人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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ここからの戦い、目を背けてはならない…


Episode110 再来-ナイトメア・リターンズ-

一樹は部屋で悩んでいた。

一夏達に、シャドウの正体が元同級生の藤原修斗であることを言うべきかどうか。

「(藤原がシャドウだって分かれば、警戒レベルを上げることは出来る。けど、そんなの奴にとって大差無い。意識面だけの話だ。知ったところで、どうにかなる訳でも無い)」

『でもねマスター。雪恵さんとセリーちゃんには言った方が良いんじゃないかな?』

一樹の思考を読んだミオは、雪恵とセリーには言うべきだと意見する。

「…やっぱり、そうだよな」

その意味が分からない一樹ではない。

今現在、藤原の狙いは一樹の存在を跡形も無く消すことと…雪恵を手に入れることなのだ。

「となると…早めに話した方が良いな」

『だね』

一樹はすぐさまスマホを取り出し、雪恵とセリーを呼び出した。

 

 

「かーくんどうしたの?昼休みに部屋に来てくれって、珍しいね」

「ん、場所取りに行く前で良かった」

不思議そうに首を傾げながら部屋に来た雪恵にセリー。

「…とりあえず、来てくれてありがとな」

「かーくんに呼ばれたんだもん。行けるところならどこにでも行くよ」

「ん。カズキの居る所に、私たち有りだからね」

「言葉の使いどころがおかしい気がするぞセリー…っと、悪いが今回はあまり気分の良い話じゃない。けど、大事な話だからしっかり聞いてくれ」

一樹の真剣な表情に、2人も真剣な面持ちで頷く。

「…この前、俺がダーク・フィールドで戦ったのは知ってるな?」

再び頷く2人。

「その時…シャドウの正体が分かった」

「「ッ!!?!!?」

目を見開く2人。

そんな2人に、一樹は説明するために首飾りに語りかける。

「ミオ、空間投影ディスプレイに表示してくれ」

『あいあい』

首飾りが光り、2人の前でひとつのスクリーンが表示される。

「シャドウの正体、それは雪に一夏、篠ノ之も知ってる奴だった」

「…え?誰?」

「ミオ」

一樹の指示に、ミオが藤原の写真をディスプレイに表示する。

「ふじわら、くん?」

記憶にある顔から、1番近い人物の名を呼ぶ雪恵。

「…ああ。シャドウになってたのは、俺達の元同級生、藤原修斗だったんだ」

「なん、で?藤原君はみんなに凄く優しかったよ?」

()()()、ねえ…」

雪恵の言葉に、一樹はため息を吐く。

藤原は確かに優しかった。

だが、それは自分の気に入った人にだけだ。自分のお気に入りには愛想よく振る舞うが、少しでも気に入らない人物には180度違う態度で接していた。

一樹に一夏は、その気に入らない人物の筆頭だった。

最も気に入ってる雪恵に想われている一樹に。自分よりモテる一夏に。

「…まあ、それに関しては今は置いておこう。とにかく、シャドウの正体が藤原なのは確かだ」

「そう…だね。分かった。気をつける」

話は終わったと言うことで、食堂へ向かう雪恵。セリーもその後に付いて行こうとするが、一樹に呼び止められる。

「…セリー」

「なに?カズキ」

小声で話してくるのを不思議に思いながら、一樹に近づくセリー。

「…さっき言った藤原の狙いだけどな」

「…うん」

「俺の命…いや、存在そのものを消すことと、雪を手に入れることなんだ」

「ッ…」

セリーにとって、最も大切な2人。それを狙っていると聞いたセリーの表情が強張る。

そんなセリーを抱き寄せ、落ち着かせる一樹。

「…だからさ、俺にもしものことがあったら、雪を頼む」

「『もしも』なんて、起こさないで…絶対に、消えないで…」

死ぬと考えただけで辛いのに、記憶すらも消されるなんて、考えたくない。

自分を2度も救ってくれた一樹に、そんな自分を家族と認めてくれた雪恵。

絶対に失いたくないものが、今のセリーにはあった。

 

 

泣き疲れたセリーを寝かしつけ、その頭を撫でながら一樹は考えていた。

 

『次に会うときまでに、遺書を作っておくんだな…』

 

あの時、藤原がそう言ったのは一樹に対してでは無く、一夏にだった。

存在を消すのだから、一樹が遺書を作っても意味が無いという意味なのか。

それとも…次にターゲットにするのが一夏と言う意味なのか。

「(にしても…アイツが単純に襲いかかってくるとは思えない。もっと…吐き気がする方法を選ぶ筈だ)」

つまり、物理攻撃では無く、精神を攻撃する方法だ。

夏休み前の一夏ならともかく、今の一夏にそうそう精神攻撃が通用する筈が…

「(…ん?()()()()?)」

一樹は自分の思考のある部分が引っかかる。

溝呂木と激戦を繰り広げていたあの頃。その時は戦う事と一夏を救う事に集中していたために気付かなかったが…

 

