シスコンな俺とお兄ちゃんっ子な私   作:ミツフミ

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第4話未 悠樹

悠樹side

 

「……なんだったんだ?」

 

 

 まるで逃げるように早足で俺の部屋から出て行った早希の後ろ姿に首を傾げる。

多分漫画とかなら今俺の頭には?マークが浮かんでるのだろう。

 

 そう言えば気のせいか早希の顔が赤かったような……。

 

「早希、何してたんだろう?

 ……なんか早希の顔が寸前まで迫ってきてたような気がするけど。」

 

 

 意識が覚醒する前、浅い眠りの時に早希がすぐ側で何かブツブツ言っていた気配があった。

 けど寝ていたせいで何を言っていたのかまでは分からなかった。

 

 

「もしかしてキスでもしようとしてた……とか?

 

 

 ……ありえないな。」

 

 

 一瞬浮かんだその考えは瞬時にありえないと結論にいたる。

 

 早希は家の外中関わらずよく腰や腕に抱き付いてきたり、着替えている時に突入してきたり、俺がいるいないに関係なく俺のベットに潜り込んでいたりするけど、それはただ俺に甘えているだけだ。

 

 流石にキスまではしてこないだろう。

 

 

 

 そもそも、早希がこんな風に育ったのはこの家の環境が原因のような気がする。

 

 うちの両親が共働きでそんな両親を少しでも助けたかった俺は、早希が幼稚園に通っていた時は夕方、幼稚園が終わる時間まで友達の家等で遊んで時間を潰して早希を迎えに行っていた。

 

 早希が小学生になってからは、俺がどこかへ遊びに出ると早希が家に1人になってしまう為、放課後はどこかにも出かける事や友達の家に遊びに行ったりせずにまっすぐ家に帰って先に帰ってる妹とずっと遊んでいた。

 

 たとえ放課後に友達と遊ぶとしても必ずうちに呼んでいたし、呼ぶ相手も早希をいじめそうなわんぱくな奴は呼ばず、姉か妹がいて性格がおとなしい、早希も一緒になって遊んでも問題ない奴だけしか呼ばなかった。

 

 

 だってクラスの奴より早希の方が大事な俺にとって、かわいい早希()に害を及ぼす奴(イコール)友達じゃないって形式がその当時から頭の中に成り立っていたからだ。

 

 

 

 ……そう考えると小学生の時から友達の冬華(とうか)って、3つ年上の姉さんがいるし、性格もその時から穏やかで面倒見も良く、早希とも一緒に遊んでくれて本当に良い奴だよな。

 

 

 

 

 まぁそんな風に、幼少期俺と一緒にいたおかげ(せい)で、早希はお兄ちゃんっ子の甘えん坊に育った。

 

 どの位甘えん坊かというと、中1の時に知り合った俺と同じく血の繋がらない妹を持つ音緒(おとお)が、俺の話を聞いて若干引いてしまう位に……。

 

 ……まぁ血の繋がってない妹がいるという同じ境遇だとしても音緒ん家の場合、あいつと妹さんとは1歳しか離れてないし、お互いが血縁関係じゃない事も知っている。

 

 それに友達が出来るまで遊び相手が俺しかいなかった早希とは違って、あいつん家は音緒以外にもおじいさんと10歳年上の姉がいるあの子とじゃ、事情が違ってくるけどな。

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

 そんな事を考えながら学校の制服に着替えて部屋を出た俺は、1階の居間に到着して冷蔵庫に1枚のメモが貼ってあるのを見つける。

 

 それが両親の書いたものだと気付き、その紙を冷蔵庫から剥がす。

 

 

 メモ用紙の内、上半分は父さんが書いたのだろう。

 

 几帳面な父さんらしく、“父、母、朝食要ります”と、シンプルに書いてあった。

 

 

 そして下半分は母さんが書いたものだろう。

 

 3色ものマーカーで、“朝食はフレンチトーストが良いな♪”とカラフルに書いてあった。

 

 

 そんな2人の性格がよく表れているそのメモ用紙に思わずクスリと笑みを漏らして、俺は早速、母さんが朝食に指名したフレンチトーストを4人分作るのに取り掛かった。

 

