人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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9巻行っくぞぉぉぉぉ!


Episode105 真名-ネーム-

ワールド・パージ事件で精神に乱れが生じた楯無は、大事を取って入院していた。

そんな楯無を世話しているのが…

「はい楯無さん。今回は自信作です」

「い、一夏くん?世話してくれるのはありがたいのだけれど…」

そう、一夏なのである。

想い人に世話されて、楯無は最初こそ喜んでいた。

が、一夏の家事能力のハイスペック振りに自信を打ち砕かれてる今日この頃。

 

 

「さて、校内とはいえISの無断展開は禁止だと何度言えばお前らは分かるんだ?」

PICの部分展開で一夏と楯無を窓から覗こうとする面々と対峙する一樹。

…ちなみにPICを展開せずに壁に立っていることに、理屈で理解しようとしてはいけない。魂で感じるのだ。

「お前ら、いっそ代表候補から外れろよ。その方がこの学園は平和だ。ってかデュノア、お前本当そろそろいい加減にしろ」

「僕だけ!?」

「当たり前だ。お前があまりに酷くゴールドフレームを扱うなら、没収が視野に入る事を忘れんな。お前1人のために、S.M.S所属の人全員が路頭に迷わされるなんざごめんなんでな。他は知らない。各国の刑務所に入れられようが、俺は関知しない。一夏に詰め寄るんなら、ゴールドフレームを返してもらおうか。いつゴールドフレームで攻撃するか、分かったもんじゃないからな」

「だ、大丈夫!一夏にゴールドフレームで飛びかかったりしないから!だからそこを通して!」

必死に頼むシャルロット。

他の専用機持ちはその隙に通れば良いものの、一樹に隙が全く見えない。

「…というか」

そこで一樹は呆れ笑いを見せると一言。

「俺、覗くなとは言ってないよね?」

「「「「……あ」」」」

全員すぐさま降りて、扉の隙間から覗いたとさ。

 

 

