ってるかは不明。
七月十六日。
炎天下と言うには若干涼しい気候のもと、この学園都市―――人口の八割を学生で占める街に住まう少年少女はどこか高揚したテンションで友人らと談笑しながらそれぞれの学び舎へと向かっていた。
およそ200万人の彼らがそうして喜んでいる理由はこの街特有の特殊な理由によるもの、ということも無く、実に単純明快。三日後には今年度の始まりから待ち望んでいた夏休みが始まるからだ。
しかし、何事にも例外というものはある。前述した夏休みを楽しく過ごせる条件を満たせないものもいる訳で―――それに当て嵌まる上条当麻は、帰りのホームルームが終わった後の一年七組の教室で机に突っ伏していた。表情は見えないが、まるでこの世を憂う様な雰囲気を漂わせる彼の思考を勝手に代弁するとするなら『夏休みが来ることは嬉しいのだがその前半部分はどうやら足りない成績分の補習に明け暮れることになりそうだ。辛い』。そんなところだろうか。確約された自由時間が周囲の学生に比べて圧倒的に少ないことに関しては自業自得ともいえるが、同情すべきこともある。
というのも、決して上条当麻は不真面目ということでは無いからだ。彼はあくまでもしっかりと授業を受けて―――たまに居眠りをしてしまうこともあるが、基本的には善良な一般学生だ。ただ、授業の内容に理解が及ばない部分が多いだけで。突き放すような言い方をすれば、ただのバカであるだけなのだ。どうしようもなく。
そんな友人を横目に、
「当麻、俺は用事あるから先に学校出るぞ?」
「…………」
「――当麻?」
いつもは上条や、今は恐らくお手洗いに行っているだろう土御門元春という少年とこの一年七組の学級委員を務める青髪ピアスの少年。通称
といっても待ち合わせなどがある筈もなく、単に必要になった日用品を捜しに、住んでいる学生寮から少し離れた繁華街の方向へと向かおうとしているだけのことだ。当初は件の三バカも誘おうとしたのだが――上条当麻は金がない、土御門元春は妹が恋しい、青髪ピアスは新しい性癖を捜しに行きたいと散々な結果。最後の一人は寧ろ誘いに乗ってきたような気がしなくもないが、流石に吉良もそんな理由で同行されては敵わないと逆に断ることにした。悪いことをしたという気持ちには、不思議とならなかった。
そういう訳で下校する旨を上条に伝えてから繁華街に向かおうと、声をかけたのだが――どうにも起き上がる気配が無い。
そもそも上条がこんな有様になっているのは大多数の生徒から幼女先生や小萌ちゃんといった明らかに教師としての呼び方をされていない我らが担任、月詠小萌がホームルームにて放った一言に起因する。丁度、夏休みが近いということが話題に上がった際のことだった。
『成績が足りてない人は補習もあるんですから、最後の最後まで気を抜かずにいて欲しいのですよ。……上条ちゃんはもうすでに補習が確定しているんですけれど』
鬼だ。吉良を含めクラスの大半はそう思った。そして教卓に立った12歳児にしか見えない担任教師の無垢な表情に恐れを抱くと共に、上条へと同情の視線が集まる。この時既に上条は見事なまでに机へと突っ伏していて。例えるなら、明日のジョーより真っ白に燃え尽きているような錯覚さえあった。そういった経緯から、上条は突っ伏して吉良はそれを見て同情するなんて状況が出来上がった、という訳である。
今だ顔を上げない上条によっぽどショックだったのかと心配する気持ちもあるが、これ以上この場所に留まるわけにもいかない。残り二バカのどちらかが戻ってくればすぐにでもこの教室から出ることにしよう。そう判断した。今一度上条へと目をやり――気を落とすなよ。そう言おうとして、吉良は一つのことに気付いた。
「……zzz」
「――――まさか」
まさか。いや流石にないだろう。
上条当麻は落ち込んでいるのだ今まさに。だからこそ吉良吉陰は同情したし、心配した。すぐに繁華街に向かおうとせずに学友二人を待った。まさかそんな、吉良のホームルームから今に至るまでの感情が全てふいにされるようなことは。いやいやいや。
「おーい、当麻ー」
だが、気になるものは気になる。このまま何も言葉を返されずに帰るのも何だか癪だ。好奇心猫を殺すというが、ダメだと思うものほど人間やりたくなるものである。
恐る恐る上条の顔を隠している両手をどかして、肝心の表情を伺えば―――
「zzzzzzz……」
果たして、上条の表情は極楽に運ばれたかのような穏やかな寝顔だった。
つまり、ホームルームから今に至るまで吉良吉陰や周囲の面々が心配している間ずっと、上条当麻は気持ちよく夢の世界で揺蕩っていたということになる。そして吉良吉陰や周囲の心配は、全くの無駄に終わったと。そういうことになる。