 

 

――――

 

「……よし、こんなもんか。」

 

 最後にトーストの上からシロップをかけて完成したフレンチトーストを眺める。

 

「うん、我ながら上手く出来たな。」

 

 食卓のテーブルに並ぶ4人分の朝食を見て頷く。

 

 

 きつね色に焼けたトーストは見た目もきれいで漂ってくる甘い匂いは食欲を注ぐ。

 

 きれいに出来た朝食を眺め、気分を良くした俺はつまみ食いしたい気持ちを抑えて食卓のテーブルにサラダやベーコンエッグ等のおかずを並べていると、

 

 

「おはよう、悠樹」

 

 その途中で俺を呼ぶ声が。

 顔を上げると居間の扉の所に黒髪の男性が立っていた。

 

「おはよう、父さん」

 

 俺はその黒髪の男性、自分を引き取った義理の父親に向かって挨拶を返す。

 

 

 

 

 俺を引き取ってくれた父さんと母さんは優しい人だ。

 あまり怒られた記憶がない。

 

 でもそれは少ないだけで、俺が悪い事をした時はきちんと叱ってくれるし、良い事をした時はちゃんと褒めてくれる。

 

 俺がこの家に来て8年経つけどその間俺は2人から理不尽な扱いを受けた事は1度もなく、幸運な事に早希が産まれてからもそれは変わらなかった。

 

 

 よくドラマ等で養子として引き取られた子は、最初の内は本当の子供のように可愛がってもらえる。

 

 けど引き取った夫婦が子供を授かると段々と放置されるようになるって聞いた事がある。

 

 だけど、うちの場合はそんな事ない。

 

 2人とも俺を本当の息子の様に扱ってくれる。

 

 

 だから俺も2人に対して変にかしこまったりしないで自然と2人の事を“父さん”、“母さん”と呼べるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、今日も美味しそうだな。

 悠樹、また腕上げたんじゃないか?」

 

「そうかな? まぁ料理の基礎を教えてくれた先生が優秀だからな。」

 

 

 父さんの言葉に俺はニヤリと笑ってそう返答すると、父さんは少し照れたように笑って頬を掻く。

 

 

 俺に料理の基礎を教えてくれたのは父さんだ。

 俺が料理を習い始めたのは小5年の時、早希が小学校に通い始めた年。

 

 その年のある日、両親が揃って帰りが遅くなってお腹を空かせて切なそうな顔をする早希がかわいそうだったから、調理実習の時に作ったハンバーグを作った。

 

出来たハンバーグは正直言ってかなりブサイクだった。

大部分が崩れていたし、大丈夫だったやつも形が歪だった。

 

でもそんなの関係なかった。

 

だって俺が作った料理を早希が「おいしい」って太陽みたいな眩しい笑顔で言ってくれたから、そんな早希の笑顔をまた見たいって思ったから、俺は料理に目覚めた。

 

 

 

「じゃあ料理を運んでおくから、早希を起こして来てくれ」

 

 

 

 

 

 その後、先に帰ってきた父さんに

が炊いたごはんを見て、嬉しい反面、どこか寂しげな表情をしたのは今でも覚えている。

 

 

 

 

 

 その年のある日、いつものように妹と家で遅くまで仕事の両親を待っていると、父さんから電話がかかってきた。

 

 その要件は仕事がいつもより長引いたせいで今日帰るのか遅くなるというものだった。

 

 に褒められてこっぱずかしさから頬を掻く。

 

 嬉しくないはずがない。だって元々この家で料理をしていたのは父さんだったから。

 

 

 

 けど、それをは冬華に習ってそれなりに料理の腕に自信が

 

 

「ははは、そうだな。じゃあ今度冬華君にお礼しなきゃな。

 っとそろそろ2人を起こしに行くか。」

 

 

 それを察してくれた父さんは、その話題を早々に切り上げてまだ下りて来ない2人を起こしに行く事を提案する。

 

 食卓に朝食が並べ終えた所で父さんが声をかけてくる。

 

 

「あぁ、じゃあ俺は早希を起こしに行くよ。父さんは母さんをお願い。」

 

「了解。あっそうだ悠樹、」

 

