人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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……あなたは、親友の彼女にある頼み事をされました。


あなたなら、その頼み事を叶えますか?


Episode111 悲鳴-シュリーク-

『さっきからどうした!?』

「グオッ!?」

無抵抗のウルトラマンに、苛立ちをぶつけるファウスト。

ファウストは知らないが、先ほどからウルトラマンは…攻撃を通して、脳裏に沙織が一夏と共に過ごした日々が流れていた。

 

『すみません!』

『俺こそすみません…あ、拾うの手伝いますよ』

『あ、ありがとうございます!』

ぶつかった事で辺りに散らばってしまった絵を拾う一夏と沙織。

その時、生徒手帳も落ちていたのを一夏が気付き、そこから2人の関係は始まった。

 

『沙織の絵って、なんて言うかこう、落ち着くよ』

『そう?』

『ああ。海が描かれてたら、その海岸にいる気分にさせてくれるし、森だったら小鳥のさえずりが聞こえてくるし…一言で言うなら、【暖かい】だな』

『…私の絵、そんなに褒めてくれたの、織斑君が初めてだよ』

『え!?マジで!?それこそコンクールとか賞取ってると思ってた!』

『賞取った事はあるけど…ありきたりな文字で褒められてる気がしてたの。直接私に言ってくれたのは、織斑君が初めてだよ』

 

『織斑君って…彼女いるの?』

『いやあ、残念ながらいないんですよ。これが』

『…良かった』

『ん?何か言ったか?』

『な、何でもない!早く動物園行こ!』

『お、おい沙織!引っ張るなって!』

 

『なあ沙織。今日はどうしたんだ?こんな所に呼んで…』

『あのね織斑君、今から言う事は冗談でもドッキリでも無いから…ちゃんと聞いてね』

『あ、ああ…』

『…織斑君!好きです!私と恋人として付き合ってください!』

『……え?沙織が、俺なんかを?』

『なんかじゃない!私には、織斑君しかいないの!』

 

『この度、織斑君とお付き合いさせていただくことになりました!これからよろしくお願いします!』

『『…………は?』』

『おいおい、一樹も弾も驚きすぎだろ』

『『驚くわ!!お前が誰かと付き合うなんてな!!』』

 

2人が過ごした時間の一部は、一樹も真近で見た事がある。

あの時自分が気付いていれば、あんな事にはならなかったのだろうか。

その後悔が、一樹…ウルトラマンの動きを止める。

『いい加減にしろ!!』

「グアァァァ!?」

業を煮やしたファウストの波動弾が、ウルトラマンに直撃する。

その波動弾が…また闇の巨人に変身させられた沙織の悲鳴に聞こえたウルトラマン。

「……」

雑念を払う様に首を振ると、フラフラの状態で立ち上がる。

『フンッ!』

そんなウルトラマンに向かって駆け出すファウスト。

 

お願い…私を、止めて…ウルトラマン

 

「ッ!」

はっきりと聞こえた悲鳴に、ウルトラマンは我に帰った。

「…シュッ!」

『何っ!?』

ファウスト渾身のストレートパンチを空手の要領で受け流し、ガラ空きの胴に膝蹴りを入れる。

『グッ!?』

ファウストとの距離が出来たところに、飛び込みのストレートキックを放った。

「ハッ!」

『グゥッ!?』

ダーク・フィールドの大地に倒れるファウスト。

その隙に、ウルトラマンはエネルギーを貯める。

「シュッ!ハアァァァァァァァァァァァァァァ……」

いつもの倍以上のエネルギーを右拳に貯めると、ファウストに向かって突き出した。

「デェアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

『グゥッ!!?グオォォォォォォォォォォォォ!!?!!?』

戦闘の場がダーク・フィールドである事を忘れかける程光るウルトラマンのゴルドレイ・シュトローム。

それは受けているファウストだけでなく、空間にも影響を与える。

 

 

「ッ!!?」

外では、ウルトラマンが負けると思って傍観していた藤原の顔が驚愕の色を示す。

その瞬間、ダーク・フィールドは解かれ、金色の光線を放ち続けるウルトラマンと…それを受け、今にも消えそうなファウストがいた。

「…チッ!この光量じゃ織斑からファウストは見えない…ひとまず撤退だ」

 

パチンッ!

