人と光の“絆”   作:フルセイバー上手くなりたい

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遅くなってしまい、申し訳ありません!

では、どうぞ!!


Episode115 怒り-アンガー-

ザーザー降りの雨の中、IS学園の制服を着た2人の青年が睨み合っている…

いや、それは正しく無い。

片方の青年は虚ろな目で確かに相手を睨んでいるが…もう片方の青年は、もはや相手を見る気力も無さそうだ。

口元から血が流れているのも気にしておらず、白が基調の制服が血で汚れている。

「お、まえが…」

虚ろな目の青年…一夏が相手…一樹に問う。

「?」

「おまえが…沙織を、殺したのか?」

「…()()()()()()()()()って意味なら、な」

 

バギィッッ!!!!

 

答えた一樹を、再びその重い拳で殴る一夏。

「沙織は…人間だった!人間だったんだぞ!!?」

「……」

 

そんなことは…知ってたよ…

 

心の中でそう言う一樹。

雨の中で分かりにくいが、一夏は泣いていた。

泣きながら、一樹を殴り続ける…

「何で…何で沙織を救ってくれなかったんだよ!セリーに山野さんの時みたいに…何で沙織を救ってくれなかったんだよ!?」

一樹の胸倉を掴み、荒々しく振る一夏。

その度に首が悲鳴を上げるのを感じつつも、一樹は何もしない。何も言わない。

「何とか言えよお!!」

再び、打撃音が鳴り響く…

 

 

ダンに乾燥機を貸してもらい、何とか学園に戻ってきた簪。

「門限ギリギリ…何とか間に合って良かった」

急ぎ自分の部屋に向かおうとする簪の耳に、打撃音が届く。

「ッ…何か、あったの?」

気配を極力消しながら、音の響いた所へ向かう簪。

そこで彼女が見たものは…

 

制服が血で汚れている一樹と、両手が血に染まっている一夏の姿だった…

 

「(た、大変!早く人を呼ばないと!)」

自分だけではあの2人を止められない。

なので簪は、この2人を止められるかもしれない人を呼びに走り出す。

 

 

「…何で反撃してこねえんだよ」

「……」

一樹は俯いたまま答えない。

いや、()()()()()()

「…ゴフッ」

一夏の重い拳を、特に防御もせず受けているのだ。

そのため、内臓にまでダメージが行っている…

「それなら…」

一夏は麒麟を展開。ビームサーベルの切っ先を一樹に向ける。

「…この状態なら、()る気になるか?」

 

 

「……」

一樹は首元に手を伸ばす…だが、そこに首飾りは無い。

今、ミオは雪恵に預けているのだ。

「(まあ良いや…こんなくだらない事に、ミオを使う訳にいかねえし)」

私闘でミオを使いたく無い一樹。

それは、ミオを【影】に落としたくないから。汚したくないから。

「(さて…どうするかな)」

とはいえ、流石に生身では麒麟を止められない。

まるで夏休みの時の再現だ。

一樹の体はボロボロで、ISを纏った生徒に狙われている…

違う点は、相手が一夏であることと、一樹が機体を纏う事を待っている事だろうか。

「…どうした?早くミオを呼べよ」

抑揚のない声で、一夏が促してくる。

そんな一夏を見て、一樹は急に人形劇を見てる気分になった。

一夏から発せられている殺気や憎悪は、どこか人形くさく感じる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()程だ…

 

「…あのゲス野郎」

ある考えに至った一樹。

その考えが正しいのならば、恐らく今の一夏は…

 

 

「ハア、ハア、ハア!」

簪は校舎を走り回っていた。

2人を止められる人物を探して…

「おい、更識妹。校舎は走るな」

「あら?簪ちゃんどうしたの?」

何か話し合いをしていたのか、千冬と楯無が一緒にいた。

「先生!一夏と櫻井君が大変なんです!」

ある意味好都合だ。簪は叫ぶ様に千冬に助けを求める。

「…詳しく話せ」

 

 

