人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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……


Episode113 迷い-ディザール-

雨がザーザーと激しく降る中、傘をささずに歩く1人の青年がいた。

「……」

自身がびしょ濡れになる事など気にも止めず、ただ歩く。

「……」

その青年…櫻井一樹の歩いてるルートは、一見すると何の意味を持っているか分からない。

しかしそのルートは過去、ビーストに人が喰われた場所を回っており、更には人々の恐怖の集まる場所____例を挙げるならば夜の墓場や、怪談スポット____も含まれていた。

理由としては新たなビーストが出た場合、迅速に倒すためと…一樹を狙う【敵】を誘き出すためだ。

もはや習慣となってしまっているその回り方。

そして…回る度に、救えなかった人々の顔が頭に浮かぶのがいつもの流れだ。

だが、今回は少し違った。

 

次の戦いで、私を完全に消して。

 

じゃあ!お前は本当に沙織を消すって言うのかよ!!?

 

人として生きるのって……難しいね……

 

「ッ…」

泣きそうになる一樹…すると____

 

ゴンッッッッ!!!!!!!!

 

____自らの額を、拳で強く殴る。

その額からは血が流れるも、何故か涙は引いた。

「…俺に、泣く資格は無えんだよ」

血を拭ってから、一樹は再び歩き始めた。

 

 

「……」

沙織の願いを聞いてから…一夏は再び暗くなった。

ただでさえ激しく雨が降ってジメジメしている教室の雰囲気が、更に暗くなる程には。

「い、一夏。どうしたの?」

「一夏くん、らしくないわよ?」

ファウストの件を知らない更識姉妹が、一夏に心配気そうに話しかける。

「ああ…何でもないよ…」

そうとしか返さない一夏。

このままではラチがあかないと判断した楯無は、代表候補生達に近づく。

「…あなた達、何か知ってるわね」

「「「「……」」」」

無言で目をそらす5人。それが、全てを物語っていた。

「…櫻井君が外に行ってるのと、何か関係があるのかしら?

「「「「……」」」」

尚も無言の5人…いや、元々1組の生徒全員が目を逸らした。

「答えなさい!」

強い口調で詰め寄る楯無。

それでも、誰も何も言わない。

「…雪恵ちゃん、櫻井君が外に行ってる理由を知ってるでしょ?答えなさい」

「…私は、知りません」

淡々と答える雪恵。

実際、雪恵は半分知っているが、半分は知らない…

他のクラスメイト達もそうだ。全て知っているのは、当事者である一夏と一樹だけなのだ…

「あなたが、櫻井君の事を知らない筈が無いでしょ!」

「そこまでだ更識姉」

雪恵に詰め寄る楯無を、千冬が止めた。

「櫻井が外に行ってるのは、我々がある仕事を頼んだからだ。仕事の内容は極秘であるために、お前にも…当然田中にも話す訳にはいかん。織斑がこんななのは、ただの偶然だ」

極秘、の言葉を出されては、楯無は何も言えない。

「…分かりました」

しかし、運命とは残酷である。

 

PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi!!!!

 

「ッ!?沙織!!」

麒麟が振動波を感知。

その反応を見た一夏は教室を飛び出す。

「ま、待て織斑!!」

千冬が止めようとするも、既に一夏は格納庫に向かって走り出していた…

 

 

時は少し遡る。

尚も激しく降る雨に打たれながら一樹が歩いていると…

「無様だねぇ、クズ」

どこからか、藤原の声が聞こえる。

「…何の用だ。藤原」

そう言って一樹は視線を上に向ける。その視線の先には廃工場があり、藤原はその屋根の上で不敵に笑っていた。

「何の用?馬鹿じゃねえの?僕がお前に用があるとしたら…」

一瞬で一樹の背後に移動する藤原。

まるで街中ですれ違ったかのように、自然に背中を向けあっている。

「お前を殺しに来る以外無いに決まってるじゃん」

そんな言葉の後に放たれた藤原の右裏拳は、一樹の左腕に受け止められる。

更に放たれた上段回し蹴りを屈んで回避すると、藤原から距離を取る一樹。藤原もまた、背後に向かって跳び、2人の間に距離が出来る。

「へえ…生身の方が良い動きするじゃないか」

「…テメエが闇の力に頼り過ぎなんだよ」

「言ってくれるね…」

それなら…

と、藤原が指を鳴らす。

 

パチンッッ!!

 

時空の歪みから、虚ろな目をした沙織が弾き出された。

「……」

「この人形が相手でも、同じことが言えるかな?」

「テメエ…何故彼女を巻き込んだ?」

「ん?織斑相手に面白いゲームが出来そうだったからだけど?」

人の命を奪う事を、ゲームの一部と考えている藤原。

彼にとっては自分と雪恵の命以外、ただのゲームの駒に過ぎない。

ゲームに使えない人間…一樹は、捨てるべきゴミでしかない。

「…どっちが【人殺し】だよ。お前こそ人殺しじゃねえか」

「あ?この世で人として認められているのは僕と雪恵さんだけ…他は僕の駒か、お前の様なゴミ屑しかいないんだよ」

「…神にでもなったつもりか?」

「神…?良いね!僕が神!全部僕が決める!!そうしよう!!!」

狂気に溢れる笑みを浮かべながら、藤原は隣の沙織に命令する。

「おい!あのゴミ屑を潰してこい!」

「…はい』

命令を聞いた沙織が前に出る…

「お前は今日!この人形に殺される!!神である僕が決めたんだ!!!ちゃんと従えよ!!!!」

藤原の隣で、沙織は闇を纏って巨大化。ファウストへと変わっていく…

「生憎だが…」

巨大化するファウストを視界の隅に置きながら、一樹は藤原を見据える。

「俺は…神も仏も信じてねえんだよ!!」

エボルトラスターを引き抜き、ウルトラマンへと変身。

「シュッ!」

『デュッ!』

どしゃ降りの中、戦いが始まる…

 