 居間を出ようとしていた父さんはそこで振り返り、俺の方を向くと1つ爆弾を落とした。

 

 

「早希と一緒に寝るのは良いけど流石に抱き付いて寝るのは父さん見逃せないぞ」

 

 

「なっ!?」

 

「じゃあ早希の方、頼んだぞ〜」

 

 そう言い終わるとすぐ居間を後にした父さんは、まだ起きてこない母さんを起こしに2人の寝室に向かって行く。

 

「み、見られてた。」

 

 少し赤くなった俺を残して。

 

ーーーー

 

「早希〜、入るぞ〜」

 

 早希を起こしに来た俺はある部屋の扉を数度ノックをしてスライドさせる。

 

「やっぱり、こっちにいたか。」

 

 

 俺の予測は正しく、案の定俺の部屋の俺のベッドは膨らんでいた。

 

 早希は朝が弱いわけではない。

 なんせ俺よりも早く目を覚ます。

 だけど早希は2度寝をする。

 何故か俺の布団に潜り込んで。

 

 

 

「こら〜早希、起きろ〜」

 

 

 そう言いながら俺は思いっきり布団をはぐった。

 

 そこには昨日寝る前に机の横に置いた早希のお気に入りのクマのぬいぐるみが横たわっていた。

 

「なっ、!?」

 

 

 それを確認した瞬間、腰に拘束感が。

 視線を下に下げると早希がドヤ顔で俺の腰に抱きついていた。

 

「ふっふっふっ、お兄ちゃん、一本取ったり〜!」

 

「ふにゃ〜」

 

 

 そこには猫みたいに身体を丸めた妹がムニャムニャ寝息を立てていた。

 

 

 寝ぼけて抱き着く

 

 何このかわいい生き物、天使か!(注:妹です)

 

 起こす

 

 選択肢は

1.かまう

2.かまう

3.かまう

 

 ……ここは109番の“起こす”だな。

 

 えっ? 間の選択肢はなんだって?

 そんなの全部“かまう”一択に決まってるだろ!

 

 

 煩悩は妹で出来ている!(I am the Kleshas of my sister!)

 

 

あとがき

ふふふ、お兄ちゃん成分補給完了♪

 

 

「父さーん、母さーん。おっきろ〜!朝だぞ〜!おっきろ〜!飯だぞ〜!」

 

両親の部屋、その入り口でフライパンとおたまをカンカン鳴らす俺。

 

 

「「ん、ん"〜」」

 

俺の出す音に反応して唸り声と共に緩慢な動きでモゾモゾと動く布団が2つ。

 

 

 

後ろからパタパタと軽い足音が聞こえ、

 

「おはよう、お兄ちゃん」

 

 

早希が居間に入ってきた。

 

 

「おはよう早希、ってさっきまで一緒だっただろ。」

 

その途中で俺を呼ぶ声が。

顔を上げると居間の扉の所に黒髪の男性が立っていた。

 

 

「ん?」

 

ふと視線に気付いて顔を上げると、早希が嬉しそうに俺を見つめていた。

 

 

「早希、どうした?」

 

「ん? なにが~?」

 

 

 

 

「おはようみんな」

 

「みんなおっはよ〜♪」

 

 それからまた10分後、居間に明るい女性の声が響く。

 

 その声の主は、冬華と一姫とよく似た顔立ちの女性だった。

 

 その見た目も若く、せいぜい一姫と10歳程度しか違わないようにしか見えないのだが、彼女の正体は、

 

「「おはよう、母さん」」

 

 冬華と一姫の母である。

 

 

 

この前それを早希に言ったら真っ赤になってしばらく上機嫌だったのはなんでだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合場所で早希と別れて俺は1人学校に向けて歩く。

左側には俺の母校であり、現在早希が通っている小学校のグラウンドが、フェンスに仕切られた先に広がっていて、右側にはポツリポツリと住宅が並んでいた。

目の前にはまっすぐな道の先の左手に俺と早希も通っていた幼稚園が見えて、更にその先には高校に行く登り坂もうっすらと見える。

 

 

 

二の腕に頬を乗せておにいちゃんの漫画を読んでいると、頬がだんだんあったかくなってきて、

「すいまには、かてなかったよ……。」

 

