「カズキ、お出かけしたい」
「また唐突だな…」
S.M.Sの一樹の部屋で、寝起きの一樹に言うセリー。
「ユキエは機体の整備で動けないって言うし、暇だから」
「俺が暇じゃないんですが?」
「ソースケ達に『アイツは休みだ。いや、休みにするから行ってこい』って言われた」
「…手が早いですね。まあ良いや。どこかに出かけるか」
「わーい♪」
子供の様にはしゃぐセリーを、一樹は微笑ましく思う。
まずは腹ごしらえ、という事でダンの店に来た2人。
「…ふう、食った食った」
「ん、美味しかった」
腹が膨れて、大満足の2人。
「今日はどこか行くのかい?」
「ええ。セリーが遊びに行きたいって言うので…」
「そうか。楽しんでこい」
「ありがとうございます、ダンさん」
「で、どこに行きたいんだ?」
ショッピング嫌いの2人がしてるのは、散歩。
それだけでもセリーは楽しそうだ。
「んー、このまま歩いてるだけでも楽しい」
「んじゃ、気になる店とかあったら寄る感じで」
「ん、それで行こう」
しばらく歩き、店に入ったり、入らなかったり。
2人ならの、楽しみ方で過ごした…
「ふん、相変わらず面倒だな。ISのメンテナンスの度にやるのは」
ここは、亡国機業のアジト。そして、エムの専用整備室である。
「まあ、そう言わないでくれ。君に必要な調整をするためなのだから」
エムの四肢に電気信号を読み取る機器をつけながら話す老人。
名を【ジェームズ・ミューゼル】、あのスコールとの関係は不明だ。
「それじゃ、サイレント・ゼフィルスを預かるよ」
エムから、サイレント・ゼフィルスの待機アクセリーを取った途端______
「ここ…どこ?」
______先程までの強気な瞳ではなく、オドオドと周囲を見回す
「いや…怖いよぉ…助けて…
その後何度も何度も『姉さん、兄さん』と繰り返すマドカを無視しながら、ジェームズは調整を続ける。
「ふん…ISの脳波システムを応用して、洗脳措置を施すのがここまで簡単だとはな…何故誰もやらないのか、理解に苦しむね」
ジェームズの瞳には、【狂気】しか映っていなかった…
「いや!離してぇ!姉さん!兄さん!助けてよお!!!!」
「今日はいつにも増して騒がしいね。まあ良いさ。ここ最近得られるデータには目を見張るものがある。これもあの2機との戦いが影響してるのだろうな」
一樹のストライクフリーダム、一夏のユニコーンとの戦いのデータは、エムに新たな機体を与えるか一考するには充分すぎた。
「イタリアから奪ったこの機体、これをぶつけたら…また面白いデータが取れることだろうな…この【バンシィ】のデータがね」
「何だかんだで、結構買ったな」
「うん。学園用のシャンプーとか少なくなってたから、丁度良かったね」
一樹とセリーの手には、学園で使う日用品の詰め替え品が大量にあった。
「にしても、セリーは本当に俺と同じので良いのか?」
普段、セリーは一樹と同じ洗剤を使っている。
…一樹のひたすら安いシャンプーを、セリーに使わせているのが、一樹は胸が痛むのだ。
「ん?別に気にしてない」
「いやさ、雪と同じのにしても良いんだぜ?」
「うーん…私自身シャンプーにこだわりはないから…」
「とは言うものの…アレそこまで品質良くないからさ。セリーに使わせるのは心が痛むんだよ…」
「カズキって…過保護だよね」
「そうか?」
「うん、そうだよ」
「…度合いが分からないからな。たまに宗介とか和哉を見て勉強してるんだけどな」
だから舞の方が下には厳しいかもしれない。
と、一樹は苦笑しながら話す。
「マイって、一樹の妹なの?」
「義理の、な」
「ふうん…」
『楽しそうですね〜、ウルトラマンにゼットン』
「「ッ!?」」
楽しい時間は、一瞬で崩壊した。
一樹とセリーの正面に現れるワープホール。そこから出てきたのは…