「あ、あなたのせいで!」

一夏との時間を専用機持ちに邪魔された楯無は、一樹をポカポカ殴る。

全く痛くないのだが、いい加減ウザい。

「(雪、セリー、ミオ、助けて)」

アイコンタクトと脳波会話で自身の家族に助けを求める一樹。

すると雪恵が、無言で自身の左肩を指した。

「『(中々エグいことを思いつく⁉︎)』」

一樹とミオの心がシンクロした瞬間だった。

雪恵の案とは、ワールド・パージ事件の時、楯無を庇って撃ち抜かれた左肩を使うことだ。

…本当にエグい作戦である。

「アア、ヒダリカタノキズグチガヒライチマウ」

あまりにエグすぎるので、棒読みで冗談にしようと言ってみる一樹。

ピタリ、と楯無の動きが止まり…

「ごめん、なさい…」

マジ泣きしてしまった。

「「『(嘘ぉぉぉぉぉぉぉ!!?)」」』

裏の荒事に慣れてないとはいえ、楯無は暗部の長だ。

そんな楯無が、棒読みに気づけないのはかなりの問題…今回は特に…である。

一樹にセリー、ミオがあたふたしてると雪恵が楯無に近付く…

「泣いても、かーくんの左肩は治りませんよ?」

それなりに修羅場をくぐっていると自負しているセリーですら、今の雪恵は怖かった。

「確かにかーくんは気にするなと言ったかもしれません。けど、忘れて良い訳ではないんですよ?」

「はい…」

「それに…」

クドクドと楯無(2年生)に説教する雪恵(1年生)。

しかも楯無はこれでも学園最強の生徒会長である。とてもそうは見えないが…

「か、カズキ。ユキエを止めて」

『ま、マスター。雪恵さんを止めないと』

「…まあ、そろそろ説教も頃合いだろうしな。けど、どうやって止めるか…」

『マスターがドSモードになって雪恵さんの耳元で『俺を無視するとは良い度胸だな(イケボ)』って言えば良いと思いますはい』

鼻息を荒くして提案するミオ。

「…それはお前の願望じゃねえのか?」

ジト目で剣の首飾りを見る一樹。

『な、何を言いますか!セリーちゃんだって期待してるはずだよ!』

恐らく真っ赤になりながらセリーを巻き込むミオ。

「…セリー?」

どうか違ってくれという願いを込めながら、セリーの方を向く一樹。

「……」

凄い速さで目を逸らされた。

「マジかよ…」

頭を抱える一樹。

ここぞとばかりに詰め寄るミオ。

『さあマスター!今こそ雪恵さんを堕とす時です!』

「なあミオ。その字は俺らの業界的には不吉だからやめてくれない?本当マジでさ」

堕とすなど、本当に縁起が悪い…

『あ、それはごめんなさい。じゃあ…雪恵さんを口説く時ですよ!』

「言葉を変える気遣いをしてくれるなら、そもそも雪を止めるのを手伝ってくれよ…」

『いや…マスターじゃないと雪恵さんは止められないよ。うん』

「…本音は?」

『マスターが口説いた後の雪恵さんのふにゃけ顔が見たい!』

「……今度()()()に行った時に縄で縛ってそのままにするぞコラ」

ドスを効かせて脅す一樹。

しかし、ミオは…

『え?その、それは…困る…』

満更でもなさそうだった。

「…」

相棒がドM過ぎて困る

それで短編小説が書けるのではないかと一樹は思った。やらないけど。

「はあ…やるか」

まだ楯無を正座させて説教している雪恵に近付き、耳元で囁く。

「…おい」

「ひゃいっ!」

少し低めの声で囁くと、雪恵はビシッと固まった。

「俺をスルーするとは、良い度胸だな」

「ひゅ、ひゅみまひぇん…」

「…そろそろ、やめろ。良いな?」

「ひゃい…」

一樹は大きく息を吐いた。

疲れた、過去にない程。

妙に色っぽく座る雪恵をスルーして、楯無に向き直る。

「…おい、そんなに泣いてると一夏がドン引くぞ」

「ッ!」

効果はバツグンだった。

一瞬で楯無は泣き止んだ。

「(まあ、あの女たらしなら普通に慰めるだろって話だけどな)」

『それには同感』

ミオも冷めた声で同意した。

「ね、ねえ櫻井君。一夏くんに私を意識させるには、どうすれば良いと思う?」

一夏との付き合いが1番長い(下手したら千冬より実質的な時間は長いかもしれない)一樹に縋り付く楯無。

「…アレ、やれば?」

後ろで未だに色っぽく座っている雪恵を指す一樹。

「やったわよもう!雪恵ちゃんがいない時に水着エプロンを!」

「「「『あんたヘタレだったと思ったら結構グイグイ行くな!!?』」」」

一樹ファミリーのツッコミに憤慨する楯無。

「な!?私のどこがヘタレなのよ!?」

「「「妹への接し方」」」

「ガフッ!!?」

簪とずっと仲違いしていたのを知っている一樹に雪恵、セリーに言われて一撃で沈む楯無。

一樹は頭をガシガシ掻きながら考える。

「まあ、それはそれとして…アイツに楯無を意識させる、ねえ。そもそも俺はお前を知らねえから助言のしようが…」

ピタリ、と一樹の動きが止まった。

自分は今、なんと言った?

楯無を意識させる?

楯無とはどんな名だ?

【更識家当主】の名だ。

では、当主になる前は…

「…なあ更識楯無」

「きゅ、急にどうしたの櫻井君?フルネームで呼ぶなんて」

「…あの一夏に、女を意識させるのは正直ISで大気圏突入しろって言うくらい難しいことだ」

「それ、実質不可能ってことよね!?」

ミオが『出来ますよ!舐めないで下さい!』と一樹にだけ聞こえる声で怒る。

まあまあ、と心の声でなだめながら一樹は続ける。

「実質ってことは、理論上は可能ってことだろ?それに、お前には他の女子には無い武器がある」

ここで、一樹が言わんとしている事に気付いたのは、ミオだけだった。

『あー、なるほどね』

他の面々はまだ分かってないらしく、キョトンとしている。

「私にしかない武器?姉ってことかしら?一夏くんの周りって、下かひとりっ子が多いような…」

「それIS学園内の話な。近くの公立校とかだったら、下に妹なり弟なりいる一夏ファンはごまんといるよ」

遠い目をして告げる一樹。

「聞きたく無い情報ありがとうね!」

ヤケクソ気味に礼を言う楯無。

「いやだって、考えてみろよ。篠ノ之に凰はIS学園に来る前からアイツに惚れてるんだぜ?それを考えたら、ねえ?」

「…ちなみに、人数は?」

「雪、説明よろしく」

「あいあい、私が知ってるのはまあ小学3年生時代に…3年、4年、5年、6年の女子生徒の9割強は織斑君に惚れてたかな」

「ブゥッ!!?」

「ウチの学校がひとクラス30人ちょっと、内女子は半分と仮定して15人。それが3クラスで45人、それが4学年分だから…約180人。誤差ももちろんあるけど、小学生でコレだぜ?」