私の意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ハプニング「また一緒になったね♪」

シリアス「ま、まじかよ……。」

 

 

久しぶりに妹の部屋に入った。

妹は俺の部屋によく来るが、俺は妹の部屋にはあまり行く事はないから本当に久しぶりだ。

 

「ん?」

ふと妹の机の棚に同じ種類のノートが置いてあるのに気付いた。

その中の一番右側にあるノートを一冊取り出して開いてみる。

 

どうやら中身は日記の様で日付は5年前、つまり俺が事故に遭う前の日付だった。

 

○月☓日

『今日、おにいちゃんと近所のスーパーに買い物に行ったんだ!

スーパーに行くまでおにいちゃん、私の手を握ってくれてとっても嬉しかった♪』

 

パラパラと捲っていくが特に変な所は何もない。他の日記帳も数冊取り出して中身を見たが結果は同じだった。

 

「やっぱり気のせいだったか。」

 

妹がヤンでいるなんてそんなのあるわけない。と思っていたのは5冊目の日記帳を開くまでの事だった。

 

 

 

△月□日

『今日、おにいちゃんと一緒に公園近くを散歩デートしたんだ。

でもお兄ちゃん、私とデートしてるのに途中で私じゃない他の女の子に目が行っていた。……お兄ちゃんは私だけを見ていればいいのに。』

 

 

 

「ん?」

 

その日記を読んだ瞬間、今まで読んだ日記と雰囲気が幾らか違う事に気付き、自然に手が止まった。

だって今までは楽しかった事しか書いてなかったから。

 

 

最後に手に取った日記帳を開いた瞬間、ある日付で手が止まった。

 

明日は私とおにいちゃんの入学式。

おにいちゃんの制服着た姿、カッコ良かったなぁ。

私もこの制服でおにいちゃんをメロメロにしちゃうんだから!

 

今日、初めておにいちゃんのTシャツを着た。

おにいちゃんの匂い

 

 

 

そして、手に持つノートを見終わった瞬間、

 

「うっ!」

 

後ろから激痛が走って急速に薄れていく意識。

 

意識を手放す瞬間、視界の端に見慣れた黒髪が映ったような気がした。

 

 

 

何このかわいい生き物(注:妹です)

なんだこの反応、可愛すぎる! 天使か!(注:妹です)

 

だってからせいで喜んじゃって中々出来ない。

 

気持ちと、現状把握のために今の状況を冷静に見なきゃいけない気持ちの間で

まとまらない思考でなんとか昨日の事を思い出す。

 

だから私は一度落ち着くために、

 

 

お兄ちゃんに思いっきり抱きついた。

 

 

「ふにぁ〜♪」

 

睡眠中でポカポカのお兄ちゃんの身体に抱きつくと優しくて暖かい体温を感じる。

 

 

「クウゥーン♪」

 

呼吸する度に目一杯お兄ちゃんのいい匂いが私を満たしてくれる。

 

 

「キュー♪」

 

そして胸に当てた耳から一定のリズムで聴こえてくるお兄ちゃんの心臓の音。

 

(えへへ、お兄ちゃんの体温。お兄ちゃんの匂い。お兄ちゃんの心臓の音。)

 

 

どれも私を幸せな気持ちにさせてくれる。

そしてお兄ちゃんに思いっきり抱きついた時、

 

「〜〜〜!」

 

身体がビクンと跳ねる。

 

「えへへへ///お兄ちゃんしぇ()ーぶん、ほきゅーかんりょ〜♪」

 

お兄ちゃんを堪能した私は身体を少し離す。

 

「えへへ、ちょっとちゃ()んのうしすぎちゃった」

 

堪能し過ぎたせいで幸せな気分になってるから少ししたったらずだ。

 

お兄ちゃん成分は私が活動するのに必要不可欠なもの。

普段は

私はとっても幸せな気持ちになるのだ。

 

 

小さい頃からお兄ちゃんがいつも傍にいてくれた。

よく友達からもお兄ちゃんっ子だと言われるし、自分でもそう思う。

でも、

「あんな夢見ちゃうなんて。」

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