溝呂木が闇の力を得たのはいつ頃か。

あの廃工場での、溝呂木とラウラの会話から察するに、闇の力を得たのは1年前だと予想できる。

 

一夏と()()が初めて出会ったのはいつ頃か。

中学2年の暑い日だと一樹は記憶している。

 

「…まさか!!!!」

考え得る最悪な展開に、一樹は雪恵とセリーに書き置きをしてから部屋を飛び出した。

 

 

「そろそろ新しい体が馴染んだ頃だな」

ある山奥にいた藤原。

その山は、夏に一樹と溝呂木に操られていた()()が最後の戦いをした場所…

 

一夏が、絶望に染まった場所…

 

そんな場所に藤原が現れる。

その意味は…

「…どうだい?3()()()()()()()の感想は」

「……」

虚ろな瞳で、()()は藤原を見る。

瞳には何も映されておらず、ただただ…空っぽだった。

「君にはまた働いてもらうよ。織斑に対して、君ほど影響力のあるものは無いからね」

「……」

「まあ、櫻井一樹(あのクズ)に与える影響にも期待しているよ。何せ君はアイツの前で織斑を庇って2度目の死を迎えたんだからね」

()()の瞳が何も映していないのは気にもとめず、藤原は話を続ける。

「…まあ、少しは人間味を入れた方が面白いかな?」

そう言って、()()の頬に触れようとする藤原。

「…ッ!?」

が、触れる寸前で手を引っ込める藤原。その瞬間、水色の波動弾が藤原の手があった所を撃ち抜いていた。

「…意外と早く気付いたみたいだな。クズ」

顔を憎悪に歪めながら、波動弾の来た方向を向く藤原。

「……」

そこには、ブラストショットを構えた一樹がいた。

「何を、しようとしている…」

その手は、怒りのあまり震えていた。それを知ってか知らずか、藤原はおかしそうに嗤う。

「何って、最高に楽しいゲームをしようとしてるんだよ。コレを使ってね」

藤原に腕を引かれて、ブラストショットの盾にされる()()

その顔を正面から見た一樹の手の震えが、大きくなる。

「お、まえ…!」

そう、()()とは…

「はははは!僕に感謝しなよクズ!!君の目の前で織斑を庇って死んだファウストを、生き返らせてあげたんだからさぁ!!!!」

ノスフェルから一夏を庇い、一夏の腕の中で死んだダークファウスト…斎藤沙織だった。

「おまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

エボルトラスターを引き抜く一樹。

対する藤原は、自らが戦う意思は見せずに、隣の沙織の肩を軽く叩く。

「行きな」

「…はい』

沙織を闇が包み、ファウストが復活してしまった…

 

 

学園でも、藤原のビースト振動波を感知した。

当然出撃しようとする専用機持ち達。

だが、その中で雪恵とセリーが一夏の前に立ち塞がった。

「織斑君は…行っちゃダメ」

「おまえは行くな」

「な、何でだよ2人とも!」

普段なら一樹の援護を止めようとはしない2人。その2人が止めようとしているのを訝しげに見る他の専用機持ち。

「織斑君は今回行ったら…きっと戦えなくなる。今度の敵を、きっと撃てない」

「そんな訳無いだろ!?一樹を殺す様な真似を俺がする訳が「織斑君が自分を殺す事にもなるの!!」…どう言う事だよ雪恵」

「……かーくんは、きっと今回の敵を知ってる。だから、織斑君を出させるなって私たちに頼んで来た」

「カズキがそんなこと言うなんて、よっぽどのことの筈。だからおまえを通す訳にはいかない」

一樹の書き置きにはこう書いてあった。

 

今度の敵は、きっと一夏の精神を潰す事を狙いにしてる。だから、もし振動波を感知したとしたら、一夏だけは来させないでくれ

 

何とか読める殴り書きで書いた事から、かなり焦って書いた事が伺える。

きっと、一夏達が着くまでに決着を付けようとするのだろう。

それでも、来ないに越した事は無い。

そして、親友の心を守るために…一樹はまたその身を削る…

「…俺のことを気遣ってくれてるのは分かった。けど、俺は行く」

「織斑君…」

「雪恵だって、一樹を助けたいだろ?アイツだけが苦しむのを見たく無いだろ?だから、俺は行く。たとえ、行った先で何があろうともな」

「……」

「ユキエ…」

力無く、広げていた両手を下ろす雪恵。

「…お願いだから、2人とも無事に帰ってきて」

雪恵の願いに、一夏は力強く頷いた。

「ああ、分かってる。絶対にアイツを連れ戻すさ」

 