「…バット星人」
「あ、ああ…」
震えるセリーを庇う様に、一樹は前に出る。
『おや?我々の事をご存知なのですか?それは光栄です』
「…何の用だ。地球に観光しに来た、ってんなら案内くらいするんだけどな」
『ふむ、それはそれで楽しそうですが、今回は残念ながら違うのですよ』
大袈裟な仕草で残念がるバット星人。
一樹の表情がどんどん厳しくなる。
「…セリー、今すぐテレポートで逃げろ」
「で、でも…」
「良いから!」
バット星人はゼットンの養殖にかけては宇宙一の一族だ。つまり、ゼットンの事は知り尽くしている。
そんなバット星人の前に、セリーを置いておくのは危険だ。
『何故そのゼットンを庇うのか、理解出来ませんね。元々そのゼットンはあなたを殺そうとしたのですよ?』
「(コイツ…セリーがシャドウに操られていた事を知ってやがる…!?)」
一樹の袖を握るセリーの手が、尋常でない程震えている…それが意味するのは…
『私が捨てた時より、随分可愛らしくなってる様ですが…まさかあなたの女にでもなったのですかな?』
「今すぐその薄汚い口を閉じろ。死にたくないならな」
かつてない程、一樹は怒っている。
あまりの怒りに、一周回って冷静だった。
『お〜怖い。流石は歴戦の勇者、殺気の濃度が尋常でないですね』
しかし、やり様はあるんですよ…
そう言ったバット星人の手に握られていたのは、リモコンだった…
「ッ!セリー逃げろ!!!!」
一樹が気付いた時には、もう遅かった…
『ポチッと♪』
バット星人がリモコンのスイッチを入れた瞬間、セリーの目の色が変わった。
「セリー!しっかりしろ!セリー!!」
一樹が必死でセリーに呼びかけるも、セリーは荒々しくその手を振り払う。
『さて、ゼットン。そのお方に、今までお世話になったお礼をして差し上げなさい』
バット星人の命に、セリーが一樹に向かって右掌を伸ばす。
ドォンッ!!!!!!!!
瞬間、衝撃波が一樹を襲う。
「ごっ!!?!!?」
くの字になりながら吹き飛ぶ一樹。
ガラガラガラガラッ!!!!!!!!
ショッピングモールの観葉植物を巻き込んで、ようやく止まる。
「ゲホッ!ゲホッ!」
なんとか観葉植物をどかして立ち上がり、バット星人を睨む一樹。
「てめえ…セリーに何をした!!?」
『何、簡単に説明すると洗脳したのですよ。このリモコンでね』
心底楽しくて仕方ない、という風にバット星人は説明する。
『元々、このゼットンの戦闘力は目を見張るものがありました。しかし何故か甘い性格へとなってしまいましてね。我々の目的には使えないという事で1度捨てたのですよ』
バット星人の言葉に、一樹はギリッと歯ぎしりする。それを知ってか知らずか、バット星人は続ける。
『しかし、このゼットンが宇宙でどういう行いをするのか気になった私は、このゼットンに発信機をつけておきました。するとどうでしょう?あの闇の巨人によって、我々が望む以上の残忍さを手に入れた!後は隙を見てコイツを回収するだけ…だったのに!』
先程までの態度はどこへやら、一樹に向かって殺気を放つバット星人。
『あなたが余計な事をしてくれた!浄化だかなんだか知りませんがね!発信機も破壊され、探すのに苦労しましたよ!まさか人間として生活してるとはね!』
「…そうか、ああそうか。よおく分かったよ…てめえだけは絶対許せないって事がなあ!!!!」
素早くブラストショットを取り出し、バット星人に向かって駆け出す一樹。
『無駄です。ゼットン』
バット星人の命を受けて、セリーが再び一樹に向かって手を伸ばす。
「ぐっ⁉︎」
セリーの念動力によって、一樹の動きは押さえつけられる。
ゆっくりと空中へ上げると、思いっきり突き飛ばされた。
ドォンッ!!!!!!!!
