八つ目の罪を数える時【凍結】   作:ティフアナ・フェアガンゲンハイト

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※注意
夜津弥鎮贄之神(やつみやすにえのかみ)は架空の神です。
御了承を…。


淋しい時

 

 あれからケンは此処に来るようになった。

 ただ、私はあまりケンの前に出なかった。

 私が居なかったときは、寂しそうな顔をして来た道を帰っていった。

 

 ある日、ケンは木刀を持ってきた。

 お父さんに素振りの練習をしろ、と言われたらしい。

 ケンは真剣な顔をして素振りをしていた。

 その後は一緒にお昼寝をした。

 それと一つ助言をしといた。

 ケンはお父さんのように強くなりたいと言っていた。

 

 次の年になるとケンは此処に来ることは無かった。

 次の日も、その次の日も待ったが来なかった。

 ケンが居ないと此ほどまで淋しいとは思わなかった。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 ケン会って何年経ったのか忘れてしまった。

 最近は信仰してくれる村が増えて、神力も増えてきた。

 守る土地が増えたのでちょっと忙しい。

 だんだんと社が立派に成っていくのだが、村の方は大丈夫なのだろうか?

 とても心配だ。

 あまり此処から動けないから、見に行くのは年に三回程だ。

 

 淋しい、ああ寂しい。

 暇だすることが無い。

 

 ところで、私は私以外の神様を見たことが無い。

 何時か会って話をしてみたいものだ。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 

 今日もいつも通り軒先で日向ぼっこをしていた。

 すると、見掛けない男が近づいてきた。

 何処かで見た顔だったが、思い出せない。

 

 何とか思い出そうとしていると、その男は私に話し掛けてきた。

 

「お久し振りですヤツミお姉ちゃん。長らく姿を見せることが出来ず、すみません」

 

 ああ、何処かで見た事があると思ったわけだ。

 幼き頃の面影が分かる。

 

『……ケンか?』

 

「そうです、ケンです!」

 

 あの時と同じで、返事は元気だな…。

 

『何だ、そんな改まった喋りをして』

 

「すみません。でも、ヤツミお姉ちゃんが神様だって知ってしまったから、言葉を改めないと思いまして」

 

 やっぱり知ってしまったのか。

 

『……そうか』

 

「長老に此処の社の事、社に祀られている神様の話を聞いて驚きました。

 未だに、貴女が夜津弥鎮贄之神(やつみやすにえのかみ)だと実感が持てません」

 

 出来れば前と同じ風に接して欲しかったな。

 

『……うん』

 

「実は私は戦に行かないといけません。

 なので、私のこの剣を預かっていて貰えないでしょうか?」

 

 戦か。

 気軽に話せる相手を失うのは嫌だ。

 そんな物は受け取れない。

 そんな物を持ってはいられない。

 

『…………』

 

「…どうでしょうか」

 

 そんな目で私を見るんじゃない!

 

『お前は…私のようになってはいけない』

 

 私とお前は違う。

 

「しかし、其は村のため。村を守るためです。

 自分が戦わないと村を守れません」

 

 何が戦いだ。

 

『それでも駄目だ受け取れない』

 

「受け取ってください。御願いします」

 

『お前は私のように………命を捧げて村を守る事は私が許さない!』

 

 私はそれによって縛られた。

 そして村を守った。

 結果として私は神へとなった。

 お前は私とは違う。

 生きてきた時代が違う。

 私が生きていた時代の時はしょうがなかった。

 でも今は違う。

 

『……分かった、受け取る。

 ただし条件がある。

 お前はもう私の前に姿を現すな。

 もう、此処には来るな青(・)年(・)』

 

「それじゃあ剣は……。

 ありがとうございます夜津弥鎮贄之神(やつみやすにえのかみ)様」

 

 ケンは嬉しそうに涙を流してそう言った。

 

『ならば早く此処から立ち去れ!』

 

 いや、私から消えた方が良いか。

 

 

 少女は男の前から忽然と消えた。

 男は慌てて廻りを見渡したが少女の影すら見付けられなかった。

 その後、少しして男は社に一礼をし、村に続く道を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 

「長老、具合はどうですか?」

 

 その部屋には一人の老人と若者が居た。

 

「…何だか今日は調子が良いみたいじゃ。

 ほれだから、今日の祭りには参加したいと考えておる」

 

 老人は寝床から起き上がり、笑顔を見せ話していた。

 

「そうですか、分かりました。

 外に出る準備をしてきますね」

 

 若者はその笑顔をみて、自分も微笑み去っていった。

 

「うむ、待っておるぞ」

 

 老人は若者が準備をしている間、自分も準備を始めた。

 

 

◇

 

 

 

 この祭りは伝統で行われている。

 我らの拝める神に感謝をし、神と共に愉しく過ごす行事の事を豊作祭という。

 神を見て話す事の出来る女子のことを巫女と言う。

 今はその巫女が祭りを進めている。

 儂はそれを眺め、久しく酒を呑んでいた。

 

「今宵は善き月じゃな」

 

『    』

 

 一瞬、誰かが居たような…。

 独り言のつもりだったが、その答えが聞こえた気がした。

 ん?何だ、騒がしいな。

 

 

◇

 

 

 

「え…あ、ああ、貴女様は…!」

 

 目の前には驚いて転んだ少女が居た。

 

『あんたが今代の巫女かい?』

 

「は、はい!私が巫女で…す」

 

 巫女は急いで立ち上がり答えてくれた。

 あと、可愛い。

 

『ふむ、…可愛いな』

 

「あ、貴女様は?」

 

『お前が巫女ならば、私が何者か知っておるだろう』

 

「夜津弥鎮贄之神(やつみやすにえのかみ)よ、何故此処に?」

 

「長老様!?」

 

 ……ケン。

 長老になっていたのか、知らなかった。

 

『久しいな青年』

 

「私はもう、青年では御座いません。老人でございます。

 あなた様の約束はずっと守っておりました。しかし、何故あなた様が此処に来られるのですか?」

 

 そういえば、そんな約束をしたな。

 

『来てはならぬか。我を崇める祭りに来てはならぬと言うのか?』

 

「あ、いや、それは……」

 

 よく見れば老けている。

 私は人間ではなくなって数千年経ったせいか、人間の感覚が分からなくなったな。

 

『まあ、よい。お前も歳だろう、あまり無茶をするな。我と違って弱い。

 さてと、今回の目的を果たそうかな。

 社に独りでは淋しいのでな、そこの……巫女を貰って行くとするよ』

 

 そう驚くな、さっきも驚いていただろうに…。

 

「え?ええ!?」

 

「な……」

 

『青年よ、お前は村を見守れ。足を浮かすなよ。

 さて、帰る!』

 

 これ以上話すのはメンドイから帰る!

 

 

 巫女を抱えた神は光の粒となって消えた。

 残された村人は唖然とし、老人は涙を流して祈りを捧げていた。

 

 






次元という名の世界は繋がり続ける
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