「「……」」

一樹と一夏は睨み合っていた。

麒麟を完全に展開した一夏はいつでも飛び込める様構え、未だ機体を装備していない一樹は腹部を抑えて荒々しく呼吸している。

「早くしろよ…」

一夏は、早く機体を装備する様一樹に言う。

だが、一樹は…

「(どこだ…どこに埋め込まれてる?)」

光の力を使って、一夏の中に埋め込まれた【闇】を探していた。

そして…

「そこか!」

一夏の腹部に【闇】を見つけた。

そこ目掛け、ブラストショットを連発するが…

 

 

「…やっと気付いたか」

IS学園の対岸で、藤原は一樹と一夏の様子を()()()()

「織斑に埋め込んだ【闇】を撃ち抜こうとしてるようだね…けど、いつもいつもお前の思い通りにはいかないよ」

藤原は、相変わらず狂った笑いを浮かべていた…

 

 

ブラストショットの波動弾は、一夏の前に展開された闇の障壁で受け止められた。

「ッ!?」

驚く一樹に向けて、一夏はビームサーベルを振るってくる。

「クソッ…」

何とか軌道を()()、その斬撃を避ける一樹。

「(ちくしょう!一夏の記憶からISの扱い方を読み取ってやがる!?)」

完全とは言わなくとも、藤原は一夏の記憶を通じてISを操縦していた。

「『()の怒りを知れ!』」

麒麟から放たれる赤黒い波動。

それは、一樹にとって良くない事なのだけは確かだ。

 

 

「織斑先生!大変です!!」

簪から話を聞き、外に飛び出そうとしていた千冬に楯無。

そこに、青ざめた表情の麻耶が駆け寄ってきた。

「…悪いが今急いでいる。要件は手短に頼む」

「は、はい!学園の訓練用ISが、全機無人の状態で動き出しました!」

「「なっ!!?」」

 

 

格納庫から飛び出したIS…それは、全て一夏(藤原)が操っていた。

それぞれにレーザーガンを装備させて、四方八方から一樹を狙う。

「『アハハハハハハハハハハハ!!!!どうしたよクズ!!いつもの様に壊してみろよ!!!!』」

「…好き勝手言いやがって」

未だ生身である一樹。

その鍛え抜かれた脚力でどうにか避けているものの、いつまで避けきれることか…

 

「『つまんないな…あーあ、あのゼットンでも殺そうかな』」

 

「…今何て言った?」

一夏を通じて話す藤原の言葉に、聞き捨てならないものが含まれていた。

目を細め、本気の殺気を一夏越しに藤原へ向ける一樹。

「『ん?何を怒ってるんだい?神である僕が、お前如きクズの怒りを怖がるとでも?』」

「…この世に、神はいない」

神と呼ばれるレベルの超人はいても、この世の全てを知る、神話の様な神はいない。もしいたのなら、この世に不幸事が起きる筈が無い。生物全てが、幸せである筈…それが、一樹の持論だ。

「『あーあー、凡人が…いや、ゴミ屑未満のお前には理解出来ないか。この僕の、神の考えの壮大さが!』」

「いや、違うな。お前は神なんかじゃない」

「『あん?』」

ミオが一樹の手元に戻ってからは、出番の無かったもの…制服の胸ポケットから取り出した黒地の腕時計を、一樹は左手に付ける。

「お前が昔から雪を見る目が特別だったのは知ってた。正直アイツは、女版一夏と言えるくらいに、男子生徒を落としてたからな…」

「『……』」

「殆どの男子は、アイツに想いを告げた…けど、お前は違う。お前は自分から行く事はしない癖に、雪がお前の隣にいて当たり前だと思ってる」

「『……れ』」

「お前は確かに顔も、家柄も、金も持ってる。性格は()()()()()には優しく接してる。けど、雪はお前を【優しい藤原君】としか言わない。しかも苦笑いを浮かべながらな。それは何でか分かるか?」

「『…ま…れ…』」

「それはつまり…お前が、駄々を捏ねるただの子供(ガキ)だって、雪は知ってんだよ」

「『黙れぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』」

周囲に待機させていた訓練機を、一斉に攻撃させてくる。

一樹はそれを前に飛び込んで躱すと、起き上がりと同時に時計の盤面を叩く様に押した。

「『死ねぇぇぇぇ!!!!』」

 

ドォォォォォォォォン!!!!!!!!