「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!!?」
吹き飛ばされながらも、一樹はブラストショットをバット星人のリモコンに向かって撃つ。
バリィィンッ!!!!
見事リモコンを破壊したが、セリーが止まる様子はない。
「なっ!!?」
『残念でしたねウルトラマン!このリモコンはあくまでスイッチを入れるだけ…後はこのゼットンが死ぬまで止まる事はありませんよ!さあ暴れなさいゼットン!この星の生態系を壊すほどに!』
セリーの体が光り、巨大化する…
《ゼェェットォン…》
セリーは再び、ゼットンへとなってしまった。
「セリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!」
『ハハハハハ!!これこそゼットンのあるべき姿です!!!!』
「ふっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
一樹はエボルトラスターを取り出して、鞘から引き抜いた。
「ハッ!」
ゼットンを後ろから抑えようとするウルトラマン。
《ゼェェットォン…》
ゼットンは邪魔くさそうにウルトラマンを投げ飛ばした。
「グアッ!?」
更にテレポートで近付くと、まだ起き上がっていないウルトラマンに向かって前蹴り。
「グゥッ!?」
更に連続で火球を撃ってきた。
「グッ⁉︎グゥッ!?グアァッ!!?」
火球をまともに喰らい、吹き飛ぶウルトラマン。更に______
『キェェェェイッ!!!!』
______バット星人も巨大化し、ウルトラマンに向かって剣を振るってくる。
「フッ⁉︎ハッ!」
それを何とか屈んで避けるウルトラマン。
「シェアッ!」
『オゴッ!?』
バット星人のガラ空きの胴に、ストレートキックを放つ。
追撃しようとするウルトラマンの背中に、ゼットンの火球が命中する。
《ゼェェットォン…》
「グアッ!!?」
起き上がってすぐに、ゼットンの左手が振り下ろされるのを、両手をクロスして受け止めるウルトラマン。
「シュウッ!」
しかし、間髪入れずに右手が振られた。
「グオッ!?」
腹部を殴られ、蹲るウルトラマンの頭を掴み、ゼットンはウルトラマンを投げ飛ばした。
「グアァァァァァァァァ!!?」
地面に倒れるウルトラマンに、剣を突き刺そうとするバット星人。
『ハアッ!』
「フッ⁉︎」
それを何とか横に転がって回避し、起き上がる。
『ハアッ!フンッ!』
「フッ!シュッ!」
連続で剣を振るってくるバット星人。ウルトラマンはそれを避けるかアームドネクサスで受け止めていたが…
《ゼェェットォン…》
「フッ!?」
ゼットンに、羽交い締めされてしまう。
『ハハハハハ…フンッ!』
「グアッ!?」
ウルトラマンが動けないのをいい事に、バット星人は何度もその剣で斬りつける。
『気分は、どうですかッ!?自分が救った者に、押さえつけられている気分は!!?』
「グッ⁉︎グオッ!?」
バット星人に斬りつける旅に、ウルトラマンの体から火花が散る…
ピコン、ピコン、ピコン…
ウルトラマンのエナジーコアが鳴り響く…
『ハアッ!』
「グアァァァァァァァァ!!?」
最後に思いっきり斬りあげられたウルトラマン。大きく吹き飛び、大地にうつ伏せに倒れてしまう…
そんなウルトラマンに、バットは剣の切っ先を突きつける。
『その命、預けておきますよ。精々、残った僅かな時間を楽しんで下さい。ハハハハハハハハハハ!!!!!!!!』
「フッ!グッ!」
高笑いを上げながら、バット星人はゼットンと共に消えていく。
ウルトラマンは懸命に手を伸ばすも、届かない…
「…シェアァァァァ!!!!」
悔しそうに大地を叩くと、ウルトラマンは消えていった…
セリーは、どうなってしまうのだろうか…