 

藤原が指を鳴らすと、ファウストを闇のカーテンが包み、ゴルドレイ・シュトロームを弾いた。

「フッ!?」

突如現れた闇のカーテンに、ウルトラマンは警戒する。

闇のカーテンが消えたそこにファウストはおらず、藤原の姿も無くなっていた。

「…ファッ、フッ、フッ…」

力が抜けたウルトラマンは、膝をついて消えていった…

 

 

「はあ、はあ、はあ…」

木から木へと寄りかかりながら移動した一樹は、()()()()へとたどり着いた。

「ここに…何かあるはず…!」

一樹にも、友人として接してくれた優しい沙織のことだ。

きっと藤原に利用される前に何か残しているのではないかと、一樹はボロボロの体で探し回る。

「一夏への【想い】はあのお守りにあるとして…俺への【願い】はどこにあるんだ…?」

 

トクン…

 

「…?」

エボルトラスターが優しい鼓動を打つ。

それを不思議そうに見つめる一樹に近寄る気配…

「ッ!」

咄嗟にブラストショットを気配に向ける一樹。

「ちょ!?タンマタンマ!!」

ブラストショットの銃口を向けられ、焦った声で叫ぶ一夏。

一樹はホッとブラストショットを下ろした。

「お前…何でここにいるんだ?」

書き置きで雪恵達に来させないよう頼んだ一樹。

彼の心のために…

「…お前に何か考えがあるのは分かってる。俺の事を気にしてるなら大丈夫だぜ?もう、何が起きても憎しみに染まったりしない」

「……」

一樹もそれを信じたい。

けれど、今回は相手が悪すぎる…

「…俺も、お前が憎しみに染まらないって信じたい。けど、無理だ…」

「…理由を聞いても?」

一樹は、とうとう告げる。

再び敵となった沙織の事を。

「お前は…今度の敵の、斎藤沙織さんを討てるか?」

「ッ!!?!!?」

一夏の表情が、変わった。

「ついさっきまで、俺がダーク・フィールドで戦ってたのは…シャドウに操られてるファウスト、沙織さんなんだぞ?」

一樹の心配は、一夏が憎しみに染まる事だけではない。

ファウストとなってしまった沙織を、一夏が討てるのか。

逆の立場となった場合、一樹に雪恵を討てるのか?となるが…一樹には、当然雪恵を討つ事など出来ない。

「……憎しみに染まらないとしても、お前の目の前で沙織さんを討つ事が、俺には出来ない。だから今回、お前を戦わせる訳にはいかない」

「……」

 

トクン…

 

「ん?」

一樹の手の中のエボルトラスターが再び優しい鼓動を打つ。

一樹だけでなく、その優しい光は一夏にも感じられる程大きくなった。

「なあ、その光は何だ?凄く優しくて、暖かい感じがするんだけど…」

「お前にはそう感じるのか…」

一樹にはただ優しいとしか感じないが、一夏は違うようだ。

つまり、この光は…

「(沙織さんの、光…)」

一樹がその答えにたどり着いた時、エボルトラスターから光が放たれ、人の形となっていく…

 

久しぶり…織斑君。それと、櫻井君も。

 

ぼんやりとしているが、それは確かに斎藤沙織だった。

「さ、沙織…」

もう2度と会えないと思っていた沙織が、目の前に現れた…一夏の手が沙織の肩に向かってゆっくり伸ばされるが、その手が触れる事は無かった…

「そ、そんな…」

 

ごめんね、織斑君…この体は、あくまで私の意識を映像化してるだけだから…もう、織斑君に触れる事は出来ないの。

だって私は…もう、人として死んでるから。

 

「ッ…」

悲しげに告げる沙織の顔を見て、今にも泣きそうになる一夏…いや、もう既に泣いていた。

「何で…何で君が、またこんな目に合わなきゃいけないんだよ…」

 

織斑君…

 

「やっと…やっと闇から解放されたのに…何で君が!」

「……」

沙織の姿が見えてから、ずっと黙りっぱなしの一樹。

今はこの2人だけにしてやりたいが…沙織の姿を維持するためには一樹がいなければならないので、なるべく気配を消してその場にいた。

()()()()()()()()()()()()

「…ごめん。俺がキレたところで、どうにもならないよな」

 

ううん…そこまで、私の事を想ってくれてて嬉しかったよ…

 

沙織は悲しげに笑う。

出来る事なら、自分だってずっと一夏といたい。藤原や溝呂木に本格的に操られる前に一夏に対して感じた想いは、本物だから。

今だって、【制限】が無ければ一夏に抱きつきたいのに…

 

ッ…

 

そこで沙織はようやく気付いた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことに。

慌てて一樹の方を見ると、表情こそ変わらずにいる。

ただ、木に寄りかからないと自立する事が出来ず、その顔色も悪い。

「俺の事は気にせず、一夏に言いたい事を言ってやりなよ…」

なのに、彼は自分の事など気にせずに一夏を優先させた。

 

……織斑君と話したい事はいっぱいあるけど、それで言いたい事が言えなかったら意味が無いよ…

 

「……」

「沙織?」

沙織が何を言おうとしてるのか察した一樹は苦しそうに自らの胸元を乱暴に掴み、一夏は沙織を不思議そうに見る。

 

櫻井君…次の戦いで、私を完全に消して。

 




沙織の願いに、一樹はどう答えるのか…
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