 

爆炎が、高く上がった。

だが…

「俺に幾ら挑んでこようが構わねえけどな…雪やセリー、ミオを巻き込む事は許さねえ」

爆炎を越えて現れる、蒼い翼…

 

Ex-アーマー【フリーダム】が、その翼を広げて飛翔する…

 

「お前の様なクソガキは、俺の()()に近付かせねえ!」

『黙れぇぇぇぇ!!!!』

フリーダムを撃ち墜とそうと、レーザーをあちこちから乱射する。

そこにはもう、一夏の声音は無い。

ただの藤原(駄々っ子)が叫んでいるだけだった。

 

 

「はあ…嫌な雨だなあ…」

「ジメジメしてて、気分悪い…」

雪恵とセリー(それと雪恵の胸元にはミオがいる)は、一樹とセリーの部屋(いつもの場所)でだらけていた。

『私はマスターがいないと実体化出来ないから、今日みたいな日は勝ち組♪』

イラっときた雪恵とセリーがした行動とは…

「金庫、金庫」

「ミオは失くしたら大変だから、防音のしっかりした金庫にしまっておかなきゃ」

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!だから私を放置しないで!!』

…とまあ、いつも通りミオが弄られていた。

 

ドンドンドンドンッ!!!!

 

そんな風にだらけていると、扉が強い力で叩かれた。

「え?誰かな?」

「カズキ以外だったら焼く」

『異論は無いよ』

「大有りだよ!!?」

セリーとミオの物騒な言葉にツッコミを入れながら、雪恵は扉を開ける。

「はーい、どなたですかー?」

「雪恵!!大変なの!!!!」

いつになく慌てた簪が駆け込んで来た。

「ど、どうしたの簪ちゃん?」

「い、一夏が櫻井君を殴り続けてるの!それで全専用機が呼ばれてるの!」

「「『なっ…!!?』」」

 

 

雪恵達が管制室に駆け込むと、今学園にいる全専用機持ちが集まっていた。

「田中達も更識妹から事情は聞いた様だな…状況は最悪だ。織斑が正気を失い、ボロボロの櫻井と戦っている…訓練機をビットの様に扱いながらな」

「「「「なっ!!?」」」」

「…どんな手を使ってでも、織斑を止めなければならん。専用機持ちは全員出撃…」

『させるな!一夏に…いや、シャドウに乗っ取られるのがオチだ!!』

千冬の言葉を、一樹が解放回線で割り込んだ。

「かーくん!専用機なら乗っ取られる事は無い筈だよ!」

『普通ならな!けど相手はI()S()()()()()()()()()!言うなればISと闇の巨人を同時に相手してるようなモンなんだよ!!!!』

『何か面白そうな話をしてるね』

通信を乗っ取って現れたのは、フードを深く被った人物…

「…誰だ?」

険しい目をしたラウラが、モニターに映る人物を睨む。

『ああ、外国組みの人たちは初めましてだね。雪恵さんの同級生で将来の伴侶、藤原修斗って言うんだ。君たちにはシャドウって名乗った方が分かりやすいかな』

「「「ッ!!?」」」

フードを取った藤原。藤原を知っている箒に鈴、千冬は身構える。

『ん?お前らなんか興味無いよ。せいぜい織斑を追ってれば良いさ』

藤原はまるで見えてるかの様に、雪恵にその顔を向ける。

 

ゾクッッッ!!!!!!!!

 

「あ、あぁ…」

背筋に悪寒が走り、膝から崩れる雪恵。

「ユキエ!」

『雪恵さん!』

すぐに雪恵を支えるセリーと実体化したミオ。

『すぐにこのクズを片付けて迎えに行くから…待っててね、雪恵さん』

「…クズって、誰の事?」

震えながらも、モニターに映る藤原に聞く雪恵。

『え?正義の味方を気取ってる、雪恵さんの6年という時間を奪ったクズだよ』

藤原は、雪恵達の前で一樹をクズと吐き捨てた。

「かーくんは!クズじゃない!」

「お前如きが、カズキを評価するな!」

『訂正して!マスターを、クズとは言わせない!』

一樹を想う3人の言葉を聞いても、藤原はため息を吐くだけだった。

『そうか…雪恵さんは今、あのクズに洗脳されてるんだっけ。今は分からなくても、その内分かるよ…君の居場所は、僕の隣だってね』

「私は、洗脳なんかされてない!私の好きな人は、櫻井一樹なの!あなたは、大っ嫌い!!!!」

『それもすぐに変わるよ…あのクズが死んじゃえばね』

 