「ハーレムなんてもんじゃないわよ!!?」

「中学2年の時はすごかったぞ。中学にいる女子の殆どが織斑教に入ってて…ひとクラスに女子が20人くらいいたから…それに3クラスと3学年をかけて…後は近隣の高校数校が加わって…それも3学年分…」

数える旅に一樹の目が死んでいく。

同じように楯無の目も死んでいく。

「かーくんストップ!それ以上数えたらだめ!」

『け、桁が違いすぎる!!?試算したら千の位がうっすら見え…』

「ミオ黙って。ユキエが止めてる意味がなくなる」

 

 

「まあ、大分話が逸れたけど。とにかく、この世でお前にしかない武器を使うのが一番じゃないか?」

「私にしかない武器…何かしら?」

「それはお前自身が気付かなきゃ」

楯無は考える。ひたすら考える。

「…ヒント、お前は誰だ?」

「え…?更識楯無だけど」

「その名の意味を、よく考えてみろ」

 

私の名の意味?

私は更識楯無。

更識家の当主。

楯無とは当主が代々襲名する名で…

 

「…あ」

「分かったか?楯無」

「ええ、私の名の意味…なるほど、これは私にしかない武器だわ」

楯無は理解したが、雪恵にセリーはまだ分かってないようだ。

「ねえかーくん。結局、楯無さんだけの武器って何?」

「カズキ、教えて」

「説明って言っても…楯無には2つ名前があるってだけだよ」

「「はい?」」

一樹は楯無の方を向く。

その意を察した楯無が説明を始める。

「私の名前…楯無はね。更識家の当主が代々襲名する決まりなの。だから私の本当の名前は別にあるのよ」

「へえ…だからかーくんが名前で呼んでたんだ」

「そ。更識さんとの区別ってのもあるけど、当主としての名なら別に問題ないしな」

「…今ので気になったのだけれど、櫻井君は基本苗字で女の子を呼ぶわよね?何で?」

楯無の質問に、一樹は苦笑いを浮かべながら答える。

「今はどうか知らないけど…小学校の時にさ、一夏以外に名前を呼ばれるのは嫌だっていう女子の流れがあったんだ。だから俺は家族と雪(それとS.M.Sの彼氏持ち)以外、苗字で呼ぶと決めたんだわ」

何より、一樹が名前で呼ぶと嫌悪を向けたからなのだが…雪恵の手前、そこまで言う必要は無いだろう。

「なるほどね…」

楯無が納得したところで、一樹が補足する。

「これはあくまで俺が勝手に思った事だから…そっちのお家事情は加味してない。そこは忘れないでくれよ?」

「ええ、分かってる」

 

 

楯無が気合をいれて部屋を出ると、雪恵が一樹に後ろから抱きついた。

「…どうした?」

「…さっきのドSモードは、やらないの?」

「やるか!」

「そんな!少しときめいた私の気持ち返して!」

「頼むから!雪までMキャラにならないで!それはミオだけで手一杯だから!」

『ちょ、聞き捨て出来ない言葉が聞こえたよマスター!』

「お前黙ってろよマジで!」

「ねえカズキ、私にもさっきのやって?」

「「セリー(ちゃん)にはまだ早い!」」

保護者2人のツッコミに、セリーは憤慨するのだった。

 

 

「い、一夏くん!」

「あ、楯無さん。どうしたんですか?」

楯無は一夏の部屋へと向かった。

が、緊張で何も言えない。

「え、えと、その…」

「楯無さん?」

不思議そうに楯無を見る一夏。

そんな顔すら良く見えてしまうのは、惚れた弱みか。

「その…ね?私の名前、楯無が更識家当主が代々襲名している名っていうのは前に話したわよね?」

「ええ、まあ」

「私の本当の名前は…更識、刀奈。一夏くんには、知っててほしいな」

穏やかな笑みを浮かべて話す楯無…いや、刀奈。

「あの、大丈夫なんですか?俺に教えちゃって」

S.M.Sで更識家についてざっくり説明を受けてる一夏。

だから刀奈の行動に疑問を持つ。

「うん、良いの。()()()()()()

恐らく、刀奈が本当の名前を教える意味を、一夏は理解していない。

でも、それで良い。

今はまだ、この関係を続けていたい…それが、更識刀奈の願いだった。




次は運動会?かな?

はてさて、どうなるかな…
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