「…………ハァ」
色々と葛藤があった末、吉良は一つ溜息を吐いた。
今もなお熟睡し続けている上条の寝顔を見て、こいつに怒るのもバカバカしい話だと納得する。勝手に心配したのはこちら側で上条はむしろ被害者だ。寝ていたとバレれば小萌から厳しい叱責を受けるかもしれないが、それはそれ。吉良がどうこう言える話でもない。
が―――何となく、こいつをこのまま寝かしておくのも癪だと、吉良は思った。
「―――――んぁ?」
「お、起きたかカミやん。吉良っちはもう帰っちゃったみたいだし俺らも―――ぶふぉっ!?」
「おいおいどうしたんだにゃー、カミやんの顔に何か変なものでもぉッ!………えーと、カメラカメラっと」
「何だよ二人とも、ってどうしたんだよ写真なんか撮って。何か面白いものついてぇえええ!?か、上条さんのこのそれなりにきめ細やかな肌に落書きですとぉ!?え、もしかしてこれ油性?油性なんでせうか!?」
それで許してやるとばかりに、腹いせに顔に大きく書かれた『バカ』の二文字。
使ったペンは当然油性。上条は暫くトイレの洗面台で四苦八苦することになる。
学園都市。
東京西部の土地を一気に買い占めた後に再開発して学生の街として作り変えたこの街のことを周囲の誰しもがそう呼んでいる。街に住む住民のおよそ八割は学生が占めており、いたるところには小中高校がひしめき合っている。数はそう多くないが、大学も広大な敷地を持ったのが幾つか点在していた筈だ。そして、この街は学生の街であると同時に技術の最先端を行く街であり――――更には、当然のように超能力が存在する街でもある。
(それにしても、街中で能力を使ってる子も多いのによく事故が起こらないよなぁ)
繁華街へと向かう途中。持ち合わせがあまりないことに気付いて銀行へと寄っていた吉良は、手に小さな炎を揺らめかせたり周りの葉っぱを小さく巻き上がらせたりしながら外を楽しそうに走っていく子供たちを見て素直にそう思った。
実際この街の至る所には学生がひしめき合っていて、そのほとんどが何らかの能力を持ち合わせている。そんな子供ばっかりだなんて凄い偶然だなぁ、なんてことはない。今に至るまでの経緯を詳しく知る訳では無いが、この学園都市はそもそも超能力の開発のために造られた街だと言ってもいいのだから。
そもそも超能力とは現実離れした、単純な原理では解き明かせないような現象を引き起こす能力のことを言うが――この街においては
実用性の低いものから
兎に角、学園都市には大小様々な能力を持つ能力者がそこかしこに散らばっている訳だ。自分の能力がどこまで通用するか気になって大暴れする
今更小さな子供が能力をフル活用して中々にバイオレンスな鬼ごっこをやっていても驚かないし、遅刻を避けるために空を翔けたり瞬間移動していく学生を見てもそうショックは受けない。平和な学園都市だからこそ、それぐらいは日常のアクセントとして余裕を持って見ることができる。能力開発を頑張っている以上、多少の茶目っ気は許してやるべきなのかもしれない。
そう思っていた、その時だった。
「全員手を挙げろ!」
突如として、銀行店内は静寂に包まれた。
バァン!と、何かを叩きつけるような音と、野太い男の叫び声が声一つ無い店内へと響き渡る。正確には恐怖から物音一つしなくなった、が正しいかも知れないが。手を挙げろと命令した声の主はそのまま銀行の窓口へ向かうと防犯シャッターを占めることと警備ロボを停止させることを怯える銀行員に指示し―――ついでとばかりに、金を金庫から出せと要求した。
「そうだな……おい、そこの学ラン着てるガキ!こっちへ来い!」
吉良がこちらを呼ぶ声に振り返ると、そこには窓口で指示している男を除いて三人の強盗が立っていた。全員が目元以外を隠すようにバンダナを装着し、その中でもブッチギリで派手な――白地の花柄バンダナを装着した男はこちらへと拳銃の銃口を向けている。正直、似合っていない。そして地面には中身の入っていない開いたスーツケース。叩きつけるような音の正体はどうやらこれらしく、周囲の注目を集めるためにやったらしい。
と、そこまで分析しておいて――――
(―――――え、強盗?)
吉良の心情を表すかのように徐々に陽射しが防犯シャッターによって遮られていき、やがて外の景色は完全に鉄の雨戸によって完全にシャットアウトされる。そして、先程までの若干の分析と現状を照らし合わせた吉良は。
「えっ」
遅れて、茶目っ気では済まされない事態に巻き込まれていることに気付いた。
キラー・クイーンのキの字も出てきてないよ。おかしいね。
書き終わり次第、近日中に続きを上げたいと思います。