 

レーザーの嵐を何とか躱し続けるフリーダム。

「良い加減目を覚ませ一夏!」

「……」

【闇】を打ち込まれている一夏は、まだ意識を取り戻していない…

藤原の意のままに、リヴァイヴや打鉄からレーザーを撃ち続けている。

「チッ!」

サイコフレームが赤黒く光り、訓練機がフリーダムを囲む。

レーザーの網の隙間を縫うように飛んでそれを避けるが…

 

ミシミシミシミシミシミシッ!!!!

 

一樹の体が…首が、悲鳴をあげていた。

「(あと少し!あと少しだけ保ってくれよ!)」

ビームマグナムの攻撃を避けながら、一樹は訓練機達を撃ち落としていく。コアは撃ち抜かないよう、細心の注意を払いながら…

「(ごめん…こんな止め方しか出来ない俺を、許してくれ…)」

心の中でコア達に謝りながら、迎撃していく。

『隙見っけ』

そんな戦い方をしてたからだろうか。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ッッッ!!?!!?」

想像を絶する痛みが、一樹を襲う…

『アハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!当たった!当たったぞ!!』

フリーダムに乗り換えてからは、対IS戦で被弾は無かった一樹。

その一樹が被弾し、左足を失ったということは…それだけ、一樹が体を痛め、体力を消耗しているということ…

「(左足をやられただけだ!変身してるならともかく、Ex-アーマーならまだ戦える!)」

過去に無い激痛を感じながらも、一樹はビームライフルを撃ち、リヴァイヴを戦闘不能にした…

 

 

「束!奴の居所を教えろ!私直々に相手してくれる!!」

『無駄だよ。篠ノ之束と言えど、僕を見つける事は出来ない。それは溝呂木の件で分かる事じゃないかな?』

愉しそうに言う藤原。千冬は拳を血が出るほど強く握る…

『けど、雪恵さんがこっちに来てくれるなら織斑は解放してあげるけど?どうする雪恵さん?』

 

 

「行くな雪!!」

フリーダムと麒麟の闘いの舞台は、成層圏へと変わっていた。

フルバーストで訓練機を数機破壊するも、まだ不利なのは変わっていない。

『お前は黙ってろよクズ』

「ッ!!?」

何度目かの集中攻撃を必死に避ける一樹だが…

『次はそこ』

利き腕である右腕が、撃ち抜かれた。

あまりの痛みに意識を失いかけるが、何とか耐える。

『まだ粘るか…!良い加減消えちゃえよ!』

更に両肩のビーム砲まで撃ち抜かれ、満身創痍に…

「一夏…テメエも…!」

カッ!と目を見開くと、左手で残ったビームサーベル2本を連結させる。

()()()()を出現させ、麒麟に向かってスラスターを全開にする。

「いい加減目ぇ覚ましやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

レーザーが自身に迫るのも気にせずに突っ込む。

顔部の装甲にレーザーが掠り、PS装甲が剥がれる…

 

 

『無駄だって言ってんのに、分からない奴だな』

一夏の中で、藤原は狂笑を浮かべながら一樹にトドメを刺そうとするが…

 

ガシッ!!

 

『なっ!!?』

藤原の両腕が、誰かに抑え付けられた。

いや、こんな事が出来るのは2()()()()いない…

「…人の体を、好き勝手使ってんじゃねえよ」

『私を扱えるのは、マスターだけです!あなたなんかに、使われてたまるもんですか!!』

一夏とハクが、藤原の両腕を抑え付けていた。

『は、離せ!離せよ!!』

「離せと言われて」

『離す馬鹿はいません!』

 

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

金色の刃が、麒麟を貫いた。

辺りを、閃光が包む…

 

 

「かーくん!!?」

「カズキ!!?」

『マスター!!?』

「「「「一夏!!?」」」」

学園からも、その閃光を見ることが出来た。

男子2人をそれぞれ案じる面々。

だが、まだ奴の攻撃は終わっていない…

《ギャオォォォォ!!!!》

新たな怪獣が、学園を襲撃してきた…




次回はもしかしたらかなりのご都合主義が入るかも…
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