ハプニング「レッツで〜、ゴーー!」
早希side
(あれ?今、何時だろう……。)
まどろんで浅くなった眠りの中。
その中で私はふと今の時間が気になって、横向きのまま枕元に手を伸ばそうとする、
「?」
けど、私の腕は包んでいる何かによって遮られ動かす事が出来なかった。
(……何だろう。身体、何かに包まれてる。
お布団……じゃないね? ちょっと固いし。なにかな?
……けどあったかいし、それになんだか落ち着く匂い。)
心地良い暖かさに包まれて、呼吸する度に安心する匂いが鼻をくすぐる。
その心地よさに包まれて、もうひと眠りしたい誘惑をなんとか逸らして、私は今自分を包んでいるものが何かを確かめるために瞳を開けた。
「――!//」
とたんに体温が高くなる。
そして叫びそうになるのを必死で抑え込んだ。
ビックリした。
だって目の前に私の大好きなお兄ちゃんの寝顔があったから。
ビックリして反射的に飛び退こうとしたけど、なんでか身体が動かない。
顔を動かして視線を下げると、身体が動かない理由を理解する。
(はわわわ//)
身体が更に暑くなる。
だって私は今、お兄ちゃんに抱きしめられているんだから。
(えぇっ!私今お兄ちゃんに抱きしめられちゃってるよ!
やった!……じゃなくて!
……あぁ違うお兄ちゃんに抱きしめられているのは大好きなんだけど今はそうじゃなくて、えーとえーと……)
現状把握のために冷静にならなきゃいけないのに、お兄ちゃんに抱きしめられている。
ただそれだけで私は気持ちがフワフワして全然冷静になれない。
だから私は一度落ち着くために、
お兄ちゃんに思いっきり抱きついた。
「ふにぁ〜♪」
睡眠中でポカポカのお兄ちゃんの身体に抱きつくと優しくて暖かい体温を感じる。
「クウゥーン♪」
呼吸する度に目一杯お兄ちゃんのいい匂いが私を満たしてくれる。
「キュー♪」
そして胸に当てた耳から一定のリズムで聴こえてくるお兄ちゃんの心臓の音。
(えへへ、お兄ちゃんの体温。お兄ちゃんの匂い。お兄ちゃんの心臓の音。)
どれも私を幸せな気持ちにさせてくれる。
そしてお兄ちゃんに思いっきり抱きついた時、
「〜〜〜!」
身体がビクンと跳ねる。
「えへへへ///お兄ちゃん
お兄ちゃんを堪能した私は身体を少し離す。
「えへへ、ちょっと
堪能し過ぎたせいで幸せな気分になってるから少ししたったらずだ。
お兄ちゃん成分は私が活動するのに必要不可欠なもの。
私にとっての原動力なのだ。
小さい頃から私の傍にはいつもお兄ちゃんがいてくれた。
よく友達からもお兄ちゃんっ子だと言われるし、自分でもそう思う。
だってお兄ちゃんってカッコいいんだもん。
昨夜みたいにちょっといじわるな時もあるけど、いつも私の事をとても大切に思ってくれるし、優しいし、運動神経抜群だし、爽やかだし、頭良いし、お料理も出来るし、私の学校でも密かなファンクラブがあるしーー
挙げればキリがない位、とにかく私はお兄ちゃんが大好きなのだ。
「……。」
でもこの気持ちは持っちゃいけない感情だ。
だって、私達は
誰よりもお兄ちゃんの事が“大好き”なのに、“血の繋がった兄妹”というだけで私のこの気持ちをお兄ちゃんに伝える事が出来ないのだ。
(だから……)
視線をお兄ちゃんの顔に向ける。
起きている時はカッコいいのに、あどけない表情で「すーすー」と寝息を立ててるお兄ちゃんの顔はどこかかわいくて、そんないつもと違うギャップは見つめているだけで胸がキュンとする。
そんな誰も知らないお兄ちゃんの寝顔をいつまでも堪能したい。
けど、残された時間はあまり多くない。
もう少しでお兄ちゃんが起きる時間だから。
思い立ったら即時決行だ。
「寝てる、よね?
……大丈夫、ぐっすり寝てる。」
私はお兄ちゃんが寝てる事を確認して、視線をお兄ちゃんの顔から唇に移動させて、溢れてきたツバをゴクリと飲み込む。
「ハァハァ。おに、いちゃん」
これからする事を想像してバクバク高鳴る鼓動に速まって荒くなる息。
そのせいでより暖かくなってきた身体をお兄ちゃんを起こさないようにゆっくり移動させてお兄ちゃんの顔に私の顔を寄せていく。
狙いはお兄ちゃんの唇。そこに向けて私はゆっくり顔を近づけていく。
そしてーー
ヂリリリリ!
「ふにゃぁ!」
すぐ傍でお兄ちゃんのスマホのアラーム音が鳴り響いた。
そしてその音にビックリした拍子に、私はお兄ちゃんに思いっきり抱き付いてしまう。
……つまり、今私とお兄ちゃんは抱き合っている状態だ。
「ん、んんぅ……。あぁ、おはよう、早希。」
「!」
そしてアラーム音のせいか、それともそのアラームの音にビックリした私が大きな声を出しちゃったせいか、タイミング悪くお兄ちゃんが目を覚ましてしまった。
「? どうした? 顔赤いぞ。」
キョトンと首を傾げるお兄ちゃん。
その瞳の中で慌てた私の顔が見えるくらい間近な距離。
「ふぇっ! なななんでもないよっ!
じゃあ、お兄ちゃん私部屋戻ってるからねっ!」
そんな至近距離で見つめられる事に耐え切れなくなって、私は慌てて逃げるようにお兄ちゃんの部屋を後にする。
(むぅ、アラームめ。
許すまじ!)
後ちょっとのところで遮ったアラームの音にちょっぴり恨みを込めながら。