 

『ハァッ!』

「フッ!」

ファウストから放たれる連続攻撃を、見事に捌いていくウルトラマン。

戦闘経験の差か、ファウストはウルトラマンに決定的な攻撃を与えられない。

「シェアッ!」

『グゥッ!?』

受け流したファウストの腕を掴み、一本背負いを決めるウルトラマン。

背中を強打したファウストは、しばらく動けない…

 

 

「…チッ。やっぱりファウスト程度じゃ相手にならないか。なら…」

懐からブラックエボルトラスターを取り出す藤原。

「僕が加われば良い」

鞘から引き抜くと、藤原の全身を闇が包む。

 

 

『デュアァァァァ!!』

「グオッ!!?」

変身の勢いを利用した飛び蹴りを放つシャドウ・デビル。

その一撃を喰らい、ウルトラマンの体から火花が散る。

『フンッ!ハアァァァァァァァァ!!』

ウルトラマンが倒れている内に、シャドウはダーク・フィールドを展開した。

「フゥッ!シェアッ!!」

起き上がったウルトラマンもジュネッスにチェンジ。

1対2という、過酷な戦いに挑む…

『フンッ!』

「ハッ!」

ファウストの上段回し蹴りを何とかガードするが…

『デュッ!』

「グオッ⁉︎」

逆方向…シャドウの中段回し蹴りを喰らい、体制が崩れる。

その隙を見逃さず、ファウストはストレートキックを放ってくる。

『トゥオッ!』

「グアッ⁉︎」

後ろに下がったウルトラマン。

その首を後ろから掴み、持ち上げるシャドウ。

首の骨を折ろうと、指に力を入れる…

 

ミシミシミシミシ!!!!

 

ウルトラマンの首から、不吉な音が鳴り響く…

「グッ…グオッ…」

 

ピコン、ピコン、ピコン…

 

コアゲージも鳴り始めた…

そんな状態を脱するために、ウルトラマンは右足にエネルギーを集中させる。その足が金色に光った瞬間、油断しきっているシャドウの腹部に後ろ蹴りを放つ。

「デェアッ!!」

『グオッ!?』

ゲン…レオの得意技、『レオキック』を彼なりに今形にした技、その名も『シュトローム・ストライク』だ。

シュトロームストライクをまともに喰らったシャドウは大きく後方へ吹き飛ぶ。

『グゥッ!!』

ダーク・フィールドの岩石に背中を強打し、動きの止まっているシャドウ。

そんなシャドウに、ウルトラマンは素早くクロスレイ・シュトロームを放つ。

「フッ!ハアァァァァ…デェアッ!!」

『グオォォォォォ!!?』

クロスレイ・シュトロームの直撃を喰らい、シャドウは逃げる様に消えて行った…

『フンッ!』

「グアァァァァァァァァッ!!?」

だが、今ウルトラマンの相手をしているのはシャドウだけではない。

ずっと上空で隙を伺っていたファウストの飛び蹴りがウルトラマンに命中。ウルトラマンの体から、激しく火花が散る…

 

 

一夏を乗せたδ機がダーク・フィールドに突入した。

「沙織!!」

 

 

ファウストの連続回し蹴りを何とか捌くウルトラマン。

業を煮やしたファウストは、零距離でダーククラスターを放った。

『デュアァァァァ!!』

「グアァァァァァァァァッ!!?」

 

 

「やめろ…やめてくれ!沙織!!」

操縦桿を握る一夏の手は、震えている。

決して届かない声をあげる事しか、一夏には出来ない…

 

 

「グッ、グゥッ…」

それは、ウルトラマンも同じだった。

ウルトラマン…一樹には、ファウストを倒す事が出来ない…

 

斎藤沙織を()()事など、一樹には出来ない…

 

『…お前はその程度だったか?』

つまらなげに呟いたファウストは、トドメのダークレイ・ジャビロームを放った。

『ハアァァァァ…フン!トゥオッ!』

それは、ウルトラマンに直撃。

「グアァァァァァァァァァァァ!!?」

大きく後方に吹っ飛び、背中をダーク・フィールドに強打。

『…つまらん、鍛え直してこい』

そう言うと、ファウストは無限の闇へと、消えていった…

「ファッ、フッ、フッ…」

ウルトラマンもまた、静かに消えていった。

2人の巨人が消えた事で、ダークフィールドも消えていった…




…彼は、彼女を倒す事が出来るのだろうか?
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