 

「シェアッ!」

『デュッ!』

アンファンス形態のウルトラマンと、ファウストがあの時の様に激しくぶつかり合う。

ウルトラマンのストレートキックを受け流し、摑みかかるファウスト。そのままウルトラマンを投げ飛ばそうとするが、ウルトラマンは側転でその勢いを捌くと、ファウストにボレーキックを決める。

「テェアッ!!」

『グオッ!?』

ファウストは大地に倒れるが、両足を勢い良く振り上げて起き上がり、ウルトラマンに向けてダークフラッシャーを放つ。

『デュアッ!』

ウルトラマンはそれをサークルシールドで受け止めようとするが、連続で放たれたダークフラッシャーに耐えきれずに喰らってしまう。

「グアァァァァァァァァ!!?」

後ろに吹っ飛ぶウルトラマン。何とか起き上がった所に、ファウストの飛び蹴りが来る。

『ハァッ!』

「シュッ!」

その脚を掴み、大回転。ジャイアントスイングでファウストを大地に叩きつける。

『グゥッ!?』

ファウストが倒れている隙に、ジュネッスへとチェンジ。

「フッ!シェアッ‼︎」

メタ・フィールドを展開する。

「シュッ!フアァァァァァァ…フンッ!デェアァァァァァァァァ!!」

だが、やはりファウストはダーク・フィールドを展開し、メタ・フィールドを乗っ取ってしまう…

『フンッ!デュアァァァァァァァ!!』

悲しすぎる戦いの、始まりだった…

 

 

「この振動波…前に見た事ある気がする…」

「何?それは本当か束」

管制室では、束が記憶からこの振動波のパターンを探っていた。

「…見た事があると仮定して、それはいつ?」

キーワードは、雪恵が言った言葉だ。

『織斑君を出させるなって私たちに頼んで来た』

チェスターをではない。一夏を名指しにしている。

過去に出た中で、最も一夏に影響を与えた敵…

「…ッ!!?!!?ちーちゃん!いっくんをすぐに呼び戻して!!」

「な、何故だ?」

「今、かずくんが戦ってるのは…斎藤沙織なんだよ!」

「「ッ!!?!!?」」

 

 

『ハァッ!』

「フッ!」

ファウストの後ろ回し蹴りを屈んで避けるウルトラマン。

次々放たれるファウストの攻撃を、ひたすら捌いて隙を作ろうとする。

『フンッ!』

「ハッ!」

ファウストの正拳突きを振り落として隙を作ると、ファウストの腹部に回転の威力が加わった裏拳を決める。

「シュッ!」

『グオッ!?』

蹲るファウストの頭と肩を掴み、ダーク・フィールドの大地に叩きつける。

「シェアッ!」

『グゥッ!?』

倒れるファウストに向かって、ウルトラマンは構える。

「フッ!」

そしてファウストにパンチを放とうとするが…

 

『ごめん…………ね…………』

 

一夏の腕の中で消えていった沙織の顔が、脳裏に浮かんでしまう…

「…ッ!」

拳を振りかぶった状態で固まるウルトラマンを、ファウストは鼻で笑う。

『相変わらず脆弱だな…』

そして、ダークレイ・ジャビロームを放ってくる。

『ハアァァァァァァ…フンッ!トゥオッ!!』

それは、動きの止まっているウルトラマンに直撃してしまう…

「グアァァァァァァァァァァァァ!!?!!?」

 

ピコン、ピコン、ピコン…

 

ウルトラマンのコアゲージが鳴り始める。

それを見て、ファウストは楽しそうに笑いながら近付いてくる。

『フッフッフッ…』

そして何とか立ち上がったウルトラマンに、連続で回し蹴りを放った。

『フンッ!!』

「グッ!?」

『デュアッ!!』

「グアァァァァ!!?」

蹴られる度に、ウルトラマンの体から火花が散る…

 

 

『一夏!お前は戻れ!!』

「千冬姉まで何言ってんだよ!アイツを見捨てろってのか!?」

『違う!良いか!?今度の敵は…』

いきなり通信が途絶えた。それは、一夏が切ったのでは無い。電波障害によるものだった…

 

 

「まったく…無粋な連中だな。感動の再会を邪魔しようだなんて」

電波障害を起こした張本人である藤原。

彼の目には、ダーク・フィールドの中が見えており、無抵抗でファウストに殴られるウルトラマンの姿も見えていた。

「さて…クズ。お前はどう動くのかな?そのままその人形にやられるのかい?それとも…その人形を壊すかい?まあどちらにせよ、織斑の精神は壊れるだろうね!あはははははははははは!!!!!!!!」




…心を強く持て
その意味が分かって頂けたかな?
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